42 / 53
和風グラタン
しおりを挟む
今日はクリスマス。
子供達は、昨夜はサンタさんからのプレゼントに心踊らせたでしょうか?
今頃、早起きさんは届いたプレゼントに歓喜しているのかしら。
そんな事を想像するだけで、何だか私も幸せな気持ちになります。
「ぽんすけ、おいで」
朝食のご飯が炊けたので、火を止めて棚から小さな箱を取り出します。
「ぽんすけにプレゼントよ」
駆け寄ってきたぽんすけに見せるようにして、箱を開けました。
赤色で、お星さまの柄が入った新しい首輪。
ぽんすけは、お座りをしてそれをクンクンと匂っています。
「ちょっと待ってね。着けてあげる」
古い首輪を外して、新しいのを着けてあげました。
ピカピカの可愛い首輪を気に入ってくれたのか、嬉しそうに私の頬を舐めました。
「まぁ。ふふふっ。喜んでくれて良かったわ」
それからは、葉子さんが起きてくるまでの間、はしゃぐぽんすけと遊んでいました。
「ハルさーん!」
葉子さんが、パタパタと階段を掛け下りて来ました。
「葉子さん、おはようございます。あら、気付いてくれましたか」
「ありがとうございますー!凄く素敵です。暖かいし」
葉子さんが好きな、青色の毛糸で作ったカーディガン。
冬の間こっそりと編んで、何とかクリスマスに間に合ったので、昨夜のうちに枕元に置いておいた物です。
「ふふっ。気に入っていただけて良かったです。さ、朝ごはんも出来てますよ」
「はーいっ」
葉子さんは上機嫌でお盆を取り出して、私が握ったおにぎりや、お味噌汁を乗せていきました。
「世の中はクリスマスなのねぇ」
里芋をおすそわけに来てくださった栗原さんの奥様が、お茶の入った湯呑みに口をつけました。
「でも、クリスマスってイブの方が本番な気がしません?25日は、終わった感じがしてしまいますー。不思議ですよね、前夜なのに。あー!目が痛いっ」
葉子さんが、玉ねぎを切りながら仰いました。
「サンタさんがくれるプレゼントを楽しみに、ドキドキするからかもしれませんね」
私が言うと、栗原さんは「懐かしいわねぇ」とニコニコしています。
「ハルさん、こっちの具材切れましたよ」
「ありがとうございます」
里芋と玉ねぎ、しめじと鶏肉も入れて和風のグラタンを作っています。
鶏肉は皮から焼き目をつけて。
玉ねぎも、じっくり炒めたら甘味が出ます。
しめじを加えて炒めたら、小麦粉を馴染ませ、牛乳と茹でて潰した里芋とを合わせて煮ます。
ソースにはお味噌で味をつけて、とろみが付いたらグラタン皿に。
チーズをたっぷりと乗せて焼いたら完成。
オーブンを開けると、こんがりと焼き上がったチーズが食欲をそそります。
トロリとした里芋、お味噌で和風に仕上がったグラタンは、冬ならではのメニューですね。
「まぁ、ハイカラねぇ。美味しそう。お父さん、早く来ないかしら」
栗原さんの旦那様は後からいらっしゃるとの事でした。
ちょうどその時、食堂の扉が開きました。
「こんにちは、ハルさん」
「まぁ、とても良いタイミングで。いらっしゃいませ。ちょうどお料理が出来たところなのですよ。おにぎりは何になさいます?」
栗原さんの旦那様を席にご案内して、葉子さんにお茶をお願いしました。
「そうだなぁ・・・昆布でお願いできるかな」
「かしこまりました」
私は奥様の分の梅のおにぎりを作りながら、旦那様のグラタンをオーブンに入れました。
「ハルさん、我が儘言って悪かったね。里芋の料理なんて、困っただろう」
「いえ。煮物以外だなんて、私も滅多に作りませんから楽しかったですよ」
そうして、奥様のグラタンとおにぎりをテーブルに運びました。
「旦那様の分もすぐに出来ますから」
「ありがとう。じゃあ先にいただこうかしらね」
奥様はグラタンに興味津々のご様子でした。
「まぁ、美味しい。お父さん、これとても美味しいですよ」
里芋グラタンを食べて、奥様は笑顔になります。
「食べなれないお料理でしょうから、お口に合うか少し心配でしたけど、そう言っていただけて安心しました。はい、お待たせしました」
