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大人になった子供たち
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防波堤に打ち付けられる波が、ザッという音と共に飛沫をあげる。
島についた船が最後にぐらりと大きく揺れて落ち着くのを待ってから港に降り立った。
島の空気を大きく吸い込むと、蝉の鳴き声までもが、かつての懐かしい情景を呼び起こす。
「ねぇ、早く行こう!」
4歳の小さな手が夫の掌を掴んで急かしている。
「あっ、夏子!道わかんないでしょ?」
引き留めようとするも、行く気満々の振り返りすらしない娘は足を止めるつもりはないらしい。
「大丈夫だよ。俺がわかるから。先行ってるから、ゆっくり来て」
港を出たところで道がわからず立ち止まった娘の手をとった夫は、私の実家に向かって歩き始めた。
「おばーちゃーん!」
広い廊下に娘の声が反響する。
「あらぁ、おかえり。夏子ちゃん、元気ねぇ」
杖をついた母が、古い板間の床を軋ませながら出迎えてくれた。
「お母さん、足どう?」
「うん、まぁもう年だからねぇ。だけど車イスは出来るだけ使わないで、これで日常生活出来てるのよ」
得意気に杖でトントンと床を叩いて見せた母は、「ほら、入って」と手招きした。
「お、いらっしゃい。ちょうどお茶淹れたところだよ」
父が氷の入ったお茶のグラスをお盆に乗せ、台所から出てきた。
「おじゃまします」
夫が父に頭を下げると、母がクスクスと笑った。
「もう、他人じゃ無いんだから。良太君のご実家にも行くんでしょう?」
「はい。後で少し顔だけ出してきます」
「あらぁ、駄目よ。お母様を早くに亡くして、良太君が島を出てからはお父様おひとりで暮らしているんでしょう?帰ってくるのを楽しみにしてるわよ。うちはいくらでも居てくれて構わないけれど。まぁ、夏休みは長いから、時間はたっぷりあるけどね」
そういうと母は「ねーっ」と娘の頭を撫でた。
「そう言えば、友達には会ったか?」
父が床に放り出した新聞紙を畳みながら言った。
「え?ううん、まだだよ」
「さっき来てたんだがなぁ」
父の言葉に、私と夫の良太は思わず目を合わせた。
「ほら、夏子もおいで」
「うん。あ、それ鳴らす!」
私と良太の間に夏子が正座をする。
「ひいおじいちゃん!ひいおばあちゃん!」
夏子が仏間の壁に飾られた遺影を見上げた。
鈴を鳴らした夏子は、その小さな手を揃えたかと思うと「夏子ですよ!ただいま!」と大きな声で言った。
「ちょっ、夏子」
私が驚いていると、居間にいた母と父が笑っていた。
「良いのよ、ひ孫の元気な声を聞いたら喜ぶわよ」
「あぁ。二人とも子供が好きだったしね。ひいおじいちゃん、夏子ちゃんに会えなかったから今頃喜んでるんじゃないかな」
父の言葉に「そうねぇ」と母が懐かしむように遺影を見上げた。
優しくて大好きだった私のおじいちゃんとおばあちゃんの笑顔が私たちを見守っているようだった。
その時、開けっぱなしの玄関に誰かが入ってくる音が聞こえた。
「すみませーん。もう亜子来ましたー?」
「えっ。あ!友明!」
廊下に顔を出すと、玄関先には友明だけではなく真理や可奈子の姿があった。
「おう、久しぶり!良太もおっさんになったなぁ」
「お互いさまだろ」
良太が呆れてそう言う足元を、夏子がすり抜けるようにして友明達の元へと駆け出した。
「いらっしゃーい!」
「お?!二人の子供か!昔の良太にそっくりじゃん」
「かわいーぃ!!」
駆け寄った夏子を可奈子が抱き上げ、真理は目尻を下げ小さな声で「ほっぺ・・・すべすべだぁ」とその頬をつんつん触っていた。
「さっき来たんだけど早かったみたいでさ。今見たら、港に船あったから来てみたんだ」
「ごめんね、今日暑いのに無駄足ふませちゃって。どうぞ、あがって」
友明は「いや、用があってさ」と、首を横に振った。
「着いたところ早速で悪いんだけど、神社の方行こうぜ。見せたいものがあるんだよ」
「神社?」
良太が不思議そうに聞き返すも、「良いから早く早く」と急かされてしまった。
「あっ、お母さん見て!あれ、トウモロコシ?」
「ん?あぁ、うん。そうだよ、おじいちゃんの・・・元はひいおじいちゃんの畑だよ」
「へぇ!そうなんだぁ、夏子もお手伝いしたいなぁ」
「じゃあ、後でおじいちゃんに頼んでみよっか」
「うん!!」
嬉しそうな夏子の顔に、自分がおじいちゃんの畑が大好きでよく手伝っていた時の事を思い出す。
一緒に元気に育った野菜を収穫して、篭を担いで家まで歩いたこの道。
帰ったらおばあちゃんが庭で野菜を冷やしてくれている姿。
あの時と変わらない空の色と、島の匂いに思わず涙をこらえた。
「ほら亜子、ここ覚えてるか?」
鳥居の手前にある古い建物を指差して友明が言った。
当時もすでに古かった木造の家屋は、時の流れによって傾きかけている。
薄くなった文字だが、今もわかる駄菓子・雑貨屋 タケちゃんの看板。
埃や汚れがついて曇ってしまったガラス戸の向こうはがらんとしているが、奥に和室が見える。
タケちゃんがラジオを聴く姿はもう見ることが出来ない。
環境は変われど同じような毎日を繰り返してきた私だったが、確実に時は流れていて、こうして昔当たり前だった風景が無くなっていく現実に胸が苦しくなる。
「亜子、大丈夫?」
「お母さん、元気ないよ」
良太と夏子が心配そうに顔を覗きこんだ。
「あっ、ごめんね。大丈夫だよ。懐かしくて、ちょっと寂しくなっちゃった」
苦笑いする私の手を夏子が「だーいじょうぶっ」と握りしめた。
それから私たちは鳥居をくぐり、山道を登っていった。
「あっつーー!」
陵徳神社こ狛犬までたどり着いた私は、額から流れ落ちる汗をハンカチで拭く。
階段の途中で根を上げた夏子は、良太に抱っこしてもらい、頭上で鳴きわめく蝉を探すようにキョロキョロしている。
「な、何か子供の時ってもっと楽に登ってた気がするんだけどな」
良太は夏子を下ろし、その場にしゃがみこんでしまった。
「ほら、あれ」
「・・・え?あんなのあったっけ」
友明が示す方にはこの神社の御神木がある。
その隣には小さな祠があった。
「あれさ、俺ら島の人間で作ったんだぜ」
「私と真理は作ってる友明達に飲み物運んできたくらいだけどね」
自然の中で遊ぶ経験が少ない夏子は、おおはしゃぎで走り回っていた。
「でも、何で?それに昔みたいな雑草だらけでも無くなってる」
「それは、島の若くて元気な人たちで定期的にお掃除するようになったから・・・だよ」
真理は続けて「60歳くらいの人もいるんだけどね」と苦笑いした。
「亜子が居なくなった時あっただろ?後々、神隠しだって言われてさ。昔から時々不思議な事があったらしいし、この島を守ってくれてる神様だからちゃんとしないとって話になったんだよ」
「ここまでの参道ももう少し綺麗にして歩きやすくする予定なんだよ。そうしたら、夏祭りくらいやりたいねって言ってるんだぁ」
可奈子が嬉しそうにそう言った。
「おかーさーん!この木、根っこが夏子の腕よりおおきーい!あっ。虫がいる!」
夏子が指差す先には、がっしりとした体格で力強く木を上るカブトムシが居た。
「カブトムシだね。こんなに大きいの、夏子は見たことないんじゃないかな」
良太がそっと手にとって夏子に見せると、少し怖いのか夏子は後退りして触ろうとはしなかった。
そんな夏子の姿に思わず私たちは笑みがこぼれた。
それから私たち家族は家に戻り、夜には友明たちも誘って一緒に夕飯を食べた。
夏子はお風呂にあったヘチマを乾燥させたヘチマたわしが気になって仕方無かったらしく、中々お風呂から上がろうとしなかった。
「この網なーに?」
夏子が天井から吊るされた蚊帳を掴んで不思議そうに揺らしている。
「寝てるときに虫に刺されない為のものだよ。ほら、こうして」
ぱんぱんと振ってから中にさっと潜るようにして入る私の姿に夏子が目を輝かせていた。
「夏子もやる!」
それからは、はしゃぐ娘を落ち着かせ布団に横になると、開けた窓から下の縁側に吊るしてある南部鉄の風鈴の音が聞こえてくる。
リン・・・チリン・・・
そんな優しい音色と、虫の鳴き声を聞いていると、おばあちゃんが今にもそっと襖を開けて入ってくるんじゃないかと思えてくる。
隣で小さな娘が眠りに落ちていく姿を見ていると、何とも不思議な気持ちになる。
1階で父と晩酌する良太の笑い声が聞こえてきた。
そんなゆっくり流れる島の時間に身をゆだね、眠りについた。
寂しい思いをする子供にだけ見える神様は、きっと、神様自身も寂しかったのだろうか。
人が手入れすることもなく、誰かがお参りに来ることも少ない神社の神様。
きっと途中から見えなくなったのは、私が友明たちと仲良くなったからだろう。
あの祠を作って貰った神様は、何を思うのだろう。
そんな事を、眠りに落ちる中ずっと考えていた。
そうしていると、風鈴の音でもなく、虫の鳴き声でも無い乾いたあの音が、かすかに聞こえた気がした。
島についた船が最後にぐらりと大きく揺れて落ち着くのを待ってから港に降り立った。
島の空気を大きく吸い込むと、蝉の鳴き声までもが、かつての懐かしい情景を呼び起こす。
「ねぇ、早く行こう!」
4歳の小さな手が夫の掌を掴んで急かしている。
「あっ、夏子!道わかんないでしょ?」
引き留めようとするも、行く気満々の振り返りすらしない娘は足を止めるつもりはないらしい。
「大丈夫だよ。俺がわかるから。先行ってるから、ゆっくり来て」
港を出たところで道がわからず立ち止まった娘の手をとった夫は、私の実家に向かって歩き始めた。
「おばーちゃーん!」
広い廊下に娘の声が反響する。
「あらぁ、おかえり。夏子ちゃん、元気ねぇ」
杖をついた母が、古い板間の床を軋ませながら出迎えてくれた。
「お母さん、足どう?」
「うん、まぁもう年だからねぇ。だけど車イスは出来るだけ使わないで、これで日常生活出来てるのよ」
得意気に杖でトントンと床を叩いて見せた母は、「ほら、入って」と手招きした。
「お、いらっしゃい。ちょうどお茶淹れたところだよ」
父が氷の入ったお茶のグラスをお盆に乗せ、台所から出てきた。
「おじゃまします」
夫が父に頭を下げると、母がクスクスと笑った。
「もう、他人じゃ無いんだから。良太君のご実家にも行くんでしょう?」
「はい。後で少し顔だけ出してきます」
「あらぁ、駄目よ。お母様を早くに亡くして、良太君が島を出てからはお父様おひとりで暮らしているんでしょう?帰ってくるのを楽しみにしてるわよ。うちはいくらでも居てくれて構わないけれど。まぁ、夏休みは長いから、時間はたっぷりあるけどね」
そういうと母は「ねーっ」と娘の頭を撫でた。
「そう言えば、友達には会ったか?」
父が床に放り出した新聞紙を畳みながら言った。
「え?ううん、まだだよ」
「さっき来てたんだがなぁ」
父の言葉に、私と夫の良太は思わず目を合わせた。
「ほら、夏子もおいで」
「うん。あ、それ鳴らす!」
私と良太の間に夏子が正座をする。
「ひいおじいちゃん!ひいおばあちゃん!」
夏子が仏間の壁に飾られた遺影を見上げた。
鈴を鳴らした夏子は、その小さな手を揃えたかと思うと「夏子ですよ!ただいま!」と大きな声で言った。
「ちょっ、夏子」
私が驚いていると、居間にいた母と父が笑っていた。
「良いのよ、ひ孫の元気な声を聞いたら喜ぶわよ」
「あぁ。二人とも子供が好きだったしね。ひいおじいちゃん、夏子ちゃんに会えなかったから今頃喜んでるんじゃないかな」
父の言葉に「そうねぇ」と母が懐かしむように遺影を見上げた。
優しくて大好きだった私のおじいちゃんとおばあちゃんの笑顔が私たちを見守っているようだった。
その時、開けっぱなしの玄関に誰かが入ってくる音が聞こえた。
「すみませーん。もう亜子来ましたー?」
「えっ。あ!友明!」
廊下に顔を出すと、玄関先には友明だけではなく真理や可奈子の姿があった。
「おう、久しぶり!良太もおっさんになったなぁ」
「お互いさまだろ」
良太が呆れてそう言う足元を、夏子がすり抜けるようにして友明達の元へと駆け出した。
「いらっしゃーい!」
「お?!二人の子供か!昔の良太にそっくりじゃん」
「かわいーぃ!!」
駆け寄った夏子を可奈子が抱き上げ、真理は目尻を下げ小さな声で「ほっぺ・・・すべすべだぁ」とその頬をつんつん触っていた。
「さっき来たんだけど早かったみたいでさ。今見たら、港に船あったから来てみたんだ」
「ごめんね、今日暑いのに無駄足ふませちゃって。どうぞ、あがって」
友明は「いや、用があってさ」と、首を横に振った。
「着いたところ早速で悪いんだけど、神社の方行こうぜ。見せたいものがあるんだよ」
「神社?」
良太が不思議そうに聞き返すも、「良いから早く早く」と急かされてしまった。
「あっ、お母さん見て!あれ、トウモロコシ?」
「ん?あぁ、うん。そうだよ、おじいちゃんの・・・元はひいおじいちゃんの畑だよ」
「へぇ!そうなんだぁ、夏子もお手伝いしたいなぁ」
「じゃあ、後でおじいちゃんに頼んでみよっか」
「うん!!」
嬉しそうな夏子の顔に、自分がおじいちゃんの畑が大好きでよく手伝っていた時の事を思い出す。
一緒に元気に育った野菜を収穫して、篭を担いで家まで歩いたこの道。
帰ったらおばあちゃんが庭で野菜を冷やしてくれている姿。
あの時と変わらない空の色と、島の匂いに思わず涙をこらえた。
「ほら亜子、ここ覚えてるか?」
鳥居の手前にある古い建物を指差して友明が言った。
当時もすでに古かった木造の家屋は、時の流れによって傾きかけている。
薄くなった文字だが、今もわかる駄菓子・雑貨屋 タケちゃんの看板。
埃や汚れがついて曇ってしまったガラス戸の向こうはがらんとしているが、奥に和室が見える。
タケちゃんがラジオを聴く姿はもう見ることが出来ない。
環境は変われど同じような毎日を繰り返してきた私だったが、確実に時は流れていて、こうして昔当たり前だった風景が無くなっていく現実に胸が苦しくなる。
「亜子、大丈夫?」
「お母さん、元気ないよ」
良太と夏子が心配そうに顔を覗きこんだ。
「あっ、ごめんね。大丈夫だよ。懐かしくて、ちょっと寂しくなっちゃった」
苦笑いする私の手を夏子が「だーいじょうぶっ」と握りしめた。
それから私たちは鳥居をくぐり、山道を登っていった。
「あっつーー!」
陵徳神社こ狛犬までたどり着いた私は、額から流れ落ちる汗をハンカチで拭く。
階段の途中で根を上げた夏子は、良太に抱っこしてもらい、頭上で鳴きわめく蝉を探すようにキョロキョロしている。
「な、何か子供の時ってもっと楽に登ってた気がするんだけどな」
良太は夏子を下ろし、その場にしゃがみこんでしまった。
「ほら、あれ」
「・・・え?あんなのあったっけ」
友明が示す方にはこの神社の御神木がある。
その隣には小さな祠があった。
「あれさ、俺ら島の人間で作ったんだぜ」
「私と真理は作ってる友明達に飲み物運んできたくらいだけどね」
自然の中で遊ぶ経験が少ない夏子は、おおはしゃぎで走り回っていた。
「でも、何で?それに昔みたいな雑草だらけでも無くなってる」
「それは、島の若くて元気な人たちで定期的にお掃除するようになったから・・・だよ」
真理は続けて「60歳くらいの人もいるんだけどね」と苦笑いした。
「亜子が居なくなった時あっただろ?後々、神隠しだって言われてさ。昔から時々不思議な事があったらしいし、この島を守ってくれてる神様だからちゃんとしないとって話になったんだよ」
「ここまでの参道ももう少し綺麗にして歩きやすくする予定なんだよ。そうしたら、夏祭りくらいやりたいねって言ってるんだぁ」
可奈子が嬉しそうにそう言った。
「おかーさーん!この木、根っこが夏子の腕よりおおきーい!あっ。虫がいる!」
夏子が指差す先には、がっしりとした体格で力強く木を上るカブトムシが居た。
「カブトムシだね。こんなに大きいの、夏子は見たことないんじゃないかな」
良太がそっと手にとって夏子に見せると、少し怖いのか夏子は後退りして触ろうとはしなかった。
そんな夏子の姿に思わず私たちは笑みがこぼれた。
それから私たち家族は家に戻り、夜には友明たちも誘って一緒に夕飯を食べた。
夏子はお風呂にあったヘチマを乾燥させたヘチマたわしが気になって仕方無かったらしく、中々お風呂から上がろうとしなかった。
「この網なーに?」
夏子が天井から吊るされた蚊帳を掴んで不思議そうに揺らしている。
「寝てるときに虫に刺されない為のものだよ。ほら、こうして」
ぱんぱんと振ってから中にさっと潜るようにして入る私の姿に夏子が目を輝かせていた。
「夏子もやる!」
それからは、はしゃぐ娘を落ち着かせ布団に横になると、開けた窓から下の縁側に吊るしてある南部鉄の風鈴の音が聞こえてくる。
リン・・・チリン・・・
そんな優しい音色と、虫の鳴き声を聞いていると、おばあちゃんが今にもそっと襖を開けて入ってくるんじゃないかと思えてくる。
隣で小さな娘が眠りに落ちていく姿を見ていると、何とも不思議な気持ちになる。
1階で父と晩酌する良太の笑い声が聞こえてきた。
そんなゆっくり流れる島の時間に身をゆだね、眠りについた。
寂しい思いをする子供にだけ見える神様は、きっと、神様自身も寂しかったのだろうか。
人が手入れすることもなく、誰かがお参りに来ることも少ない神社の神様。
きっと途中から見えなくなったのは、私が友明たちと仲良くなったからだろう。
あの祠を作って貰った神様は、何を思うのだろう。
そんな事を、眠りに落ちる中ずっと考えていた。
そうしていると、風鈴の音でもなく、虫の鳴き声でも無い乾いたあの音が、かすかに聞こえた気がした。
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