夏物語

如月つばさ

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夏休みの物語

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「こらぁっ!!友明っ!」


「げっ!とーちゃんだ、逃げるぞ!」


「ま、待って!」


怖い顔をした友明のお父さんがこちらに向かってくる。


「あっ!か、鞄が」


掛けていた鞄のヒモが操縦席に引っ掛かり、身動きがとれずにもたついていると、後ろにいた良太がスッと手を伸ばして外してくれた。


「ほら、亜子ちゃん。取れたよ」


「ごめん、ありがとう」


先に船から飛び出していた友明が「早く!」とドアの向こうから急かしてきた。


「ともあきーーー」


「と、とーちゃん」


「勝手に船に乗るなって言っただろう!」


おじさんが鬼のような顔と迫力で友明を睨み付けた。


「ほ、ほら。俺、将来は漁師になるしさ。みんなに漁師のかっこよさを・・・」





罰として私たちは、おじさんの船の掃除をさせられることとなった。




私が神隠しにあい、見つかってからは島の子供達と打ち解ける事ができた。


というよりも、友明が半ば強引に遊ぶ約束をしてきたり、家にまで押し掛け、朝っぱらからうちでおにぎりを食べていることもあるのだ。


そうしているうちに、おじいちゃんの畑の手伝いを皆とするようにもなっていた。



ラジオ体操をして


海に潜ったり、釣りをしたり。


駄菓子屋でホームランバーを食べ、タケちゃんに小言を言われたり。


蝉やカブトムシなど、虫を追いかけ捕まえて


昼には縁側の風鈴の音に耳を傾けながら、スイカを食べる。


ザリガニを釣り、また野山を駆け回った。


仲良くなってからの夏休みは毎日が輝いて、

空も、浮かぶ入道雲も眩しいほど美しく見えた。



あれ以来、すっかり私はコロコロを見かけることが無くなっていた。


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