お料理をお持ちすると、旦那様は早速「いただきます」とグラタンを食べ「うん、旨い旨い」と気に入ってくださいました。
「葉子さん、そのカーディガン素敵ねぇ」
奥様がおにぎりを食べながら、洗い物をする葉子さんを見て言いました。
「あ、気付きましたか!ハルさんが作ってくれたんですよー」
「へぇ、そうなの。編み物は歳とってからは出来てないわねぇ・・・すぐ疲れちゃうの」
そう言って笑うと、それを見て隣で旦那様も笑いました。
「ハルさん、葉子さん、ごちそうさま。いつも美味しいお料理、ありがとう」
「また食べ飽きた食材があったら持ってくるよ。はははっ」
「もう、お父さんったら・・・あら、ぽんすけも新しい首輪になってるのね」
見送りに出てきたぽんすけの頭を優しく撫でました。
「クリスマスのプレゼントね。良かったわねぇ、よく似合ってるよ」
栗原さんの奥様に撫でられたぽんすけは、嬉しそうに体を擦り寄せていました。
「葉子さんは、お部屋のお掃除は済みましたか?」
「えー・・・あははは」
テーブルを拭きながら、葉子さんは苦笑いをしていました。
「あら、ふふっ。大丈夫ですよ。私もまだ奥の部屋のお掃除が終わってませんから。明日は1日お休みにして、ゆっくりやりましょうか」
「はい!もちろんっ。いやぁ、中々やる気が起こらなくて・・・ハルさんみたいに、自分の部屋くらいは、普段から掃除しておくべきでした。来年からは頑張りますーっ」
「手がまわらなかったら、私もお手伝いしますから。はい、珈琲ここに置いておきますね。お疲れ様でした」
「ありがとうございますー」
布巾を洗って竿に干した葉子さんが、私が座っているテーブルにやって来ました。
お客様が帰られてからの、葉子さんとホッと一息つく瞬間。
寒い冬も、こうして一緒に珈琲を飲んでくれる相手がいると、心まで温まるようです。
勿論ぽんすけの存在も、私にとってとても大切ですよ。
子供達は、昨夜はサンタさんからのプレゼントに心踊らせたでしょうか?
今頃、早起きさんは届いたプレゼントに歓喜しているのかしら。
そんな事を想像するだけで、何だか私も幸せな気持ちになります。
「ぽんすけ、おいで」
朝食のご飯が炊けたので、火を止めて棚から小さな箱を取り出します。
「ぽんすけにプレゼントよ」
駆け寄ってきたぽんすけに見せるようにして、箱を開けました。
赤色で、お星さまの柄が入った新しい首輪。
ぽんすけは、お座りをしてそれをクンクンと匂っています。
「ちょっと待ってね。着けてあげる」
古い首輪を外して、新しいのを着けてあげました。
ピカピカの可愛い首輪を気に入ってくれたのか、嬉しそうに私の頬を舐めました。
「まぁ。ふふふっ。喜んでくれて良かったわ」
それからは、葉子さんが起きてくるまでの間、はしゃぐぽんすけと遊んでいました。
「ハルさーん!」
葉子さんが、パタパタと階段を掛け下りて来ました。
「葉子さん、おはようございます。あら、気付いてくれましたか」
「ありがとうございますー!凄く素敵です。暖かいし」
葉子さんが好きな、青色の毛糸で作ったカーディガン。
冬の間こっそりと編んで、何とかクリスマスに間に合ったので、昨夜のうちに枕元に置いておいた物です。
「ふふっ。気に入っていただけて良かったです。さ、朝ごはんも出来てますよ」
「はーいっ」
葉子さんは上機嫌でお盆を取り出して、私が握ったおにぎりや、お味噌汁を乗せていきました。
「世の中はクリスマスなのねぇ」
里芋をおすそわけに来てくださった栗原さんの奥様が、お茶の入った湯呑みに口をつけました。
「でも、クリスマスってイブの方が本番な気がしません?25日は、終わった感じがしてしまいますー。不思議ですよね、前夜なのに。あー!目が痛いっ」
葉子さんが、玉ねぎを切りながら仰いました。
「サンタさんがくれるプレゼントを楽しみに、ドキドキするからかもしれませんね」
私が言うと、栗原さんは「懐かしいわねぇ」とニコニコしています。
「ハルさん、こっちの具材切れましたよ」
「ありがとうございます」
里芋と玉ねぎ、しめじと鶏肉も入れて和風のグラタンを作っています。
鶏肉は皮から焼き目をつけて。
玉ねぎも、じっくり炒めたら甘味が出ます。
しめじを加えて炒めたら、小麦粉を馴染ませ、牛乳と茹でて潰した里芋とを合わせて煮ます。
ソースにはお味噌で味をつけて、とろみが付いたらグラタン皿に。
チーズをたっぷりと乗せて焼いたら完成。
オーブンを開けると、こんがりと焼き上がったチーズが食欲をそそります。
トロリとした里芋、お味噌で和風に仕上がったグラタンは、冬ならではのメニューですね。
「まぁ、ハイカラねぇ。美味しそう。お父さん、早く来ないかしら」
栗原さんの旦那様は後からいらっしゃるとの事でした。
ちょうどその時、食堂の扉が開きました。
「こんにちは、ハルさん」
「まぁ、とても良いタイミングで。いらっしゃいませ。ちょうどお料理が出来たところなのですよ。おにぎりは何になさいます?」
栗原さんの旦那様を席にご案内して、葉子さんにお茶をお願いしました。
「そうだなぁ・・・昆布でお願いできるかな」
「かしこまりました」
私は奥様の分の梅のおにぎりを作りながら、旦那様のグラタンをオーブンに入れました。
「ハルさん、我が儘言って悪かったね。里芋の料理なんて、困っただろう」
「いえ。煮物以外だなんて、私も滅多に作りませんから楽しかったですよ」
そうして、奥様のグラタンとおにぎりをテーブルに運びました。
「旦那様の分もすぐに出来ますから」
「ありがとう。じゃあ先にいただこうかしらね」
奥様はグラタンに興味津々のご様子でした。
「まぁ、美味しい。お父さん、これとても美味しいですよ」
里芋グラタンを食べて、奥様は笑顔になります。
「食べなれないお料理でしょうから、お口に合うか少し心配でしたけど、そう言っていただけて安心しました。はい、お待たせしました」
お料理をお持ちすると、旦那様は早速「いただきます」とグラタンを食べ「うん、旨い旨い」と気に入ってくださいました。
「葉子さん、そのカーディガン素敵ねぇ」
奥様がおにぎりを食べながら、洗い物をする葉子さんを見て言いました。
「あ、気付きましたか!ハルさんが作ってくれたんですよー」
「へぇ、そうなの。編み物は歳とってからは出来てないわねぇ・・・すぐ疲れちゃうの」
そう言って笑うと、それを見て隣で旦那様も笑いました。
「ハルさん、葉子さん、ごちそうさま。いつも美味しいお料理、ありがとう」
「また食べ飽きた食材があったら持ってくるよ。はははっ」
「もう、お父さんったら・・・あら、ぽんすけも新しい首輪になってるのね」
見送りに出てきたぽんすけの頭を優しく撫でました。
「クリスマスのプレゼントね。良かったわねぇ、よく似合ってるよ」
栗原さんの奥様に撫でられたぽんすけは、嬉しそうに体を擦り寄せていました。
「葉子さんは、お部屋のお掃除は済みましたか?」
「えー・・・あははは」
テーブルを拭きながら、葉子さんは苦笑いをしていました。
「あら、ふふっ。大丈夫ですよ。私もまだ奥の部屋のお掃除が終わってませんから。明日は1日お休みにして、ゆっくりやりましょうか」
「はい!もちろんっ。いやぁ、中々やる気が起こらなくて・・・ハルさんみたいに、自分の部屋くらいは、普段から掃除しておくべきでした。来年からは頑張りますーっ」
「手がまわらなかったら、私もお手伝いしますから。はい、珈琲ここに置いておきますね。お疲れ様でした」
「ありがとうございますー」
布巾を洗って竿に干した葉子さんが、私が座っているテーブルにやって来ました。
お客様が帰られてからの、葉子さんとホッと一息つく瞬間。
寒い冬も、こうして一緒に珈琲を飲んでくれる相手がいると、心まで温まるようです。
勿論ぽんすけの存在も、私にとってとても大切ですよ。
0
お気に入りに追加
206
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。


完結 愛のない結婚ですが、何も問題ありません旦那様!
音爽(ネソウ)
恋愛
「私と契約しないか」そう言われた幼い貧乏令嬢14歳は頷く他なかった。
愛人を秘匿してきた公爵は世間を欺くための結婚だと言う、白い結婚を望むのならばそれも由と言われた。
「優遇された契約婚になにを躊躇うことがあるでしょう」令嬢は快く承諾したのである。
ところがいざ結婚してみると令嬢は勤勉で朗らかに笑い、たちまち屋敷の者たちを魅了してしまう。
「奥様はとても素晴らしい、誰彼隔てなく優しくして下さる」
従者たちの噂を耳にした公爵は奥方に興味を持ち始め……
心の落とし物
緋色刹那
ライト文芸
・完結済み(2024/10/12)。また書きたくなったら、番外編として投稿するかも
・第4回、第5回ライト文芸大賞にて奨励賞をいただきました!!✌︎('ω'✌︎ )✌︎('ω'✌︎ )
〈本作の楽しみ方〉
本作は読む喫茶店です。順に読んでもいいし、興味を持ったタイトルや季節から読んでもオッケーです。
知らない人、知らない設定が出てきて不安になるかもしれませんが、喫茶店の常連さんのようなものなので、雰囲気を楽しんでください(一応説明↓)。
〈あらすじ〉
〈心の落とし物〉はありませんか?
どこかに失くした物、ずっと探している人、過去の後悔、忘れていた夢。
あなたは忘れているつもりでも、心があなたの代わりに探し続けているかもしれません……。
喫茶店LAMP(ランプ)の店長、添野由良(そえのゆら)は、人の未練が具現化した幻〈心の落とし物(こころのおとしもの)〉と、それを探す生き霊〈探し人(さがしびと)〉に気づきやすい体質。
ある夏の日、由良は店の前を何度も通る男性に目を止め、声をかける。男性は数年前に移転した古本屋を探していて……。
懐かしくも切ない、過去の未練に魅せられる。
〈主人公と作中用語〉
・添野由良(そえのゆら)
洋燈町にある喫茶店LAMP(ランプ)の店長。〈心の落とし物〉や〈探し人〉に気づきやすい体質。
・〈心の落とし物(こころのおとしもの)〉
人の未練が具現化した幻。あるいは、未練そのもの。
・〈探し人(さがしびと)〉
〈心の落とし物〉を探す生き霊で、落とし主。当人に代わって、〈心の落とし物〉を探している。
・〈未練溜まり(みれんだまり)〉
忘れられた〈心の落とし物〉が行き着く場所。
・〈分け御霊(わけみたま)〉
生者の後悔や未練が物に宿り、具現化した者。込められた念が強ければ強いほど、人のように自由意志を持つ。いわゆる付喪神に近い。
イチゴ
高本 顕杜
ライト文芸
イチゴが落ちていく――、そのイチゴだけは!!
イチゴ農家の陽一が丹精込めて育てていたイチゴの株。その株のイチゴが落ちていってしまう――。必至で手を伸ばしキャッチしようとするも、そこへあるのモノが割りこんできて……。
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる