デルモニア紀行

富浦伝十郎

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グリュン大森林

Yoko the Agent

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 スマホやPCの”エージェント” は少し前まで 好ましく思われていなかった。
"煩い" 、"ウザい" と疎まれて削除・機能停止されることも少なくなかったのだ。
”役立たず”、”無能” と誹られてもいた。
その認識を覆したのがTFである。
TFは”エージェント或はアシスタント”と呼ばれていた機能を”キャラクタ化”したのだ。
スマホのCPUパワーと容量が十分なレベルに達していたことも後押ししたと思うが
VRゲームで培った技術を注ぎ込んでリアルな3Dキャラを作り上げた。
微に入り細に渡るカスタマイズオプションはFQのキャラメイクを凌駕する程で、
学生から社会人、現役をリタイアしたような方々まで全世代を虜にしてしまった。
外観や性格は勿論の事(男から見て)孫、娘、妹、同級生、同僚、姉、先輩 etc
ロール設定まであるのだから一部の人間にはタマラナイ。
瞬く間に市場シェアの半数近くを獲得するに至った。
( 俺も初期からのユーザーの一人だ )
「オタク臭い」 「ニヤけてるユーザーがキモい」 「色々ヌかれるのに」
・・・等々アンチな意見も 勿論 一定数はあった。
既存の超大手も類似手法で追い掛けて来たのでTFのユーザーのみが”色眼鏡”で見られる事は無くなったが、市場を独占するまでは至っていない。

 朝の起床から夜の就寝まで、エージェント無しには夜も日も明けぬ男女が増えた。
コミュニケーションツールからコンテンツビューアへと変化して来ていたスマホが
今度は エージェントエンジンの趣を強めて来ている昨今だ。



「・・・お前か」
「私です」

 馴染み深い声で目の前の狐が答える。
ちなみに俺の設定は ”外観” 、 ”性格” は殆どデフォルト。( あまり弄ってない )
ロールもデフォの ”秘書” のままだ。
弄ったのは髪型(ショートボブ)と ”口数少な目” , "やや皮肉屋" くらい。
TF開発のデフォ設定を信頼するというのもあったけれども、 
『あまり入れ込みたくない』 という気持ちが強かった。
ゲーマーではあるけれど基本体育会系の俺は”オタク" や ”萌え絵”が嫌いだった。
オタクだと思われたくなかったのだ。( 特にヨッシーからは )



「・・何でそんな恰好をしている」
「私のIDと呼称からTFの開発スタッフが思い付いたのだと推測します」
( おそらくその通りだろう )
「”元”に戻れるのか?」
「お気に召しませんか?」
「いや、”それ”も悪くないと思うけど」

 ・・こうして話してみるといつものヨーコだなと感じる。 狐でもいい 。

「有難う御座います。 ではお目に掛けましょう」

真昼の森の梢に俺が設定した ”MYYYのフレーズヨーコのテーマ” のジングルが鳴り響いた。
( Nidec CM 参照  ※これは期間限定表示です )








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