5 / 7
Hellogood-by
5
しおりを挟む
そんな、この世で一番守りたかった人が。ひよりさんが、目の前で、手が届くほど側で、ぼろぼろと泣いている。
「なん…でっ」
「……ごめん」
僕はただただ胸が苦しくて、熱いものが目じりに、喉に、鼻に、全身にせり上がってきた。
ひよりさんの両面から溢れた涙が、フローリングの床に落ちる。
だけど、僕は泣くわけにはいかない。
僕はひよりさんに気持ちがないフリをしなければいけなかったし、僕が泣くなんておかど違いだろう?
ひよりさんは「やだ」と、か細い声をあげた。
なんで、ひよりさんの声は、僕をかき乱すのだろう。
ひよりさんは、僕に「どうして?」と聞く。
僕は「君より好きな人が出来た」と言う。
「ふ…うぅ」
ひよりさんは嗚咽をこらえながら、胎児のようにうずくまる。
手負いの獣みたいだ。
細い肩が、小さく震えてる。
ひよりさんは、優しすぎた。
「……わかっ…た」
「…ごめんな。もう、一緒には住めない」
僕は、リョウコの子供のことをとうとう話せず、荷物をまとめて、部屋を出る。
改めて思う。
ひよりさんが大好きだ。
時計を見ると、まだ22時で、なんでこんな事になったんだろう、と首を傾げてしまう。
会社帰りのサラリーマンや、自転車に跨った女子高生の集団が、コンビニの駐車場にたむろしていた。
いつもと変わらない光景。
僕とひよりさんだけが、絶望にたたされていた。
こんな時に持つべきものは、親友だ。
「ハセベ、ひよりと別れた」
「はっ?」
ハセベは、ドアノブに手をかけたまま、加えていたタバコを落とす。自分のはだしの上に。
「あっち!!」
「はは」
僕に、笑う資格ないよなぁ。
「あのさぁハセベ」
「…なんだよ」
僕を地獄へ突き落として。
あの夜から何度も何度も繰り返し、思うのは、どうして時間が戻らないのかってこと。
起きたことは、どうして消せない?
そうして、
彼女はいなくなった。
「なん…でっ」
「……ごめん」
僕はただただ胸が苦しくて、熱いものが目じりに、喉に、鼻に、全身にせり上がってきた。
ひよりさんの両面から溢れた涙が、フローリングの床に落ちる。
だけど、僕は泣くわけにはいかない。
僕はひよりさんに気持ちがないフリをしなければいけなかったし、僕が泣くなんておかど違いだろう?
ひよりさんは「やだ」と、か細い声をあげた。
なんで、ひよりさんの声は、僕をかき乱すのだろう。
ひよりさんは、僕に「どうして?」と聞く。
僕は「君より好きな人が出来た」と言う。
「ふ…うぅ」
ひよりさんは嗚咽をこらえながら、胎児のようにうずくまる。
手負いの獣みたいだ。
細い肩が、小さく震えてる。
ひよりさんは、優しすぎた。
「……わかっ…た」
「…ごめんな。もう、一緒には住めない」
僕は、リョウコの子供のことをとうとう話せず、荷物をまとめて、部屋を出る。
改めて思う。
ひよりさんが大好きだ。
時計を見ると、まだ22時で、なんでこんな事になったんだろう、と首を傾げてしまう。
会社帰りのサラリーマンや、自転車に跨った女子高生の集団が、コンビニの駐車場にたむろしていた。
いつもと変わらない光景。
僕とひよりさんだけが、絶望にたたされていた。
こんな時に持つべきものは、親友だ。
「ハセベ、ひよりと別れた」
「はっ?」
ハセベは、ドアノブに手をかけたまま、加えていたタバコを落とす。自分のはだしの上に。
「あっち!!」
「はは」
僕に、笑う資格ないよなぁ。
「あのさぁハセベ」
「…なんだよ」
僕を地獄へ突き落として。
あの夜から何度も何度も繰り返し、思うのは、どうして時間が戻らないのかってこと。
起きたことは、どうして消せない?
そうして、
彼女はいなくなった。
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説


もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

罪なき令嬢 (11話作成済み)
京月
恋愛
無実の罪で塔に幽閉されてしまったレレイナ公爵令嬢。
5年間、誰も来ない塔での生活は死刑宣告。
5年の月日が経ち、その塔へと足を運んだ衛兵が見たのは、
見る者の心を奪う美女だった。
※完結済みです。


白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる