40 / 83
8章 我慢はみんな大変です
4.
しおりを挟む
「カルシード公爵夫人、少々刺激が強すぎます。ハルトライア様の体調に支障が出ますので、そういった内容はお話にならないでください」
目をえぐったと知った僕の血の気が引いたことに気付いたカシルが、彼女のグロ発言に待ったをかけてくれた。
しかし先生が魔力を見える理由が知れて良かった。僕も魔力量が増えれば見えるはず。他人の魔力が見えれば身を守れる可能性も上がりそう。生きるために頑張ろう。
「あ、ごめんごめん。ま、そういうわけだから、私は浄化魔法の発現にも興味があってねぇ。私の目で見る浄化魔法は瘴気を消滅させているというより、浄化に使用した属性の魔力に変質させて霧散させているように見えるんだよ。瘴気が消える一瞬だけ黒からその浄化の属性色に変わるんだ。つまり私の考える浄化魔法の機構とは瘴気をある属性魔力に変換するということだ。だから、君が瘴気から紫玉を作った、ということでこれが浄化魔法だという判断をしたわけだ」
なるほど、そういうことか。と理解はした。それでもやはり疑問が残る。
「でも、魔物化した人や動物が放つ魔法が紫色なのですから、やはり闇属性は魔物の魔力で合っているのでは?」
「そこなんだよ! 何か理由があるんだよっ。魔物が使う魔法が全部闇属性になっちゃう理由がね。でもそれが分かれば君が闇属性であることの原因もわかるだろうし! だからこの紫玉ちょうだい!!」
カシルの手にある紫玉を指さし叫ぶ先生。結局そこに戻るのか。
「わかりました。そちらは差し上げます」
「ありがとう!! それから今度ぜひ紫玉作るところ見せてほしい! 魔力を固められるなんて本当にすごすぎるよ! やり方私も知りたい! 固めたい!!」
そしてカシルから素早く奪い取った。興味の奴隷だな、この人は。
とりあえず今回は紫玉を渡すことのみで我慢してもらおう。紫玉生成の過程を見せるのは今は無理。僕が一人でタイリートに乗れるまでは。
「紫玉を作るためには瘴気のあるところまで行かねばなりませんので、すぐはできかねます。あと1ヶ月、いや2週間ほど待ってもらえませんか?」
2週間あれば、きっとギリ乗れる。期限切らないと人は頑張れないからね。
「ほんと!? 嬉しい!! じゃぁ再来週は予定空けとく! 殿下の授業もお休みしちゃお~」
「それはなりませんファリア先生。殿下は僕に先生を紹介してくださった大切な方です。殿下のことは何より最優先でお願いします」
そこは正した。流石に失礼すぎる。
「うううううう、そんなぁ~。歴史講義するより楽しいのに~」
泣き言をいうファリア先生にカシルがまたもお説教をした。
「カルシード公爵夫人、どうかご自身の立場をお考えになり、ハルトライア様が諭さなくても正しい行動をなさいますよう、よろしくお願いいたします」
どっちの執事かわかったもんじゃないな。
「あううう、うん……はぁい。私は興味が出ると止まらなくて、昔もルゥに怒られてばかりだったけど、今はトラ君にも怒られちゃって、ダメな教師だよ。ごめん、トラ君」
「いいえ、先生の魔法の研究や情熱は尊敬に値します。そして僕もカシルも絶対的に先生を信頼してます。ダメな教師じゃないです。だからこれからもたくさん教えてください」
先生は魔法探究という欲望に弱いダメなところもあるけれど、裏表なく僕に接してくれる素晴らしい方だから。
「ありがとう。うんっ。トラ君は優しいなぁ。それに本当に賢いし魔力もすごいしっ。もう貴族学園なんて行かずに魔法研究所に所属しちゃわない? トラ君さえ良ければ私の推薦で一発採用だよ!」
突然の申し出に僕はしばし硬直してしまった。
魔法研究所? そんなこと考えてもいなかった。でも貴族学園に通わなくてよければ零に会うこともきっとない。
僕が悪役令息と言われるのは編入生の零をあの手この手でいじめるからだ。嫉妬にかられて教本を破ったり筆箱を捨てたり杖を隠したり。
ゼロエンでも僕は嫌われ者だったが、唯一の王子の婚約者だからえせ取り巻きが何人かいた。彼らに零を階段から突き落とせとかも頼んでいたな。他にも零にいたずらする準備を使用人に頼んでいたような描写があったと思う。ってカシルとユアにそんなことさせてたのか! 絶対だめだ! 学園には通いたくない!
「えっと。ものすごくうれしい申し出なのですが、少々考えさせてもらいたいです。まず魔法研究所がどんなところかも知りませんので。ですが僕はこんな体ですから貴族学園に通えるとは思っていません。というか通いたいとも思っていないです。なので前向きに検討したいです」
「魔法研究所はねぇ、トップの所長は国王様だよ。で私が副所長。所長は万年不在で端的に言うと財布だね。国庫から研究費が出ているから。政治と絡む俗物的な人はいないよ。みんな魔法以外に興味ないからねえ。君が来たら連日研究パーティーになるね。8徹くらいは覚悟しなきゃね」
副所長!? てか実質トップ! この人めちゃくちゃ偉い人じゃん! そして魔法オタクの巣窟らしい現状を8徹で察した僕は少々うろたえた。
「カルシード公爵夫人。夜はきちんとお眠りください。そしてハルトライア様を体調不良にさせるような発言、そのような環境の研究所にハルトライア様をお預けすることはできません」
「わかってるよ。とにかく魔法研究所はトラ君を研究所上げて歓迎するってこと! 考えといてね! じゃあ、私は帰るよ、もう時間もないし見送らなくていいよ! それからユア君! 君はその体内魔力の調節をトラ君に教えといてよ。彼の体力を補えるから便利だし。使用時間はトラ君の場合一日30分以内にしたら筋力に負担ないからそれでお願いね! トラ君次回までの宿題それね! じゃ!」
目をえぐったと知った僕の血の気が引いたことに気付いたカシルが、彼女のグロ発言に待ったをかけてくれた。
しかし先生が魔力を見える理由が知れて良かった。僕も魔力量が増えれば見えるはず。他人の魔力が見えれば身を守れる可能性も上がりそう。生きるために頑張ろう。
「あ、ごめんごめん。ま、そういうわけだから、私は浄化魔法の発現にも興味があってねぇ。私の目で見る浄化魔法は瘴気を消滅させているというより、浄化に使用した属性の魔力に変質させて霧散させているように見えるんだよ。瘴気が消える一瞬だけ黒からその浄化の属性色に変わるんだ。つまり私の考える浄化魔法の機構とは瘴気をある属性魔力に変換するということだ。だから、君が瘴気から紫玉を作った、ということでこれが浄化魔法だという判断をしたわけだ」
なるほど、そういうことか。と理解はした。それでもやはり疑問が残る。
「でも、魔物化した人や動物が放つ魔法が紫色なのですから、やはり闇属性は魔物の魔力で合っているのでは?」
「そこなんだよ! 何か理由があるんだよっ。魔物が使う魔法が全部闇属性になっちゃう理由がね。でもそれが分かれば君が闇属性であることの原因もわかるだろうし! だからこの紫玉ちょうだい!!」
カシルの手にある紫玉を指さし叫ぶ先生。結局そこに戻るのか。
「わかりました。そちらは差し上げます」
「ありがとう!! それから今度ぜひ紫玉作るところ見せてほしい! 魔力を固められるなんて本当にすごすぎるよ! やり方私も知りたい! 固めたい!!」
そしてカシルから素早く奪い取った。興味の奴隷だな、この人は。
とりあえず今回は紫玉を渡すことのみで我慢してもらおう。紫玉生成の過程を見せるのは今は無理。僕が一人でタイリートに乗れるまでは。
「紫玉を作るためには瘴気のあるところまで行かねばなりませんので、すぐはできかねます。あと1ヶ月、いや2週間ほど待ってもらえませんか?」
2週間あれば、きっとギリ乗れる。期限切らないと人は頑張れないからね。
「ほんと!? 嬉しい!! じゃぁ再来週は予定空けとく! 殿下の授業もお休みしちゃお~」
「それはなりませんファリア先生。殿下は僕に先生を紹介してくださった大切な方です。殿下のことは何より最優先でお願いします」
そこは正した。流石に失礼すぎる。
「うううううう、そんなぁ~。歴史講義するより楽しいのに~」
泣き言をいうファリア先生にカシルがまたもお説教をした。
「カルシード公爵夫人、どうかご自身の立場をお考えになり、ハルトライア様が諭さなくても正しい行動をなさいますよう、よろしくお願いいたします」
どっちの執事かわかったもんじゃないな。
「あううう、うん……はぁい。私は興味が出ると止まらなくて、昔もルゥに怒られてばかりだったけど、今はトラ君にも怒られちゃって、ダメな教師だよ。ごめん、トラ君」
「いいえ、先生の魔法の研究や情熱は尊敬に値します。そして僕もカシルも絶対的に先生を信頼してます。ダメな教師じゃないです。だからこれからもたくさん教えてください」
先生は魔法探究という欲望に弱いダメなところもあるけれど、裏表なく僕に接してくれる素晴らしい方だから。
「ありがとう。うんっ。トラ君は優しいなぁ。それに本当に賢いし魔力もすごいしっ。もう貴族学園なんて行かずに魔法研究所に所属しちゃわない? トラ君さえ良ければ私の推薦で一発採用だよ!」
