デルモニア紀行

富浦伝十郎

文字の大きさ
上 下
146 / 153
赤土帯

ヒール 3

しおりを挟む


「何だと? もう一度言ってみろ」
聞き捨てならねぇな。
「マスターが人間形態で彼等6体を回復させるのは危険だと申し上げました」
ヨーコが答える。
「この俺が、人間形態ヒューマンフォームだと奴らワームに後れをとるというのか?」
お前が圧倒出来たワームの群れが俺に御せないとでも?
図に乗ったかヨーコ!

「如何なマスターでもMP枯渇状態では回復した6体のワームに対抗できません」
「!」
「私は89%の確率でマスターが今回の憑依でMPを枯渇させると予想しました」
「・・・・」
こいつ、そこまで読んでいたのか。
「予測された危険をお報せするのは私の責務ですので」
「・・分かった」
俺はヨーコに背を向けてワーム達の方に向き直った。


「!マ・・」
「アキラフォーム! 装備解除!」
ヨーコの制止を無視して憑依を行う。 マルグリッドの鎧ナイトフォームは解除した。
今の俺はゴブリンと同じ素っ裸だ。 騎士形態はワーム達が怖がるからな。
俺は裸のままワーム達に歩み寄って行く。
6匹のランドワームは皆 大人しく頭を並べて俺の "ヒール" を待っている。
彼らに当初抱いた嫌悪を何故か今は感じない。
ヨーコの零式に追い付かれないようヒールを掛けて回っていた時とも印象が違う。

〔 ・・・イタイ・・・・ 〕
〔 ・・・クルシイ・・ ・〕
〔 ・・・ユルシテ・・ ・〕
〔 ・・・タスケテ・・ ・〕

幽かにだが俺はワーム達の呻き声を聞いた。
「もう俺を襲わないと約束するなら助けてやるぞ!  どうだ?」
6匹に向かって大声で伝える。
ヨーコの懸念通りになって 後々チクチク言われるのは嫌だからな。

〔 ・・・ケライ・・ナル・・ ・タスケテ・・〕
〔 ・・・イウコト・・キク・・ ・カラ・・・〕

気のせいじゃない。 拙いけれどやはりワームの言葉が聞き取れる。
こいつら6匹は揃って俺に恭順の意志を示し救いを求めている。 
はっきりとそれが分かった。
「・・いいだろう!」
ならば、やる事は決まっている。
俺はまず、ワーム達の体に埋め込まれた岩塊を"収納" で取り除いていった。
俺の収納に回収されたSS零式の岩塊は48個。( ヨーコはマジ容赦ないな! )
体内から何トンもの重石を取り除かれたワーム達は身軽になって喜んだ。

〔 ・・・ラク・・ナッタ・・ ・アリガト・・〕
〔 ・・・ウゴケル・・・・ ウレシイ・・・・〕

 うん。 聞こえる。 ワームの声が。 ( 俺はテイマーになったのか? )
それはどうでもイイ。 こいつらを手下にする気はサラサラない。
慈悲を請う者を虐げる下衆には堕ちたくなかっただけだ。
「・・散々痛い思いをさせて悪かったな」
顎を地に着けて大人しくしているワームを一撫でして詫びる。

「ちょっとだけ待ってくれ」
俺は"ペレットメーカー" で数十個の新ペレットを造りMP値を調整した。

「じゃあ、いくぞ!」
残りMP値はぴったりだ。 3倍チャージのヒール6回分。
最初のワームに手を触れて 俺は詠唱を開始した。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

サポート好きの冒険者。ソロになったのでサポートする人を探す旅に出る

ラッキーヒル・オン・イノシシ
ファンタジー
 生まれてからずっと、人のサポートをするのが好きな青年サボ。農村の次男坊として生まれた彼は、同じ村で成人を迎えた仲間と共に街に出て冒険者をしていたが、リーダーから「サボ、お前はクビだ!」と言われてパーティーを脱退。村を出てから1年は経っていたので、1回は帰郷してみるかと思い立ち――  パーティー脱退から始まる話ですが、サボ自身は恨んでいるわけではありませんので「ざまぁ」な展開にはなりません。  またサボやサポート受けた者達自身も、自ら「ざまぁ」をする予定も一応ありません。  ただその姿を見て、周りや自分自身で「ざまあない」状況、評価に凹んでもらう話です。  思いついたから書き始めるので、これも不定期更新となります。 サポートした人達  ・農奴として売られていた女の子達→いくつものスキルを覚えた初心者冒険者  ・生活困難になっていた女性達→文武両道な主婦メイド(?)  ・うだつの上がらない若手教授←今ココ

迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ
ファンタジー
 一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。 小説家になろう様でも投稿をしております。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

あらゆる属性の精霊と契約できない無能だからと追放された精霊術師、実は最高の無の精霊と契約できたので無双します

名無し
ファンタジー
 レオンは自分が精霊術師であるにもかかわらず、どんな精霊とも仮契約すらできないことに負い目を感じていた。その代わりとして、所属しているS級パーティーに対して奴隷のように尽くしてきたが、ある日リーダーから無能は雑用係でも必要ないと追放を言い渡されてしまう。  彼は仕事を探すべく訪れたギルドで、冒険者同士の喧嘩を仲裁しようとして暴行されるも、全然痛みがなかったことに違和感を覚える。

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

おてんば末っ子令嬢、実は前世若頭だった!? 〜皆で領地を守ります!〜

撫羽
ファンタジー
組長の息子で若頭だった俺が、なんてこったい! 目が覚めたら可愛い幼女になっていた! なんて無理ゲーだ!? 歴史だけ古いヤクザの組。既に組は看板を出しているだけの状況になっていて、組員達も家族のアシスタントやマネージメントをして極道なのに平和に暮らしていた。組長が欠かさないのは朝晩の愛犬の散歩だ。家族で話し合って、違う意味の事務所が必要じゃね? と、そろそろ組の看板を下ろそうかと相談していた矢先だった。そんな組を狙われたんだ。真っ正面から車が突っ込んできた。そこで俺の意識は途絶え、次に目覚めたらキラキラした髪の超可愛い幼女だった。 狙われて誘拐されたり、迫害されていた王子を保護したり、ドラゴンに押しかけられたり? 領地の特産品も開発し、家族に可愛がられている。 前世極道の若頭が転生すると、「いっけー!!」と魔法をぶっ放す様な勝気な令嬢の出来上がりだ! 辺境伯の末娘に転生した極道の若頭と、前世でも若頭付きだった姉弟の侍従や皆で辺境の領地を守るぜ! ムカつく奴等にはカチコミかけるぜ!

異世界でDP稼いでたら女神って呼ばれちゃった

まったりー
ファンタジー
主人公はゲームが大好きな35歳の女性。 ある日会社から長期の休みをもらい、いつものようにゲームをやっていた。 そう、いつものように何も食べず眠らず、そして気付かないうちに力尽きた、彼女はそれを後で知ります。 気付いたらダンジョンマスターの部屋にいてダンジョンを作るように水晶に言われやることが無いので作り始めます夢だからっと。 最初は渋々やっていました、ガチャからはちっさいモンスターや幼女しか出ないしと、しかし彼女は基本ゲームが好きなので製作ゲームと思って没頭して作ってしまいます。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...