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帝都デリドール
開業宣言
しおりを挟むこれ見よがしな足取りで近付いたから五人の男全員が俺に注目した。
うろうろと歩き回るのをやめて寄り集まり俺を待ち伏せている。
その間近にまで(面当てで顔は見えないが)明るい雰囲気で歩いて行った。
立ち止まるなり両手を大袈裟に拡げて言う。
「 お~や皆さん今晩は! こんな時間にお揃いで如何されましたか~? 」
アメリカのカ-トゥーンキャラ(の"吹替え")のような感じを出してみた。
「何だコイツ」
「何だこのチビ!」
「舐めてんのか?」
「頭オカシイのか?」
「クソ見回りがぁ」
五人其々が悪態をついて睨み付けて来た。
前回と同じく俺が小柄なのと一人なので完全に舐めて掛かって来ている。
ひ弱な中学生を不良高校生の集団がカツアゲしてるみたいな感じになった。
( 流石にいきなり切り掛かっては来ないか )
「 ・・騎士様が訊いてるんだから答えろや ! 」
唐突に 大声で怒鳴り付けつつ一番デカい奴の脛を電光石火のローキックで刈る。
宙に舞った大男が尻から落ちて呻き声を上げた。
(左腓骨が折れたから)もう立ち上がれまい。
「何をしてるんだ って訊いてんだ ヨ!」
ポカンとした表情の二番目にデカい奴も同じように引っ繰り返してやった。
路上で藻掻く男が二人になった。
「早く答えろ ヨ!」
三番目にデカいのは左のローで転がした。
立っているのは二人になった。
「どうした? お前ら口が利けなくなったのか?」
一番小さい奴( 俺 と同じくらい )と二番目に小さい奴を "挑発" する。
「・・・・・」
「・・・・・」
残り二人は無言で固まってしまっていて俺の挑発に乗ってこない。
こいつらは普段 人を脅したり痛め付ける側だが逆の立場には慣れていないようだ。
というか自分より弱い者しか相手にしたことが無いのだろう。
「よ~し。 分かった。 喋らなくていい」
俺は立っている二人に左右の軽いショートアッパー風の腹パンを入れた。
二人共堪らずに路上に蹲る。 ・・そして揃って嘔吐した。
「・・つーかお前ら、もう喋るな。 声を出したら殺す」
俺は例のファルカタを抜いた。
五人に見せ付けるように手首から先だけでバトンのように振り回す。
シュィィーン と高い風切り音が響いた。
唖然として見つめる五人。
「いいか、声を出すなよ? コレの持主のようになりたくなければな!」
ファルカタを左手でペシペシしながら言い聞かせる俺。
「「「「「・・・・・!」」」」」
無言でコクコクと頷く五人。
「大人しく言う事を聞けば明日の朝日を拝ませてやるからョ」
俺は猫なで声で言った。
路上から俺を見上げる五人の顔をファルカタの刃先を巡らせて睥睨する。
「 さっきまでここにいた三人は物分かりが悪かった」
そうだ。 俺は一応声は掛けたよな。
「・・・奴等がどうなったかよく考えろ」
シンキングタイム。
男達は 『了解しました』 という表情で大人しくしている。
「・・よ~し、死にたくない奴は装備を全て外せ。 服も脱げ」
まだ立ち上がれずにいる男達に指示を出す。
( アサシンというより”強盗”だな )
「グズグズしてると手っ取り早く ”回収” するぞ?」
嚇しつけると皆そそくさと装備を外し始めた。
( 話は通じないが力は通じる、か ・・・)
どう声掛けしても話しに応じない人間も ”無力化” すれば指示に従う。
( ・・・これはFQの重要なポイントかもしれないな )
「よ~し、いいぞ!」
男達全員が外した装備を積み上げたその後ろに控えている。
剣を鞘に納め手慣れた素振りで装備を回収する俺。
それをぽかんと眺める男達。
「いいか、よく聞け」
”回収” を終えた俺は両手を腰に当てて踏ん反り返った。
「これが俺の商売だ」
『分かったか?』 という感じで男達の表情を伺う。
「「「「「?」」」」」
五人の反応はいま一つだった。
ぽかんと口を開けたり仲間と顔を見合わせたりしている。
『ちょっと何言ってるか分かりません』 という感じだ。
「お 前 達 の よ う な 悪 党 共 の 身 包 み 剥 い で 分捕る 仕事だよ!」
ゆっくり&はっきりした口調で解説する俺。
『これで分かっただろ?』 という感じで男達の顔を見回す。
今度は五人とも黙って首肯している。
『分カリマシタ 』 という雰囲気が感じられる。
「この稼業は今夜から始めたんだ」
俺は五人を見回して言う。
「気が付いたんだよ。 お前らをカモにすればラクに稼げるじゃないか ってな」
( 確かにコレを "シノギ" にする、という選択肢も有り得るな )
「身包み剥ごうが傷め付けて殺しちまおうが御上からお咎めは無い訳だしな!」
「・・・・!」
男達の顔にびくっとした表情が浮かぶ。
「安心しろ。 奪るもん奪ったら無駄な殺生はしない」
男達が安堵の表情を浮かべる。
「だが、俺に逆らったり、向かって来る奴は容赦しないぞ」
納刀したファルカタをポンポン叩く。
「地獄に送ってやる」
俺はアジトの入口を指して宣言した。
「あの中にいる全員も今からそうしてやるから見ておけ」
入口に向かって歩き出す。
「ああ、そうだ。 言い忘れていたことがある」
数歩進んでから立ち止まって振り返る。
「俺の名は アキラだ。 覚えておけ」
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