上 下
16 / 81
仮交際始めました

16

しおりを挟む
「!?」
 ーー不意打ちもいいとこで、何が起きたのか一瞬分かんなかった。
 エッと驚いた間抜けな顔になってたせいで口もだらしなく開いてて、すぐに濡れた熱い舌が俺の中に入り込んで来る。
「ン……、うぅ……っ」
 磨りガラスのドアに後ろ頭と背中を押し付けられながら、喉奥まで熱くぬめった塊を挿入されて、俺の舌が掬い取られて激しく絡まされる。
 男とキスするのなんて初めてだけど、なんかこれ、それ以前に、か、感触が、人間じゃねぇ……っ。
 舌の厚みは人間の男なのに、ヤバイほどヌルヌルで擦られるとざらつく。それが俺の口の中の敏感な部分を全部擦ってきて、感じるのを我慢できない。
 抑制剤と自制心で、意識的にも無意識にも頑張って閉じてた感覚が無理矢理こじ開けられてく。犬みたいな激しくて、エロい舌使いで。
「ンン……っ、ンッ……!」
 鼻から喘ぎが抜ける。
 ロッカーすいてたけど、こんなアヤしい声出したら誰が来るかわかんねぇのに……。
 ダメなのに気持ち良くて頭がぼんやりして何も考えられなくなる。
 もっと……もっと擦ってくれ……もっと奥、中まで入ってイイよ、犬塚さん……。
 気がついたら俺は太い首筋にすがるように腕を回し、うっとりとしながら自分からも舌を差し出していた。
 鋭い犬歯が舌先に二つ触れて、それが堪らなく可愛くて何度も舐め回して啄ばんだ。
 そしたら、犬塚さんがその歯で俺の下唇フニフニ甘噛みしてきて、痺れるくらいに感じて。
 腰がガクガク震えて両脚に力が入らなくなると、股間に太腿入れて支えられて、更に貪られた。
 はあっ、もう、無理……。
 婚活とか産むとか産まないとかもう何もかもどうでもいい、キスだけじゃなくて……犬塚さんと、もっと、気持ちイイことがしてぇよ……今すぐに、ここで。
 舌を絡めて互いの唾液を求め合って、頭がバカになりそうな幸福感で腹の奥がギュンと痺れて熱くて、逞しい太腿に乗り上げた俺の玉と竿が腰と一緒にビクビク跳ねる。
 身体が濡れてるからバレねぇだろうけど、キスだけで前も後ろも恥ずかしい程トロトロに濡れてる。
 女の子とキスしててこんなになったこと、一度もねぇのに……ほんとにヤバい……。
 犬塚さんの凶悪に大きなモノもとんでもないことになってるけど、何故かさっきみたいな恐怖心がぜんぜん湧かない。
 むしろ、俺でそんな風になってくれてるのが嬉しくて堪らなくて、身体中ゾクゾクする。
 濡れて貼り付いた髪の間から出てる垂れ耳も、がっついてくる舌も歯も、腕も脚も胸も腹も、でっかいチンチンも、ぜんぶ全部堪らなく可愛い……、今だけでも俺の物になったらいいのに。
「ン、ふ、……ンンッ、んうゥ……っ」
 尻を揉まれるみてぇに腰を優しく抱かれて更に理性がぶっちぎれて、角度変えて激しく口付けを繰り返しながら、ヌルヌルのドロドロになった尻の狭間とペニスを太腿に押し付ける。
 もう絶対これバレてる、なのにむしろ自分から腰揺すって誘うみたいに擦っちまうの止められない。
 ちんぽだけじゃなくて、太腿の当たってる変なトコが気持ち良くて、夢の中の感触より数倍クる。クチの中犬舌で擦られるのだけでも感じすぎて神経焼き切れそうなのに……。
 こんなの教えられたらもう俺、普通のキスじゃ何も感じなくなっちまう……っ。
「ンンンン~~ッ!」
 目尻から涙が溢れて、抑え切れない悲鳴みたいな呻きと共に、下腹がキュンキュンするのが止められず、俺は派手にイッてしまった。
 ドロッとした白濁が溢れ出て、犬塚さんの腹に飛ぶ。
 やば、俺、キスだけでーー。
 我にかえりかけた瞬間、俺の耳に微かな人の話し声が飛び込んできた。
「なぁ、なんかこのシャワー室におわねぇ……?」
「そうかぁ? 誰かが漏らした匂い?」
「ちげーよ。なんかムラムラするような甘い匂いだよ。ほら、しねぇ?」
 ギョッとして犬塚さんから唇をもぎ離す。
 ハアハアと激しく胸を上下して呼吸しながら、彼の首筋に絡めていた腕をずるっと下ろし、扉に張り付くように身体を引いた。
 犬塚さんも多少は理性が戻ったのか、でっかい手のひらで真っ赤になった顔抑えてたけど、隠すべきはフルボッキしてる下の方だろうよ……。
 曲がりなりにも一回出したお陰か、俺の方はツッこめるぐらいは理性が戻ってきて、少し扉を開けて出る隙を伺った。
 水音が聞こえ始め、どうやらさっきのやつらは、五基あるシャワーブースのうち手前二つに入ったらしい事が分かる。
 そんでもう一回犬塚さんの方に向き直ると、ほんと可哀想なぐらい「やっちまった」って感じのショックを受けた顔してた。ごめんそれ、半分……いやそれ以上に、多分俺のせいだ。
 きっと朝飲んだ抑制剤の効果が切れてたんだよ。
 まだ効果ある時間帯の筈なんだけど……。
「い、犬塚さん、また、後で……」
 かろうじてそれだけ言うと、彼はコクコクと頷いた。
 ヨロっとしながら一番奥のブースを出て、元いた隣のシャワー室に飛び込んで全身に湯を浴び直す。
 出たらすぐ薬飲まねぇと……。
 相手が隣にいるとはいえ一応一人になり、心底ホッとして、次の瞬間青ざめた。
 こんな公共の場所でフルに発情したら、俺逮捕されるとこじゃねぇか。
 頭ン中でオメガのやらかした事件が新聞の三面記事になってたのを思い出す。
『警視庁丸の内警察署は今日、商業施設内で知人男性を相手に発情しわいせつな行為を行ったとして、大学職員鳩羽湊(33)を公然わいせつ罪で略式起訴』ーーそんな記事が出たらお袋の心臓が止まっちまうじゃねーか。
 改めて自分が恐ろしくなった。
 俺、本当に犬塚さんとこのまま会い続けてていいのか?
 いつかとんでもねぇ事になっちまいそうで、怖い……。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?

桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。 前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。 ほんの少しの間お付き合い下さい。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

処理中です...