主神の祝福

かすがみずほ

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主神の祝福

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「う、嘘だ……、あァっ!」
 奥深くに亀頭をねじり込まれるようにされて、逞しい身体が淫らに悶える。
「――俺が嘘をついた事があるか?」
 水鏡が今正面から映していることを知っているように、カインの手が犯されている青年の膝頭を掴み開いて結合部を見せ付けた。
「カインっ、ぁあ……やめっ」
「――お前がそう言うなら仕方ねえなあ」
 レオンの身体が僅かに持ち上げられ、ぬぷ……と中を犯していたものが引き抜かれる。
 彼の後孔は赤くめくれてヒクヒク震えたまま、淫猥な痙攣を見せた。
「可哀想な穴だな? 大好物を食ってたのに、恥ずかしがりの主人のせいでお預けを食らうなんてなあ」
 それまで淫らな体勢での突き上げを味わっていたのに、急に快楽を奪われ、優しげな色の瞳に涙が浮かぶ。
「や……いや、だ……」
 襟足の短い首がふるふると振られた。
 カインのそそり立った雄が白い尻の狭間に沿うように擦り付けられ、一層に欲を煽り始める。
「……だ、ダメだ、……カイン……っ、あぁ……、またっ、欲しくなる、我慢できな……っ」
 くす、と赤い唇が笑む。
 銀盤からは聞き取れない程の小さな声で、カインが何事かを伴侶の耳元に囁いた。
 その表情が動揺し、頬がますます赤く染まる。
「む、無理……っ」
「へえ。じゃあ、俺はこのままお前の尻の肉で抜いちまおうかな」
 濡れた狭間に怒張がヌチュヌチュと押し付けられ、ますます青年の下半身が堪え難く悶えた。
「い、言う……言う……っ」
 レオンが恥辱に顔を逸らしながら、自らの手を股間に持っていく。
 その指がぎこちなく、濡れそぼった襞を広げ、中をさらけ出した。
「お……俺の……っの……は……」
「ん? 聞こえねえな」
 意地悪い言葉がせっつく。
「お、俺の、……見られるのが大好きな、恥ずかしい穴をっ……お、奥まで犯してくれ……っ」
「可愛い俺のレオン……上出来だ」
 カインが再び長大な分身で肉壺を深く貫く。
「はぁあっ……っ! カイン……っあっ! イクっ、イッ……っ」
 悦びに全身を震わせ絶頂する青年を追い詰めるように、カインの指が赤い尖りを愛撫する。
「もうイッてんのか? じゃあ、次はスケベな乳首でもイッてみろ」
「んぁあ……っ、あーっ……!」
 丸みを帯びるほど充血した乳首に爪を立てられ、ガクガクと開いた膝が痙攣し、レオンの腰が踊るように雄を貪る。
「気持ちいいっ、あぁっ、中もっ、乳首も気持ちいい……っ!」
 太い茎の表面に強く絡みつく窄まりを銀盤に見せつけ、揺れる幼げな雄から白濁を漏らして、青年が艶やかに腰を振りたくる。
「カイン、っあ、……っ、キスを……っ」
 神は動きを止めると愛らしくねだる彼の顎を掴んで引き寄せ、啄ばむような口付けを施した。
「お前、祭で変なのに声かけられても絶対無視しろよ……。お前のココは死ぬまで俺だけのもんだからな。――分かったか……?」
 嬌声を上げるばかりの青年が何度も首を振る。
 カインが突き上げを再開したところで、バアルは銀盤に指を浸して映像を閉じた。
 ――いつからそうなっていたのか、下肢がムズムズと熱い。
 健気で従順な青年の色香が、思ったよりも効いたようだった。
(……成る程、最近の人間は、他人に見られていると感じながら交わることで悦ぶのか……一つ勉強になったな)
 カインによく似た美しい形の唇が微笑む。
(しかし私の好みからすると――、どうせ男を抱くのなら、健気なよりも多少跳ねっ返りの方が燃えるような気がするが)
 白い睫毛に縁取られた優しげな紫の瞳が妖しく瞬く。
 盤の水が天井に向かってざあっと舞い上がり、その水滴がキラキラとした霧に変わると、バアルの姿は一瞬にして地下室から掻き消えた。



 春祭の前日、神殿騎士団副官であるヴィクトル・シェンクは王都の警備に多忙を極めていた。
 日の出始めた頃に同僚達と共に王都に散ってから、彼は一度も兵舎に帰っていない。
 ヴィクトルの持ち場は一番人間が多く集まる中央広場で、その忙しさは群を抜いていた。
 美しく整えていた黒髪は波打つように乱れて散らばり、ブロンズ色の頬には擦り傷と土埃が付いている。青い立襟の軍服はホックが飛び、首元の濃い肌の色が覗いていた。
 ここ北部エルカーズ地方は薄い色の肌と髪の色を持つ人間が多く、彼の容姿は祭に沸く雑踏の中でもはっきりと目立つ。
 群衆の中で時折感じる不躾な視線はこの国では仕方のない事だったが、今日に限ってはことのほか彼を不機嫌にした。
 猫科の肉食獣のような琥珀の鋭い瞳が歓楽に訪れた人々の姿を映す。
 明日の祭を目的に、周辺の農村の人間だけでなく、流しの商人や芸能を得意とする流浪の者達がこの王都に多く入り込んでいる。
 その中には犯罪を裏の生業とする者達も紛れ込んでいて、人混みに乗じて金品を掠め取る泥棒や、まっとうな商人に化けた詐欺師など、見過ごせない悪党も多い。
 ヴィクトルはそんな輩を彼特有の嗅覚で次々と発見し、捕まえては王城の地下牢に放り込んでいるのだが、多勢に無勢で流石にキリがなかった。
 他の神殿兵は彼ほどの実力も洞察力もなく、ただ要所に突っ立っているだけの者もいる始末で、止むを得ずこちらに皺寄せが来る。
 しかも、上司である総長は伯爵の執務室に特別な仕事の依頼という名目で引き止められているとかで、治安維持の人手には参加できそうにないという――。
(特別な仕事だ? どうせまた例の伯爵様の中身とやりまくってんだろ、畜生。――神様ってやつは好き勝手してもバチを当てる奴もいねぇんだから、羨ましいぜ)
 そう思うと、昼間から酔っぱらいばかりが行き交う広場で酒も飲まずに真面目に仕事をしている自分が馬鹿らしくなってくる。
 そんなイラつく気持ちを、先刻から仕事がてらに犯罪者にぶつけている感も否めない。
 事実、ヴィクトルの捕まえた盗人には、なぜか他の囚人より生傷が多かった。
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