突然の申し出に僕はしばし硬直してしまった。
魔法研究所? そんなこと考えてもいなかった。でも貴族学園に通わなくてよければ零に会うこともきっとない。
僕が悪役令息と言われるのは編入生の零をあの手この手でいじめるからだ。嫉妬にかられて教本を破ったり筆箱を捨てたり杖を隠したり。
ゼロエンでも僕は嫌われ者だったが、唯一の王子の婚約者だからえせ取り巻きが何人かいた。彼らに零を階段から突き落とせとかも頼んでいたな。他にも零にいたずらする準備を使用人に頼んでいたような描写があったと思う。ってカシルとユアにそんなことさせてたのか! 絶対だめだ! 学園には通いたくない!
「えっと。ものすごくうれしい申し出なのですが、少々考えさせてもらいたいです。まず魔法研究所がどんなところかも知りませんので。ですが僕はこんな体ですから貴族学園に通えるとは思っていません。というか通いたいとも思っていないです。なので前向きに検討したいです」
「魔法研究所はねぇ、トップの所長は国王様だよ。で私が副所長。所長は万年不在で端的に言うと財布だね。国庫から研究費が出ているから。政治と絡む俗物的な人はいないよ。みんな魔法以外に興味ないからねえ。君が来たら連日研究パーティーになるね。8徹くらいは覚悟しなきゃね」
副所長!? てか実質トップ! この人めちゃくちゃ偉い人じゃん! そして魔法オタクの巣窟らしい現状を8徹で察した僕は少々うろたえた。
「カルシード公爵夫人。夜はきちんとお眠りください。そしてハルトライア様を体調不良にさせるような発言、そのような環境の研究所にハルトライア様をお預けすることはできません」
「わかってるよ。とにかく魔法研究所はトラ君を研究所上げて歓迎するってこと! 考えといてね! じゃあ、私は帰るよ、もう時間もないし見送らなくていいよ! それからユア君! 君はその体内魔力の調節をトラ君に教えといてよ。彼の体力を補えるから便利だし。使用時間はトラ君の場合一日30分以内にしたら筋力に負担ないからそれでお願いね! トラ君次回までの宿題それね! じゃ!」
114
お気に入りに追加
762
あなたにおすすめの小説

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中

悪役令嬢のモブ兄に転生したら、攻略対象から溺愛されてしまいました
藍沢真啓/庚あき
BL
俺──ルシアン・イベリスは学園の卒業パーティで起こった、妹ルシアが我が国の王子で婚約者で友人でもあるジュリアンから断罪される光景を見て思い出す。
(あ、これ乙女ゲームの悪役令嬢断罪シーンだ)と。
ちなみに、普通だったら攻略対象の立ち位置にあるべき筈なのに、予算の関係かモブ兄の俺。
しかし、うちの可愛い妹は、ゲームとは別の展開をして、会場から立ち去るのを追いかけようとしたら、攻略対象の一人で親友のリュカ・チューベローズに引き止められ、そして……。
気づけば、親友にでろっでろに溺愛されてしまったモブ兄の運命は──
異世界転生ラブラブコメディです。
ご都合主義な展開が多いので、苦手な方はお気を付けください。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね
ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」
オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。
しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。
その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。
「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」
卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。
見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……?
追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様
悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?
麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる