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魔界暦975年 一の月
反乱分子
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魔界で君臨するのは容易な仕事ではない。魔界全てを直轄領として統治するのはあまりに非効率で、委任統治するしかないのだが、地方支配に忠臣を任官してもその取り巻きが利己的な行動に走り、腐敗の温床を密かに構築していく。
さらに忠臣の一族が必ずしも忠誠を誓い続けるかも怪しい。知性がある魔物は、少なからず利己的な思考に染まり、忠誠心で抑制しようとするが、魔物の忠義など人間のそれの比ではなく、非常に低い。
もちろん例外はあるのだが。
「南方で獣人族の一部が反旗を翻し、独立した模様です。すぐに鎮圧部隊を派遣しますが、時間が掛かるかもしれません」
サルトルは不機嫌な様子で報告した。
「放っておけ」
ラウナスは即答する。
「はい?」
間違いなく聞こえたはずなのに、サルトルは聞き返した。
「そこに反乱分子が集まれば、好都合だろう。ただし、直轄領内の反乱分子には注意しろ」
「かしこまりました」
サルトルは次の言葉を待っている。
「南方の地は経済的に独立してはいない。交易を全て阻止し、直轄領の商業圏から排除しろ。あと、降伏してきた者は受け入れろ。ただし、その代償として何かしら働かせるんだ」
「御意」
サルトルは微笑む。
「陛下、魔王即位の折から、ここまで見通しいたのですか?」
「まさか。買い被りすぎだ。単純に直轄領以外はいずれ私に牙を向けるのは明白。何か良い統治の仕方が必要だとは思っていたが。まずは有能な部下が欲しいな」
「早急に有能な者を選抜致します」
「あぁ、でも気負わなくて良い。直轄領内の安定が最優先だ」
「心得ております」
サルトルは一礼して足早に去って行った。
ここのところ執務室にて真面目に政務に取り組んでいるが、厄介な事が多い。
扉が開き、マナミが台車を押しながら入って来た。
「陛下、お疲れのご様子ですが、大丈夫ですか?」
「気晴らしに何処か出掛けたいが、さすがにサルトルに怒られてしまう」
「陛下が魔王でございます」
「いや、面倒事をいつもサルトルに任せているのだから、たまにはちゃんと働かないとな」
マナミは微笑む。
「陛下の献身ですね」
ラウナスも笑った。
「ところで、マナミ」
「はい、陛下」
「アリシアと剣術の鍛錬に励め。魔術だけでなく」
「かしこまりました」
「念の為に言っておくが、アリシアを寵愛しているわけではない」
ここ最近、アリシアの身体を味わう時間が多い。マナミもその身で奉仕することがあるが、優秀な部下であるが故に、どうにもラウナスの支配欲を満たせない。その一点でアリシアは都合の良い存在だった。
さらに忠臣の一族が必ずしも忠誠を誓い続けるかも怪しい。知性がある魔物は、少なからず利己的な思考に染まり、忠誠心で抑制しようとするが、魔物の忠義など人間のそれの比ではなく、非常に低い。
もちろん例外はあるのだが。
「南方で獣人族の一部が反旗を翻し、独立した模様です。すぐに鎮圧部隊を派遣しますが、時間が掛かるかもしれません」
サルトルは不機嫌な様子で報告した。
「放っておけ」
ラウナスは即答する。
「はい?」
間違いなく聞こえたはずなのに、サルトルは聞き返した。
「そこに反乱分子が集まれば、好都合だろう。ただし、直轄領内の反乱分子には注意しろ」
「かしこまりました」
サルトルは次の言葉を待っている。
「南方の地は経済的に独立してはいない。交易を全て阻止し、直轄領の商業圏から排除しろ。あと、降伏してきた者は受け入れろ。ただし、その代償として何かしら働かせるんだ」
「御意」
サルトルは微笑む。
「陛下、魔王即位の折から、ここまで見通しいたのですか?」
「まさか。買い被りすぎだ。単純に直轄領以外はいずれ私に牙を向けるのは明白。何か良い統治の仕方が必要だとは思っていたが。まずは有能な部下が欲しいな」
「早急に有能な者を選抜致します」
「あぁ、でも気負わなくて良い。直轄領内の安定が最優先だ」
「心得ております」
サルトルは一礼して足早に去って行った。
ここのところ執務室にて真面目に政務に取り組んでいるが、厄介な事が多い。
扉が開き、マナミが台車を押しながら入って来た。
「陛下、お疲れのご様子ですが、大丈夫ですか?」
「気晴らしに何処か出掛けたいが、さすがにサルトルに怒られてしまう」
「陛下が魔王でございます」
「いや、面倒事をいつもサルトルに任せているのだから、たまにはちゃんと働かないとな」
マナミは微笑む。
「陛下の献身ですね」
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「ところで、マナミ」
「はい、陛下」
「アリシアと剣術の鍛錬に励め。魔術だけでなく」
「かしこまりました」
「念の為に言っておくが、アリシアを寵愛しているわけではない」
ここ最近、アリシアの身体を味わう時間が多い。マナミもその身で奉仕することがあるが、優秀な部下であるが故に、どうにもラウナスの支配欲を満たせない。その一点でアリシアは都合の良い存在だった。
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