デルモニア紀行

富浦伝十郎

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ゲルブ平原

再び荒野へ

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 ん ?

 今、俺はなんて言った ?

 『予備の装備』 だと? (持ってないけど)

 俺は大事なことを忘れてしまっていた。
丸裸(当然だが)のゴブリンで復活したから今まで頭に浮かばなかったんだな。
『 クロゼット 』装備収納 や 『 ポケット 』アイテム収納 はどうなってる?
ゴブリンにもあるのか ?

 あった。

 クロゼットも ポケットもあった。
身体がモンスターだとしてもプレヤーではあるのだから当然といえば当然か。
IFが使えると分かった時点で確かめておくべきだった。



 VR以前、遥か原初の時代からゲームキャラがアプリオリに備える最強能力。
それが『収納』だ。 リアルではあり得ない チートと言って過言でない能力。
今までは特に意識することもなく、当然あるものとして使って来ていたのに。
身体がゴブリンだとプレイ感覚もゴブリンぽくなってしまうものなんだな。
( ゴブリンであることに馴染み過ぎないように気を付けないと )


 クロゼットは空だったが、ポケットにはポーションが50個も入っていた。
( "スターティングセット" みたいなもんか ? )
こりゃありがたい。


 ポケットが使えるのならギャザラーやクラフターとしても生きて行ける。
魔獣の頂点たるバトルクリーチャーを目指す以外にも道があるかもしれない。


・・・先行きが明るくなってきたぞ !






 女神像に向き合って、またワールドマップを開く。
あの場所に戻るのだ。

 三匹の狼に襲われたけども何匹倒せたのか確かめたい。
倒した狼の討伐アイテムを回収したいし、討ち洩らした狼は倒したい。
特に俺をドーム送りにしてくれた奴は(もし生きていたら)絶対Pす。
それはFQプレヤーとして譲れない。
そこを妥協したら、 諦めてしまったら自分がダメになる気がするのだ。


 ワープの前に聖堂内をもう一度見回してみる。
ドームは静寂に満たされており他のプレヤーが転送されてくる気配は無い。
誰かが嘗てこの聖堂を訪れた事を伺わせるような遺留物等も全く見当たらない。
俺以外の(AD)プレヤーとコンタクトするには此処で待つのが一番なのだろうが,
何故か此処に長く居てはいけないような気がする。

 俺が最初のADプレヤーだという可能性は高いと思う。
そしてこのFQ世界にADプレヤーはまだ俺一人しかいないという可能性も。
待っていても誰も来ないかもしれない。 ( でもそういうことじゃないんだ )


 何か俺(プレヤー)が此処に来た事が分かるような物を残した方が良いのかもしれないが
生憎とゴブリンの俺は何も持っていない。
…いや、ポケットにポーションがあったか。 でもポーションは貴重だしな。


 このまま(ゲルブ平原に)戻ることにした。

 やることがはっきりしてるんだから あてもなく時を浪費する訳にはいかない。
仮に俺の他にADプレヤーがいるとしても生きていれば(もう死なない訳だが) いずれFQ世界の何処かで会うことになるだろうし。
その時の為にも今は "このゴブリン" をもっとグレードアップしておかなければ。
 


 俺はマップ上に点滅する光点をタップした。

 眩い光が俺を包む。

 何百回と経験したFQのワープ。 それはゴブリンとなっても同じだった。



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