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第六話 ことりと豆苗、再び
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「まあ、ええように思わん人間もおるっちゅーこっちゃな。そない気落としなや。まあ、隼人君もよう耐えたわ。一言も文句言わんかったんか」
陽ノ江地区の水産業者の事務所から出ると、釣り竿とクーラーボックスを抱えた田所さんに遭遇したのだ。
「言わないですよ。でも、岩城さんが理由あって断ってるならまだしも。あんな風に、ただの偏見で言われるなんて納得いかないです」
この【いわき水産】の社長である岩城さんに会いに来たら、事務所の受付カウンターに居酒屋・塩梅のチョーさんが待ち構えていたのだ。
岩城さんはその隣で困ったように苦笑していた。
「よそ者の若い奴が商売なんて馬鹿げてる」
というのが、チョーさんの言い分だった。
隼人が何とか説得しようとしても、全く聞く耳を持ってくれないチョーさんは、挙句には「他の人間に当たっても無駄だからな。この島の誰もお前らが店をやるなんて納得してないんだから」と言うのだ。
岩城さんは終始、何かを言いたそうに口をぱくつかせていたが、大柄なチョーさんに見下ろされながら睨まれると、やっぱり何も言えないらしい。
あまりに一方的な言葉に、流石の隼人も怒り出すんじゃないかと思ったが、隼人は「今日は帰ります」とだけ言い残すと、一礼までして事務所を出た。
これには、私も驚いた。
「まあでも、文句は言わない。言わないっす」
隼人が両手を黒のアロハシャツの腰に当てながら、力強く頷く。
「もしかして、ことりは俺が怒ると思った?」
「うん。電話の時が……ね」
田所さんをちらりと見やりながら、口ごもった。
「あん時は俺も、まさか、だったからな。でも俺、これからこの島の人たちと仲良くなりたいし。こんな事で関係性ぶっ壊したくねえ」
「兄ちゃん、偉い!」
「おわっ――うっす。ありがとうございます」
田所さんが隼人の手を取り、背中を何度も叩いた。いやあ、ええ奴が来たわ。
「浩二と友達になってくれんか?隼人君みたいな子やったら、浩二もきっと元気貰えるわ」
「浩二君?俺、もう友達ですよ」
え?そうだっけ。
友達、というのがどれほど仲良くなってからなのかがわからない。
私の知る限りでは、浩二君の店にお客さんとして行ったくらいだ。
あくまで客と店主。
友達なのか?とは思ったが、隼人の中ではもう友達の枠に組み込まれているのだろう。
「なんや、そうかいな!ああ、嬉しいなあ。チョーさんには悪いけど、俺はあんたら応援しとるからな。うん。頑張るんやで。おっちゃんが出来る事なら、何でもしたるから」
田所さんは、ああ、ほんま。嬉しいなあ。ほんなら、今日は帰るわ。と上機嫌で帰って行った。
「いただきます」
大葉と大根おろしの乗った豆腐ハンバーグを一口。
「ん、美味しい」
ポン酢の風味と、大葉の爽やかさが、淡白な豆腐ハンバーグと相性抜群だ。
母の豆腐ハンバーグは固くも無く、パサつくことも無い。
お肉よりも豆腐の割合の方が圧倒的に多い節約料理だ。
子供の頃は大葉を抜いた状態で食べていたが、大人になってからこうして大葉ありで食べると、やっぱりある方が美味しさ数値が跳ね上がるような気がする。
「お店の方はどう?順調に進んでるの?」
「うん、まあ」
母の目を見ることが出来なかった。
食材を仕入れられないで、どうやって開店すれば良いのか。
私よりも、隼人に申し訳ない気持ちが湧いてしまう。
わざわざ引っ越しまでしてきたのだ。
彼の人生までをも巻き込んでしまっていると思うと、店を開けるかどうかというよりも、罪悪感の方が勝ってくる。
「お母さんに出来ることがあるなら言ってね。何か問題でもあった?」
「大丈夫だって」
「お店の宣伝なら、チラシ配りとかもやるわよ。お手伝いもやるし」
「何言ってんの。仕事も大変なのに」
「平気よ、平気。ことりの為なら、お母さん何だって――」
「大丈夫だからっ」
ご、ごめん。慌てて口にして、ひと呼吸置いた。
「あぁ、そうだ。ことりって、豆苗は食べれるんだっけ。ほら、あれ結構癖あるでしょ」
話題を変えてくれて、ほっとした。喧嘩がしたいわけじゃないのだ。
母の気持ちも、迷惑だとかそういうわけじゃない。それは絶対に。
「食べれるよ。大人になってからゴーヤも平気になったし。寧ろ好きだよ」
無理矢理口角を上げてみせる。
「そう、良かった。冷蔵庫に豆苗入ってるから、明日にでも使って」
母は味噌汁を飲み、レンコンのきんぴらに箸を伸ばす。
「わかった。なんか――」
レンコンを頬張る。シャキシャキと小気味よい歯ごたえが溜まらない。
これがまた美味しいのだ。甘辛いレンコン。私の好物のひとつ。
「なに?どうしたの」
「ううん。なんでもない」
思わず零れた笑みに「なによ」と更に追及されたが、恥ずかしくて答えられなかった。
人と食べるご飯って、やっぱり美味しいな――。
翌朝、六時三十分。私の朝が始まった。
母のエプロンに腕を通し、肩甲骨まで伸びてしまった傷んだ髪をゴムで一つに結ぶ。
さてさて、なんて呟きながら冷蔵庫を開けた私の手は、迷わず豆苗の袋を掴んだ。
あとは小分けに冷凍した豚肉と、半端に残ったほうれん草。
これはウインナーと一緒にスープにでもしようかな。それなら、玉ねぎや人参もあった方が美味しいだろうか。
とりあえず思いついた材料を手に取り、包丁で刻んでいく。
スープにするなら、少し小さめに。
母がウインナーは丸ごとが好きなので、そのまま入れよう。
オリーブオイルを熱した鍋でさっと具材を炒めてから、水を入れる。
コンソメ、塩ひとつまみと胡椒。
よし、ちょっと味見――ああ、良い感じ。
昨晩、少し蒸し暑くてエアコンを入れたから、身体が冷えていたのかもしれない。
じわりとスープの温もりが体の中を巡るのがわかる。
鳩の声が聞こえる。
朝によく聞くこの独特な鳥の声の主が鳩だと知ったのは、大人になってからだった。
ほーほーほっほーう。
どういう意図でこの声で鳴いてるのだろう。鳩はぽっぽだと思っていたから驚いた。
大人になっても知らない事って色々あるものだ。
そんな事を考えながら、豆苗に包丁を入れた。
「これは……」
どうしよう。
一瞬考えて、何となくトレイに水を張って豆苗の下部分を漬けてみた。
引っ越してくる前のアパートでは見事に腐らせたが、今度はどうだろう。
豚肉と豆苗を炒める。
醤油を手に取りかけて、やっぱり止めた。
今日はさっぱりポン酢でいこう。
「お母さん、ご飯できたよ」
「ありがとう。すぐ行く」
「今日遅くなるから。お母さんが亡くなったって職員の子がいてね。夕飯は先に食べといて」
可哀そうよねえ、お母さんってまだ五十代だったみたいよ。ついこの前、孫が出来たことを喜んでくれたって話を聞いたところだったのに。
神妙な面持ちで洗面所から出てくると、今度は「あらあ、美味しそう」と小さく拍手しながら自分の席についた。
朝食を済ませ、母を見送り、流しに溜まった食器に水道水をかける。
「ふう」
目の前の開けた窓から、家の周りを囲むブロック塀と、小さな庭。
二週間前の朝、草むしりしたその場所は、もう元通りに雑草たちが伸び放題になっていた。
かちゃかちゃと食器の音が鳴る。
スポンジから、小さな泡がいくつか飛び上がって、私の顔の前をふわふわと移動した。
「平和だなあ」
思いながら同時に、仕入れの件はどうしようかなあ、と頭を過る。
作戦会議で立てた予定通り、物事を進めてきた。
自分でもこんなにすんなりと行くものなのかと思ったが、きっと隼人の事前調べがかなり効いていたのだろう。
普通なら色々と見落としがあって、物件の工事の時点から問題が起きていてもおかしくない。
意外と真面目なんだなあ。
弁当屋にいた時は、そんな風に思いもしなかった。
スポンジを置いて、泡だらけの食器を流していく。
いや、考えてみたら彼は結構真面目だったかも。
見た目はともかく、彼が問題を起こしたりすることは無かったし、お客さんとの接し方なんて、私よりずっと上手かった。
私は厨房に籠り切りだったし、たまに休んだ隼人の代わりに厨房に立った時なんて、常連さんとも会話が続かなかった。
それからは、隼人がいない日はツネさんに任せきりだったのを思い出した。
台所の引き戸横に押しピンで留められたカレンダーの赤丸。
十一月一日。開店日。
「よそ者の若いやつには……か」
赤いペンに焦燥感を駆られて、もう一度無意識に嘆息した。
「ことりちゃーん」
「えっ――隼人、何やってんの」
「あ、おはよー」
「ちょ、おはよーって……大声でやめて、恥ずかしいから!何持ってんの、それ。じゃない、ちょっと待ってて」
大人しく、待ってて!と付け足して、大急ぎで洗い物を済ませた。
サンダルを履いて玄関を開けると、向かいの家に独り暮らししている、今年九十になる千鶴お婆ちゃんと喋る隼人の姿が見えた。
隼人が千鶴お婆ちゃんに見せているのは、さっき私に向けて振っていた大きな緑のビニール袋だ。
「千鶴お婆ちゃん、おはようございます」
「はい、おはよう。いやあもう、本当大きくなってねえ。中学卒業して以来だもんねえ」
この島に戻って何度目かわからない同じ内容の話を、いつもの調子で笑ってやりすごした。
初めて会った時から、千鶴お婆ちゃんはこの立派な門構えの古い日本家屋に一人暮らしだった。
津久茂島に移住してきて、最初に声を掛けてくれたのが彼女なのだと、母から聞いたことがある。
私はというと、学校帰りに家の前で母と話していた時に軽く自己紹介した程度だ。
それも母が紹介している横で、私は愛想の無い会釈をするだけだったのだが。
母が何かあるたびに『千鶴お婆ちゃん』と呼ぶので、私も勝手にそう呼ばせて貰っている。
「隼人、今日は約束してなかったのに何しに来たの」
「約束って……そんなのしてなくても来るに決まってんじゃん。開店日まで、あと日にちも無いんだぜ」
私よりも少し背の低い――恐らく百五十センチくらいの千鶴お婆ちゃんに「ねえ」と同意を求め、千鶴お婆ちゃんは解っているのかどうなのか、相変わらずのゆったりとした口調で「楽しみだねえ」と目を線にした。
それにしても。
開店へ漕ぎつけるにはまだ問題が残っていると言うのに、隼人はどこか吹っ切れたかのように晴れ晴れとした表情だ。
声も溌剌。
いつも通り、寧ろ津久茂島に越してきて以来、一番元気なんじゃないだろうか。
それくらい、何の悩みも無さそうな能天気面で、手元のビニール袋を覗いてはへらへら笑っている。
隼人の後ろには、どこで借りてきたのか荷台まであるではないか。
そこにも土袋や肥料袋、横長のプランター幾つもが積み上げられている。
まさか、とは思った。
「畑でもやるの?」
荷台を見下ろしながら言うと、隼人は「おっ、大正解」と指で丸を作った。
「ほら、スナップエンドウの種。こっちはそら豆、小松菜、カブ。来月には玉ねぎの苗も植える予定」
「こっちのプランターは?お花でも植えるの?」
「それはカモミールを植えようかなって。また時期が来たらタアサイとか、バジルとか、何かハーブ系を植えても良いかなって。プランターの数を増やしてイチゴも良いと思うんだよね。デザートにも使えそうじゃん。店の前に置いたら可愛いと思うし」
可愛い。
金髪、シルバーピアスが光るこの男から、可愛いという言葉が出てくるのが、ギャップが凄すぎて眩暈がしそう。
「悪いけど、生き物育てるのは苦手なの。結局上手く育てられないし、枯らしちゃうし」
植物にだって生きているのだ。喋れなくても、懸命に生きている。
私が手を出したせいで枯らしてしまうかもしれない。
相手が人間じゃなくても、動物だろうと植物だろうと、私は誰も幸せにできた試しが無い。
まだ子供だったとはいえ父に暴力を振るわれる母を守れなかった。
離婚後だって、母が抱えているトラウマを少しも――。
「そんなの、知識も経験も無いんだから当たり前じゃん」
何言ってんの?と目を丸くしながら隼人が言ってのけた。
千鶴お婆ちゃんに「ねえ」と同意を求めると、「そうよそうよ」と相変わらず理解しているのかわからない軽い口調で頷いた。
「とりあえずさ、うち行こう。うちっていうか、戸波さんの家だけど。今日、これから戸波さんが仕事で、俺があかりちゃんの面倒見る予定だから」
ほら、早く早く。一方的に隼人に急かされ、慌てて家に戻りショルダーバッグだけ掴んで家を出た。
「あれ?」
いない。置いて行かれた?
隼人の大荷物は千鶴お婆ちゃんの門の横に置きっぱなしになっている。
中にいるのだろうか。少しだけ開いている門の隙間から覗いてみた。
玄関へと続く石畳と松や名前のわからない木、どれもきちんと手入れが行き届いている。
時々、葛原園芸と書かれた軽トラが止まっているは見た事があるから、その職人の仕事だろう。
綺麗な庭にしばし見惚れていると、がらり、と玄関が開いて隼人が出てきた。
「ごめんごめん、ちょっと千鶴さんの庭を見せてもらってたんだ」
それと――、とさっきまで持っていなかったベージュのエコバッグを掲げる。
「黒糖饅頭貰った。あかりちゃんと三人で食おうぜ」
「ことりちゃんだあ」
「あかりちゃん、おはよう」
白鷺浜が望める長屋アパートの窓から私たちを見つけたあかりちゃんが、笑顔を弾けさせながら飛び出してきた。
「おはよー。お兄ちゃん、おかえり」
「ただいま。あ、戸波さん、もう出ますか」
玄関で靴に足を入れた戸波さんが、つま先で地面を小突きながら「うん、良い時間に帰って来てくれて良かったよ」と、使い込んだグレーのトートバッグを肩に掛けた。
戸波さんを見送り、家に入った私たちは、まず最初に黒糖饅頭を頬張った。
もっちりとした皮と、甘いこしあんが美味しい。
「そういえば、あかりちゃんって何歳なの?」
聞くと、黒糖饅頭で口がいっぱいのあかりちゃんは、懸命にもぐもぐし始める。
「いや、ごめんね。飲み込んでからで良いよ。喉詰まるから、ゆっくり食べて」
そう言われると安心したように、にへえと目を垂れさせて、今度は手の平を目いっぱい開いて見せた。
「五歳なんだ」
私がまだ父と暮らしていた年頃か――。
あかりちゃんが、こくりと頷く。
どうやら黒糖饅頭が好物らしく、とても嬉しそうに食べる。
そんな彼女をとても嬉しそうに見ていた隼人が「俺のも食べていいよ」と勧めた。
「ううん、お兄ちゃんも食べて。お勉強頑張ってるから」
「勉強?」
私が訊ねると「ああ、そうだった」と、居間の隣の部屋から本の山を抱えてきた。
野菜つくり辞典、はじめての畑作り、やさしいハーブ作り、日本のハーブ図鑑、野草・山草ガイドブック。
初心者の為の堤防釣りガイドなんてものもある。
「なにこれ」
「図書館で借りてきたんだ。返さないといけないから、とりあえず、すぐに取り入れたい情報はノートに纏めた」
見せられたノートを開いて、言葉を失った。
手書きの図や絵を交え、びっしりと書き込まれている。
所々色を変えたり、マーカーが引いてあったり。
しかもそれが三冊。
表紙には、畑、ハーブ、釣り、とマジックで書いてある。
「仕入れができないなら、作れば良いじゃんって。色々言ってくる人はいるけど、千鶴さんにも畑の事とか教えてもらえるし、戸波さんにも釣りを教わってるんだ。田所さんも使ってない農具をくれるって言ってくれてるんだよ」
それでも初心者にこんなことが出来るのだろうか。
少し開店時期を遅らせるくらい、考えるべきなんじゃないだろうか。そう思ったけれど
「上手くいかない事もあるかもしれないけど、やってみなきゃわかんねえじゃん」
「わかんねーじゃん」
胸を張ってあかりちゃんが真似をする。
やっぱり無茶だよ。
私の心に沸いたネガティブな言葉。
「ひとりでも応援してくれる人がいるなら、無論。やるっきゃないね」
隼人が言うと
「ないね」
あかりちゃんが、親指で鼻を拭いながら真似をする。
その日から無謀とも思える畑作りが始まり、田所さんから指導を受けた隼人に教わりながら、私も鍬を手に古民家の裏にある広い土地を耕した。
種を植えて、水を撒く。
上手くいくだろうか。
開店まで二週間。
同じころ、喫茶クラウンで珈琲を飲みながら二人で考え、作ったチラシを島中に配って歩いた。
チョーさんには、勿論受け取って貰えなかった。
塩梅の常連だという人たちにも断られる事もがったが、中には苦笑しながら「内緒ね」と受け取ってくれる人もいたのには驚いた。
いよいよ始まるんだ。私たちの店――。
十月も残り三日の良く晴れた朝、台所で小さくガッツポーズを作った。
私が育てた豆苗は、初めて収穫に成功したのだ。
陽ノ江地区の水産業者の事務所から出ると、釣り竿とクーラーボックスを抱えた田所さんに遭遇したのだ。
「言わないですよ。でも、岩城さんが理由あって断ってるならまだしも。あんな風に、ただの偏見で言われるなんて納得いかないです」
この【いわき水産】の社長である岩城さんに会いに来たら、事務所の受付カウンターに居酒屋・塩梅のチョーさんが待ち構えていたのだ。
岩城さんはその隣で困ったように苦笑していた。
「よそ者の若い奴が商売なんて馬鹿げてる」
というのが、チョーさんの言い分だった。
隼人が何とか説得しようとしても、全く聞く耳を持ってくれないチョーさんは、挙句には「他の人間に当たっても無駄だからな。この島の誰もお前らが店をやるなんて納得してないんだから」と言うのだ。
岩城さんは終始、何かを言いたそうに口をぱくつかせていたが、大柄なチョーさんに見下ろされながら睨まれると、やっぱり何も言えないらしい。
あまりに一方的な言葉に、流石の隼人も怒り出すんじゃないかと思ったが、隼人は「今日は帰ります」とだけ言い残すと、一礼までして事務所を出た。
これには、私も驚いた。
「まあでも、文句は言わない。言わないっす」
隼人が両手を黒のアロハシャツの腰に当てながら、力強く頷く。
「もしかして、ことりは俺が怒ると思った?」
「うん。電話の時が……ね」
田所さんをちらりと見やりながら、口ごもった。
「あん時は俺も、まさか、だったからな。でも俺、これからこの島の人たちと仲良くなりたいし。こんな事で関係性ぶっ壊したくねえ」
「兄ちゃん、偉い!」
「おわっ――うっす。ありがとうございます」
田所さんが隼人の手を取り、背中を何度も叩いた。いやあ、ええ奴が来たわ。
「浩二と友達になってくれんか?隼人君みたいな子やったら、浩二もきっと元気貰えるわ」
「浩二君?俺、もう友達ですよ」
え?そうだっけ。
友達、というのがどれほど仲良くなってからなのかがわからない。
私の知る限りでは、浩二君の店にお客さんとして行ったくらいだ。
あくまで客と店主。
友達なのか?とは思ったが、隼人の中ではもう友達の枠に組み込まれているのだろう。
「なんや、そうかいな!ああ、嬉しいなあ。チョーさんには悪いけど、俺はあんたら応援しとるからな。うん。頑張るんやで。おっちゃんが出来る事なら、何でもしたるから」
田所さんは、ああ、ほんま。嬉しいなあ。ほんなら、今日は帰るわ。と上機嫌で帰って行った。
「いただきます」
大葉と大根おろしの乗った豆腐ハンバーグを一口。
「ん、美味しい」
ポン酢の風味と、大葉の爽やかさが、淡白な豆腐ハンバーグと相性抜群だ。
母の豆腐ハンバーグは固くも無く、パサつくことも無い。
お肉よりも豆腐の割合の方が圧倒的に多い節約料理だ。
子供の頃は大葉を抜いた状態で食べていたが、大人になってからこうして大葉ありで食べると、やっぱりある方が美味しさ数値が跳ね上がるような気がする。
「お店の方はどう?順調に進んでるの?」
「うん、まあ」
母の目を見ることが出来なかった。
食材を仕入れられないで、どうやって開店すれば良いのか。
私よりも、隼人に申し訳ない気持ちが湧いてしまう。
わざわざ引っ越しまでしてきたのだ。
彼の人生までをも巻き込んでしまっていると思うと、店を開けるかどうかというよりも、罪悪感の方が勝ってくる。
「お母さんに出来ることがあるなら言ってね。何か問題でもあった?」
「大丈夫だって」
「お店の宣伝なら、チラシ配りとかもやるわよ。お手伝いもやるし」
「何言ってんの。仕事も大変なのに」
「平気よ、平気。ことりの為なら、お母さん何だって――」
「大丈夫だからっ」
ご、ごめん。慌てて口にして、ひと呼吸置いた。
「あぁ、そうだ。ことりって、豆苗は食べれるんだっけ。ほら、あれ結構癖あるでしょ」
話題を変えてくれて、ほっとした。喧嘩がしたいわけじゃないのだ。
母の気持ちも、迷惑だとかそういうわけじゃない。それは絶対に。
「食べれるよ。大人になってからゴーヤも平気になったし。寧ろ好きだよ」
無理矢理口角を上げてみせる。
「そう、良かった。冷蔵庫に豆苗入ってるから、明日にでも使って」
母は味噌汁を飲み、レンコンのきんぴらに箸を伸ばす。
「わかった。なんか――」
レンコンを頬張る。シャキシャキと小気味よい歯ごたえが溜まらない。
これがまた美味しいのだ。甘辛いレンコン。私の好物のひとつ。
「なに?どうしたの」
「ううん。なんでもない」
思わず零れた笑みに「なによ」と更に追及されたが、恥ずかしくて答えられなかった。
人と食べるご飯って、やっぱり美味しいな――。
翌朝、六時三十分。私の朝が始まった。
母のエプロンに腕を通し、肩甲骨まで伸びてしまった傷んだ髪をゴムで一つに結ぶ。
さてさて、なんて呟きながら冷蔵庫を開けた私の手は、迷わず豆苗の袋を掴んだ。
あとは小分けに冷凍した豚肉と、半端に残ったほうれん草。
これはウインナーと一緒にスープにでもしようかな。それなら、玉ねぎや人参もあった方が美味しいだろうか。
とりあえず思いついた材料を手に取り、包丁で刻んでいく。
スープにするなら、少し小さめに。
母がウインナーは丸ごとが好きなので、そのまま入れよう。
オリーブオイルを熱した鍋でさっと具材を炒めてから、水を入れる。
コンソメ、塩ひとつまみと胡椒。
よし、ちょっと味見――ああ、良い感じ。
昨晩、少し蒸し暑くてエアコンを入れたから、身体が冷えていたのかもしれない。
じわりとスープの温もりが体の中を巡るのがわかる。
鳩の声が聞こえる。
朝によく聞くこの独特な鳥の声の主が鳩だと知ったのは、大人になってからだった。
ほーほーほっほーう。
どういう意図でこの声で鳴いてるのだろう。鳩はぽっぽだと思っていたから驚いた。
大人になっても知らない事って色々あるものだ。
そんな事を考えながら、豆苗に包丁を入れた。
「これは……」
どうしよう。
一瞬考えて、何となくトレイに水を張って豆苗の下部分を漬けてみた。
引っ越してくる前のアパートでは見事に腐らせたが、今度はどうだろう。
豚肉と豆苗を炒める。
醤油を手に取りかけて、やっぱり止めた。
今日はさっぱりポン酢でいこう。
「お母さん、ご飯できたよ」
「ありがとう。すぐ行く」
「今日遅くなるから。お母さんが亡くなったって職員の子がいてね。夕飯は先に食べといて」
可哀そうよねえ、お母さんってまだ五十代だったみたいよ。ついこの前、孫が出来たことを喜んでくれたって話を聞いたところだったのに。
神妙な面持ちで洗面所から出てくると、今度は「あらあ、美味しそう」と小さく拍手しながら自分の席についた。
朝食を済ませ、母を見送り、流しに溜まった食器に水道水をかける。
「ふう」
目の前の開けた窓から、家の周りを囲むブロック塀と、小さな庭。
二週間前の朝、草むしりしたその場所は、もう元通りに雑草たちが伸び放題になっていた。
かちゃかちゃと食器の音が鳴る。
スポンジから、小さな泡がいくつか飛び上がって、私の顔の前をふわふわと移動した。
「平和だなあ」
思いながら同時に、仕入れの件はどうしようかなあ、と頭を過る。
作戦会議で立てた予定通り、物事を進めてきた。
自分でもこんなにすんなりと行くものなのかと思ったが、きっと隼人の事前調べがかなり効いていたのだろう。
普通なら色々と見落としがあって、物件の工事の時点から問題が起きていてもおかしくない。
意外と真面目なんだなあ。
弁当屋にいた時は、そんな風に思いもしなかった。
スポンジを置いて、泡だらけの食器を流していく。
いや、考えてみたら彼は結構真面目だったかも。
見た目はともかく、彼が問題を起こしたりすることは無かったし、お客さんとの接し方なんて、私よりずっと上手かった。
私は厨房に籠り切りだったし、たまに休んだ隼人の代わりに厨房に立った時なんて、常連さんとも会話が続かなかった。
それからは、隼人がいない日はツネさんに任せきりだったのを思い出した。
台所の引き戸横に押しピンで留められたカレンダーの赤丸。
十一月一日。開店日。
「よそ者の若いやつには……か」
赤いペンに焦燥感を駆られて、もう一度無意識に嘆息した。
「ことりちゃーん」
「えっ――隼人、何やってんの」
「あ、おはよー」
「ちょ、おはよーって……大声でやめて、恥ずかしいから!何持ってんの、それ。じゃない、ちょっと待ってて」
大人しく、待ってて!と付け足して、大急ぎで洗い物を済ませた。
サンダルを履いて玄関を開けると、向かいの家に独り暮らししている、今年九十になる千鶴お婆ちゃんと喋る隼人の姿が見えた。
隼人が千鶴お婆ちゃんに見せているのは、さっき私に向けて振っていた大きな緑のビニール袋だ。
「千鶴お婆ちゃん、おはようございます」
「はい、おはよう。いやあもう、本当大きくなってねえ。中学卒業して以来だもんねえ」
この島に戻って何度目かわからない同じ内容の話を、いつもの調子で笑ってやりすごした。
初めて会った時から、千鶴お婆ちゃんはこの立派な門構えの古い日本家屋に一人暮らしだった。
津久茂島に移住してきて、最初に声を掛けてくれたのが彼女なのだと、母から聞いたことがある。
私はというと、学校帰りに家の前で母と話していた時に軽く自己紹介した程度だ。
それも母が紹介している横で、私は愛想の無い会釈をするだけだったのだが。
母が何かあるたびに『千鶴お婆ちゃん』と呼ぶので、私も勝手にそう呼ばせて貰っている。
「隼人、今日は約束してなかったのに何しに来たの」
「約束って……そんなのしてなくても来るに決まってんじゃん。開店日まで、あと日にちも無いんだぜ」
私よりも少し背の低い――恐らく百五十センチくらいの千鶴お婆ちゃんに「ねえ」と同意を求め、千鶴お婆ちゃんは解っているのかどうなのか、相変わらずのゆったりとした口調で「楽しみだねえ」と目を線にした。
それにしても。
開店へ漕ぎつけるにはまだ問題が残っていると言うのに、隼人はどこか吹っ切れたかのように晴れ晴れとした表情だ。
声も溌剌。
いつも通り、寧ろ津久茂島に越してきて以来、一番元気なんじゃないだろうか。
それくらい、何の悩みも無さそうな能天気面で、手元のビニール袋を覗いてはへらへら笑っている。
隼人の後ろには、どこで借りてきたのか荷台まであるではないか。
そこにも土袋や肥料袋、横長のプランター幾つもが積み上げられている。
まさか、とは思った。
「畑でもやるの?」
荷台を見下ろしながら言うと、隼人は「おっ、大正解」と指で丸を作った。
「ほら、スナップエンドウの種。こっちはそら豆、小松菜、カブ。来月には玉ねぎの苗も植える予定」
「こっちのプランターは?お花でも植えるの?」
「それはカモミールを植えようかなって。また時期が来たらタアサイとか、バジルとか、何かハーブ系を植えても良いかなって。プランターの数を増やしてイチゴも良いと思うんだよね。デザートにも使えそうじゃん。店の前に置いたら可愛いと思うし」
可愛い。
金髪、シルバーピアスが光るこの男から、可愛いという言葉が出てくるのが、ギャップが凄すぎて眩暈がしそう。
「悪いけど、生き物育てるのは苦手なの。結局上手く育てられないし、枯らしちゃうし」
植物にだって生きているのだ。喋れなくても、懸命に生きている。
私が手を出したせいで枯らしてしまうかもしれない。
相手が人間じゃなくても、動物だろうと植物だろうと、私は誰も幸せにできた試しが無い。
まだ子供だったとはいえ父に暴力を振るわれる母を守れなかった。
離婚後だって、母が抱えているトラウマを少しも――。
「そんなの、知識も経験も無いんだから当たり前じゃん」
何言ってんの?と目を丸くしながら隼人が言ってのけた。
千鶴お婆ちゃんに「ねえ」と同意を求めると、「そうよそうよ」と相変わらず理解しているのかわからない軽い口調で頷いた。
「とりあえずさ、うち行こう。うちっていうか、戸波さんの家だけど。今日、これから戸波さんが仕事で、俺があかりちゃんの面倒見る予定だから」
ほら、早く早く。一方的に隼人に急かされ、慌てて家に戻りショルダーバッグだけ掴んで家を出た。
「あれ?」
いない。置いて行かれた?
隼人の大荷物は千鶴お婆ちゃんの門の横に置きっぱなしになっている。
中にいるのだろうか。少しだけ開いている門の隙間から覗いてみた。
玄関へと続く石畳と松や名前のわからない木、どれもきちんと手入れが行き届いている。
時々、葛原園芸と書かれた軽トラが止まっているは見た事があるから、その職人の仕事だろう。
綺麗な庭にしばし見惚れていると、がらり、と玄関が開いて隼人が出てきた。
「ごめんごめん、ちょっと千鶴さんの庭を見せてもらってたんだ」
それと――、とさっきまで持っていなかったベージュのエコバッグを掲げる。
「黒糖饅頭貰った。あかりちゃんと三人で食おうぜ」
「ことりちゃんだあ」
「あかりちゃん、おはよう」
白鷺浜が望める長屋アパートの窓から私たちを見つけたあかりちゃんが、笑顔を弾けさせながら飛び出してきた。
「おはよー。お兄ちゃん、おかえり」
「ただいま。あ、戸波さん、もう出ますか」
玄関で靴に足を入れた戸波さんが、つま先で地面を小突きながら「うん、良い時間に帰って来てくれて良かったよ」と、使い込んだグレーのトートバッグを肩に掛けた。
戸波さんを見送り、家に入った私たちは、まず最初に黒糖饅頭を頬張った。
もっちりとした皮と、甘いこしあんが美味しい。
「そういえば、あかりちゃんって何歳なの?」
聞くと、黒糖饅頭で口がいっぱいのあかりちゃんは、懸命にもぐもぐし始める。
「いや、ごめんね。飲み込んでからで良いよ。喉詰まるから、ゆっくり食べて」
そう言われると安心したように、にへえと目を垂れさせて、今度は手の平を目いっぱい開いて見せた。
「五歳なんだ」
私がまだ父と暮らしていた年頃か――。
あかりちゃんが、こくりと頷く。
どうやら黒糖饅頭が好物らしく、とても嬉しそうに食べる。
そんな彼女をとても嬉しそうに見ていた隼人が「俺のも食べていいよ」と勧めた。
「ううん、お兄ちゃんも食べて。お勉強頑張ってるから」
「勉強?」
私が訊ねると「ああ、そうだった」と、居間の隣の部屋から本の山を抱えてきた。
野菜つくり辞典、はじめての畑作り、やさしいハーブ作り、日本のハーブ図鑑、野草・山草ガイドブック。
初心者の為の堤防釣りガイドなんてものもある。
「なにこれ」
「図書館で借りてきたんだ。返さないといけないから、とりあえず、すぐに取り入れたい情報はノートに纏めた」
見せられたノートを開いて、言葉を失った。
手書きの図や絵を交え、びっしりと書き込まれている。
所々色を変えたり、マーカーが引いてあったり。
しかもそれが三冊。
表紙には、畑、ハーブ、釣り、とマジックで書いてある。
「仕入れができないなら、作れば良いじゃんって。色々言ってくる人はいるけど、千鶴さんにも畑の事とか教えてもらえるし、戸波さんにも釣りを教わってるんだ。田所さんも使ってない農具をくれるって言ってくれてるんだよ」
それでも初心者にこんなことが出来るのだろうか。
少し開店時期を遅らせるくらい、考えるべきなんじゃないだろうか。そう思ったけれど
「上手くいかない事もあるかもしれないけど、やってみなきゃわかんねえじゃん」
「わかんねーじゃん」
胸を張ってあかりちゃんが真似をする。
やっぱり無茶だよ。
私の心に沸いたネガティブな言葉。
「ひとりでも応援してくれる人がいるなら、無論。やるっきゃないね」
隼人が言うと
「ないね」
あかりちゃんが、親指で鼻を拭いながら真似をする。
その日から無謀とも思える畑作りが始まり、田所さんから指導を受けた隼人に教わりながら、私も鍬を手に古民家の裏にある広い土地を耕した。
種を植えて、水を撒く。
上手くいくだろうか。
開店まで二週間。
同じころ、喫茶クラウンで珈琲を飲みながら二人で考え、作ったチラシを島中に配って歩いた。
チョーさんには、勿論受け取って貰えなかった。
塩梅の常連だという人たちにも断られる事もがったが、中には苦笑しながら「内緒ね」と受け取ってくれる人もいたのには驚いた。
いよいよ始まるんだ。私たちの店――。
十月も残り三日の良く晴れた朝、台所で小さくガッツポーズを作った。
私が育てた豆苗は、初めて収穫に成功したのだ。
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