デルモニア紀行

富浦伝十郎

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グリュン大森林

今後の方針

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 森の中、樹上での動きにも大分馴染んで来た。
俺のスキルを受け継ぐヨーコも昔から ”森の住人” だったかの如き身のこなしだ。
レベル相応の強化だけではなく”ラーニング”での最適化機能も備えているからな。
彼女にスティックを持たせて俺が切り払った梢から舞い散る葉を突かせたら、
最初は二枚だけだったが、数十回目には十枚近く重ねられるようになった。
驚異的な上達速度だ。
重なった葉にスティック本体が隠れて焼き鳥の大串のように見える。
これなら実戦でも使えるだろう。( スティックは武器にカウントされないしな )

・・まあ実戦とは言っても ”アサシン” のだけど。

 ちなみに俺がやったら18枚だった。 毎度ヨーコに後れをとれないしな。
( ヨーコが更に練習すれば分からんが )

「流石はマスターです」
”降着” で樹上から降り立ったヨーコが声を掛けて来る。
「初見でその数を突かれるとは」
( ヨーコは俺が練習してない事は知ってるからな )
「お前が葉を沢山落としてくれたからだよ」
AIのヨーコには何処を払えば最も多くの葉を散らせるか一目瞭然だもの。
「また御謙遜を」
・・なんかヨーコも口が上手くなったな。( 実社会で揉まれたせいか? )



「しかし,此処でずっとこんな事をしててもな~ 」
俺はスティックを収納して呟く。
おそらく、今みたいなパフォーマンスはレンダリング負荷がかなり高い筈だ。
俺達だけならいいが、何十組ものペアが何十箇所でやったらヤバいかもしれない。

「これからどうするかね」
この森にエルフや(凄い)モンスターはいないのは分かった。
これ幸いと此処でヨーコと修行(コソ練)に励むか。
さっさと抜けて次の場所を目指すか。

「ヨーコはどう思う?」
状況評価AIに御意見を伺おうじゃないか。
「此処でスキル(剣士、弓、魔法)を磨くべきか、早く他所に移るべきか」
 ヨーコはすぐに答えてくれた。
「 ”安全” を優先するならこの森は適していると云えます」
考え込むような素振りも見せずに話し出す。
「モンスターやナチュラルハザードを危惧することなく鍛錬を行えます」
うん。 まあそうだろうな。
「しかし、此処には視野が確保できない という問題があります」
うん。 確かにその通りだ。
「 弓や魔法などのレンジ拡大が困難な環境であると云わざるを得ません」
だよな。
「”剣術” にしても打倒対象が不在ではポイントが入りません」
スキルレベルは上げられないって事だな。
「私を倒すことでLvアップできたら良かったのですが(できません)」
( 自分のアシを切って無限LvUPだと!?  勘弁してくれ )

「じゃあ此処にいるメリットは ”安全” だけか? 」
俺はヨーコに確認する。
「他にもう一つあります」
ヨーコが至近の大樹を手で示した。
「 ”登攀” スキルの習得には最適です。 完全習得後は移動をお勧めします 」
やっぱりそうか・・・



「…マスターはスキルの習得と強化に重きを置いていらっしゃいますよね」
唐突にヨーコが付け加えて来た。
「私見ですが、"踏破領域の拡大" も課題として重要であると思います」
「!」
( それ、”私見” どころじゃねぇだろ! )










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