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第一章 始まりの館
Chapter96 テイマー
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朝の混雑が収まった頃に、みんなが帰ってくる。
「ただいまー!」
「お帰りなさい」
アルシャインとフィナアリスが言い、みんなが2階に荷物を置いてからエプロンと三角巾を付けて手を洗う。
ふと、アルベルティーナが白いローブを着た3人組のテーブルを見て訝しがる。
(あのお客さん達、コーヒーしか飲んでないの?)
小声でノアセルジオに聞くと、ノアセルジオは頷く。
(じゃあナージィが聞いてくる!)
そう小声でティナジゼルが言い、スコーンの入ったカゴを持って白いローブの人達の下に駆けていく。
「スコーンはいかがですか~?」
「その…マスターに」
「クッキーはいかが~?」
クリストフが来て言い、続いてメルヒオールがコロコロドーナツのカゴを持って言う。
「コロコロドーナツいかがー?」
3人の子供に囲まれて困っているように見えたので、やっと手の空いたアルシャインが近寄る。
買ってくれないので、ティナジゼルとクリストフとメルヒオールはツンとしながら違うテーブルに行く。
「あの、どうかされました?」
「貴女を待っていました。ここはとても忙しいんですね」
男性が言い、3人は立ち上がる。
「我々は商業ギルドの要請で参りました。私はスチークス保護区を担当する使徒魔術師のエヴァリストと申します。スチークスを、引き取りに来ました」
男性が言うと、アルシャインはクルッと振り向いてユスヘルディナを見る。
「ユナ!こっち来て!」
「スチークス渡すの?」
みんなも寄ってくる。
アルシャインはユスヘルディナの肩を抱いてエヴァリストに言う。
「初めましてエヴァリストさん。私はマスターのアルシャインです。この子が日頃スチークスをお散歩させたり毛づくろいをしてあげていたユスヘルディナです!」
「毛づくろい…?!」
3人が驚いてユスヘルディナを見る。
するとユスヘルディナはニコッと笑って言う。
「はい。朝にお散歩させてあげて、お花の側でエサをあげながら頭を掻いてあげてました。足が届かなくて、いつも痒そうなんだもの」
「…スチークスを、出してくれるかな?」
エヴァリストが言うので、ユスヘルディナが魔石を手にして裏に行く。
それにエヴァリスト達とアルシャインが付いて行く。
みんなもドアから外に出て見守っていた。
「みんなー、お引越しだって!」
ユスヘルディナが声を掛けて、ニワトリ小屋からスチークスを出して、そのままガゼボの方に行く。
スチークス達がユスヘルディナに付いていくのを見て、ローブの女性が声を上げる。
「信じられない…付いていくわ…」
「あの子はテイマーなの?」
ガゼボからもスチークスを出すと、2つのグループはケンカする事も無くユスヘルディナと共に歩いていつもの中央の花畑で落ち着く。
すると保護区の3人は驚いてユスヘルディナを取り囲む。
「君はテイマーなのか?」
エヴァリストが聞くと、ユスヘルディナは首を振る。
「違うけど、動物が懐くからテイマーになりたいの。どうしたらなれるの?」
逆に聞かれて、エヴァリスト達は顔を見合わせた。
そして女性の一人が笑って言う。
「私はスチークス研究者のミシュリーヌよ。宜しくねユスヘルディナ」
「宜しく…」
「あのね、貴女はもうテイマーとしての能力を使っているから、すでにテイマーとなっているわ」
「…え?」
「そのままテイマーとして活躍するなら、ギルドで〝テイマー〟として申請したらいいのよ」
「…それをしたらテイマーとして働けるの?」
そう聞くと、もう一人の女性が喋る。
「私は世話担当の使徒(僧侶)のジュリアよ。貴女は動物のテイマーになりたい?それともモンスターもテイム出来るようになりたい?」
「え…モンスター…?」
「ええ。モンスターもテイム出来るようになると、使役して戦えるようにもなるわ」
「あたしは…スチークスとかの動物使いになりたい!戦うのは好きじゃないし…戦うより守りたい」
そうユスヘルディナが言うと、エヴァリストが頷く。
「では、我々と共にスチークスを保護区に導いてくれるかな?その後でギルドにテイマーとして申請すれば、我々と共に働けるよ」
それを聞いて、ユスヘルディナは笑みを浮かべるが、戸惑う。
「あの…まだ、教会にも行きたいし…みんなとも居たいし…働くのは午後じゃ駄目ですか?!」
「もちろんいいよ。君は未成年だ。君の保護者はアルシャインさんだからね。彼女の許可も得なければ」
エヴァリストが微笑んで言うと、ユスヘルディナはアルシャインを見る。
アルシャインは微笑んで言う。
「ユナ、成人式は18歳になる年に神殿で行うのよ。それまではここから森に通えばいいのよ。夕方には帰って来るのよ?」
「…通っていいの?」
「ええ!貴女が立派なテイマーになれるのを応援するわ!」
そう笑って言うと、ユスヘルディナはアルシャインに抱きつく。
「ありがとうアイシャママ!あたし立派なテイマーになれるように頑張るわ!」
そう言い、ユスヘルディナはスチークスを連れてエヴァリスト達と森に行く。
金の羊亭から、初めて夢への一歩を踏み出したユスヘルディナを見送っていると、側にみんなが寄ってくる。
「ユナ、テイマーだったんだね…」とマリアンナ。
「ええ…さてと!リオン、ガゼボの網を取ってね」
「オッケー」
リュカシオンがガゼボに行く。
「多分すぐに帰ってくるから…そしたら、みんなで街に行かない?お土産用の紙袋を作る紙や箱を選んだり、大きな冷蔵庫と冷凍庫を買うの!」
「いいね!」とルベルジュノー。
「誰が残るの?」とリナメイシー。
「僕が残るよ」とノアセルジオ。
するとルベルジュノーが言う。
「ノアも行きなよ。宿泊客の相手なら、俺と…リオンが残るよ、な!」
「ん?ああ。俺は少し家具のメンテナンスするから、行ってきなよ」とリュカシオン。
「そう…?それなら支度をしましょうか」
アルシャインが言いみんなが中に入って支度をする。
馬と荷馬車の準備をカシアンとレオリアムがすると、ユスヘルディナが戻ってきた。
「え、じゃあ支度しないと!」
ユスヘルディナは慌てて中に入っていった。
「ただいまー!」
「お帰りなさい」
アルシャインとフィナアリスが言い、みんなが2階に荷物を置いてからエプロンと三角巾を付けて手を洗う。
ふと、アルベルティーナが白いローブを着た3人組のテーブルを見て訝しがる。
(あのお客さん達、コーヒーしか飲んでないの?)
小声でノアセルジオに聞くと、ノアセルジオは頷く。
(じゃあナージィが聞いてくる!)
