デルモニア紀行

富浦伝十郎

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グリュン大森林

樹上のゴブリン

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 ゴブリンは人間の標準体型と比べると腕が長いし指も長い。
イメージ的に言えば ”手長猿” に近いから”木登り” には向いている筈だ。
( とは言ってもそれはFQのクリーチャーデザインの問題なのだが ) 
まず俺は手近な大木にゆっくり上ってみた。
曲がりくねっていて枝も多いので杉のような直木よりは登り易いと思う。
”あのゲーム” でもよく木に登ったものだ。  "鳥の卵" を取ったりしたっけ。

 木の高さは20から30メートルと言った所か。
一番高い枝まで登ってみたが特に拾えるアイテムとかは無かった。
この広葉樹の枝は非常に頑丈で ゴブリンの俺が乗っても折れる気配は無い。

 ( ・・・アレを試してみるか ! )

 俺はシュトロハイムの山刀を取り出すと手近な小枝の先端を切り取った。
割る前の割箸くらいの太さだがかなりの固さだ。
山刀の切れ味も凄かった。  並みの刃物では簡単に切れなかったろう。 
切断面から20㎝程で先を斜めに切り落とすと両端が尖った”串”が出来た。
ステータスを確認してみると装備欄には記載されてない。
よっしゃ♪石と同じだ
両端を斜めに切り落とした小枝を ”スティック” と定義しコモンアイテム化した。
山刀を手に巨木の枝先を巡っては小枝を切り取りスティックとして回収する。
10本程回収すると樹上での動きにも体が馴染んで来た。
最上部の枝の小枝をほぼ取り尽くしたので他の枝に飛び移ろうとした。
”跳躍” スキルがあるから簡単、と思ったが平地と違って着地が難しい。
狙った枝にジャストで降りないと(跳び過ぎても)落ちてしまう訳だ。
(  ”降着” があるから怪我はしないと思うが )
隣の枝に向かって ”ピョーン” と控えめに跳んでみた。
「うぉ!」
乗ろうとした枝に爪先が数センチ届かなかった。 両手を枝に掛ける。
一気に体を引き起こし枝に乗った。
「・・・・」

 枝上で向き直った俺は元の枝に向けてジャンプした。
「これか!」
コツが分った気がした。
最初は”山なり” に跳んで目標の枝に”降り”ようとした。
今回は目標の枝の上を掠める様に跳び 両足を枝に突いて体を止めるイメージ。
初めのやり方だと少しの誤差で ”手” を使わなければならないが、
後のやり方なら失敗し難い。 跳び移る時間も短くなる。
ただし 遠い枝やより高い位置にある枝に跳ぶ場合はやはり難度は上がる。 

  ・・・これは ”練習” が要るな !

 樹上という3D空間で自由自在に動けるようになってみせる。
現状でも俺より”木の上”で動けるFQプレイヤーなどいないのは断言できる。
一度此処に馴染んだならば森林エリアがになるのは疑いない。
俺は ”スティック” を確保しながら枝から枝へと跳び移って行くのだった。






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