デルモニア紀行

富浦伝十郎

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グリュン大森林

変転を歩む

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「・・・ヨーコォ」

俺は声を低くして (ドヤ顔の) ヨーコに問いかける。
「大丈夫か そんなこと言って。 俺達モニターされてるんだろ」
( だから小声で喋っても意味無い訳だが w )
「ヤだぞ俺。 折角来てくれたお前がデリートされたら」

 実際,リアルの世界で "FQ設定資料集" とかが出たらバカ売れ確実だろう。
モニタでプレイしていた時代と異なりVRが主流となってからはゲーム内のアイテムやクリーチャの詳細なスペックは公開されなくなった。
”公式資料集” やオフィシャルサイトで分かるのは大雑把な情報だけだ。
『こんなのいます(あります)よ~。 遊んでみませんか?』 程度の。
それでも接続型VRはプレイヤーが画像や動画を持ち出せないので需要が多い。

 親父は 『昔は”何でも分かる” 強力な攻略本やサイトがあった』 という。
詳細な攻略情報を予習して”鉄板プレイ”、 みたいな事ができたのだそうだ。
今は違う。
ヨーコの持つ情報は非常に貴重だろう。

 ・・・但し、それも一時の事でしかないんじゃないかという気もする。
俺は”遊ぶ側”の人間で制作サイドの事情は詳しくないが進藤やヨーコの話からだけでも”仕様変更” (それも大掛かりな)が頻繁に行われているのは明らかだ。
今日のデルモニアは昨日と同じではない。
ゲームソフトディスクやカードを買って遊んでいた親父達とは時代が違う。
今はアカウントを買って”ログイン”する時代だ。 ゲーム自体も日々変化する。
・・・俺達が暮らしていた社会リアルと同じように。



 ヨーコの持つ情報は貴重だが、それはもう ”過去” のものだ。
最初の住人たる俺には今までの記録を見せても良い と"上"は考えたのだろう。
こうしている今もこのFQ世界ADサーバーは変わりつつある。 生き物のように。
"同じことを繰り返す"   味気ない絡繰り仕掛けから脱却していく。

( 俺が望んだことだが) ここのNPC達は ”継続する記憶” を獲得するのだという。
前世紀、始原の時代には数行のテキストを吐くことしか出来なかった彼等が
また少し人間に近付いて来ている。



・・今朝別れて来たばかりなのに 俺はガルドス達が恋しくなって来た。







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