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仮交際始めました
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すぐには声を掛けずに、待ち合わせ相手の横顔をじっと観察する。
服装は、春っぽいトレンチコートに、ライトグレーのピンストライプの綿パンと、羨ましいぐらいの胸筋がチラ見えするオープンカラーの黒シャツ。
……これにサングラスでも掛けたら完全にインスタの芸能人って感じだ。
犬塚さんは柱にもたれるみたいに立ち、難しそうな本読みながら、ふわふわの金髪の下に透ける耳を時々ピクピクさせてる。
かっこいいのに堪らなく可愛い。
発情期の最中に見た夢みてぇに、ギュッと正面から抱き付けたらいいのにな。
でもそれやったらマジで変態だから。
よく考えると子供うんぬんどころか、一緒に運動するだけの清い仮交際しかしてねぇもん。
現実の俺は久々過ぎて声かけるのさえ躊躇してる始末だ。
「……あの……犬塚さん」
心臓バクバクしながら話しかけたら、ビックリしたみてぇに綺麗な顔がこっちを向いた。
「あっ……すみません、気付かなくて」
相手も久々なせいか敬語に戻ってる。
ちょっと寂しかったので、俺はわざと距離を縮めるように、彼の肩に自分の肩でどんと体当たりした。
「久しぶり。……あのなぁ、早く来すぎ」
花がほころぶみたいに犬塚さんがほわっと笑う。
「本能的なものなのか、わざと待つの好きなんだ。趣味だから気にしないで」
何だよそれ。忠犬ハチ公みてぇで凄ぇカワイイ。
「好きでやってんならいいけどさ。ほら、着替えに行こうぜ。駅地下がランニングステーションと直結してるから、すぐそこ降りたら行けるよ」
鼓動を抑えながら地下への階段を親指で差した。
俺、ちゃんと友達っぽい軽いノリで話せてるかな……。
「今日は鳩羽さんも着替えるの?」
訊かれ、頷きながら一緒に歩き出す。
「ウン。この格好じゃちょっと走れねー」
「そうか。じゃあ、一緒に」
休日も結構な人が行き交ってる広めの地下道に降りて、並んで歩く。
手とかは繋がねぇから、はたからは友達同士に見えてるかな。
コートの裾から出てる大きな手をチラ見すると、電車で壁ドン状態になってた時のこと思い出して、頰が熱っぽくなる。
「その……この前は送って貰っちまって……ありがと」
「俺が送りたかったんだよ。……鳩羽さん、今日の髪型も可愛いね。お見合いの時のプロフィール写真と同じだ」
横並びに歩きながら顔を覗き込まれて、変な声が出た。
「へぁっ……何言ってんだ。年上からかうなよ……っ」
か、可愛いとか言われて喜んでんじゃねーよ俺。
てか、俺の今までの努力なんなんだ。
「だって、額出てるの可愛かったから」
重ねて言うな……!
心臓ヤバくてどんどん速足になる。
地下鉄コンコースからビル地下に入り、ランニングステーションの店舗の自動ドアを潜った。
店内はダークブラウンの木材を基調としたセレブっぽい雰囲気だ。受付のカウンターに並び、説明を受けてランニングシューズ一人分と男子ロッカー二人分を借りる。
シャワー室とかも併設されてるらしい……走るだけなのに至れり尽くせりだな。職場からもコースが近いからよく走ってるヤツ見かけるけど、自分が挑戦するのは初めてだった。
奥に進み、犬塚さんと更衣室に入ってハタと気が付いた。
一緒に着替えるってことは、犬塚さんの裸が見られるんだな……。
夢の中の犬毛オナニーの事を思い出してブワッと変な汗が出た。
俺の変態!バカ野郎!!
頑張って精神統一しながら、上下で二つに分かれてる上のロッカーに背負ってきたランニングバッグを押し込んだ。犬塚さんのロッカーは三つ右隣。
(犬になるトコ気になるけど見ない見ない見ない……)
心に唱えながらコートを脱いで中に掛け、腕を交差させてニットを脱ぎ、下着のシャツも脱いで上半身裸になる。
ロッカーに手を入れてTシャツを出そうとしたら、
「鳩羽さん」
突然話しかけられて、肩が無意識に跳ねた。
「何……」
開いてる扉の向こうを見て、俺は目玉が飛び出しそうな程驚いた。
メチャメチャ鍛え上げた感のある綺麗な逆三角形の上半身と、高い位置にある腰に、逞しい太腿……の間の金色の陰毛と余りにもでかくて長いイチモツ……っ。
何で全裸!?
いやこれから犬になるからそうか全裸か!!
「このロッカー、開ける時は普通に開いたのに、何でか閉まらない。何でだろう。俺の使い方がおかしいのかな」
平然と聞いて来る犬塚さんに開いた口が塞がらない。
隠す気とか全然ナシかよ! まぁ犬だもんな……!
「たっ、タッチ式のキーだから開くのに閉まらねぇなんてねぇよ、普通……っ。キー貸して」
ブレスレット式の電子キーを受け取り、ガチャガチャ当ててみるけどしまらねぇ。
「ほんとだ、しまらねぇ……おっ俺、受付行ってこようかっ?」
「あっごめん、コートのベルトが引っかかってた。完全に閉まってなかったのか」
って、結局自己解決かよ…!!
とんでもないモノを見せられた俺は一体……。
俺犬塚さんの子供なら産めるかもとかちょっとだけ思ったけど、前言撤回。
あんなスゴイの、絶対ケツの穴になんか入るわけねぇーっ!!
服装は、春っぽいトレンチコートに、ライトグレーのピンストライプの綿パンと、羨ましいぐらいの胸筋がチラ見えするオープンカラーの黒シャツ。
……これにサングラスでも掛けたら完全にインスタの芸能人って感じだ。
犬塚さんは柱にもたれるみたいに立ち、難しそうな本読みながら、ふわふわの金髪の下に透ける耳を時々ピクピクさせてる。
かっこいいのに堪らなく可愛い。
発情期の最中に見た夢みてぇに、ギュッと正面から抱き付けたらいいのにな。
でもそれやったらマジで変態だから。
よく考えると子供うんぬんどころか、一緒に運動するだけの清い仮交際しかしてねぇもん。
現実の俺は久々過ぎて声かけるのさえ躊躇してる始末だ。
「……あの……犬塚さん」
心臓バクバクしながら話しかけたら、ビックリしたみてぇに綺麗な顔がこっちを向いた。
「あっ……すみません、気付かなくて」
相手も久々なせいか敬語に戻ってる。
ちょっと寂しかったので、俺はわざと距離を縮めるように、彼の肩に自分の肩でどんと体当たりした。
「久しぶり。……あのなぁ、早く来すぎ」
花がほころぶみたいに犬塚さんがほわっと笑う。
「本能的なものなのか、わざと待つの好きなんだ。趣味だから気にしないで」
何だよそれ。忠犬ハチ公みてぇで凄ぇカワイイ。
「好きでやってんならいいけどさ。ほら、着替えに行こうぜ。駅地下がランニングステーションと直結してるから、すぐそこ降りたら行けるよ」
鼓動を抑えながら地下への階段を親指で差した。
俺、ちゃんと友達っぽい軽いノリで話せてるかな……。
「今日は鳩羽さんも着替えるの?」
訊かれ、頷きながら一緒に歩き出す。
「ウン。この格好じゃちょっと走れねー」
「そうか。じゃあ、一緒に」
休日も結構な人が行き交ってる広めの地下道に降りて、並んで歩く。
手とかは繋がねぇから、はたからは友達同士に見えてるかな。
コートの裾から出てる大きな手をチラ見すると、電車で壁ドン状態になってた時のこと思い出して、頰が熱っぽくなる。
「その……この前は送って貰っちまって……ありがと」
「俺が送りたかったんだよ。……鳩羽さん、今日の髪型も可愛いね。お見合いの時のプロフィール写真と同じだ」
横並びに歩きながら顔を覗き込まれて、変な声が出た。
「へぁっ……何言ってんだ。年上からかうなよ……っ」
か、可愛いとか言われて喜んでんじゃねーよ俺。
てか、俺の今までの努力なんなんだ。
「だって、額出てるの可愛かったから」
重ねて言うな……!
心臓ヤバくてどんどん速足になる。
地下鉄コンコースからビル地下に入り、ランニングステーションの店舗の自動ドアを潜った。
店内はダークブラウンの木材を基調としたセレブっぽい雰囲気だ。受付のカウンターに並び、説明を受けてランニングシューズ一人分と男子ロッカー二人分を借りる。
シャワー室とかも併設されてるらしい……走るだけなのに至れり尽くせりだな。職場からもコースが近いからよく走ってるヤツ見かけるけど、自分が挑戦するのは初めてだった。
奥に進み、犬塚さんと更衣室に入ってハタと気が付いた。
一緒に着替えるってことは、犬塚さんの裸が見られるんだな……。
夢の中の犬毛オナニーの事を思い出してブワッと変な汗が出た。
俺の変態!バカ野郎!!
頑張って精神統一しながら、上下で二つに分かれてる上のロッカーに背負ってきたランニングバッグを押し込んだ。犬塚さんのロッカーは三つ右隣。
(犬になるトコ気になるけど見ない見ない見ない……)
心に唱えながらコートを脱いで中に掛け、腕を交差させてニットを脱ぎ、下着のシャツも脱いで上半身裸になる。
ロッカーに手を入れてTシャツを出そうとしたら、
「鳩羽さん」
突然話しかけられて、肩が無意識に跳ねた。
「何……」
開いてる扉の向こうを見て、俺は目玉が飛び出しそうな程驚いた。
メチャメチャ鍛え上げた感のある綺麗な逆三角形の上半身と、高い位置にある腰に、逞しい太腿……の間の金色の陰毛と余りにもでかくて長いイチモツ……っ。
何で全裸!?
いやこれから犬になるからそうか全裸か!!
「このロッカー、開ける時は普通に開いたのに、何でか閉まらない。何でだろう。俺の使い方がおかしいのかな」
平然と聞いて来る犬塚さんに開いた口が塞がらない。
隠す気とか全然ナシかよ! まぁ犬だもんな……!
「たっ、タッチ式のキーだから開くのに閉まらねぇなんてねぇよ、普通……っ。キー貸して」
ブレスレット式の電子キーを受け取り、ガチャガチャ当ててみるけどしまらねぇ。
「ほんとだ、しまらねぇ……おっ俺、受付行ってこようかっ?」
「あっごめん、コートのベルトが引っかかってた。完全に閉まってなかったのか」
って、結局自己解決かよ…!!
とんでもないモノを見せられた俺は一体……。
俺犬塚さんの子供なら産めるかもとかちょっとだけ思ったけど、前言撤回。
あんなスゴイの、絶対ケツの穴になんか入るわけねぇーっ!!
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