ことりの台所

如月つばさ

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第十八話 夏の終わりの空に~前編~

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浩二君が病気だなんて。
 
隼人から話を聞かされてから、何をしていてもふとした瞬間に浩二君の事が頭を過って、言いようのない不安に襲われてしまう。
 
これまで私たちに隠してきたのだ。それほど知られたくない話だったのだろう。大丈夫なのだろうか。

今日は朝から病院で検査をして、時間があればうちに寄って来れるという話だ。

何度時計を見たって時間は早く進むわけではないのに、それでも無意識に時計を視界の端に入れながら作業してしまう私は、本当に心が弱い。

浩二君は優しい。

中学の頃から私の事を知っていても尚、笑顔で接してくれた。

父と違って、人を支配しようとしない。

隼人と同じく、浩二君もまた、男の人が父のような人ばかりではない事を教えてくれた人だ。

気もそぞろに包丁を手にしていたら、里芋のぬめりに手が滑りそうになった。

包丁の刃が指に僅かに触れて、ようやくはっとした。私が動揺している場合じゃない。しっかりしなきゃ。

下茹でを済ませた里芋をザルに上げ、空いた行平鍋に水、砂糖、醤油、みりん、と計量スプーンから注いでいく。

「おー、おかえり西郷さん。どうしたんだよ、昨日戻ってこないから家出でもしたのかと思っただろーってあれ?西郷さん、もしかして……」
 
里芋を入れて煮汁がぐつぐつと沸いたところに、切り分けたスルメイカを投入する。

西郷さんがどうしたのだろう。

居間の方が気になるが、今の最優先はお客さんに出す料理だ。

浮いて来たアクを丁寧にすくい、落し蓋をして火加減を調整してから台所を離れた。
 
居間では首にスカーフを着けた西郷さんがゆっくりとした足取りでやってくると「良いだろう」と自慢げに胸を張る。
 
【みんなのともだち、西郷です】
 
瑞々しい新緑色の布に白抜きで書かれたその文字の横には、可愛らしい猫の足型がひとつ、スタンプのようにデザインされていた。

「なにこれ」

自己紹介スカーフに思わず吹き出す私。

隼人は西郷さんを顔の高さまで抱き上げた。

でろんと垂れた尻尾と手足が隼人の動きに合わせてぷらぷらと揺れる。

「西郷さん、さっき知らない女の人と一緒に帰って来たよな」

「女の人?」
 
もちろん西郷さんは答えるわけもなく、あうん、と鼻をひくつかせた。

「見たこと無いお婆さん。店の看板を見て、こっちを見た時に目が合ってさ。挨拶したんだけど、会釈だけして帰っちまった」
 
誰だったんだろうなぁ。隼人が西郷さんの鼻先まで顔を近づけて訊ねると

ぶしゅん
 
盛大なくしゃみを顔面にお見舞した。

「西郷さん、ずっとその人と一緒にいたのかな」

「いや、それはどうだろう」

隼人が西郷さんを抱き上げてスカーフを捲って見せた。

布の端に、小さな三日月の絵が刺繍が施されている。

少し歪で、だけどとても丁寧な糸の流れだ。

「月子さんの所に行ってたみたいだ」

そうだろ?と西郷さんの顔を覗き込むと、にんまりと目を細めた。

「そういえば、最近ここにも来ないね」

時々ふらっとやって来ては、ネギがあれば焼きネギを。無ければ日替わり定食を注文してくれる。

開店中のほとんどを台所にいる私は挨拶程度で済ませることもある。

だが、隼人と楽しそうに話し、のんびり食事を済ませて帰るのが彼女だ。

このところ、月子さんは来ていない。もう一週間以上は来ていないんじゃないだろうか。

「ずっとシャツ屋の明かりが点いてるって話なんだよな。チョーさんも差し入れついでに声はかけてるみたいだけど、大丈夫の一言だけで、差し入れだけ受け取って――」
 
隼人は左手で素早く窓を閉める仕草をしてみせる。

「反抗期かもしんねぇって、開店前の塩梅に来た岩城さんに酔っぱらって泣きながら絡んでたぜ」
 
彼女の父親に対する冷たさはいつも通りの気もするが、それでもチョーさんが泣きつくくらいだ。

私が思っているよりもずっとそっけなかったのだろうか。

気の毒に思いつつ、里芋の煮物の事を思い出して慌てて台所へと戻った。
 

浩二君が店に来たのは、客足が途絶えた午後二時過ぎだった。

黒縁の眼鏡が、以前よりも存在感を増して見えるのは、それだけ痩せた――やつれたという事実を突きつけられているようだ。

不安を悟られないよう、いつも通り「いらっしゃい」と出迎えると、浩二君はため息交じりに「こんにちは」と笑みを作った。

「あれ、ふたりもお昼食べて無かったの?もしかして待っててくれた?」
 
三人分の食事をテーブルに並べたのを見て、浩二君が驚く。

「今日は忙しかったんだよ。夏休みが終わったから観光客は少ないんだけど、島民のお客さんが結構来てくれてさ。戸波さんが職場の仲間を連れて来てくれたりで大盛況でさ」

「あかりちゃんが歌も歌ってくれたりね。アイドルみたいだったよね。みんなできゃーきゃー騒いで、チョーさんなんて酔っぱらいながらずっと可愛いなぁ、可愛いなぁって。最後には月子を思い出すなぁなんてね」
 
あの強面のチョーさんの終始とろけっぱなしの表情を思い出すだけで笑いそうになるのを堪え「いただきます」と手を合わせた。

照りのついた里芋は見ているだけで食欲をそそる。さっそくひとくちで頬張る。

とろりとした舌触りを堪能し、甘辛い味の余韻を残した口に白ご飯を放り込む。

この古民家の雰囲気、畳の香り、木造の木の匂い。

夏の湿気を含んだぬるい風も、それに伴う風鈴の音もまた、料理を美味しくさせる演出のように思う。
 
ふと顔を上げると、正面の浩二君の手が止まっていた。

どうしたの?と口を開こうとした私より先に「あのさ」と箸を置いた。

「月子ちゃんにふられたよ」

「え?ふられた?」

咄嗟に口をついてしまって「あ、いやごめんなさい」と頭を振る私に、浩二君は良いんだと苦笑した。

「理由は聞かせてもらえなかった。ただ、私はやらなきゃいけない事があるからって。それだけ言って、窓を閉められちゃったよ。あの時の月子ちゃんの目、今までで見た事ないくらい冷たかったなぁ」

「窓……って、もしかしてシャツ屋さんの?」
 
浩二君が頷いたのを見て、思わず肩を落とした。

恐らくは勇気を振り絞ったであろう彼の告白を、彼女は職場から出てくる事すらせず窓から対応したというのか。

「隼人君はいつも彼女のデザインした服を着てるよね」

「そりゃあ気に入ってるからな」

「このところ月子ちゃんは君の為に寝る間もおしんでるよ」
 
隼人はインゲンの胡麻和えを小鉢から一掴みで食べた。

ぽりぽり、ぽりぽり。隣にいるとその歯ごたえの良さまで伝わって来る。

「つーか俺は歩く広告塔だもん。月子さんが頑張ってるのは別に俺の為とかじゃない」
 
冬瓜の味噌汁、いつも以上にうめぇ。とお椀を啜る。

この妙な重い空気は何だ。この男は気付いていないのか?そこまで鈍感だったか?呑気に啜ってる場合じゃないよ。
 
だが食べる手を止めるのは余計に状況を悪化させそうで、私も呑気に味噌汁を啜り「煮干しの出汁が上手くいったのかな」なんて空気の読めない返答をするしかない。

「お花見の時に森野さんが言ってくれたよね。隼人君になれなくても、変わる事は出来るって」
 
浩二君は里芋、次にいかを食べて「美味しいね」とほほ笑んだ。

僅かに緩んだ空気に私もほっとして笑みを返す。

「でも僕はやっぱり変われなかったみたいだ。いつも上手くいかない。病気があるからもっと人より上手くいかない」

 ばんっ。

僅かにお椀に残っていた味噌汁が波打った。

隼人が机に押し付けた拳の中で箸が小刻みに震えていた。

「……だろうが」

「な、なに?隼人、落ち着いて――」

「そんな風に理由を付けて、後ろばっか見て生きてるからだろうが。月子さんは前を見てるんだよ。俺じゃねぇよ。なんでわかんないんだよ」
 
隼人は「ごちそうさま」と言うと、さっさと皿を重ねて台所に置きに行ってしまった。

「ご、ごめんね浩二君。大丈夫だから、ね」
 
こっちが必死でフォローしている傍から、隼人は居間を横切り廊下へのガラス戸を開けた。

「体調が良くないから、変な事ばっか考えんだよ」 

そう言うと畑仕事してくる、と出て行ってしまった。


「は、隼人君。おじさん、もうお腹たぷたぷだよ」
 
丸山さんが狸顔の眉をハの字にして、ほら見てよと大きなお腹を揺らす。

来た時にはもう少しゆとりのあったシャツも、今や裾から地肌が見え隠れしていて、思わず視線を縁側の西郷さんへと逸らした。

「良いじゃないですか。たまにはじゃんじゃん飲みましょう。ほら、今度は……なんだっけな。そう、キャラメルフレーバーっすよ」

「ちょっと待って、これ甘すぎるだろ。どれだけ砂糖入れたんだよ」

観念して紅茶カップに口を付けていた平昌社長が顔を歪めた。

「疲れた頭には糖分っす」

紅茶会のはずが、これではただの飲み会だ。それも随分と質の悪い酔い方をしている方の。

「もう勘弁勘弁。今日はお開きにしよう」
 
平昌社長は気合いで一気にキャラメルフレーバ―の激甘紅茶を飲み干すと手を叩いた。

「医者から止められて酒が飲めない代わりだって言ったって、流石に紅茶でも飲み過ぎは良くないよ。何でもほどほどだからね」
 
丸山さんは壁際に置いていたショルダーバッグに首を通し、帰り支度を始める。

「えぇ、もう帰るんですか。僕を放って……」
 
玄関先でも二人の背中にぶつくさ文句をいう隼人に、私も呆れるしかなかった。全く。これでは拗ねる子供だ。

申し訳なくて頭を下げる私に、ふたりは小声で「大丈夫、大丈夫」と何度も頷いた。

「隼人君との紅茶会は僕らもいつも楽しみなんだけどね」

「そうそう。でも、今の君に必要なのは紅茶じゃなくて睡眠だよ」

やれやれ、と平昌社長が横目でこちらを見た。

視線が私に「頼んだよ」と言っている。

「今度また誘ってよ。その時はもっと楽しくね、いつもみたいに平和に飲もう」

丸山さんはそう言うと、じゃあね、と平昌社長を車に乗せて走り去った。

「俺、そんなに寝不足ってわかる?」
 
紅茶腹とでも言おうか。水分で膨らんだお腹の隼人に、ため息を漏らす。

「目の下のクマがね。もう酷いよ」
 
茶色いクマをくっきりと刻んだ隼人の目を見上げながら言った。


「お兄ちゃんいないのー?もうお昼だよぉ」
 
玄関に入ったあかりちゃんの第一声に、縁側のど真ん中でへそ天状態で昼寝をしていた西郷さんが文字通り飛び起きた。

ふぎゃっという悲鳴と共に起きた西郷さんは、それがあかりちゃんだとわかると、玄関で口を尖らせる彼女の足元にすり寄り「いらっしゃい」と出迎える。

これが私だったら――不機嫌極まりない眼差しで睨まれていることだろう。

なんならお詫びにちょっとお高めのおやつを差し出さないと許してもらえない。

隼人が寝ていると知ったあかりちゃんは、部屋の前に立って僅かに襖を開けた。

「ほんとだぁ」

抜き足、差し足、忍び足。古くて軋む床を鳴らさないように、そっと居間に戻ってきた。

「いつもゴミ拾いだけじゃなくて、島のみんなの手伝いもしてくれてるからね。疲れちゃうよね。義姉さんも……一週間前かな。家の敷地にマンホールあるでしょ。排水桝。あれの掃除を手伝って貰ってたもんね。危うく詰まるところだったよ」
 
葛原さんが額の汗をタオルハンカチでふき取る。

ちょっと失礼するよ、と少しだけ扇風機をテーブルの方に寄せ、あぁ気持ち良いと目を細めた。

「トシちゃん、こう見えて潔癖症だからねぇ。隼人君は救世主だ。ヒーローってやつだねぇ」

「まぁ……うん、それは認めざるを得ないなぁ。僕はあそこの掃除はしたくない」

「えー、おじちゃん汚れるの嫌なの?いつも泥んこなのに」

「泥んこって、それは仕事だからねぇ」

「あはは、泥んこは良いねぇ。そうだよあかりちゃん。この爺さんはねぇ、泥んこになるのが仕事なの」
 
笑い声に溢れる古民家は、今日も平穏な空気に包まれる。

氷を浮かべた麦茶を三人分用意し、台所に戻って食事を盛り付けていく。
 
今日の日替わりメニューは、丸ごとオクラの煮浸しと、イワシの蒲焼。舞茸、しめじ、エリンギ――とキノコたっぷりの炊き込みご飯にお味噌汁だ。

「オクラ美味しいね」

あかりちゃんがオクラのお尻のとんがり部分を口からはみ出したまま満面の笑みを浮かべた。

「それは猫村さんご夫婦が育てた野菜なんだよ。朝市で買ってきたの」

「あそこも立派だよね。洋食屋だって長年やってきて凄く美味しかったのに、今度は野菜作りでもこれだけのものが作れるんだもん」
 
葛原さんがイワシの蒲焼を食べ、炊き込みご飯を続けて口へ運んだ。

「立派だよぉ。うんうん。あれはね、よーっぽど努力したんだよ。あそこは亭主が凝り性に見えるだろう。でもね、実はお嫁さんの方が凝り性なんだよ。あたしゃ昔から知ってるけどねぇ……」

「始まったよ。義姉さんはこの島の人の事なら何でも知ってるからね」
 
女は三歩下がってって時代に生まれているのに、ありゃ立派なもんだよ。
三歩どころかちゃーんと隣を歩いてるんだから。あれが理想ってもんだよ。
私はね、古い人間だからって私らの時代はどうのこうのなんて言わないよ。時代が変われば考えも変わるもんさ。それでお互いが生きやすくなるならそれが一番だよ。
寧ろ、私らの時代はなんて偉そうに言ってるのは、同じ苦労をしろって言ってるようなもんさ。苦しい方に引きずりおろそうとしてるんだよ。
 
そんな話をこんこんと説明する千鶴お婆ちゃんの話を、あかりちゃんは最後のお味噌汁を飲みながらもきちんと相槌を打っているのだから偉い。

素直に聞いてくれるあかりちゃんに、千鶴お婆ちゃんも饒舌になるというものだ。

「だからね、あかりちゃん。ことりちゃんもだよっ」
 
視線があかりちゃんに向いていたことですっかり油断していた私は、みんなの食事を終えた食器を下げようと伸ばした手を引っ込めて「はいっ」と背筋を伸ばした。

「誰かに何かを言われたからって、自分の考えを捻じ曲げてやる必要なんて無いんだよ。特にね、人を傷つけるような事を平気で言ってしまえる人間の言葉なんて聞く価値はないさ。それにいちいち傷付いてやる義理がどこにあるの。自分の事は自分でしか責任はとれないもんさ。相手は言いっ放しだからね。言いたい放題だよ」

「ね、義姉さん、もしかして母さんの話してるのかな。そうだよね、苦労したからね。大丈夫だよ、母さんはもういないんだから。ごめんね、嫁姑問題に悩んでた時代に戻ってるみたいだ。ちょっとこのモードに入っちゃうと、なかなかね」
 
葛原さんは「ほら、義姉さん。食事も済んだし、仕事仕事。ここの畑の様子を見に来たんでしょ。次来た時に使う堆肥とかも荷台から下ろさなきゃ。行こうか」と千鶴お婆ちゃんの手を引いて玄関を出た。

「千鶴お婆ちゃんも大変だったみたいだね」
 
気遣うつもりで言ったが、あかりちゃんは膝の上の西郷さんを撫でながら、

「あかりの周りの人はみーんな優しいから。お婆ちゃんも悲しい事が沢山あったなら、これからはあかりが楽しくしてあげられたら良いな」

そう言うとあかりちゃんはすっくと立ちあがり、

「お婆ちゃんたちのお手伝いしてくる。ついでに遊んでもらおーっと」

と、小さな靴を履いて裏庭に駆け出した。


「はい、おつり。いつもありがとうね。傘、忘れないようにね」
 
文具屋の店主の男性が、僅かに震える骨と皮だけの手で、店の入り口の端に置かれた錆びた傘立てを指した。

「雷が鳴る前に、まっすぐ帰るんだよ」

「ありがとうございます」と、紙袋を抱えて会釈する。

この季節の天候は変化しやすい。
 
今朝まで晴れていた津久茂島の空は、今はすっかり重い灰色の雲が覆っていた。
 
傘を抜き取り右腕に引っかける。水分を含んだ空気は、むっと鼻を突くような雨の匂いがした。 

「夏……祭り」
 
文具店と古書店の間を仕切る煉瓦の壁に、真新しい小さなポスターが貼り付けられていた。


☆今年も夏祭り開催

神社の境内から見る二千発の花火は見ものだよ
      開催日時 九月二十日 十七時~(花火は十九時半スタート)
      開催場所 風の丘地区・津久茂神社
      主催 津久茂島観光協会
 
花火を背景にしたそのポスターの余白には、牛乳と白菜を片手ずつに抱えた、にわとり頭のマスコット――津久茂島のゆるキャラのツクモンが「会場で待ってるよ」と陽気なポージングを決めている。
 
そんな陽気なツクモンを前に、真っ先に頭に浮かんだのはあかりちゃんだ。

戸波さんと行くのかもしれないけれど、一度声を掛けてみたらどうだろうか。月子さんも、ずっと仕事場に籠り切りだと言うし、これを口実にしたら息抜きになるかも。

【休業日】
 
喫茶クラウンのドアに下げられた木札が湿っぽい風に揺れる。

窓は分厚いカーテンに仕切られ、来客を拒む浩二君の静かな意志のようにも思えた。

誘ったら浩二君も来てくれるだろうか。

でも来てくれたからって私にどうにかできるだろうか。

先日の隼人とのことを思い出して嘆息する。

「お祭りって言ったら浴衣か……」

私は私服で良いけれど。
 
喫茶クラウンを後にし、重い足取りのまま歩く。
 
ここ津久茂島商店街の洋品店で若者向けの服を見た事が無い。

実際、私の服はこっちで買った物は一着も無い。

そもそもお洒落に疎く、季節ごとに用意した数枚の服を着まわすばかりだ。

みんなは本州まで買いに行くのだろうか。いや、今の時代は通販か。

高齢者だってスマホを駆使する時代だ。

周りから見たら、こんなにもアナログな生活をしている私は時代遅れだろう。
 
遠くの空で雷鳴が唸る。アスファルトにぽつり、ぽつり、と丸い雨滴が浮かび上がって

「急がなきゃ」
 
傘を開き、紙袋を胸にバス停へと走り出す。
 
アスファルトは、あっという間に黒く塗りつぶされた。
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