4 / 4
カメを拾った(4)
しおりを挟む
「はぁ? なんや仲良さげにしてたやん、さっきてなんやねんな」
カメが不貞腐れた声を出してヒゲを揺らしてバシャと波が立つ。
「出会ったばかりだという意味だ」
「言い直さんでもわかるわ!」
またヒゲがゆれてさらに湖面が波立った。
こっちまで水滴が飛んでくる。やめてくれ。
「だから虎斑を離せ。お前の戯言を聞いている間に虎斑が凍え死ぬ」
「はぁ、しゃぁないなぁ。ほなとりあえずあんさんが逃げへんって約束してくれんねやったら、放すわ。人間はほんま弱いのぉ」
「わかった」
にやぁと横一文字の口をさらに開けて笑ったナマズ。するとぬうぅるりと体から黒い尻尾が離れる。ずるずる水のなかに潜っていったそれはすぐに見えなくなり、
「ほなまた明日なぁ、ここで会おうや。待ってんでぇ」
と声を残して巨大なナマズの頭もパシャンと沈んでいった。
「……な、なんだったんだ、……夢?」
巻き付いていた魚の支えを無くしてその場にヘタヘタと座り込んだ虎斑は、静かになった琵琶湖をみつめ、呆然と呟いた。
しかし「悪かったな」という声でそれが夢でないことを実感する。
カメが本当にしゃべっている。少し前に手のひらに乗せた小さな黒いカメ。目がくりっくりですごい可愛いと思っていたのに、口調は全く可愛くなかった。
「っな……っなんなの? ほんとなんなのっ!」
カメに向かって叫ぶ高校2年生。傍から見れば変質者は虎斑の方だ。だがおかしいのはどう考えてもこのカメである。いや、これはカメではない、妖怪やあやかしという類のものだ。
カメならぬ何かはちょこちょことこちらに歩き、虎斑のびしょ濡れのナイ◯スニーカーに足を乗せた。
「本当に悪かった。まずは風邪をひくといけないから、乾かそう」
そういうや否や、虎斑の体を覆っていた水分がずずずずずずずっと下に動き出した。そしてカメの乗ったスニーカーから流れ落ちて琵琶湖へと吸い込まれていく。
「ひいいいいぃぃぃっ!」
体から勢いよく流れ落ちる水が気持ち悪くて口から悲鳴が出た。だが数秒でそれは終わり、すっかり髪の毛も服もカラカラに乾いていた。
「なっ、っ、なんなんだ!?」
キャパオーバーになった虎斑の口からまともな言葉が出るわけはなかった。はぁはぁと荒い息を繰り返してしまう。
そうして虎斑は服が汚れるがわかっていたがゴロンと湖岸に寝ころぶ。
腰も抜けて全身に力が入らなかったのだ。
「はぁ、ちょっと静かにして。心落ち着かせるから」
冬の筋雲の多い空を見上げた。なぜかもう太陽は西に傾いている。琵琶湖大橋を渡っていたのはまだ正午前だったはず。
【怪異】は時間すらも捻じ曲げているのか?
「はぁああ」と深く溜息を吐いて思考を整理する。身の危険を回避するには落ち着くのが一番だからだ。
このカメ妖怪は午前中会ったカメで間違いない。
そして人を殺すというような害意は感じられない。
さっきの青いワンピースの女性の方が万倍怖かったし、殺されかけた。
それに今のナマズとのやり取りも、カメとナマズの姿でなければただの友達のじゃれ合いだ。
間に挟まれた自分は若干死にかけた気がするが。
もしかして、滋賀県は妖怪が普通に歩いているのか?
これまで虎斑は海外も含めて10か所ほど住んだことがあるが妖怪などに会ったことはなかった。
なんなんだ、滋賀県は。
コホン、とわざと咳をして、虎斑は首だけカメに向けた。
「なぁカメさん」
「なんだ?」
首をかしげてこちらを見る黒いカメ。大きな目がクリクリでとてもかわいい。
いや、かわいいなんて思っている場合ではない。
「滋賀はお前らみたいな妖怪がどこにでも普通にいるのか?」
「それは妙な質問だな。我らはどこにでもいるぞ」
「そんなのココだけだろ?」
「違うな。これまで見えなかっただけだ虎斑。お前は今日我らが見えるようになったのだ」
それはつまり、コイツだけじゃなくあのワンピースの女性とか漁師とか女学生とか、ってことだよな?
あれはコスプレなんかじゃなかったってことだ。
「なんで?」
「……我に触れたせいだろうな」
「は?」
カメに触ったら? つまり妖怪に触ってしまったから見えるようになった?
じゃあ
「なんでお前が見えたんだよ俺は!」
がばっと上半身を起こしギッとカメを見下ろした。
「我が実体化していたからだ」
「はあああ?」
ちょっと待て! これから俺はずっとこんな変なものを見て過ごすってわけ?
嫌なんだけどっ!
「人間だって怖いのに怖いものがさらに増えたじゃないか!」
どうしてくれんだっ!
頭を抱えた虎斑は眉間にしわを刻んでまたカメをニラむ。
「……我のような【もの】はそこに『在る』だけだ。何もしない。害もない。だから怖がる必要はない。だが怖いものを増やしてしまい申し訳ない」
カメがこうべを垂れた。と言っても小さなカメ。数センチのお辞儀だ。
それでも虎斑の怒りは少し落ち着いた。しかし疑問は尽きない。
「あのナマズ、俺に巻き付いてたけどあれでも害無いっていうのかよ」
「あやつはじゃれているだけだ。あれも我と同じでただ『在る』だけの存在だ」
「ちょっと待て、その言い方だと、あんたとナマズと違う存在もいるって意味じゃねぇの?」
「だから謝っている。すまない。害をなす【もの】もいる。そういうものやそれらが引き起こす怪異を人間は『鬼』や『呪い』と呼ぶのだろう」
要するにあのワンピースの、と思い出した途端に足元の橋がなくなって下に落ちていく感覚がよみがえり、ぶるり体が震えた。
「……俺に死ねっての?」
「そういうものに遭遇することは、あまりない。大抵の場合は生きている人間が人間を殺しているだけだ」
「っそんなの言われなくても知ってるよ!」
脳裏にフラッシュバックしたのは6歳の時の誘拐事件。海外赴任に母子もついていった先、虎斑は母親と共に誘拐された。
目の前で乗っていた車の運転手が銃で殺され、自分は連れ去られた。仕掛けたのは使用人の家族。同い年の男の子と二つ上の兄と祖母がいる5人家族。皆笑顔が素敵でとても優しかった。彼らとは家族ぐるみで仲良くなった。なのに運転手を殺した後は母の足を撃ち抜き殴って気絶させ、自分をさらって監禁した。金銭目的の誘拐だ。要求されたのは日本円で約8000万。結果自分は助かりその使用人家族は自分の目の前で子供もろとも全員現地の警察に撃ち殺された。
「、っ、うぐっ!」
吐き気をもよおして口元を必死に抑えた虎斑は涙目になりながらまたカメを刺すように睨んだ。
「じゃあっ、……っお前がその鬼とか呪いから俺を守れよ。見えるようにした責任とれよ」
人間には近づかなければいい。一人でいれば害はほとんどない。だがさっきみたいに向こうからやってくる【怪異】は無理だ。あんなものに対抗なんて生きている自分ができるわけがない。
なら怪異には怪異だ。このカメがどれだけ役立つかわからないが、あの巨大ナマズとも対等に話していたし濡れた体も簡単に乾かした。無いより絶対ましだ。
じっとカメを見つめていると、モソと身じろぎしたカメがこくんと頷いた。
「わかった。ただ一つ頼みがある。我は人間のようには動けない。だがおぬしの傍を離れるわけにはいかぬ。だから虎斑、おぬしの手で我を運んでくれ」
こんな小さなカメを運ぶくらいなら問題はない。カップうどん〇んべえの空容器一つあれば入るサイズのカメだ。
「それくらいなら」
しかめていた眉間を緩めた虎斑だったが、そこを少し緩めてカメに手のひらを差し出した。
黒いちいさな可愛いカメが、よいよいと動いてそこに乗ってくる。
4本の足全部が手の上に乗ったことを確認した虎斑は、そっとカメを顔に近づけた。
「お前、ちゃんと俺を守れよ」
虎斑の色素の薄い大きな瞳を見上げたカメは「おぬしの隣にいる限りそうしよう」とまんまるな黒い瞳で虎斑を見つめ返した。
