46 / 83
9章 守るために捨てるものもあります
5.
しおりを挟む
「タイリートっ、戻ってきてくださいっ」
カシルの声に、ススキ野からタイリートが飛び出してきた。
ひんひんと泣いて僕をべろんべろん舐めまくる。
「心配かけてごめんね、タイリート」
更にあむあむかじられて、僕は涎でべとべとだ。カシルが血まみれなら僕は涎まみれ。
結局カシルのハンカチはタイリートの涎でぐっしょりだった。
「タイリート、ハルトライア様をかじるのはいい加減おやめください」
僕を拭きながらぶつぶつと小言を言うカシルの横に、ガロディア辺境伯があたりをキョロキョロしながら近寄ってくる。
「カシルよ、屋敷に戻んのか?」
「はい。さようにございます」
「なら、送っていこう」
「え、いえっ、そんな……」
カシルが辺境伯の申し出を遠慮しようとした。すかさず僕が代わりに答える。
「ありがとうございます、ガロディア辺境伯。よろしくお願いいたします」
カシルに危険が及ばないようにするため、頼れる人間にはいくらでも頼ろう。僕はカシルをまだ守れないのだから。
頭を深く下げた僕に、またも大きな手が乗ってワシワシされる。
「ははっ、さすがだな。ハルトライアは肝が据わっている。おいカシル、こうやって頼るんだよ。お前の主は十分理解しているぞ。まったく、どっちがお子様だ?」
そしてそのまま僕をさっと抱き上げた。
背の高いガロディア辺境伯の抱っこはカシルのときより視線が高くなり、ちょっと怖いくらいだ。
慌てて太い首に手を回し落とされまいとしがみつく。
「ふはっ、なんて可愛さだ。これは困ったもんだな。お? 馬が一頭しかいないのか。お前ら二人乗りしてきたんだなっ。なら帰りは俺の馬に乗ればいいっ。来いっ、ハルトライアっ」
僕を抱っこしたまま自分の馬に飛び乗った辺境伯。僕を自身の前にそっと降ろして馬に跨らせてくれた。
ぶるるるるるるっとタイリートの鼻が鳴る。そりゃ怒るに決まってる。帰りは僕一人でお前に乗る予定だったのだから。
「ごめんタイリート、カシル乗せてくれる? そのかわり、屋敷に帰ったらいっぱい遊ぼう」
ふんふんふんと鼻を鳴らし、さらにせっかくきれいにしてもらった僕の髪を再度涎でべとべとにしてタイリートは何とか機嫌を直してくれた。
「くっくっくっ。馬にも大人気だな、このちっちゃかわいい天使は」
笑って風を起こし、べたべたこねこねになった僕の髪にまとわりつく涎を吹き飛ばしてくれた。
簡易ドライヤー! 便利だ風魔法!
「殿下! コンラート!」
辺境伯は水辺で石投げをして遊んでいた二人に声をかける。
手に持っていた石を思いきり放り投げて二人が駆けてきた。
「帰るのかっ? あっ、ハルトライアっ、辺境伯と二人乗りしているではないかっ。なら私と一緒に乗らないか?」
「何を生意気なことをおっしゃっているのかな? 殿下の腕では天使と二人乗りなどまだ20年は早いですなっ」
「何をっ!」
怒りにカッと顔を赤くする殿下だ。
というか辺境伯、僕を天使とかいうのやめてほしい。のちに魔王となる僕に逆のあだ名付けないで。カシルでこりごりしているんだから。
「まあ、俺まで、とはいかなくても、そこのカシルを倒せないとハルトライアとの二人乗りは永遠に無理でしょうな」
チラとすぐ右にいるタイリートに乗ったカシルに視線を送り、ニヤリ笑った。
「カシル? 私に執事を倒せというのか?」
フンっと笑った殿下だったが、それ以上にフハッと鼻で笑ったのは辺境伯だった。
「その男の強さを感じられないなら、あなたはまだまだ弱い、ということですよ、殿下」
ハッとしてカシルを仰ぎ見る殿下。そしてすぐ自身の白馬に飛び乗り、左側から僕にギリギリまで近づく。
「ハルトライアっ。お前の執事は、そんなにすごいのかっ」
その結構な剣幕に戸惑い、僕はカシルと辺境伯に視線をやった。
カシルは軽く目を伏せ、落ち込んでいるように見える。辺境伯にお子様と言われたからだろう。
辺境伯はふふんと不遜な笑みで僕を見てうなづいた。言ってやれ、と顔に書いてある気がする。でも何を言えばいいのか。
殿下は今でも十分強い。僕なんて彼の剣の一振りで即ノックアウトだ。だがカシルとやりあうとどうなるのだろう。
そんなこと絶対してほしくないけれど、もし殿下とカシルが戦うなら、もちろん僕はカシルを応援する。
だけど本当は。
「っカシルっ!」
僕の声にうつむいていた顔をさっと上げた。
馬の背をけり、僕は、僕のたった一人の騎士に手を伸ばす。
「ハルトライア様っ!」
ガクッとバランスを崩し落ちそうになる僕を、カシルは左手一本でつかんで抱き寄せその懐へ連れて行ってくれた。
ああ、この腕だ。この腕だけが、この温もりが、僕の居場所。
絶対なくさない。
僕の行動に驚き目を見開いた殿下に振り向く。
そうして僕は、決意の証に満面の笑みを作った。
「違いますよ殿下。僕がカシルを守るんです。だから僕を倒してくださいね」
僕が魔王になるその時まで、絶対に守り切る。
そして殿下、最後は必ず、僕だけを殺してください。
それが、この世界のハッピーエンドなのだから。
カシルを幸せにするための道筋なのだから。
「っ、ハルトライアっ、私がお前を手にかけるわけないだろう!」
さっきよりもっと顔を赤くして叫ぶ殿下。
「あははははっ、天使は最強だなっ!」
腹を抱えて笑うガロディア辺境伯。
「天使が天使で天使じゃないけどやっぱり天使だっ」
意味の分からないことをつぶやくコンラート。
三人三様を気にもかけず僕は大好きな老騎士に微笑んだ。
「帰ろう、カシル」
「っ……はいっ、ハルトライア様」
笑顔いっぱいの僕に対してどこか泣きそうでしかめっ面な顔をしたカシルだったが、タイリートは僕が戻ってきて機嫌をなおし、カッポカッポと軽快に屋敷へ歩みを進め始めた。
カシルの声に、ススキ野からタイリートが飛び出してきた。
ひんひんと泣いて僕をべろんべろん舐めまくる。
「心配かけてごめんね、タイリート」
更にあむあむかじられて、僕は涎でべとべとだ。カシルが血まみれなら僕は涎まみれ。
結局カシルのハンカチはタイリートの涎でぐっしょりだった。
「タイリート、ハルトライア様をかじるのはいい加減おやめください」
僕を拭きながらぶつぶつと小言を言うカシルの横に、ガロディア辺境伯があたりをキョロキョロしながら近寄ってくる。
「カシルよ、屋敷に戻んのか?」
「はい。さようにございます」
「なら、送っていこう」
「え、いえっ、そんな……」
カシルが辺境伯の申し出を遠慮しようとした。すかさず僕が代わりに答える。
「ありがとうございます、ガロディア辺境伯。よろしくお願いいたします」
カシルに危険が及ばないようにするため、頼れる人間にはいくらでも頼ろう。僕はカシルをまだ守れないのだから。
頭を深く下げた僕に、またも大きな手が乗ってワシワシされる。
「ははっ、さすがだな。ハルトライアは肝が据わっている。おいカシル、こうやって頼るんだよ。お前の主は十分理解しているぞ。まったく、どっちがお子様だ?」
そしてそのまま僕をさっと抱き上げた。
背の高いガロディア辺境伯の抱っこはカシルのときより視線が高くなり、ちょっと怖いくらいだ。
慌てて太い首に手を回し落とされまいとしがみつく。
「ふはっ、なんて可愛さだ。これは困ったもんだな。お? 馬が一頭しかいないのか。お前ら二人乗りしてきたんだなっ。なら帰りは俺の馬に乗ればいいっ。来いっ、ハルトライアっ」
僕を抱っこしたまま自分の馬に飛び乗った辺境伯。僕を自身の前にそっと降ろして馬に跨らせてくれた。
ぶるるるるるるっとタイリートの鼻が鳴る。そりゃ怒るに決まってる。帰りは僕一人でお前に乗る予定だったのだから。
「ごめんタイリート、カシル乗せてくれる? そのかわり、屋敷に帰ったらいっぱい遊ぼう」
ふんふんふんと鼻を鳴らし、さらにせっかくきれいにしてもらった僕の髪を再度涎でべとべとにしてタイリートは何とか機嫌を直してくれた。
「くっくっくっ。馬にも大人気だな、このちっちゃかわいい天使は」
笑って風を起こし、べたべたこねこねになった僕の髪にまとわりつく涎を吹き飛ばしてくれた。
簡易ドライヤー! 便利だ風魔法!
「殿下! コンラート!」
辺境伯は水辺で石投げをして遊んでいた二人に声をかける。
手に持っていた石を思いきり放り投げて二人が駆けてきた。
「帰るのかっ? あっ、ハルトライアっ、辺境伯と二人乗りしているではないかっ。なら私と一緒に乗らないか?」
「何を生意気なことをおっしゃっているのかな? 殿下の腕では天使と二人乗りなどまだ20年は早いですなっ」
「何をっ!」
怒りにカッと顔を赤くする殿下だ。
というか辺境伯、僕を天使とかいうのやめてほしい。のちに魔王となる僕に逆のあだ名付けないで。カシルでこりごりしているんだから。
「まあ、俺まで、とはいかなくても、そこのカシルを倒せないとハルトライアとの二人乗りは永遠に無理でしょうな」
チラとすぐ右にいるタイリートに乗ったカシルに視線を送り、ニヤリ笑った。
「カシル? 私に執事を倒せというのか?」
フンっと笑った殿下だったが、それ以上にフハッと鼻で笑ったのは辺境伯だった。
「その男の強さを感じられないなら、あなたはまだまだ弱い、ということですよ、殿下」
ハッとしてカシルを仰ぎ見る殿下。そしてすぐ自身の白馬に飛び乗り、左側から僕にギリギリまで近づく。
「ハルトライアっ。お前の執事は、そんなにすごいのかっ」
その結構な剣幕に戸惑い、僕はカシルと辺境伯に視線をやった。
カシルは軽く目を伏せ、落ち込んでいるように見える。辺境伯にお子様と言われたからだろう。
辺境伯はふふんと不遜な笑みで僕を見てうなづいた。言ってやれ、と顔に書いてある気がする。でも何を言えばいいのか。
殿下は今でも十分強い。僕なんて彼の剣の一振りで即ノックアウトだ。だがカシルとやりあうとどうなるのだろう。
そんなこと絶対してほしくないけれど、もし殿下とカシルが戦うなら、もちろん僕はカシルを応援する。
だけど本当は。
「っカシルっ!」
僕の声にうつむいていた顔をさっと上げた。
馬の背をけり、僕は、僕のたった一人の騎士に手を伸ばす。
「ハルトライア様っ!」
ガクッとバランスを崩し落ちそうになる僕を、カシルは左手一本でつかんで抱き寄せその懐へ連れて行ってくれた。
ああ、この腕だ。この腕だけが、この温もりが、僕の居場所。
絶対なくさない。
僕の行動に驚き目を見開いた殿下に振り向く。
そうして僕は、決意の証に満面の笑みを作った。
「違いますよ殿下。僕がカシルを守るんです。だから僕を倒してくださいね」
僕が魔王になるその時まで、絶対に守り切る。
そして殿下、最後は必ず、僕だけを殺してください。
それが、この世界のハッピーエンドなのだから。
カシルを幸せにするための道筋なのだから。
「っ、ハルトライアっ、私がお前を手にかけるわけないだろう!」
さっきよりもっと顔を赤くして叫ぶ殿下。
「あははははっ、天使は最強だなっ!」
腹を抱えて笑うガロディア辺境伯。
「天使が天使で天使じゃないけどやっぱり天使だっ」
意味の分からないことをつぶやくコンラート。
三人三様を気にもかけず僕は大好きな老騎士に微笑んだ。
「帰ろう、カシル」
「っ……はいっ、ハルトライア様」
笑顔いっぱいの僕に対してどこか泣きそうでしかめっ面な顔をしたカシルだったが、タイリートは僕が戻ってきて機嫌をなおし、カッポカッポと軽快に屋敷へ歩みを進め始めた。
109
お気に入りに追加
758
あなたにおすすめの小説

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

悪役令嬢のモブ兄に転生したら、攻略対象から溺愛されてしまいました
藍沢真啓/庚あき
BL
俺──ルシアン・イベリスは学園の卒業パーティで起こった、妹ルシアが我が国の王子で婚約者で友人でもあるジュリアンから断罪される光景を見て思い出す。
(あ、これ乙女ゲームの悪役令嬢断罪シーンだ)と。
ちなみに、普通だったら攻略対象の立ち位置にあるべき筈なのに、予算の関係かモブ兄の俺。
しかし、うちの可愛い妹は、ゲームとは別の展開をして、会場から立ち去るのを追いかけようとしたら、攻略対象の一人で親友のリュカ・チューベローズに引き止められ、そして……。
気づけば、親友にでろっでろに溺愛されてしまったモブ兄の運命は──
異世界転生ラブラブコメディです。
ご都合主義な展開が多いので、苦手な方はお気を付けください。
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る
黒木 鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。完結しました!
【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる