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第一章 始まりの館
Chapter103 トルティージャ
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パンは即座に売り切れてしまった。
残念がってお客さん達はお土産にマンジュウや団子、ボーロやクッキーやスコーンやパイなどを買って帰っていく。
グレアムも全部のお土産を20個ずつ買って、やってきたギルドの人達と共に抱えて帰っていった。
その頃に、ユスヘルディナが帰ってくる。
「ただいまー!……なんかいい匂い…!」
「ユナの分、取っといてあるよ」
ルーベンスが言い、ミルクパンとロールパンの欠片を渡す。
「新作がパン?うわ、これ柔らかいよ!美味しー!」
食べて笑顔でアルシャインに小袋を見せる。
「アイシャママ、これお給料!」
「良かったわね!」
「あのね…アイシャママ、何か欲しい物なぁい?」
「んー?欲しい物…?」
「うん!…ネックレスとか指輪とか…」
「そういうのは要らないわ~」
「じゃあ…」
言い掛けると、マリアンナがユスヘルディナを端に連れて行く。
「こっちこっち」
「アンヌ、今……」
端に寄ってからマリアンナが喋る。
「そのお金で、アイシャママに何か買ってあげたいんでしょ?」
「うんそう!だから…」
「何か聞いても、うーんしか言わないよ。アイシャママは可愛い物に目が無いんだから、何か買ってくればいいのよ!」
「そうだねー………分かった。明日街に行ってみる」
そう言いユスヘルディナはコロコロドーナツ作りを手伝っているオルランドを見てきょとんとする。
「え、誰?」
そう聞くと、アルシャインがオルランドの肩を抱いてユスヘルディナの前に立つ。
「今日から仲間になったのよ。オルディ、自己紹介して」
優しく言うと、オルランドはペコリと頭を下げてから言う。
「オルランド、13歳です…」
「あ、あたしはユスヘルディナ。12歳よ。ユナって呼んでね!テイマーとしてそこの森で今日から働き出したの!」
「凄いな…宜しく……」
その姿を見て、みんなは〝最初は戸惑ったな~〟と思う。
「じゃあ、手を洗ってくる!」
ユスヘルディナはそう言って外に出る。
ディナーで混む前に食事を済ませてから、マリアンナがベアトリスの世話をしにスープと水をトレイに乗せて2階に行く。
ユスヘルディナだけベアトリスと会ってないので、一緒に世話をしにいった。
「もうスチークス居なくなったんだな」
お客さんが言うと、ノアセルジオが計算をしながら答える。
「森が保護区になったんですよ。外からは見れるから、見てみたらどうですか?」
「あのガゼボで寝てるスチークスを見るのが日課だったのにな」
そうお客さんが淋しそうに言って会計をして出ていく。
入れ違いにリサイクル屋のハンクが入ってくる。
「やあマスター。…アレ、頼むよ」
「はーい……ナリス、一緒に試食用を作って~」
「あ…」
フィナアリスはトルティージャの事だと気付いて、卵の用意をする。
「ハンクさん、お肉はどうする?」
「そうだな…ソーセージを入れておくれよ。一口ぐらいの大きさで」
ジャガイモと玉ねぎをイチョウ切りにしてオリーブオイルに混ぜて蒸し焼きにしてから、ボウルに卵をいれてソーセージを一口大に切って入れて、パセリを千切って入れ、焼いたジャガイモと玉ねぎを加えてフライパンでオムレツを作る。
仕上げはトマトソースだ。
「どうかな~?」
2つ作って、みんなで少しずつ分けて食べた。
「うん、美味しい」とルーベンス。
「これいいね!」とアルベルティーナ。
「半分で幾らかな?」
アルシャインが聞くと、ルベルジュノーが言う。
「卵3つだし…ソーセージ入ってるし…20は?」
「うん、いいと思う」とレオリアム。
みんなも賛成したので、ルーベンスが黒板に
トルティージャ限定4食 20G
と書いた。
卵は他の料理でも使うので、そんなには提供出来ないのだ。
「それ2つおくれよ。あとパンとスープ」
ハンクが言うので、丸ごと盛り付けて4等分に切って出した。
ハンクはフォークで一口食べて微笑む。
「…うん、母さんの味に似てるよ…とても美味しい。俺の母さんもね、凄く料理が上手くて何でも作れたんだよ…思い出すなぁ…ありがとう」
そうお礼を言うハンクの目には涙がにじんでいた。
「ふふ…それは嬉しいわ」
アルシャインはフィナアリスと微笑み合って料理を作った。
「魔法のパンはもう焼けないのかい?」
そうお客さんが聞いてきて、アルシャインは困った顔をする。
「発酵……パンを膨らませるのに何時間も掛かるから、明日じゃないと駄目なんです」
「少しでいいからさ!」
そう言われても、パンの発酵が出来てない内に焼いてもふわふわにはならない。
「お客さん!みんな食べたいのを我慢してくれているんだから、ワガママ言わないの!」
ティナジゼルが注意すると、お客さんみんなが笑う。
「ナージィの言う通りだ!毎日通えば、いつか食えるさ!」
「俺は10日目でやっとチャーシューが食えたんだから!あの時の感動と言ったら、言葉に出来ないよ。次はフルコースを狙ってるのさ!」
「俺はやっと今日チャーシューを食えたよ!いやぁ美味いね!」
そう次々に言うお客さんを見ながら、アルシャイン達は微笑んで料理を作った。
やっとディナーの混雑も終えて、残るは近所の老夫婦だけとなった。
アルシャインはエプロンと三角巾を外して、ピアノを弾いて言葉遊びをする。
「アリさん一家でピクニック♪みんなでピクニックをしよう♪バスケットに何を詰めようか?」
「やっぱりサンドイッチがいいんじゃない?」とフィナアリス。
「サンドイッチを詰めて~一人目が出発だ!さあ次は?」
「マンジュウ3種類!」とルベルジュノー。
「マンジュウ3種類~この子はデザート隊だ♪はいお次~♪」
「ハンバーガー!全部の!」とクリストフ。
「全種類のハンバーガ~♪お皿に分けないとね♪良し次は~?」
「コロコロドーナツとクッキー!」とメルヒオール。
「またデザート隊の出番だね!コロコロドーナツとクッキーは真ん中に仕切り板を挟んで詰めようか♪次は~?」
「唐揚げとフライって肉でやりたいな…」
急にルーベンスが言い、アルベルティーナがパンと手を打つ。
「それなら明日、角ウサギとヤモ鳥で試そうよ!アイシャママ、いい?」
そう聞くとアルシャインは笑って頷く。
「いいわよ~♪じゃあバスケットにはオクトパスと赤イカの唐揚げとアジとボニートのフライを詰めようか♪さあ出発だ!おやおや道がぬかるんでるよ!靴が取られて動けなくなっちゃう、どうしよう?」
「えっと…多分葉っぱが大きいから、それを使って渡ればいいよ」とリナメイシー。
「よし、そうしよう♪葉っぱの上なら歩けるね♪ピクニックはどこでやる?」
「え、川の側じゃないの?」とアルベルティーナ。
「いや、丘の上だよ」とレオリアム。
「お花が多いのは?」
ティナジゼルが聞くと、みんなは何かを思い付いて一斉に言う。
「スチークスの森!」
「スチークスの保護区!」
同時に言って笑い合った。
「エヴァリストさん通してくれるよね?きっと大丈夫、スチークスとアリさんは仲良しだ♪ユナも見守る森の中でピクニック♪みんなにご馳走を振る舞おう!」
そう歌うと老夫婦が拍手をして立ち上がる。
「今日も美味しかったわ」とおばあちゃん。
「また明日」とおじいちゃん。
2人はレースのコースターも買って会計をして外に出た。
「さ、お掃除しましょう」
アルシャインが言い、カシアンとノアセルジオが外の見回りに出る。
ルーベンスとアルベルティーナとフィナアリスは仕込みをして、リュカシオンとルベルジュノーとレオリアムがテーブルと床の掃除をする。
ティナジゼルとクリストフとメルヒオールはお土産を整理して、余ったお菓子をお皿に移す。
リナメイシーはマリアンナの様子を見に行って、ユスヘルディナは水桶に最後の洗い物を入れていく。
「洗い物、手伝って」
そうオルランドに声を掛けると、オルランドはパッと立ち上がる。
2人は玄関前で洗い物をする。
「あ、ついでに貝殻も洗っちゃおう」
アルシャインが言い、虹色貝の綺麗な貝殻を水桶に入れて2人の隣に行って洗う。
「この後は自由にしていいから…文字とか教えようか?」
アルシャインがオルランドに聞くと、オルランドは2階を見上げた。
ベアトリスが心配なのだろう。
「洗い物が終わったら、ヴェーチェに会いましょうね」
そうアルシャインが言うと、オルランドはコクッと頷いた。
「さっきスープ飲んで寝たから…起こさないようにね」
ユスヘルディナが言うと、オルランドはしょんぼりしながら頷いた。
ベアトリスはぐっすり眠っていた。
「ヴェーチェ…いい夢を」
オルランドはそっとベアトリスの頭を撫でてアルシャインと共に部屋を出る。
「じゃあ…まずは本を読んでみましょうか」
そう言ってアルシャインは書斎に案内する。
そこにはレオリアムとマリアンナが居て勉強していた。
ルーベンスも料理の本を見ている。
オルランドは冒険譚を書いた小説を手にして、椅子に座って読んだ。
どうやら字は読めるらしい。
アルシャインは微笑んで料理の本を手にして読む。
「ロースト…牛肉のは美味しかったな~…。これはパスね。他に新メニュー無いかな…」
「これどうかな?」
ルーベンスが本を開いて見せてくる。
「…タコ?タコス?」
「似た感じでこっちのブリトーってのもあるんだ」
そう言いルーベンスはページをめくる。
「タコスはコーントルティーヤに好きな具材を乗せる…。あ、ソースが少し辛いのね…。ブリトーは小麦粉のトルティーヤで包む…なんでもいいなら、ソーセージとチーズとか、サラダを巻くのもいいわね!」
「ソースも合いそうなのを入れればいいみたいだし…唐揚げとか入れたら食べごたえも出るんじゃないかな?」
「いいわね!明日試しましょうか♪」
そう言ってアルシャインは本をしまい、オルランドが平気そうなので部屋を出た。
そして自分の部屋でベアトリスの様子を見ながら人形作りをした。
マリアンナは勉強の後、遅くまでベアトリスに付き添って眠ってしまったので、抱き上げて部屋に連れて行って寝かせてあげた。
〈いい看護師になれるわね…〉
アルシャインはマリアンナとアルベルティーナの頭を撫でて布団を掛け直して部屋を出た。
残念がってお客さん達はお土産にマンジュウや団子、ボーロやクッキーやスコーンやパイなどを買って帰っていく。
グレアムも全部のお土産を20個ずつ買って、やってきたギルドの人達と共に抱えて帰っていった。
その頃に、ユスヘルディナが帰ってくる。
「ただいまー!……なんかいい匂い…!」
「ユナの分、取っといてあるよ」
ルーベンスが言い、ミルクパンとロールパンの欠片を渡す。
「新作がパン?うわ、これ柔らかいよ!美味しー!」
食べて笑顔でアルシャインに小袋を見せる。
「アイシャママ、これお給料!」
「良かったわね!」
「あのね…アイシャママ、何か欲しい物なぁい?」
「んー?欲しい物…?」
「うん!…ネックレスとか指輪とか…」
「そういうのは要らないわ~」
「じゃあ…」
言い掛けると、マリアンナがユスヘルディナを端に連れて行く。
「こっちこっち」
「アンヌ、今……」
端に寄ってからマリアンナが喋る。
「そのお金で、アイシャママに何か買ってあげたいんでしょ?」
「うんそう!だから…」
「何か聞いても、うーんしか言わないよ。アイシャママは可愛い物に目が無いんだから、何か買ってくればいいのよ!」
「そうだねー………分かった。明日街に行ってみる」
そう言いユスヘルディナはコロコロドーナツ作りを手伝っているオルランドを見てきょとんとする。
「え、誰?」
そう聞くと、アルシャインがオルランドの肩を抱いてユスヘルディナの前に立つ。
「今日から仲間になったのよ。オルディ、自己紹介して」
優しく言うと、オルランドはペコリと頭を下げてから言う。
「オルランド、13歳です…」
「あ、あたしはユスヘルディナ。12歳よ。ユナって呼んでね!テイマーとしてそこの森で今日から働き出したの!」
「凄いな…宜しく……」
その姿を見て、みんなは〝最初は戸惑ったな~〟と思う。
「じゃあ、手を洗ってくる!」
ユスヘルディナはそう言って外に出る。
ディナーで混む前に食事を済ませてから、マリアンナがベアトリスの世話をしにスープと水をトレイに乗せて2階に行く。
ユスヘルディナだけベアトリスと会ってないので、一緒に世話をしにいった。
「もうスチークス居なくなったんだな」
お客さんが言うと、ノアセルジオが計算をしながら答える。
「森が保護区になったんですよ。外からは見れるから、見てみたらどうですか?」
「あのガゼボで寝てるスチークスを見るのが日課だったのにな」
そうお客さんが淋しそうに言って会計をして出ていく。
入れ違いにリサイクル屋のハンクが入ってくる。
「やあマスター。…アレ、頼むよ」
「はーい……ナリス、一緒に試食用を作って~」
「あ…」
フィナアリスはトルティージャの事だと気付いて、卵の用意をする。
「ハンクさん、お肉はどうする?」
「そうだな…ソーセージを入れておくれよ。一口ぐらいの大きさで」
ジャガイモと玉ねぎをイチョウ切りにしてオリーブオイルに混ぜて蒸し焼きにしてから、ボウルに卵をいれてソーセージを一口大に切って入れて、パセリを千切って入れ、焼いたジャガイモと玉ねぎを加えてフライパンでオムレツを作る。
仕上げはトマトソースだ。
「どうかな~?」
2つ作って、みんなで少しずつ分けて食べた。
「うん、美味しい」とルーベンス。
「これいいね!」とアルベルティーナ。
「半分で幾らかな?」
アルシャインが聞くと、ルベルジュノーが言う。
「卵3つだし…ソーセージ入ってるし…20は?」
「うん、いいと思う」とレオリアム。
みんなも賛成したので、ルーベンスが黒板に
トルティージャ限定4食 20G
と書いた。
卵は他の料理でも使うので、そんなには提供出来ないのだ。
「それ2つおくれよ。あとパンとスープ」
ハンクが言うので、丸ごと盛り付けて4等分に切って出した。
ハンクはフォークで一口食べて微笑む。
「…うん、母さんの味に似てるよ…とても美味しい。俺の母さんもね、凄く料理が上手くて何でも作れたんだよ…思い出すなぁ…ありがとう」
そうお礼を言うハンクの目には涙がにじんでいた。
「ふふ…それは嬉しいわ」
アルシャインはフィナアリスと微笑み合って料理を作った。
「魔法のパンはもう焼けないのかい?」
そうお客さんが聞いてきて、アルシャインは困った顔をする。
「発酵……パンを膨らませるのに何時間も掛かるから、明日じゃないと駄目なんです」
「少しでいいからさ!」
そう言われても、パンの発酵が出来てない内に焼いてもふわふわにはならない。
「お客さん!みんな食べたいのを我慢してくれているんだから、ワガママ言わないの!」
ティナジゼルが注意すると、お客さんみんなが笑う。
「ナージィの言う通りだ!毎日通えば、いつか食えるさ!」
「俺は10日目でやっとチャーシューが食えたんだから!あの時の感動と言ったら、言葉に出来ないよ。次はフルコースを狙ってるのさ!」
「俺はやっと今日チャーシューを食えたよ!いやぁ美味いね!」
そう次々に言うお客さんを見ながら、アルシャイン達は微笑んで料理を作った。
やっとディナーの混雑も終えて、残るは近所の老夫婦だけとなった。
アルシャインはエプロンと三角巾を外して、ピアノを弾いて言葉遊びをする。
「アリさん一家でピクニック♪みんなでピクニックをしよう♪バスケットに何を詰めようか?」
「やっぱりサンドイッチがいいんじゃない?」とフィナアリス。
「サンドイッチを詰めて~一人目が出発だ!さあ次は?」
「マンジュウ3種類!」とルベルジュノー。
「マンジュウ3種類~この子はデザート隊だ♪はいお次~♪」
「ハンバーガー!全部の!」とクリストフ。
「全種類のハンバーガ~♪お皿に分けないとね♪良し次は~?」
「コロコロドーナツとクッキー!」とメルヒオール。
「またデザート隊の出番だね!コロコロドーナツとクッキーは真ん中に仕切り板を挟んで詰めようか♪次は~?」
「唐揚げとフライって肉でやりたいな…」
急にルーベンスが言い、アルベルティーナがパンと手を打つ。
「それなら明日、角ウサギとヤモ鳥で試そうよ!アイシャママ、いい?」
そう聞くとアルシャインは笑って頷く。
「いいわよ~♪じゃあバスケットにはオクトパスと赤イカの唐揚げとアジとボニートのフライを詰めようか♪さあ出発だ!おやおや道がぬかるんでるよ!靴が取られて動けなくなっちゃう、どうしよう?」
「えっと…多分葉っぱが大きいから、それを使って渡ればいいよ」とリナメイシー。
「よし、そうしよう♪葉っぱの上なら歩けるね♪ピクニックはどこでやる?」
「え、川の側じゃないの?」とアルベルティーナ。
「いや、丘の上だよ」とレオリアム。
「お花が多いのは?」
ティナジゼルが聞くと、みんなは何かを思い付いて一斉に言う。
「スチークスの森!」
「スチークスの保護区!」
同時に言って笑い合った。
「エヴァリストさん通してくれるよね?きっと大丈夫、スチークスとアリさんは仲良しだ♪ユナも見守る森の中でピクニック♪みんなにご馳走を振る舞おう!」
そう歌うと老夫婦が拍手をして立ち上がる。
「今日も美味しかったわ」とおばあちゃん。
「また明日」とおじいちゃん。
2人はレースのコースターも買って会計をして外に出た。
「さ、お掃除しましょう」
アルシャインが言い、カシアンとノアセルジオが外の見回りに出る。
ルーベンスとアルベルティーナとフィナアリスは仕込みをして、リュカシオンとルベルジュノーとレオリアムがテーブルと床の掃除をする。
ティナジゼルとクリストフとメルヒオールはお土産を整理して、余ったお菓子をお皿に移す。
リナメイシーはマリアンナの様子を見に行って、ユスヘルディナは水桶に最後の洗い物を入れていく。
「洗い物、手伝って」
そうオルランドに声を掛けると、オルランドはパッと立ち上がる。
2人は玄関前で洗い物をする。
「あ、ついでに貝殻も洗っちゃおう」
アルシャインが言い、虹色貝の綺麗な貝殻を水桶に入れて2人の隣に行って洗う。
「この後は自由にしていいから…文字とか教えようか?」
アルシャインがオルランドに聞くと、オルランドは2階を見上げた。
ベアトリスが心配なのだろう。
「洗い物が終わったら、ヴェーチェに会いましょうね」
そうアルシャインが言うと、オルランドはコクッと頷いた。
「さっきスープ飲んで寝たから…起こさないようにね」
ユスヘルディナが言うと、オルランドはしょんぼりしながら頷いた。
ベアトリスはぐっすり眠っていた。
「ヴェーチェ…いい夢を」
オルランドはそっとベアトリスの頭を撫でてアルシャインと共に部屋を出る。
「じゃあ…まずは本を読んでみましょうか」
そう言ってアルシャインは書斎に案内する。
そこにはレオリアムとマリアンナが居て勉強していた。
ルーベンスも料理の本を見ている。
オルランドは冒険譚を書いた小説を手にして、椅子に座って読んだ。
どうやら字は読めるらしい。
アルシャインは微笑んで料理の本を手にして読む。
「ロースト…牛肉のは美味しかったな~…。これはパスね。他に新メニュー無いかな…」
「これどうかな?」
ルーベンスが本を開いて見せてくる。
「…タコ?タコス?」
「似た感じでこっちのブリトーってのもあるんだ」
そう言いルーベンスはページをめくる。
「タコスはコーントルティーヤに好きな具材を乗せる…。あ、ソースが少し辛いのね…。ブリトーは小麦粉のトルティーヤで包む…なんでもいいなら、ソーセージとチーズとか、サラダを巻くのもいいわね!」
「ソースも合いそうなのを入れればいいみたいだし…唐揚げとか入れたら食べごたえも出るんじゃないかな?」
「いいわね!明日試しましょうか♪」
そう言ってアルシャインは本をしまい、オルランドが平気そうなので部屋を出た。
そして自分の部屋でベアトリスの様子を見ながら人形作りをした。
マリアンナは勉強の後、遅くまでベアトリスに付き添って眠ってしまったので、抱き上げて部屋に連れて行って寝かせてあげた。
〈いい看護師になれるわね…〉
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