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魔界暦975年 一の月
南の砦
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南方の獣人族の一派が反旗を翻し、直轄領内、南端にある砦に侵攻中であるという情報がアフレイド城に届いた。
「私が自ら出陣しよう」
「陛下自ら出る必要はございません。獣人族の相手なら、ドグラにお任せすれば、反旗を翻した者もさすがに躊躇しましょう。ドグラ自身も忠誠を示す絶好の機会。良き働きが期待できましょう」
ラウナスは首を横に振った。
「いや、ドグラが裏切ることはないだろう。彼の忠義を疑うような不敬は、反対に疑心を生むやもしれん。ドグラには村の防備を任せよ。それだけで良い。砦は、そなたの息子が守っているんだったな」
「はい、陛下。サルファーは愚息なれど、死を厭わぬ働きをするはずでございます」
「守りに徹しろと命じろ。打って出るな、と。良いな?」
「仰せのままに」
「サルファーは戦闘タイプだったな?斧が得意で、指揮官の中でもかなりの豪傑」
「私とは違い、武勇に秀でておりますが、知恵が足りませぬ。指揮官としては、そこが不安な要素です」
サルトルは渋い顔をした。
「厳しいな、息子に対しても。私が行くまで、防御に徹しろ。魔法を行使しても構わないが、今回は早馬で迎うとしよう」
「すぐに手配を。今回は誰か護衛に付けましょう」
「護衛は必要ない。マナミとアリシアを連れて行く」
「マナミはともかく、アリシアはただの奴隷。戦力になりませぬ」
「いや、アリシアは私が調教する。玩具としてだけでなく、戦士としても鍛える」
サルトルは意見を述べてもラウナスの決断には逆らわない。それが忠臣の勤めとよく理解している。
南の砦には何度も獣人族が攻め込んで来たが、サルファーはその度に撃退した。彼の配下の中には、打って出て一気に殲滅しようと進言する者もいたが、サルファーは動かなかった。
サルトルから念を押されていたこともあるが、魔王ラウナスが自ら出陣すると聞いていたからである。
新たな魔王が主君として相応しいかどうか見極めたいという思いが強い。
父であるサルトルには野心がなく、それもまた尊敬すべき態度であるが、サルファー自身は野心を捨て切れずにいた。
「申し上げます。陛下が只今、こちらに到着なさいました」
サルファーはすぐに迎えに上がろうとして、立ち上がったが、軍議室の入り口にラウナスの姿が現れた。
「陛下、申し訳ございません。お迎えにも上がらずに」
深々と頭を下げるサルファー。
「気にするな。私が迎えは良いと言ったからだ。配下の者を叱るでないぞ」
「はい、分かりました」
マナミが下座の椅子を引くと、ラウナスはそこに座った。
「陛下、こちらの席に」
慌てるサイファーに微笑み掛けて言った。
「くだらぬ。上座も下座も興味はない。そなたが私の仲間であり、忠臣であるなら、何の問題もない」
サイファーは少し恐怖を感じた。
魔王ラウナスは彼の野心に気付いているのかもしれない。その故に自ら前線へ。父サルトルですら、気付いておらぬはずなのに。
「明日の朝、私が自ら出陣する。今宵はゆっくり休ませてもらうが、防備を宜しく頼むぞ」
「御意」
「敵の数は1000程度と聞いているが」
「その通りです。攻撃を仕掛けて来るのは、その内の200程度です」
ラウナスはそれ以上何も言わずに、軍議室を出て寝所へと向かった。武装されたマナミとアリシアを引き連れて。
「私が自ら出陣しよう」
「陛下自ら出る必要はございません。獣人族の相手なら、ドグラにお任せすれば、反旗を翻した者もさすがに躊躇しましょう。ドグラ自身も忠誠を示す絶好の機会。良き働きが期待できましょう」
ラウナスは首を横に振った。
「いや、ドグラが裏切ることはないだろう。彼の忠義を疑うような不敬は、反対に疑心を生むやもしれん。ドグラには村の防備を任せよ。それだけで良い。砦は、そなたの息子が守っているんだったな」
「はい、陛下。サルファーは愚息なれど、死を厭わぬ働きをするはずでございます」
「守りに徹しろと命じろ。打って出るな、と。良いな?」
「仰せのままに」
「サルファーは戦闘タイプだったな?斧が得意で、指揮官の中でもかなりの豪傑」
「私とは違い、武勇に秀でておりますが、知恵が足りませぬ。指揮官としては、そこが不安な要素です」
サルトルは渋い顔をした。
「厳しいな、息子に対しても。私が行くまで、防御に徹しろ。魔法を行使しても構わないが、今回は早馬で迎うとしよう」
「すぐに手配を。今回は誰か護衛に付けましょう」
「護衛は必要ない。マナミとアリシアを連れて行く」
「マナミはともかく、アリシアはただの奴隷。戦力になりませぬ」
「いや、アリシアは私が調教する。玩具としてだけでなく、戦士としても鍛える」
サルトルは意見を述べてもラウナスの決断には逆らわない。それが忠臣の勤めとよく理解している。
南の砦には何度も獣人族が攻め込んで来たが、サルファーはその度に撃退した。彼の配下の中には、打って出て一気に殲滅しようと進言する者もいたが、サルファーは動かなかった。
サルトルから念を押されていたこともあるが、魔王ラウナスが自ら出陣すると聞いていたからである。
新たな魔王が主君として相応しいかどうか見極めたいという思いが強い。
父であるサルトルには野心がなく、それもまた尊敬すべき態度であるが、サルファー自身は野心を捨て切れずにいた。
「申し上げます。陛下が只今、こちらに到着なさいました」
サルファーはすぐに迎えに上がろうとして、立ち上がったが、軍議室の入り口にラウナスの姿が現れた。
「陛下、申し訳ございません。お迎えにも上がらずに」
深々と頭を下げるサルファー。
「気にするな。私が迎えは良いと言ったからだ。配下の者を叱るでないぞ」
「はい、分かりました」
マナミが下座の椅子を引くと、ラウナスはそこに座った。
「陛下、こちらの席に」
慌てるサイファーに微笑み掛けて言った。
「くだらぬ。上座も下座も興味はない。そなたが私の仲間であり、忠臣であるなら、何の問題もない」
サイファーは少し恐怖を感じた。
魔王ラウナスは彼の野心に気付いているのかもしれない。その故に自ら前線へ。父サルトルですら、気付いておらぬはずなのに。
「明日の朝、私が自ら出陣する。今宵はゆっくり休ませてもらうが、防備を宜しく頼むぞ」
「御意」
「敵の数は1000程度と聞いているが」
「その通りです。攻撃を仕掛けて来るのは、その内の200程度です」
ラウナスはそれ以上何も言わずに、軍議室を出て寝所へと向かった。武装されたマナミとアリシアを引き連れて。
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