ことりの台所

如月つばさ

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エピローグ

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私の手は、悪魔の手だった。
 
だけどその手は、今こうして幸せに満ちた手になることができた。
 
新しい命の温もりを胸に抱き、私は過去の私に心で語り掛ける。
 
あなたの子は、世界で一番幸せな子になったのよ。
 
遠い昔に感じた小さなもみじの手のひらが、いま、私の指を握ってくれる。

「お母さん、泣きすぎでしょ」
 
娘に笑われて、それでも私は泣きながら、人生で一番の幸せな笑顔を浮かべた。

「優しいお祖母ちゃんで幸せだよなぁ」
 
その言葉に私は心の底から言った。

「娘と一緒になってくれてありがとう」
 
そう言うと彼は少し照れくさそうに笑うのだ。
 
ことりは僕にとって幸せの青い鳥だと。
 
そのお母さんには、感謝してもしきれないのだと。
 
あの店の看板は、本当にぴったりだと思う。
 
【ことりの台所】
 
そこは二人が営む、幸せの笑顔溢れるみんなの居場所だ。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

翠山都
2024.05.21 翠山都

 全体として自分の居場所を見つける話であり、人同士の関係性の再生を描いた物語であったと思います。
 一つ一つの描写が細やかで、一つ一つのエピソードを定型化せずに色々な人、考え、背景があることをしっかり書かれているのが印象的でした。
 特に父親との決着をあえてグレーゾーンにしつつ、関係する人々それぞれの中において取り戻せないものがあり、それにいかに落としどころをつけるか、もしくはつけられないけれどもいかに進んでゆくかを丁寧に書かれていたのが、物語全体を通した、厳しさと静謐さを内包したやさしさという読書感を生み出していたように思います。
 後半一つ一つのエピソードがややSS化してエピソード間の紐帯が緩んでいる感はありましたが、統一された読書感で読ませていただけたのが心地よかったです。
 読ませていただきまして、ありがとうございました。

如月つばさ
2024.05.22 如月つばさ

翠山都さん
とても丁寧な感想、ありがとうございます✨
父親との展開は読む側からするとどうなのだろう、と悩んだ部分でもありました。
綺麗に解決してハッピーエンドと持っていくかも考えましたが、でも現実はそう上手くいかないことが多いんじゃないか。
自分が同じような事に悩んでいるとしたら、綺麗に事が進む物語を見て、果たして「良かった」と思えるだろうかと。
思うように行かない、解決しないまま終わってしまう。それでも進んでいくしか無い。
そんな現実のほうが多くて、それでも前に進む姿にこそ感じるものもあるんじゃないかと思い、この展開となりました。
主人公たちが自分の居場所を見つけ、読者さんにとっても居場所となる作品にしたいと執筆をしてきました。
温かいお言葉の数々に、とても感動し、励みになりました。
本当にありがとうございました🍀

解除

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