40 / 49
眠ってはならない
しおりを挟む
インジェンは俺をそのまま引き摺って戻り、城の外れの翠玲宮の自室に引きこもった。
扉も窓も全て閉め切り、人払いをして、伽羅の香りのする部屋が完全に二人きりの空間になると、彼は俺の目の前で、自分の衣装を引き裂くように乱暴に剥ぎ取って床に捨て始めた。
繊細な髪飾りや長い付け爪が、壁に刺さりそうな強さで俺の足元に投げられ、結った髪が指でグシャグシャに解かれる。
顔の化粧も、濡れた布で乱暴にぐいぐい拭きとって、その後は、まるで鬼女のようなひどい有様になった。
一部始終を見守ることしか出来ない俺に、インジェンが叫ぶ。
「リュウ、全てお前のせいだ……! お前は私を裏切り、騙した……!!」
「違う……」
俺は、壊れた機械のように、否定しかできない。
「違う!? お前はなぜ、あの男がダッタンの王子だということを黙っていた!? お前が、ダッタンの王の奴隷だったことを、黙っていたのだ!?」
俺は床に這いつくばって土下座したまま、呻いた。
「私は、お会いした時からすでに重罪人でした、殿下……。言えば、彼らに迷惑がかかると思ったのです……」
「言い訳も甚だしい……!! 貴様は、あの男と最初からグルだったのだ……! 私に希望を与えたように見せかけながら、呪いに逆らい、死ぬように仕向けた!」
インジェンの目が、血走って真っ赤になっている。
もうこれ以上に傷付くことなど、死なない限りは出来ないと言わんばかりの悲痛な声が俺を苛む。
この人の心を絶望に突き落としてしまったのは俺だ。
ただ、この人を救いたかっただけなのに。
都に来たのは自分の為だったけれど、途中からは、本当にそれだけだったんだ……。
「お前は妖魔の知識で、秘密の答えを全てあの男に教え、次の皇帝となるように仕向けた。ああ、それなのに……それなのに私はお前のことを……っ」
内衣だけになったインジェンが、文机の引き出しをぶちまけて、中から装飾のついた護身用の短刀と薬壺を出し、カーテンの開いた寝台の上にそれらを放った。
次いで、俺の腕を強く掴み、引きずって寝台の方へと乱暴に引く。
俺は抵抗もせずに、ただ、されるがままに従った。
インジェンが独り言のように、恨みの言葉を重ねる。
「……お前は奴隷の身でありながら、何という策士だ。そしてこの私は……呪いの道具でありながら、お前という妖魔にも騙された、情けない操り人形だ……!」
もう、ダメだ。
築いた信頼は粉々に壊れた。
――この人には、俺が何を言っても届かない。
インジェンが、俺の身体を強く押して、寝台の上に転がす。
彼は俺の上に馬乗りになり、短刀の鞘を抜いて床に捨てた。
俺は仰向けになったまま、止まらない涙を拭うこともせず、力なく声を上げた。
「……そこまでおっしゃるなら、もう、申し開きはいたしません……。さあ早く、私を、殺してください、殿下……」
「殺す前に、お前に聞かねばならない事がある。あの男の名だ! あの男の命より、私の命を選ぶのなら、今ならば許してやる。さあ、名前を言え……!」
「――それは、出来ません」
「何故だ!!」
間近に見るインジェンの、苦痛に歪んだ素顔は、化粧の残骸で汚れていてもなお、美しかった。
俺のせいでボロボロに傷付いているその人に、更に残酷なことを言うことしか出来ない。
だって……今ここでカラフの名を明かしたら……俺は、死ぬよりも後悔するから。
代わりに俺が出来たのは、ただ、感情のままに泣き喚くことだけだった。
「だって、出来ないよ……!! 俺だって、インジェンの命を救いたい!! でもその為に、何度も助けてくれた……さっきだって、ただ俺を助けにきてくれただけの、あの人の命を犠牲にするのは間違ってるだろう……!? 間違っていることを、俺はできない……! インジェンにもさせたくない……!! ごめん、本当にごめんっ、インジェン……っ!!」
叫びながら泣きわめく俺の上で、インジェンも涙を流して泣き出した。
「クソ……っ、お前はどうして……っ、いつもっ、私の思い通りにならない……!! リュウ、私はお前のそんな所を、どんなにか――」
泣きながら、インジェンの右手は鋭い刃を俺の首にあてた。
同時に、その左手は、俺の首と顎の間についた傷に、この上なく優しく触れる。
「お前に奪われた私の心を返せ……! 裏切られたのに、まだ、お前のことがこんなにも、愛しい……! お前の顔を見ればこそ、人の首を切ってでも生きていたくなるのに……!」
俺を殺したい手も、慈しむ手も、矛盾しているようで、紛れもない彼の本心だった。
その場限りの恋人ごっこだと思っていたのに、インジェンは、こんなにも強く、狂おしいほど俺のことを愛していてくれた……。
そのことにやっと気付けたのに、俺はもはや、彼になんて返すのが正解なのかも分からない。
俺も愛してるんだと言えば、きっと、もっと疑われる。
だからもう、謝ることしか出来なかった。
「ごめん……ごめんなさい……許して……あなたの命を救えなくて、ごめんなさい……他のことなら、何でもする……何でもいうことを聞くから……!」
「駄目だ、あの男の名前を言え……!」
インジェンが、俺に与えてくれた高価な赤い長袍の胸を、短刀の刃で無惨に切り裂いてゆく。
内衣まで全てズタズタにされて、靴を無理やり脱がされ、上から下まで……性器も、全部晒された。
「……っ、インジェン……!?」
羞恥に狼狽しながら叫ぶと、インジェンが泣きながら笑った。
「お前は痛みに強い。苦痛を与えたとしても、口を割らないだろうことはもう分かっている……。だから身体を開かせて、心も私の意のままにする。……この薬を使って……」
インジェンが、床に短刀を落とし、代わりに布団の上に放られていた、小さな白い薬壺を指差した。
「――宦官たちが、張り型で自分や他人を慰めるときに使う媚薬だ」
び、媚薬……!?
何か、ヤバい麻薬のようなものだろうか。
そんなものを使われて、俺はちゃんと正気を保っていられるんだろうか……!?
恐怖に青ざめる俺の耳元にインジェンが唇を寄せる。
「……ここでお前の身体を抱くことを、どれだけ私が待ち望んでいたことか。……お前が何もかも初めてだというから、優しくしてやろうと思っていたのに……とてもそんな気分にはなれぬ」
唇の片端を歪め、インジェンは自らの内衣を脱ぎ捨てた。
目の前にある、彼の太腿の間の陽物は、萎えていてもなお大きくて、涙に濡れた少女のような顔立ちとやはり、結びつかない。
「他のことなら何でもすると言ったな、リュウ。……まずはお前がこれを、唇で咥えて、舐めて勃たせろ。……歯を立てるな」
命じられて、俺は固唾を呑んで頷き、彼の下からゆっくりと這い出るように身体を起こした。
四肢に残った布の切れ端を落として全裸になり、インジェンの、軽く折られた長い脚の間に身体を入り込ませ、四つん這いで彼の股間に顔を埋める。
汚れていない男のふりをすることは、ここでは最早なんの意味もなかった。
だから俺は、俺の知っている……苦くて、辛い経験で染み込んだ、全ての方法を使って、インジェンを悦ばせることにした。
垂れ落ちる前髪を耳にかけてから、直ぐには竿に触れず、白い太腿や、綺麗に割れた下腹、薄い陰毛……周りから、ゆっくり焦らすようにキスを落としていく。
「……っ……!?」
口の中に唾液をたくさん溜めて……淫らな上目遣いで見つめながら、まずは彼の睾丸にしゃぶりつく。
「……は……!? どこを舐めて……、ック……はぁっ……っ」
片方ずつ、玉を唾液まみれにしながら、重みのあるそれを口の中で転がし、袋の縫い目も、優しく舌先で愛撫する。
淫靡な音を立ててねちっこくしゃぶるうちに、竿が少しずつ反応してくるのを見計らって、つぅ……っと、下から舌を這わせ、いかにも美味しいものを舐めて味わうみたいに……舌の真ん中を密着させて、ゆっくりと行き来を繰り返す……。
「あ、あ……あ」
目を見開いてビックリしながらも、快感に喘ぐインジェンが余りにも可愛くて……今まで、他人のチンポをしゃぶってても、勃起したことなんてなかったのに……今は、俺も痛いぐらい勃ってきていた。
垂れてきた先走りも勿論、しつこいほど舌を往復させて舐めとって、わざと音を立て、鈴口にジュルッと吸い付く。
そのまま亀頭をくわえ、頭を振りながら下品に舌で舐め回し、指を使って、優しく竿を扱き立てて、追い詰めていく……。
「やめろ……! 出る、クソ……!! やめ、ああ、あ!!」
――恐らくだけど……普段彼が相手にしている宦官は、幼い頃に男根を切除していて、ペニスのどこが感じやすいのか、ツボのようなものが分からなかったのだと思う。
男のツボを分かって愛撫するフェラをされたのは、きっと初めてで……だからだと思うけど……俺のフェラなんかで、インジェンは多分、三分もしないうちに、俺の口の中であっけなくイッてしまった。
喉奥に溜まった濃い苦味の塊を飲み下している最中に、インジェンの手が俺の髪を強く掴む。
無理やり頭を引っ張り上げられて、羞恥に顔を真っ赤にした相手に責め立てられた。
「リュウ……! おま……お前っ。男を知ってるな……!? 初めてだと言っていたのに……あの言葉すら、嘘だったのか……!?」
その表情は、快楽責めするはずだった相手に、先に返り討ちにされてしまった屈辱に溢れ、涙を滲ませていて……俺はクッと喉で笑った。
――結果的に、俺はインジェンを……更に猛烈に傷つけたらしい。
――なんて皮肉な話だろう。
もう、自暴自棄な気分だ。
俺は大量に放出された精の残滓を舌先に乗せ、それを自分の唇に塗りつけるように舌なめずりし、わざと淫らに微笑んでみせた。
「慣れてちゃ、悪いかよ……。俺だって、今まで生きる為に必死だったんだ。……城の中でかしずかれて、何不自由なく育った訳じゃない」
カッとなったのか、俺の髪を掴んだままの彼の手元で、ブチブチと髪の抜けるひどい音がした。
「この……っ、汚らわしい奴隷め……!!」
――そうだよ。俺は、汚い奴隷だ。
綺麗で純粋に育った皇子様には、最初から相応しくなかったんだ。
本当にごめん。
今更気づかせるなんて……本当に酷いことをした。
可哀想な、世間知らずの、俺の雛鳥。
扉も窓も全て閉め切り、人払いをして、伽羅の香りのする部屋が完全に二人きりの空間になると、彼は俺の目の前で、自分の衣装を引き裂くように乱暴に剥ぎ取って床に捨て始めた。
繊細な髪飾りや長い付け爪が、壁に刺さりそうな強さで俺の足元に投げられ、結った髪が指でグシャグシャに解かれる。
顔の化粧も、濡れた布で乱暴にぐいぐい拭きとって、その後は、まるで鬼女のようなひどい有様になった。
一部始終を見守ることしか出来ない俺に、インジェンが叫ぶ。
「リュウ、全てお前のせいだ……! お前は私を裏切り、騙した……!!」
「違う……」
俺は、壊れた機械のように、否定しかできない。
「違う!? お前はなぜ、あの男がダッタンの王子だということを黙っていた!? お前が、ダッタンの王の奴隷だったことを、黙っていたのだ!?」
俺は床に這いつくばって土下座したまま、呻いた。
「私は、お会いした時からすでに重罪人でした、殿下……。言えば、彼らに迷惑がかかると思ったのです……」
「言い訳も甚だしい……!! 貴様は、あの男と最初からグルだったのだ……! 私に希望を与えたように見せかけながら、呪いに逆らい、死ぬように仕向けた!」
インジェンの目が、血走って真っ赤になっている。
もうこれ以上に傷付くことなど、死なない限りは出来ないと言わんばかりの悲痛な声が俺を苛む。
この人の心を絶望に突き落としてしまったのは俺だ。
ただ、この人を救いたかっただけなのに。
都に来たのは自分の為だったけれど、途中からは、本当にそれだけだったんだ……。
「お前は妖魔の知識で、秘密の答えを全てあの男に教え、次の皇帝となるように仕向けた。ああ、それなのに……それなのに私はお前のことを……っ」
内衣だけになったインジェンが、文机の引き出しをぶちまけて、中から装飾のついた護身用の短刀と薬壺を出し、カーテンの開いた寝台の上にそれらを放った。
次いで、俺の腕を強く掴み、引きずって寝台の方へと乱暴に引く。
俺は抵抗もせずに、ただ、されるがままに従った。
インジェンが独り言のように、恨みの言葉を重ねる。
「……お前は奴隷の身でありながら、何という策士だ。そしてこの私は……呪いの道具でありながら、お前という妖魔にも騙された、情けない操り人形だ……!」
もう、ダメだ。
築いた信頼は粉々に壊れた。
――この人には、俺が何を言っても届かない。
インジェンが、俺の身体を強く押して、寝台の上に転がす。
彼は俺の上に馬乗りになり、短刀の鞘を抜いて床に捨てた。
俺は仰向けになったまま、止まらない涙を拭うこともせず、力なく声を上げた。
「……そこまでおっしゃるなら、もう、申し開きはいたしません……。さあ早く、私を、殺してください、殿下……」
「殺す前に、お前に聞かねばならない事がある。あの男の名だ! あの男の命より、私の命を選ぶのなら、今ならば許してやる。さあ、名前を言え……!」
「――それは、出来ません」
「何故だ!!」
間近に見るインジェンの、苦痛に歪んだ素顔は、化粧の残骸で汚れていてもなお、美しかった。
俺のせいでボロボロに傷付いているその人に、更に残酷なことを言うことしか出来ない。
だって……今ここでカラフの名を明かしたら……俺は、死ぬよりも後悔するから。
代わりに俺が出来たのは、ただ、感情のままに泣き喚くことだけだった。
「だって、出来ないよ……!! 俺だって、インジェンの命を救いたい!! でもその為に、何度も助けてくれた……さっきだって、ただ俺を助けにきてくれただけの、あの人の命を犠牲にするのは間違ってるだろう……!? 間違っていることを、俺はできない……! インジェンにもさせたくない……!! ごめん、本当にごめんっ、インジェン……っ!!」
叫びながら泣きわめく俺の上で、インジェンも涙を流して泣き出した。
「クソ……っ、お前はどうして……っ、いつもっ、私の思い通りにならない……!! リュウ、私はお前のそんな所を、どんなにか――」
泣きながら、インジェンの右手は鋭い刃を俺の首にあてた。
同時に、その左手は、俺の首と顎の間についた傷に、この上なく優しく触れる。
「お前に奪われた私の心を返せ……! 裏切られたのに、まだ、お前のことがこんなにも、愛しい……! お前の顔を見ればこそ、人の首を切ってでも生きていたくなるのに……!」
俺を殺したい手も、慈しむ手も、矛盾しているようで、紛れもない彼の本心だった。
その場限りの恋人ごっこだと思っていたのに、インジェンは、こんなにも強く、狂おしいほど俺のことを愛していてくれた……。
そのことにやっと気付けたのに、俺はもはや、彼になんて返すのが正解なのかも分からない。
俺も愛してるんだと言えば、きっと、もっと疑われる。
だからもう、謝ることしか出来なかった。
「ごめん……ごめんなさい……許して……あなたの命を救えなくて、ごめんなさい……他のことなら、何でもする……何でもいうことを聞くから……!」
「駄目だ、あの男の名前を言え……!」
インジェンが、俺に与えてくれた高価な赤い長袍の胸を、短刀の刃で無惨に切り裂いてゆく。
内衣まで全てズタズタにされて、靴を無理やり脱がされ、上から下まで……性器も、全部晒された。
「……っ、インジェン……!?」
羞恥に狼狽しながら叫ぶと、インジェンが泣きながら笑った。
「お前は痛みに強い。苦痛を与えたとしても、口を割らないだろうことはもう分かっている……。だから身体を開かせて、心も私の意のままにする。……この薬を使って……」
インジェンが、床に短刀を落とし、代わりに布団の上に放られていた、小さな白い薬壺を指差した。
「――宦官たちが、張り型で自分や他人を慰めるときに使う媚薬だ」
び、媚薬……!?
何か、ヤバい麻薬のようなものだろうか。
そんなものを使われて、俺はちゃんと正気を保っていられるんだろうか……!?
恐怖に青ざめる俺の耳元にインジェンが唇を寄せる。
「……ここでお前の身体を抱くことを、どれだけ私が待ち望んでいたことか。……お前が何もかも初めてだというから、優しくしてやろうと思っていたのに……とてもそんな気分にはなれぬ」
唇の片端を歪め、インジェンは自らの内衣を脱ぎ捨てた。
目の前にある、彼の太腿の間の陽物は、萎えていてもなお大きくて、涙に濡れた少女のような顔立ちとやはり、結びつかない。
「他のことなら何でもすると言ったな、リュウ。……まずはお前がこれを、唇で咥えて、舐めて勃たせろ。……歯を立てるな」
命じられて、俺は固唾を呑んで頷き、彼の下からゆっくりと這い出るように身体を起こした。
四肢に残った布の切れ端を落として全裸になり、インジェンの、軽く折られた長い脚の間に身体を入り込ませ、四つん這いで彼の股間に顔を埋める。
汚れていない男のふりをすることは、ここでは最早なんの意味もなかった。
だから俺は、俺の知っている……苦くて、辛い経験で染み込んだ、全ての方法を使って、インジェンを悦ばせることにした。
垂れ落ちる前髪を耳にかけてから、直ぐには竿に触れず、白い太腿や、綺麗に割れた下腹、薄い陰毛……周りから、ゆっくり焦らすようにキスを落としていく。
「……っ……!?」
口の中に唾液をたくさん溜めて……淫らな上目遣いで見つめながら、まずは彼の睾丸にしゃぶりつく。
「……は……!? どこを舐めて……、ック……はぁっ……っ」
片方ずつ、玉を唾液まみれにしながら、重みのあるそれを口の中で転がし、袋の縫い目も、優しく舌先で愛撫する。
淫靡な音を立ててねちっこくしゃぶるうちに、竿が少しずつ反応してくるのを見計らって、つぅ……っと、下から舌を這わせ、いかにも美味しいものを舐めて味わうみたいに……舌の真ん中を密着させて、ゆっくりと行き来を繰り返す……。
「あ、あ……あ」
目を見開いてビックリしながらも、快感に喘ぐインジェンが余りにも可愛くて……今まで、他人のチンポをしゃぶってても、勃起したことなんてなかったのに……今は、俺も痛いぐらい勃ってきていた。
垂れてきた先走りも勿論、しつこいほど舌を往復させて舐めとって、わざと音を立て、鈴口にジュルッと吸い付く。
そのまま亀頭をくわえ、頭を振りながら下品に舌で舐め回し、指を使って、優しく竿を扱き立てて、追い詰めていく……。
「やめろ……! 出る、クソ……!! やめ、ああ、あ!!」
――恐らくだけど……普段彼が相手にしている宦官は、幼い頃に男根を切除していて、ペニスのどこが感じやすいのか、ツボのようなものが分からなかったのだと思う。
男のツボを分かって愛撫するフェラをされたのは、きっと初めてで……だからだと思うけど……俺のフェラなんかで、インジェンは多分、三分もしないうちに、俺の口の中であっけなくイッてしまった。
喉奥に溜まった濃い苦味の塊を飲み下している最中に、インジェンの手が俺の髪を強く掴む。
無理やり頭を引っ張り上げられて、羞恥に顔を真っ赤にした相手に責め立てられた。
「リュウ……! おま……お前っ。男を知ってるな……!? 初めてだと言っていたのに……あの言葉すら、嘘だったのか……!?」
その表情は、快楽責めするはずだった相手に、先に返り討ちにされてしまった屈辱に溢れ、涙を滲ませていて……俺はクッと喉で笑った。
――結果的に、俺はインジェンを……更に猛烈に傷つけたらしい。
――なんて皮肉な話だろう。
もう、自暴自棄な気分だ。
俺は大量に放出された精の残滓を舌先に乗せ、それを自分の唇に塗りつけるように舌なめずりし、わざと淫らに微笑んでみせた。
「慣れてちゃ、悪いかよ……。俺だって、今まで生きる為に必死だったんだ。……城の中でかしずかれて、何不自由なく育った訳じゃない」
カッとなったのか、俺の髪を掴んだままの彼の手元で、ブチブチと髪の抜けるひどい音がした。
「この……っ、汚らわしい奴隷め……!!」
――そうだよ。俺は、汚い奴隷だ。
綺麗で純粋に育った皇子様には、最初から相応しくなかったんだ。
本当にごめん。
今更気づかせるなんて……本当に酷いことをした。
可哀想な、世間知らずの、俺の雛鳥。
15
お気に入りに追加
375
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について
はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。
【完結】イケメン騎士が僕に救いを求めてきたので呪いをかけてあげました
及川奈津生
BL
気づいたら十四世紀のフランスに居た。百年戦争の真っ只中、どうやら僕は密偵と疑われているらしい。そんなわけない!と誤解をとこうと思ったら、僕を尋問する騎士が現代にいるはずの恋人にそっくりだった。全3話。
※pome村さんがXで投稿された「#イラストを投げたら文字書きさんが引用rtでssを勝手に添えてくれる」向けに書いたものです。元イラストを表紙に設定しています。投稿元はこちら→https://x.com/pomemura_/status/1792159557269303476?t=pgeU3dApwW0DEeHzsGiHRg&s=19
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。

【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい
おだししょうゆ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。
生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。
地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。
転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。
※含まれる要素
異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛
※小説家になろうに重複投稿しています
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる