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第一章 始まりの館
Chapter105 ベアトリスの看病
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みんなが教会に出掛けるのと同時にレンガ職人のロレッソと鍛冶屋のエイデンと家具屋のダンヒルがやってきて、みんなを見送った。
「行ってきまーす!」
「気を付けてな!」とロレッソ。
「おはよう!」
3人が中に挨拶をすると、みんなで
「おはようございます!」
と返事をした。
「ん!新作だ!サルサって事は辛いやつだな!」とエイデン。
「ええ。サルサソースはご存知でしたか」
アルシャインが聞くと、3人は頷いて早速注文する。
「サルサブリトーとサラダブリトーを!魔法のミルクパンとロールパンを一つずつ!」とエイデン。
「サルサブリトーとソーセージブリトーとミルクパンとロールパンを!」とロレッソ。
「サルサブリトーとツナブリトーとミルクパンとロールパンをくれ!」とダンヒル。
「はーい!そうだ、忘れてた!」
アルシャインがパンと手を打って、黒板に
グリーンティーセット(4杯と団子3つ・みたらしとあんこ、栗あん) 30G
と書いた。
「セット…いいなそれ!それもくれ!」
そうロレッソが言うと残りの2人も同じ注文をする。
「そうだ、そこのガゼボにドアがあったが、ありゃどうするんだ?」
ダンヒルが聞くと、アルシャインが目を丸くして口を手で押さえる。
「やだ忘れてた!昨日バタバタしてたから……あれにドアノッカーを取り付けて、各部屋のドアと取り替えようと思ったんです」
「ドアの色がまちまちだが…」とロレッソ。
「瘴気やられのドアを安く買っから…全部真っ黒で分からなかったんですよ」とフィナアリス。
「どれをどこに付けるか言ってくれりゃ、食った後に付けてくよ」とダンヒル。
「え、あ…どのドアにどのドアノッカーか決めながらでいいですか?」
おずおずとアルシャインが聞くと、ダンヒルは笑って頷いた。
お昼前に、みんなより先にマリアンナだけ帰ってきた。
「アンヌ?!早いけどどうしたの?」
アルシャインが聞くと、マリアンナは手を洗ってから答える。
「神父さまに、ヴェーチェの事を相談して早く帰ってきたの!お店も混んでるから、看病が難しいでしょ?」
そう言ってマリアンナはすぐにトレイに水と皿に半分スープを入れて置いて、アルシャインに寄る。
「鍵貸してアイシャママ」
そう言いアルシャインに鍵を借りると、マリアンナは2階に上がっていく。
マリアンナはベッドの脇の椅子に座ってベアトリスの額に手を当てる。
「精査」
習いたてのスキャンを使ってみた。
体に異常があれば、赤や黒で示されるとシスターから聞いた。
しかし何も見えない。
僧侶の人が治してくれたのだから、異常がある訳は無いが…。
マリアンナは少しホッとして、ハンカチに水を垂らしてベアトリスの口を拭いてあげる。
するとベアトリスが目を覚ました。
「…ここは…?」
どうやら、意識がハッキリしたようで、そう聞く。
昨日までは何も喋らなかったのだ。
マリアンナは笑って言う。
「ここは〝金の羊亭〟よ。孤児院宿なの。あたしはマリアンナ、アンヌって呼ばれてるの」
「孤児院…?」
「うん、孤児院。宿をやってるから…それは後でいっか。お水飲める?」
そう聞くと、ベアトリスはコクッと頷いて起き上がる。
そして細い両手でコップを手にするので、マリアンナは手を添えてあげる。
「スープあるから飲もうか。お腹空いたでしょ」
「スープ…」
「はい、あーんして…」
マリアンナがスプーンでスープをすくってベアトリスの口元に運ぶ。
するとベアトリスは一口食べてから、微笑む。
「美味しい…!食べたい!」
そう言い両手を伸ばすので、マリアンナはベアトリスにお皿を持たせてあげて手を添えた。
スープには、ムール貝と豆が2つ入っている。
ベアトリスはパクパクとスープを食べてあっという間に飲み干してしまう。
「もっと飲みたい!」
「元気が出てきたんだね!…もう少し後でまた飲もうね。急にたくさん食べると死んじゃうんだってシスターが言ってたの。ごめんねヴェーチェ」
「…あとで、また飲める?」
「うん、もう少し豆も多くしてみようね」
そう言いマリアンナはお皿をトレイに乗せる。
「トイレは?連れてってあげる」
「うん…」
ベアトリスはベッドから降りて一人で歩けるまでに回復していた。
手を繋いでトイレに行き、戻る途中で下の賑やかさにつられてそっちに行く。
一段ずつ慎重に降りていくと、驚いたアルシャインとオルランドが駆け寄った。
「ヴェーチェ!」
オルランドがすぐにベアトリスを抱き締める。
「オルにーちゃん」
「歩けるようになったんだな!良かった…本当に良かった…!」
オルランドは泣きながらベアトリスを抱き締めている。
そんな2人を、アルシャインは優しく抱き締めた。
暫くして落ち着いたオルランドはベアトリスを離して、ベアトリスを端の丸椅子に座らせて、ここの事を教えた。
「ここで宿を手伝って、暮らしていくんだ。もう食べ物にも寝る所にも困らないから」
そうオルランドが笑って言う。
ベアトリスはオルランドが笑っている事に対して安心して笑った。
「オルにーちゃんが平気なら大丈夫」
「そっか…。でも、自分で何か作って売ればお金を半分もらえるんだって!だから、何か作ろうな」
「何かって?」
「えっと…あそこにあるネックレスみたいなのとか…多分?」
困っていると、クリストフが本を持ってきてベアトリスの膝に置く。
「はいこれ。編み物の本とビーズアクセサリーの本。作り方が分かるよ!」
そう言ってすぐにボーロの入ったカゴを手にして行ってしまう。
「………」
ベアトリスは本とオルランドと周りを見比べて言う。
「あたしも手伝う…」
「まだ無理だよヴェーチェ」
「でも…みんな手伝ってるよ…?」
そう言うと、アルシャインが来てベアトリスを抱き上げる。
「まだ寝てないと駄目よ?オルディ、ヴェーチェについててあげてね」
そう言ってアルシャインは2階に上がる。
ベアトリスをベッドに寝かせると、アルシャインは微笑んで言う。
「無理しなくて大丈夫よ。明日にはもっと歩けるようになるわ。そうしたら、たくさん食べて力を付けて、みんなと一緒に手伝ってね」
「うん」
その返事にアルシャインは笑って頷き、ベアトリスの頭を撫でてからオルランドを見る。
「オルディ、ヴェーチェと一緒にこの本を見ててね」
「はい!」
オルランドはベッドの側の椅子に座って、さっきの本を広げた。
後からマリアンナが毛糸や糸と針の入ったカゴを手にして入ってくる。
「これ使っていい毛糸よ。布も入ってるから、刺繍も出来るし…ぬいぐるみも作れるから。ビーズがやりたかったら誰かに言ってね」
そう優しく言って、マリアンナはカゴをベッドの端に置いてアルシャインと共に部屋を出た。
オルランドは、ベアトリスと共に本を見ながら何が作れるかを話し合った。
「行ってきまーす!」
「気を付けてな!」とロレッソ。
「おはよう!」
3人が中に挨拶をすると、みんなで
「おはようございます!」
と返事をした。
「ん!新作だ!サルサって事は辛いやつだな!」とエイデン。
「ええ。サルサソースはご存知でしたか」
アルシャインが聞くと、3人は頷いて早速注文する。
「サルサブリトーとサラダブリトーを!魔法のミルクパンとロールパンを一つずつ!」とエイデン。
「サルサブリトーとソーセージブリトーとミルクパンとロールパンを!」とロレッソ。
「サルサブリトーとツナブリトーとミルクパンとロールパンをくれ!」とダンヒル。
「はーい!そうだ、忘れてた!」
アルシャインがパンと手を打って、黒板に
グリーンティーセット(4杯と団子3つ・みたらしとあんこ、栗あん) 30G
と書いた。
「セット…いいなそれ!それもくれ!」
そうロレッソが言うと残りの2人も同じ注文をする。
「そうだ、そこのガゼボにドアがあったが、ありゃどうするんだ?」
ダンヒルが聞くと、アルシャインが目を丸くして口を手で押さえる。
「やだ忘れてた!昨日バタバタしてたから……あれにドアノッカーを取り付けて、各部屋のドアと取り替えようと思ったんです」
「ドアの色がまちまちだが…」とロレッソ。
「瘴気やられのドアを安く買っから…全部真っ黒で分からなかったんですよ」とフィナアリス。
「どれをどこに付けるか言ってくれりゃ、食った後に付けてくよ」とダンヒル。
「え、あ…どのドアにどのドアノッカーか決めながらでいいですか?」
おずおずとアルシャインが聞くと、ダンヒルは笑って頷いた。
お昼前に、みんなより先にマリアンナだけ帰ってきた。
「アンヌ?!早いけどどうしたの?」
アルシャインが聞くと、マリアンナは手を洗ってから答える。
「神父さまに、ヴェーチェの事を相談して早く帰ってきたの!お店も混んでるから、看病が難しいでしょ?」
そう言ってマリアンナはすぐにトレイに水と皿に半分スープを入れて置いて、アルシャインに寄る。
「鍵貸してアイシャママ」
そう言いアルシャインに鍵を借りると、マリアンナは2階に上がっていく。
マリアンナはベッドの脇の椅子に座ってベアトリスの額に手を当てる。
「精査」
習いたてのスキャンを使ってみた。
体に異常があれば、赤や黒で示されるとシスターから聞いた。
しかし何も見えない。
僧侶の人が治してくれたのだから、異常がある訳は無いが…。
マリアンナは少しホッとして、ハンカチに水を垂らしてベアトリスの口を拭いてあげる。
するとベアトリスが目を覚ました。
「…ここは…?」
どうやら、意識がハッキリしたようで、そう聞く。
昨日までは何も喋らなかったのだ。
マリアンナは笑って言う。
「ここは〝金の羊亭〟よ。孤児院宿なの。あたしはマリアンナ、アンヌって呼ばれてるの」
「孤児院…?」
「うん、孤児院。宿をやってるから…それは後でいっか。お水飲める?」
そう聞くと、ベアトリスはコクッと頷いて起き上がる。
そして細い両手でコップを手にするので、マリアンナは手を添えてあげる。
「スープあるから飲もうか。お腹空いたでしょ」
「スープ…」
「はい、あーんして…」
マリアンナがスプーンでスープをすくってベアトリスの口元に運ぶ。
するとベアトリスは一口食べてから、微笑む。
「美味しい…!食べたい!」
そう言い両手を伸ばすので、マリアンナはベアトリスにお皿を持たせてあげて手を添えた。
スープには、ムール貝と豆が2つ入っている。
ベアトリスはパクパクとスープを食べてあっという間に飲み干してしまう。
「もっと飲みたい!」
「元気が出てきたんだね!…もう少し後でまた飲もうね。急にたくさん食べると死んじゃうんだってシスターが言ってたの。ごめんねヴェーチェ」
「…あとで、また飲める?」
「うん、もう少し豆も多くしてみようね」
そう言いマリアンナはお皿をトレイに乗せる。
「トイレは?連れてってあげる」
「うん…」
ベアトリスはベッドから降りて一人で歩けるまでに回復していた。
手を繋いでトイレに行き、戻る途中で下の賑やかさにつられてそっちに行く。
一段ずつ慎重に降りていくと、驚いたアルシャインとオルランドが駆け寄った。
「ヴェーチェ!」
オルランドがすぐにベアトリスを抱き締める。
「オルにーちゃん」
「歩けるようになったんだな!良かった…本当に良かった…!」
オルランドは泣きながらベアトリスを抱き締めている。
そんな2人を、アルシャインは優しく抱き締めた。
暫くして落ち着いたオルランドはベアトリスを離して、ベアトリスを端の丸椅子に座らせて、ここの事を教えた。
「ここで宿を手伝って、暮らしていくんだ。もう食べ物にも寝る所にも困らないから」
そうオルランドが笑って言う。
ベアトリスはオルランドが笑っている事に対して安心して笑った。
「オルにーちゃんが平気なら大丈夫」
「そっか…。でも、自分で何か作って売ればお金を半分もらえるんだって!だから、何か作ろうな」
「何かって?」
「えっと…あそこにあるネックレスみたいなのとか…多分?」
困っていると、クリストフが本を持ってきてベアトリスの膝に置く。
「はいこれ。編み物の本とビーズアクセサリーの本。作り方が分かるよ!」
そう言ってすぐにボーロの入ったカゴを手にして行ってしまう。
「………」
ベアトリスは本とオルランドと周りを見比べて言う。
「あたしも手伝う…」
「まだ無理だよヴェーチェ」
「でも…みんな手伝ってるよ…?」
そう言うと、アルシャインが来てベアトリスを抱き上げる。
「まだ寝てないと駄目よ?オルディ、ヴェーチェについててあげてね」
そう言ってアルシャインは2階に上がる。
ベアトリスをベッドに寝かせると、アルシャインは微笑んで言う。
「無理しなくて大丈夫よ。明日にはもっと歩けるようになるわ。そうしたら、たくさん食べて力を付けて、みんなと一緒に手伝ってね」
「うん」
その返事にアルシャインは笑って頷き、ベアトリスの頭を撫でてからオルランドを見る。
「オルディ、ヴェーチェと一緒にこの本を見ててね」
「はい!」
オルランドはベッドの側の椅子に座って、さっきの本を広げた。
後からマリアンナが毛糸や糸と針の入ったカゴを手にして入ってくる。
「これ使っていい毛糸よ。布も入ってるから、刺繍も出来るし…ぬいぐるみも作れるから。ビーズがやりたかったら誰かに言ってね」
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