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ヴィクトル・シェンクの受難
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「……腹……?」
バアルの指を払いのけながら首を傾げる。
確かに言われてみれば、酒場でろくに食べないで帰ってきてしまったので、酷く空腹だった。
柔らかな微笑みが目の前の白い貌に浮かぶ。
「……お前が私にくれた果物の種を私の庭で大事に育てて、果樹園を作ったのだよ。私も食べるばかりが能という訳じゃない。さあ、食べてごらん」
「断る。こんな怪しい空間で育ったモノなんぞ食えるか」
即答すると、バアルは美しい眉を下げて悲しげにこちらを見た。
「そう言わず、一口だけでも……。そうしたらすぐに家を元に戻す」
「しょうがねえな。分かったよ」
根負けして、ヴィクトルは長椅子の背に身を預けた。
バアルが嬉しそうに微笑み、服の袖の下から白く細い触手をスルリと出す。
その触手の先は目のない蛇の頭のようにかぱりと口を開き、丁度すぐそばに垂れ下がっていた葡萄の実に噛み付いてもぎ取った。
ヴィクトルは既に彼の本質的な部分がそういうものだと知ってはいたが、何度見てもいい気分はしない。
そのまま実を唇に押し付けられそうになって本能的に避けると、バアルがそっと顔を寄せてきた。
「……。これは嫌いか?」
申し訳なさそうにうなだれた触手が主人の手の中に実を渡し、しゅるんと袖口に仕舞われる。
美しい長い指が改めてヴィクトルの唇に瑞々しい果実を押しつけ、舌の上に滑り込ませた。
「ン」
不本意ながら奥歯で噛み締めると、甘く濃厚な果汁が口の中いっぱいに溢れる。
脳が痺れるような深い甘味を味わいながら、アミュに葡萄を食べさせたのはいつだったろうと考えた。
この王都を実質的に統べている伯爵の農業政策で、ワイン用の葡萄の栽培を始めることになった時かもしれない。
葡萄の産地から、苗木と一緒に実が王都に持ち帰られ、大事に分けて貰った一房の半分ほどを、ほとんどアミュに食べられてしまった。
その時ほんのわずかに味わった葡萄より、今、口の中にある果実の味はずっと繊細で、甘みも強い。
素直に飲み込むと、いつの間にかバアルの美貌が目前に迫り、口移しに次の実を渡されていた。
「……!」
唇の粘膜を触れ合わせながら実を受け取ると、芳醇な香りと共に舌に熱が生まれる。
まるで、上質のワインを飲み下した時のように。
反射的に離れようと身を引くと、バアルの手に両腕を掴まれ、籐の長椅子に上体をドッと押し倒された。
前を留めていなかった軍服の前身頃がはだけ、ヴィクトルの綺麗に割れた腹筋と、隆起した胸筋があらわになる。
途端に覆い被さっているバアルの纏う絹のシャツのボタンが弾け飛び、その隙間から白い蛇のような触手がどっと溢れ出て、剥き出しの褐色の肌に接吻し始めた。
「……っ、やめ……」
言葉を発しかけた唇が深く塞がれる。
熱い舌にすぐさま喉奥まで侵入されて、割れた葡萄の果肉を共に味わうような官能的な愛撫で口腔を犯された。
「……ッン……、う……っ」
唇を貪られつつ、バアルの無数にある口のうちの二つに乳首に吸い付かれ、ねろねろと舌でなめ回される。
強い性感に、ヴィクトルの腰が長椅子の上で無意識にしなった。
「ンン……っ!」
目の前の強引な男に必死に目でやめろと訴える。
けれど自分を弄んでいるこの神は、唇は離したものの、触手での情熱的な愛撫を一向にやめようとしない。
「……ごらん。お前の可愛い二つの実が、精一杯に大きくなって私の舌に懐いている……」
「懐いてんのはてめえだろうが……っくゥ……っ!」
触手のぱっくりと開いた口に生える微細な歯が皮膚の薄い乳頭に立てられ、そこが絶妙な加減でクニュクニュと甘噛みされる。
日を置かず弄ばれて感度の上がっているそこは、愛撫される悦びを真正直に下半身に伝え、ヴィクトルの性器をあっという間に充血させた。
「うァッ、は、あ……!」
軍服のズボンの隙間にも忍び込んでくる相手の分身を、もはや拒むことができない。
細い触手が、屹立したペニスにきつく絡みついてくる。まるで、自分のモノだと言わんばかりに。
敏感な亀頭には、ぱっくりと口を開いた太い触手の先で吸い付かれ、獣の舌で鈴口をクチュクチュほじられて、気が狂いそうになる。
「ぁぁあああ……ッ、そ、こはぁ……っ、や、め……ぁ……っ」
ヴィクトルの陰茎の根元が、絡みついたバアルの一部にゆるゆると扱かれ始めた。
両脚は別の太い触手に縛められ、ズボンと下着とが無理矢理に素早く脱がされる。
神自身は目の前で涼しい顔をしているのに、その体から出ている無数の触手の行為は、まるで手際のいい強姦魔だ。
無防備になったヴィクトルの下半身に無遠慮な触手達の濡れた舌が無数に群がる。
ヒクヒクする後孔と、張った双玉、陰毛の生え際にも触手に吸い付かれ、ねろねろと舐めまわされた。
乳首にも、脇腹にも、ヘソにもたっぷりと唾液を含んだ粘膜の感触が這っていく。
「くぅ……っ、ふあ……あ」
まるで複数の人間から同時に快楽責めを受けているかのような状況だ。
「出てしまいそうか? 私が全部飲むから、安心して放ちたいだけ放てばいい……」
バアルの唇が再び開いて、楽しそうに訊く。
休むことを知らない愛撫で身体を無理やり絶頂へ押し上げられ、返事もままならない。
「んぅ、嫌、だ、先のほう、ばかり吸う、なぁ……っ、」
下腹部がムズムズとし始めて、嫌な予感がした。
最近自分の身体はすっかりおかしいのだ。
尿道を吸われながら射精すると、閉じるべきところが閉じなくなって――。
「ッア! あ――っ……っは……ぁあ……っ」
凄まじい解放感と絶頂と共に、精液と尿とが同時にヴィクトルのペニスの先から迸る。
けれどそれは決して服や長椅子を汚すことなく、全てがバアルの触手の餌になり――ゴクゴクと音を立てて飲み込まれた。
バアルの指を払いのけながら首を傾げる。
確かに言われてみれば、酒場でろくに食べないで帰ってきてしまったので、酷く空腹だった。
柔らかな微笑みが目の前の白い貌に浮かぶ。
「……お前が私にくれた果物の種を私の庭で大事に育てて、果樹園を作ったのだよ。私も食べるばかりが能という訳じゃない。さあ、食べてごらん」
「断る。こんな怪しい空間で育ったモノなんぞ食えるか」
即答すると、バアルは美しい眉を下げて悲しげにこちらを見た。
「そう言わず、一口だけでも……。そうしたらすぐに家を元に戻す」
「しょうがねえな。分かったよ」
根負けして、ヴィクトルは長椅子の背に身を預けた。
バアルが嬉しそうに微笑み、服の袖の下から白く細い触手をスルリと出す。
その触手の先は目のない蛇の頭のようにかぱりと口を開き、丁度すぐそばに垂れ下がっていた葡萄の実に噛み付いてもぎ取った。
ヴィクトルは既に彼の本質的な部分がそういうものだと知ってはいたが、何度見てもいい気分はしない。
そのまま実を唇に押し付けられそうになって本能的に避けると、バアルがそっと顔を寄せてきた。
「……。これは嫌いか?」
申し訳なさそうにうなだれた触手が主人の手の中に実を渡し、しゅるんと袖口に仕舞われる。
美しい長い指が改めてヴィクトルの唇に瑞々しい果実を押しつけ、舌の上に滑り込ませた。
「ン」
不本意ながら奥歯で噛み締めると、甘く濃厚な果汁が口の中いっぱいに溢れる。
脳が痺れるような深い甘味を味わいながら、アミュに葡萄を食べさせたのはいつだったろうと考えた。
この王都を実質的に統べている伯爵の農業政策で、ワイン用の葡萄の栽培を始めることになった時かもしれない。
葡萄の産地から、苗木と一緒に実が王都に持ち帰られ、大事に分けて貰った一房の半分ほどを、ほとんどアミュに食べられてしまった。
その時ほんのわずかに味わった葡萄より、今、口の中にある果実の味はずっと繊細で、甘みも強い。
素直に飲み込むと、いつの間にかバアルの美貌が目前に迫り、口移しに次の実を渡されていた。
「……!」
唇の粘膜を触れ合わせながら実を受け取ると、芳醇な香りと共に舌に熱が生まれる。
まるで、上質のワインを飲み下した時のように。
反射的に離れようと身を引くと、バアルの手に両腕を掴まれ、籐の長椅子に上体をドッと押し倒された。
前を留めていなかった軍服の前身頃がはだけ、ヴィクトルの綺麗に割れた腹筋と、隆起した胸筋があらわになる。
途端に覆い被さっているバアルの纏う絹のシャツのボタンが弾け飛び、その隙間から白い蛇のような触手がどっと溢れ出て、剥き出しの褐色の肌に接吻し始めた。
「……っ、やめ……」
言葉を発しかけた唇が深く塞がれる。
熱い舌にすぐさま喉奥まで侵入されて、割れた葡萄の果肉を共に味わうような官能的な愛撫で口腔を犯された。
「……ッン……、う……っ」
唇を貪られつつ、バアルの無数にある口のうちの二つに乳首に吸い付かれ、ねろねろと舌でなめ回される。
強い性感に、ヴィクトルの腰が長椅子の上で無意識にしなった。
「ンン……っ!」
目の前の強引な男に必死に目でやめろと訴える。
けれど自分を弄んでいるこの神は、唇は離したものの、触手での情熱的な愛撫を一向にやめようとしない。
「……ごらん。お前の可愛い二つの実が、精一杯に大きくなって私の舌に懐いている……」
「懐いてんのはてめえだろうが……っくゥ……っ!」
触手のぱっくりと開いた口に生える微細な歯が皮膚の薄い乳頭に立てられ、そこが絶妙な加減でクニュクニュと甘噛みされる。
日を置かず弄ばれて感度の上がっているそこは、愛撫される悦びを真正直に下半身に伝え、ヴィクトルの性器をあっという間に充血させた。
「うァッ、は、あ……!」
軍服のズボンの隙間にも忍び込んでくる相手の分身を、もはや拒むことができない。
細い触手が、屹立したペニスにきつく絡みついてくる。まるで、自分のモノだと言わんばかりに。
敏感な亀頭には、ぱっくりと口を開いた太い触手の先で吸い付かれ、獣の舌で鈴口をクチュクチュほじられて、気が狂いそうになる。
「ぁぁあああ……ッ、そ、こはぁ……っ、や、め……ぁ……っ」
ヴィクトルの陰茎の根元が、絡みついたバアルの一部にゆるゆると扱かれ始めた。
両脚は別の太い触手に縛められ、ズボンと下着とが無理矢理に素早く脱がされる。
神自身は目の前で涼しい顔をしているのに、その体から出ている無数の触手の行為は、まるで手際のいい強姦魔だ。
無防備になったヴィクトルの下半身に無遠慮な触手達の濡れた舌が無数に群がる。
ヒクヒクする後孔と、張った双玉、陰毛の生え際にも触手に吸い付かれ、ねろねろと舐めまわされた。
乳首にも、脇腹にも、ヘソにもたっぷりと唾液を含んだ粘膜の感触が這っていく。
「くぅ……っ、ふあ……あ」
まるで複数の人間から同時に快楽責めを受けているかのような状況だ。
「出てしまいそうか? 私が全部飲むから、安心して放ちたいだけ放てばいい……」
バアルの唇が再び開いて、楽しそうに訊く。
休むことを知らない愛撫で身体を無理やり絶頂へ押し上げられ、返事もままならない。
「んぅ、嫌、だ、先のほう、ばかり吸う、なぁ……っ、」
下腹部がムズムズとし始めて、嫌な予感がした。
最近自分の身体はすっかりおかしいのだ。
尿道を吸われながら射精すると、閉じるべきところが閉じなくなって――。
「ッア! あ――っ……っは……ぁあ……っ」
凄まじい解放感と絶頂と共に、精液と尿とが同時にヴィクトルのペニスの先から迸る。
けれどそれは決して服や長椅子を汚すことなく、全てがバアルの触手の餌になり――ゴクゴクと音を立てて飲み込まれた。
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