デルモニア紀行

富浦伝十郎

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グリュン大森林

信仰の芽生え

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 デルモニアには明確な "未踏領域" が存在する。
例えば "海底" 。 プレイヤーは泳ぐことも潜る事も出来るのだが限度がある。
川や湖の水底にアイテムや宝箱が発見される事は然程珍しい事ではないが、
沖合の海底に何があるのか(或いは無いのか)確かめた人間はいない。
ほぼ、不可能だからだ。
溺死すれば身に着けた装備は水没してしまうので回収できない。

 高山地帯も同じだ。 標高が上がる程HPが時間毎に削られて行く。
遭難すれば同じく装備は失われ回収は困難となる。
戦闘と異なりほぼ同時に全員が倒れるからパーティで挑戦しても意味がない。

 勿論、当初は敢えてチャレンジする者もいたことはいたらしい。
しかしリスクを冒すに足るメリットが見出されることは無いままに時は過ぎていき
此のグリュン大森林と同じように足を踏み入れるプレイヤーは少なくなって行った。
今ではバーリンガム連峰は "ノーマンズランド" と呼ばれている。

 
『だからこそ ”極レア” 物があるのではないか』
と考えるのがウィーダーズだ。
リスクが高くリターンが低い(無い)のなら其処へ近付かないのが普通だろう。
彼等の考えは負けが込む程に額を上げて賭けるギャンブル中毒者に近い気もする。
しかし、FQはカジノではない。
ディーラーが客をカモにするように運営がプレイヤーを陥れる事は無い。
寧ろプレイヤーに対するサービス精神が旺盛だと思えるのは前述したとおりだ。

『もし存在するならそれは入手できる』
・・・という考えが彼等の思想の根底をなしている。
ギャンブル狂というよりは "宝籤を買う人々" と云った方が近いかもしれない。
それも、毎回抽選のある宝籤と違って一定数の籤を端から捲っていく感じか。

 突き詰めればそれは "運営への期待( 信頼 )" と言い換えても良いだろう。
『神が我々を見守り、御恵み下さる 』 という信仰心に近いのではないか。



 俺は無神論者だったが、此処デルモニアには "神" が存在する。
TFの開発陣が正にそれだ。 オリュンポスやアスガルドの神々の様な存在。
この世界も。 この俺も。 彼等が創り出したものだ。
しかも造りっぱなしで後は放置(或いは見ているだけ)、という訳でもない。
バリバリ干渉して来ている。
ログインプレイヤー用の環境を永住プレイヤー用に調整リフォーム中なんだからな。
天地創造の真っ最中だと言って過言でない。
( 俺は今、紛れもない神話の時代を生きているんだ )



 ・・・だったら神様にオネガイしてみるのも自然な事かもしれないな。








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