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第一章 始まりの館
Chapter119 お礼の手紙
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夕方に、アルシャインとフィナアリスがディナーの準備をする。
「今日はどうしようかなー…」
アルシャインが呟きながら冷蔵庫の中を見る。
「お魚を使い切っちゃわないとね!」
そう言って残っていた魚介類を取り出す。
そこにアルベルティーナが料理の本を手にやってきた。
「ね、この〝天ぷら〟って良くない?!」
「ん~?どれどれ?」
アルシャインとフィナアリスがアルベルティーナと共に本を見る。
「小麦粉と卵と水の衣に油で揚げる…いいわね!やってみましょうか!」
アルシャインが笑って言って、3人で準備をした。
試しに玉ねぎとエノキタケとマッシュルームのかき揚げを揚げて味見をした。
「んん、サクサクして美味しい!」とアルシャイン。
「うん、これはいいわね!お醤油と合う!」とフィナアリス。
「もっと作りたい!」
アルベルティーナが張り切って魚介類の下ごしらえに取り掛かった。
残っていた肉もステーキにして出した。
「ほらほら食べましょう!」
アルシャインが言い、みんながやっと集まってくる。
もう人形は5つも出来ていた。
「今日は天ぷらよ~、男の子にはステーキもあるわ。切り分けて食べてね」
説明する間に素早く祈りを捧げてリュカシオンが食べる。
「うん、美味い!」
「ホントだ!」とルベルジュノー。
「おイモが甘~い!」とティナジゼル。
「これは幾らで出すの?」とルーベンス。
「ん~…本当は〝天つゆ〟っていうタレに付けて食べるらしいから、それが作れたら考えるわ」
アルシャインが答えると、ノアセルジオが聞く。
「何が必要なの?」
「かつおぶしっていう物よ。ボニートを乾燥させた物らしいわ。あと小魚の干物と…それを煮詰めてダシを取るらしいの」
そう説明すると、ノアセルジオが言う。
「じゃあ明日トーマスさんに聞いてみようよ。魚なら知ってるかもしれないし」
「そうね!あ…それとね、みんなにお願いがあるの」
そう言うとみんながアルシャインを見る。
「なぁに?」とマリアンナ。
「…前に鏡とブラシとポーチを頂いたでしょう?そのお礼のお手紙を出そうと思うの」
「それなら書いてあるわ!後で持っていくね!」とユスヘルディナ。
「あたしもー」とマリアンナとアルベルティーナ。
「あのね…ナージィまだ上手く書けなくて…」とティナジゼル。
「大丈夫よ、一緒に書きましょうね」
そうアルシャインが言うと、ティナジゼルとベアトリスが頷いた。
食後、みんなで片付けをして、すぐに2階へ行く。
「これ、俺達もカッコいい制服貰ったから、お礼の手紙!」
リュカシオンがそう言い手紙を渡すと、ルベルジュノーやノアセルジオ、レオリアム、ルーベンスも渡してからまた人形を作りに降りていく。
「アイシャママ!僕たちも!」
メルヒオールが言って、クリストフとオルランドも手紙を渡した。
そして、3人も急いで下に降りていった。
「やだ…個性的だわ」
アルシャインはみんなの手紙を見てクスクス笑いながら部屋に入る。
〝ありがとうございます〟とだけ書いてあるのがリュカシオンとルベルジュノーとオルランド。
丁寧に〝伯爵夫人、制服をありがとうございました〟と書いてあるのがノアセルジオとレオリアムとルーベンス。
クリストフとメルヒオールは〝ありがとうございます、大事にします〟と書いてある。
それらをテーブルに置いてから、アルシャインは手紙を書く準備をしておく。
そこにフィナアリスが女の子達の手紙を持ってきた。
「アイシャママ、これみんなの。…これで平気?」
「どれどれ…?」
不安そうに言うので見てみると、アルシャインは少し驚く。
「まあ…!拝啓も付いてるし、体を気遣う言葉もあるわ…凄いわね!」
「シスターから習ったの…変じゃない?」
「全然変じゃないわ!大丈夫よ…むしろ驚くだろうし、喜ぶと思うわ!」
アルシャインが笑って言うと、廊下から見ていたリナメイシーやユスヘルディナも安心して下に行く。
「良かった…じゃあ、みんなと人形作るわね」
そう言いフィナアリスも下に行くと、入れ違いで紙とペンを持ったティナジゼルとベアトリスが入ってきてソファーに座る。
「さあ、書きましょうか」
「うん!」
みんなの手紙をテーブルに置いて、ティナジゼルとベアトリスはそれを参考にして書いてみる。
それを見守りながら、アルシャインもイスに座って便せんを手にした。
「えーと…拝啓…」
拝啓 お母様
秋の風と共に景色も鮮やかになりましたが、いかがお過ごしですか?
子供達へのプレゼント、ありがとうございました。
どれもみんな喜んでいました。
まだ孤児も増えるかもしれません。
もしもまた寄付して下さるのでしたら、次は
〈次は何がいいかしら?〉
アルシャインはみんなが何を貰って喜ぶかを考える。
…自分では買えない物…何か、貴族らしい物ーーー。
そう考えるが、何も思い浮かばない。
「ナージィ、ヴェーチェ、何か欲しい物はある?」
「…どんな?」と逆にティナジゼルが聞く。
「んーとね…お店では高くて買えないような…貰うと一生大事にしたいと思える物…かな?」
そうアルシャインが聞くと、2人は想像してから答える。
「もう貰ったよ?ペンダント」とベアトリス。
「…ナージィ、一生大事にする物じゃないけど、ランタンが欲しいなぁ…キャンドルスタンドは重たいし、お手洗いに行く時にちょっと暗くて…」
「ランタン?そうね、いいわね!」
アルシャインは微笑んで頷いて、ペンを取る。
次は持ち運ぶのに軽いランタンや庭の置物、それから狩猟用の剣も幾つかお願いします。
素敵な壁掛けランプなどあると助かります。
それから、これは私からのお願いなのですが
〈いつでも構いませんので、訪問なさってみて下さい…〉
利発な子供達の働き振りを見て頂きたいです。
愛娘のアルシャインより
「書けたよ!」
ちょうどアルシャインが書けたタイミングでティナジゼルが言う。
「あたしも!じゃあお人形作りに行こう!」
ベアトリスも言い、ティナジゼルと共に走っていく。
手紙には、〝色々なプレゼントをありがとうございます、大事にします〟と丁寧な文字で書かれていた。
「ふふ…お母様、きっと驚くわね…」
アルシャインは紙で封筒を作り、その中にみんなの手紙と自分の手紙を入れてろうそくで封蝋をする。
「さてと!私も作るぞー!」
そう言ってアルシャインもキャンドルホルダーを手にして部屋を後にした。
「今日はどうしようかなー…」
アルシャインが呟きながら冷蔵庫の中を見る。
「お魚を使い切っちゃわないとね!」
そう言って残っていた魚介類を取り出す。
そこにアルベルティーナが料理の本を手にやってきた。
「ね、この〝天ぷら〟って良くない?!」
「ん~?どれどれ?」
アルシャインとフィナアリスがアルベルティーナと共に本を見る。
「小麦粉と卵と水の衣に油で揚げる…いいわね!やってみましょうか!」
アルシャインが笑って言って、3人で準備をした。
試しに玉ねぎとエノキタケとマッシュルームのかき揚げを揚げて味見をした。
「んん、サクサクして美味しい!」とアルシャイン。
「うん、これはいいわね!お醤油と合う!」とフィナアリス。
「もっと作りたい!」
アルベルティーナが張り切って魚介類の下ごしらえに取り掛かった。
残っていた肉もステーキにして出した。
「ほらほら食べましょう!」
アルシャインが言い、みんながやっと集まってくる。
もう人形は5つも出来ていた。
「今日は天ぷらよ~、男の子にはステーキもあるわ。切り分けて食べてね」
説明する間に素早く祈りを捧げてリュカシオンが食べる。
「うん、美味い!」
「ホントだ!」とルベルジュノー。
「おイモが甘~い!」とティナジゼル。
「これは幾らで出すの?」とルーベンス。
「ん~…本当は〝天つゆ〟っていうタレに付けて食べるらしいから、それが作れたら考えるわ」
アルシャインが答えると、ノアセルジオが聞く。
「何が必要なの?」
「かつおぶしっていう物よ。ボニートを乾燥させた物らしいわ。あと小魚の干物と…それを煮詰めてダシを取るらしいの」
そう説明すると、ノアセルジオが言う。
「じゃあ明日トーマスさんに聞いてみようよ。魚なら知ってるかもしれないし」
「そうね!あ…それとね、みんなにお願いがあるの」
そう言うとみんながアルシャインを見る。
「なぁに?」とマリアンナ。
「…前に鏡とブラシとポーチを頂いたでしょう?そのお礼のお手紙を出そうと思うの」
「それなら書いてあるわ!後で持っていくね!」とユスヘルディナ。
「あたしもー」とマリアンナとアルベルティーナ。
「あのね…ナージィまだ上手く書けなくて…」とティナジゼル。
「大丈夫よ、一緒に書きましょうね」
そうアルシャインが言うと、ティナジゼルとベアトリスが頷いた。
食後、みんなで片付けをして、すぐに2階へ行く。
「これ、俺達もカッコいい制服貰ったから、お礼の手紙!」
リュカシオンがそう言い手紙を渡すと、ルベルジュノーやノアセルジオ、レオリアム、ルーベンスも渡してからまた人形を作りに降りていく。
「アイシャママ!僕たちも!」
メルヒオールが言って、クリストフとオルランドも手紙を渡した。
そして、3人も急いで下に降りていった。
「やだ…個性的だわ」
アルシャインはみんなの手紙を見てクスクス笑いながら部屋に入る。
〝ありがとうございます〟とだけ書いてあるのがリュカシオンとルベルジュノーとオルランド。
丁寧に〝伯爵夫人、制服をありがとうございました〟と書いてあるのがノアセルジオとレオリアムとルーベンス。
クリストフとメルヒオールは〝ありがとうございます、大事にします〟と書いてある。
それらをテーブルに置いてから、アルシャインは手紙を書く準備をしておく。
そこにフィナアリスが女の子達の手紙を持ってきた。
「アイシャママ、これみんなの。…これで平気?」
「どれどれ…?」
不安そうに言うので見てみると、アルシャインは少し驚く。
「まあ…!拝啓も付いてるし、体を気遣う言葉もあるわ…凄いわね!」
「シスターから習ったの…変じゃない?」
「全然変じゃないわ!大丈夫よ…むしろ驚くだろうし、喜ぶと思うわ!」
アルシャインが笑って言うと、廊下から見ていたリナメイシーやユスヘルディナも安心して下に行く。
「良かった…じゃあ、みんなと人形作るわね」
そう言いフィナアリスも下に行くと、入れ違いで紙とペンを持ったティナジゼルとベアトリスが入ってきてソファーに座る。
「さあ、書きましょうか」
「うん!」
みんなの手紙をテーブルに置いて、ティナジゼルとベアトリスはそれを参考にして書いてみる。
それを見守りながら、アルシャインもイスに座って便せんを手にした。
「えーと…拝啓…」
拝啓 お母様
秋の風と共に景色も鮮やかになりましたが、いかがお過ごしですか?
子供達へのプレゼント、ありがとうございました。
どれもみんな喜んでいました。
まだ孤児も増えるかもしれません。
もしもまた寄付して下さるのでしたら、次は
〈次は何がいいかしら?〉
アルシャインはみんなが何を貰って喜ぶかを考える。
…自分では買えない物…何か、貴族らしい物ーーー。
そう考えるが、何も思い浮かばない。
「ナージィ、ヴェーチェ、何か欲しい物はある?」
「…どんな?」と逆にティナジゼルが聞く。
「んーとね…お店では高くて買えないような…貰うと一生大事にしたいと思える物…かな?」
そうアルシャインが聞くと、2人は想像してから答える。
「もう貰ったよ?ペンダント」とベアトリス。
「…ナージィ、一生大事にする物じゃないけど、ランタンが欲しいなぁ…キャンドルスタンドは重たいし、お手洗いに行く時にちょっと暗くて…」
「ランタン?そうね、いいわね!」
アルシャインは微笑んで頷いて、ペンを取る。
次は持ち運ぶのに軽いランタンや庭の置物、それから狩猟用の剣も幾つかお願いします。
素敵な壁掛けランプなどあると助かります。
それから、これは私からのお願いなのですが
〈いつでも構いませんので、訪問なさってみて下さい…〉
利発な子供達の働き振りを見て頂きたいです。
愛娘のアルシャインより
「書けたよ!」
ちょうどアルシャインが書けたタイミングでティナジゼルが言う。
「あたしも!じゃあお人形作りに行こう!」
ベアトリスも言い、ティナジゼルと共に走っていく。
手紙には、〝色々なプレゼントをありがとうございます、大事にします〟と丁寧な文字で書かれていた。
「ふふ…お母様、きっと驚くわね…」
アルシャインは紙で封筒を作り、その中にみんなの手紙と自分の手紙を入れてろうそくで封蝋をする。
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