カメが不貞腐れた声を出してヒゲを揺らしてバシャと波が立つ。
「出会ったばかりだという意味だ」
「言い直さんでもわかるわ!」
またヒゲがゆれてさらに湖面が波立った。
こっちまで水滴が飛んでくる。やめてくれ。
「だから虎斑を離せ。お前の戯言を聞いている間に虎斑が凍え死ぬ」
「はぁ、しゃぁないなぁ。ほなとりあえずあんさんが逃げへんって約束してくれんねやったら、放すわ。人間はほんま弱いのぉ」
「わかった」
にやぁと横一文字の口をさらに開けて笑ったナマズ。するとぬうぅるりと体から黒い尻尾が離れる。ずるずる水のなかに潜っていったそれはすぐに見えなくなり、
「ほなまた明日なぁ、ここで会おうや。待ってんでぇ」
と声を残して巨大なナマズの頭もパシャンと沈んでいった。
「……な、なんだったんだ、……夢?」
巻き付いていた魚の支えを無くしてその場にヘタヘタと座り込んだ虎斑は、静かになった琵琶湖をみつめ、呆然と呟いた。
しかし「悪かったな」という声でそれが夢でないことを実感する。
カメが本当にしゃべっている。少し前に手のひらに乗せた小さな黒いカメ。目がくりっくりですごい可愛いと思っていたのに、口調は全く可愛くなかった。
「っな……っなんなの? ほんとなんなのっ!」
カメに向かって叫ぶ高校2年生。傍から見れば変質者は虎斑の方だ。だがおかしいのはどう考えてもこのカメである。いや、これはカメではない、妖怪やあやかしという類のものだ。
カメならぬ何かはちょこちょことこちらに歩き、虎斑のびしょ濡れのナイ◯スニーカーに足を乗せた。
「本当に悪かった。まずは風邪をひくといけないから、乾かそう」
そういうや否や、虎斑の体を覆っていた水分がずずずずずずずっと下に動き出した。そしてカメの乗ったスニーカーから流れ落ちて琵琶湖へと吸い込まれていく。
「ひいいいいぃぃぃっ!」
体から勢いよく流れ落ちる水が気持ち悪くて口から悲鳴が出た。だが数秒でそれは終わり、すっかり髪の毛も服もカラカラに乾いていた。
「なっ、っ、なんなんだ!?」
キャパオーバーになった虎斑の口からまともな言葉が出るわけはなかった。はぁはぁと荒い息を繰り返してしまう。
そうして虎斑は服が汚れるがわかっていたがゴロンと湖岸に寝ころぶ。
腰も抜けて全身に力が入らなかったのだ。
「はぁ、ちょっと静かにして。心落ち着かせるから」
冬の筋雲の多い空を見上げた。なぜかもう太陽は西に傾いている。琵琶湖大橋を渡っていたのはまだ正午前だったはず。
【怪異】は時間すらも捻じ曲げているのか?
「はぁああ」と深く溜息を吐いて思考を整理する。身の危険を回避するには落ち着くのが一番だからだ。
このカメ妖怪は午前中会ったカメで間違いない。
そして人を殺すというような害意は感じられない。
さっきの青いワンピースの女性の方が万倍怖かったし、殺されかけた。
それに今のナマズとのやり取りも、カメとナマズの姿でなければただの友達のじゃれ合いだ。
間に挟まれた自分は若干死にかけた気がするが。
もしかして、滋賀県は妖怪が普通に歩いているのか?
これまで虎斑は海外も含めて10か所ほど住んだことがあるが妖怪などに会ったことはなかった。
なんなんだ、滋賀県は。
コホン、とわざと咳をして、虎斑は首だけカメに向けた。
「なぁカメさん」
「なんだ?」
首をかしげてこちらを見る黒いカメ。大きな目がクリクリでとてもかわいい。
いや、かわいいなんて思っている場合ではない。
「滋賀はお前らみたいな妖怪がどこにでも普通にいるのか?」
「それは妙な質問だな。我らはどこにでもいるぞ」
「そんなのココだけだろ?」
「違うな。これまで見えなかっただけだ虎斑。お前は今日我らが見えるようになったのだ」
それはつまり、コイツだけじゃなくあのワンピースの女性とか漁師とか女学生とか、ってことだよな?
あれはコスプレなんかじゃなかったってことだ。
「なんで?」
「……我に触れたせいだろうな」
「は?」
カメに触ったら? つまり妖怪に触ってしまったから見えるようになった?
じゃあ
「なんでお前が見えたんだよ俺は!」
がばっと上半身を起こしギッとカメを見下ろした。
「我が実体化していたからだ」
「はあああ?」
ちょっと待て! これから俺はずっとこんな変なものを見て過ごすってわけ?
嫌なんだけどっ!
「人間だって怖いのに怖いものがさらに増えたじゃないか!」
どうしてくれんだっ!
頭を抱えた虎斑は眉間にしわを刻んでまたカメをニラむ。
「……我のような【もの】はそこに『在る』だけだ。何もしない。害もない。だから怖がる必要はない。だが怖いものを増やしてしまい申し訳ない」
カメがこうべを垂れた。と言っても小さなカメ。数センチのお辞儀だ。
それでも虎斑の怒りは少し落ち着いた。しかし疑問は尽きない。
「あのナマズ、俺に巻き付いてたけどあれでも害無いっていうのかよ」
「あやつはじゃれているだけだ。あれも我と同じでただ『在る』だけの存在だ」
「ちょっと待て、その言い方だと、あんたとナマズと違う存在もいるって意味じゃねぇの?」
「だから謝っている。すまない。害をなす【もの】もいる。そういうものやそれらが引き起こす怪異を人間は『鬼』や『呪い』と呼ぶのだろう」
要するにあのワンピースの、と思い出した途端に足元の橋がなくなって下に落ちていく感覚がよみがえり、ぶるり体が震えた。
「……俺に死ねっての?」
「そういうものに遭遇することは、あまりない。大抵の場合は生きている人間が人間を殺しているだけだ」
「っそんなの言われなくても知ってるよ!」
脳裏にフラッシュバックしたのは6歳の時の誘拐事件。海外赴任に母子もついていった先、虎斑は母親と共に誘拐された。
目の前で乗っていた車の運転手が銃で殺され、自分は連れ去られた。仕掛けたのは使用人の家族。同い年の男の子と二つ上の兄と祖母がいる5人家族。皆笑顔が素敵でとても優しかった。彼らとは家族ぐるみで仲良くなった。なのに運転手を殺した後は母の足を撃ち抜き殴って気絶させ、自分をさらって監禁した。金銭目的の誘拐だ。要求されたのは日本円で約8000万。結果自分は助かりその使用人家族は自分の目の前で子供もろとも全員現地の警察に撃ち殺された。
「、っ、うぐっ!」
吐き気をもよおして口元を必死に抑えた虎斑は涙目になりながらまたカメを刺すように睨んだ。
「じゃあっ、……っお前がその鬼とか呪いから俺を守れよ。見えるようにした責任とれよ」
人間には近づかなければいい。一人でいれば害はほとんどない。だがさっきみたいに向こうからやってくる【怪異】は無理だ。あんなものに対抗なんて生きている自分ができるわけがない。
なら怪異には怪異だ。このカメがどれだけ役立つかわからないが、あの巨大ナマズとも対等に話していたし濡れた体も簡単に乾かした。無いより絶対ましだ。
じっとカメを見つめていると、モソと身じろぎしたカメがこくんと頷いた。
「わかった。ただ一つ頼みがある。我は人間のようには動けない。だがおぬしの傍を離れるわけにはいかぬ。だから虎斑、おぬしの手で我を運んでくれ」
こんな小さなカメを運ぶくらいなら問題はない。カップうどん〇んべえの空容器一つあれば入るサイズのカメだ。
「それくらいなら」
しかめていた眉間を緩めた虎斑だったが、そこを少し緩めてカメに手のひらを差し出した。
黒いちいさな可愛いカメが、よいよいと動いてそこに乗ってくる。
4本の足全部が手の上に乗ったことを確認した虎斑は、そっとカメを顔に近づけた。
「お前、ちゃんと俺を守れよ」
虎斑の色素の薄い大きな瞳を見上げたカメは「おぬしの隣にいる限りそうしよう」とまんまるな黒い瞳で虎斑を見つめ返した。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
人生の全てを捨てた王太子妃
八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。
傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。
だけど本当は・・・
受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。
※※※幸せな話とは言い難いです※※※
タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。
※本編六話+番外編六話の全十二話。
※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
花好きカムイがもたらす『しあわせ』~サフォークの丘 スミレ・ガーデンの片隅で~
市來茉莉(茉莉恵)
キャラ文芸
【私にしか見えない彼は、アイヌの置き土産。急に店が繁盛していく】
父が経営している北国ガーデンカフェ。ガーデナーの舞は庭の手入れを担当しているが、いまにも閉店しそうな毎日……
ある日、黒髪が虹色に光るミステリアスな男性が森から現れる。なのに彼が見えるのは舞だけのよう? でも彼が遊びに来るたびに、不思議と店が繁盛していく
繁盛すればトラブルもつきもの。 庭で不思議なことが巻き起こる
この人は幽霊? 森の精霊? それとも……?
徐々にアイヌとカムイの真相へと近づいていきます
★第四回キャラ文芸大賞 奨励賞 いただきました★
※舞の仕事はガーデナー、札幌の公園『花のコタン』の園芸職人。
自立した人生を目指す日々。
ある日、父が突然、ガーデンカフェを経営すると言い出した。
男手ひとつで育ててくれた父を放っておけない舞は仕事を辞め、都市札幌から羊ばかりの士別市へ。父の店にあるメドウガーデンの手入れをすることになる。
※アイヌの叙事詩 神様の物語を伝えるカムイ・ユーカラの内容については、専門の書籍を参照にしている部分もあります。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
母の中で私の価値はゼロのまま、家の恥にしかならないと養子に出され、それを鵜呑みにした父に縁を切られたおかげで幸せになれました
珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたケイトリン・オールドリッチ。跡継ぎの兄と母に似ている妹。その2人が何をしても母は怒ることをしなかった。
なのに母に似ていないという理由で、ケイトリンは理不尽な目にあい続けていた。そんな日々に嫌気がさしたケイトリンは、兄妹を超えるために頑張るようになっていくのだが……。
炎華繚乱 ~偽妃は後宮に咲く~
悠井すみれ
キャラ文芸
昊耀国は、天より賜った《力》を持つ者たちが統べる国。後宮である天遊林では名家から選りすぐった姫たちが競い合い、皇子に選ばれるのを待っている。
強い《遠見》の力を持つ朱華は、とある家の姫の身代わりとして天遊林に入る。そしてめでたく第四皇子・炎俊の妃に選ばれるが、皇子は彼女が偽物だと見抜いていた。しかし炎俊は咎めることなく、自身の秘密を打ち明けてきた。「皇子」を名乗って帝位を狙う「彼」は、実は「女」なのだと。
お互いに秘密を握り合う仮初の「夫婦」は、次第に信頼を深めながら陰謀渦巻く後宮を生き抜いていく。
表紙は同人誌表紙メーカーで作成しました。
第6回キャラ文芸大賞応募作品です。
追想曼殊沙華秘抄-遥けき花の庭に結ぶ―
響 蒼華
キャラ文芸
国政に影から関与してきた女系の異能者一族である玖珂家の跡取り娘の迩千花は、直系唯一の女子でありながら日々親や一族、使用人からすら蔑まれ虐げられてきた。
理由は、迩千花が三年前の祭祀に失敗し、異能を失ったから。
そればかりではなく、それ以来祭っていた祭神もまた沈黙してしまっていた。
迩千花に次いで強い異能を有していた従妹の真結を旗頭とする分家・見瀬家の台頭を許した事もあり、迩千花は忌わしい役立たずとして扱われてきた。
大事に思うものは従妹により奪われ、愛してもどうせ失うからつらいだけ、全てを諦め生きていた迩千花は、ある日両親から非道な命令を下される。
それを拒否して逃げ出した先、何時も唯一の友と語らっていた彼岸花の庭にて嘆きの叫びをあげた時。
祠に封じられていた大きな力を持つ存在が嘆きに呼応して封印の眠りから目覚めた。
それは、かつて祭神に倒されたという呪われた祟り神だった――。
※時代設定的に、現代では女性蔑視や差別など不適切とされる表現等がありますが、差別や偏見を肯定する意図はありません。
イラスト:Suico 様
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる