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魔界暦975年 一の月
新たな魔王の即位
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魔界と人間界は繋がっている。出入り口は至るところに存在するが、魔物や強い魔力を秘めた人間にしか、その場所は感知できない。魔物たちはその出入り口をゲートと呼び、人間たちは魔界ゲートと呼んだ。
過去において、幾度となく、魔物たちは魔界ゲートを通り、人間界に侵攻し、争いを繰り返していた。
しかしながら、魔王アフレイドが魔界を統一した際に、そのゲートを封印したのだった。彼は人間に対して好意的だったわけではないが、無駄な戦いに明け暮れるのに飽きてしまった。
単純な力では、人間よりも魔物に優位性がある。だが、人間には知性があり、非力ながらも集団となり、国家を建国し、魔物たちに抵抗を示した。そんな人間との争いは魔界に何も利益をもたらさない。知性のない魔物が跋扈するだけで、魔界の統率を乱す危険もある。
そして、魔王アフレイドは人間の知性を羨ましく思っていた。魔物は本来、知性を持たず、凶暴な動物と大差がない。ただ純粋に強い魔物に本能的に従う。もちろん、魔王アフレイドをはじめ、一部の魔物は生まれた時から圧倒的な力を持ち、知性を持ち、支配者として魔界に名を馳せた。
人間界と同様に魔界でも権力者は争いを好んだ。それに終止符を打ったのが魔王アフレイド。
その後、彼は1000年近く魔界の王として君臨した。その彼も遂に寿命が尽き、彼が生前に指名した後継者が新たな魔王として即位する。
彼の名はラウナス。その容姿はまるで人間のようだった。黒髪で端正な顔立ち。背も人間と同程度。体型も細くもなく太くもない。側から見れば、人間と思われても仕方がない程に類似している。唯一、特徴的な部分は彼の瞳だった。片目には常に眼帯をしていて、眼帯を付けていない右目は青色で、時折、緑色へと変化する特殊な瞳だった。
盛大な新たな魔王即位の式典を配下たちは望んだが、ラウナスはそれを拒み、簡素な儀式のみ取り行うことになった。
配下たちは怪訝な顔を一様に示したが、先代の魔王の遺言にラウナスはただ従っただけである。
形式だけの式典を終え、ラウナスは自室に戻った。
特殊な魔法により書かれた遺言書が入った箱を開き、目を通した。
既に何度も読んでいたが、事細かに魔王の仕事について説明されていて、ラウナスが生まれた時には先代の魔王アフレイドは既に衰弱しており、直接話す機会も少なかく、その為、彼はそれを読むことで先代の王の心に触れていた。
魔物にも心はある。だが、人間の心ほど無垢ではなく、ただ最初から魔に染まっている場合が多いだけである。
遺言書の一節には、思索に耽ることができるのが人間の偉大な部分であると書かれていた。
ラウナスは自らも人間のような知性を持ち合わせていることを幼き頃より自覚していた。同時に魔物としての狂気も持ち合わせている。
まずは何から手を付けようか。
魔界を再統一せねばなるまい。
遅かれ早かれ、反乱を企てる愚か者が現れるのは間違いない。
魔界は弱肉強食の世界だ。
そして愚か者たちは自分たちが弱肉の存在であることを忘れてしまう。
ラウナスは立ち上がり、テラスに出た。魔界の空に太陽はない。常に薄暗い空が広がっていた。
過去において、幾度となく、魔物たちは魔界ゲートを通り、人間界に侵攻し、争いを繰り返していた。
しかしながら、魔王アフレイドが魔界を統一した際に、そのゲートを封印したのだった。彼は人間に対して好意的だったわけではないが、無駄な戦いに明け暮れるのに飽きてしまった。
単純な力では、人間よりも魔物に優位性がある。だが、人間には知性があり、非力ながらも集団となり、国家を建国し、魔物たちに抵抗を示した。そんな人間との争いは魔界に何も利益をもたらさない。知性のない魔物が跋扈するだけで、魔界の統率を乱す危険もある。
そして、魔王アフレイドは人間の知性を羨ましく思っていた。魔物は本来、知性を持たず、凶暴な動物と大差がない。ただ純粋に強い魔物に本能的に従う。もちろん、魔王アフレイドをはじめ、一部の魔物は生まれた時から圧倒的な力を持ち、知性を持ち、支配者として魔界に名を馳せた。
人間界と同様に魔界でも権力者は争いを好んだ。それに終止符を打ったのが魔王アフレイド。
その後、彼は1000年近く魔界の王として君臨した。その彼も遂に寿命が尽き、彼が生前に指名した後継者が新たな魔王として即位する。
彼の名はラウナス。その容姿はまるで人間のようだった。黒髪で端正な顔立ち。背も人間と同程度。体型も細くもなく太くもない。側から見れば、人間と思われても仕方がない程に類似している。唯一、特徴的な部分は彼の瞳だった。片目には常に眼帯をしていて、眼帯を付けていない右目は青色で、時折、緑色へと変化する特殊な瞳だった。
盛大な新たな魔王即位の式典を配下たちは望んだが、ラウナスはそれを拒み、簡素な儀式のみ取り行うことになった。
配下たちは怪訝な顔を一様に示したが、先代の魔王の遺言にラウナスはただ従っただけである。
形式だけの式典を終え、ラウナスは自室に戻った。
特殊な魔法により書かれた遺言書が入った箱を開き、目を通した。
既に何度も読んでいたが、事細かに魔王の仕事について説明されていて、ラウナスが生まれた時には先代の魔王アフレイドは既に衰弱しており、直接話す機会も少なかく、その為、彼はそれを読むことで先代の王の心に触れていた。
魔物にも心はある。だが、人間の心ほど無垢ではなく、ただ最初から魔に染まっている場合が多いだけである。
遺言書の一節には、思索に耽ることができるのが人間の偉大な部分であると書かれていた。
ラウナスは自らも人間のような知性を持ち合わせていることを幼き頃より自覚していた。同時に魔物としての狂気も持ち合わせている。
まずは何から手を付けようか。
魔界を再統一せねばなるまい。
遅かれ早かれ、反乱を企てる愚か者が現れるのは間違いない。
魔界は弱肉強食の世界だ。
そして愚か者たちは自分たちが弱肉の存在であることを忘れてしまう。
ラウナスは立ち上がり、テラスに出た。魔界の空に太陽はない。常に薄暗い空が広がっていた。
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