そう小声でティナジゼルが言い、スコーンの入ったカゴを持って白いローブの人達の下に駆けていく。
「スコーンはいかがですか~?」
「その…マスターに」
「クッキーはいかが~?」
クリストフが来て言い、続いてメルヒオールがコロコロドーナツのカゴを持って言う。
「コロコロドーナツいかがー?」
3人の子供に囲まれて困っているように見えたので、やっと手の空いたアルシャインが近寄る。
買ってくれないので、ティナジゼルとクリストフとメルヒオールはツンとしながら違うテーブルに行く。
「あの、どうかされました?」
「貴女を待っていました。ここはとても忙しいんですね」
男性が言い、3人は立ち上がる。
「我々は商業ギルドの要請で参りました。私はスチークス保護区を担当する使徒魔術師のエヴァリストと申します。スチークスを、引き取りに来ました」
男性が言うと、アルシャインはクルッと振り向いてユスヘルディナを見る。
「ユナ!こっち来て!」
「スチークス渡すの?」
みんなも寄ってくる。
アルシャインはユスヘルディナの肩を抱いてエヴァリストに言う。
「初めましてエヴァリストさん。私はマスターのアルシャインです。この子が日頃スチークスをお散歩させたり毛づくろいをしてあげていたユスヘルディナです!」
「毛づくろい…?!」
3人が驚いてユスヘルディナを見る。
するとユスヘルディナはニコッと笑って言う。
「はい。朝にお散歩させてあげて、お花の側でエサをあげながら頭を掻いてあげてました。足が届かなくて、いつも痒そうなんだもの」
「…スチークスを、出してくれるかな?」
エヴァリストが言うので、ユスヘルディナが魔石を手にして裏に行く。
それにエヴァリスト達とアルシャインが付いて行く。
みんなもドアから外に出て見守っていた。
「みんなー、お引越しだって!」
ユスヘルディナが声を掛けて、ニワトリ小屋からスチークスを出して、そのままガゼボの方に行く。
スチークス達がユスヘルディナに付いていくのを見て、ローブの女性が声を上げる。
「信じられない…付いていくわ…」
「あの子はテイマーなの?」
ガゼボからもスチークスを出すと、2つのグループはケンカする事も無くユスヘルディナと共に歩いていつもの中央の花畑で落ち着く。
すると保護区の3人は驚いてユスヘルディナを取り囲む。
「君はテイマーなのか?」
エヴァリストが聞くと、ユスヘルディナは首を振る。
「違うけど、動物が懐くからテイマーになりたいの。どうしたらなれるの?」
逆に聞かれて、エヴァリスト達は顔を見合わせた。
そして女性の一人が笑って言う。
「私はスチークス研究者のミシュリーヌよ。宜しくねユスヘルディナ」
「宜しく…」
「あのね、貴女はもうテイマーとしての能力を使っているから、すでにテイマーとなっているわ」
「…え?」
「そのままテイマーとして活躍するなら、ギルドで〝テイマー〟として申請したらいいのよ」
「…それをしたらテイマーとして働けるの?」
そう聞くと、もう一人の女性が喋る。
「私は世話担当の使徒(僧侶)のジュリアよ。貴女は動物のテイマーになりたい?それともモンスターもテイム出来るようになりたい?」
「え…モンスター…?」
「ええ。モンスターもテイム出来るようになると、使役して戦えるようにもなるわ」
「あたしは…スチークスとかの動物使いになりたい!戦うのは好きじゃないし…戦うより守りたい」
そうユスヘルディナが言うと、エヴァリストが頷く。
「では、我々と共にスチークスを保護区に導いてくれるかな?その後でギルドにテイマーとして申請すれば、我々と共に働けるよ」
それを聞いて、ユスヘルディナは笑みを浮かべるが、戸惑う。
「あの…まだ、教会にも行きたいし…みんなとも居たいし…働くのは午後じゃ駄目ですか?!」
「もちろんいいよ。君は未成年だ。君の保護者はアルシャインさんだからね。彼女の許可も得なければ」
エヴァリストが微笑んで言うと、ユスヘルディナはアルシャインを見る。
アルシャインは微笑んで言う。
「ユナ、成人式は18歳になる年に神殿で行うのよ。それまではここから森に通えばいいのよ。夕方には帰って来るのよ?」
「…通っていいの?」
「ええ!貴女が立派なテイマーになれるのを応援するわ!」
そう笑って言うと、ユスヘルディナはアルシャインに抱きつく。
「ありがとうアイシャママ!あたし立派なテイマーになれるように頑張るわ!」
そう言い、ユスヘルディナはスチークスを連れてエヴァリスト達と森に行く。
金の羊亭から、初めて夢への一歩を踏み出したユスヘルディナを見送っていると、側にみんなが寄ってくる。
「ユナ、テイマーだったんだね…」とマリアンナ。
「ええ…さてと!リオン、ガゼボの網を取ってね」
「オッケー」
リュカシオンがガゼボに行く。
「多分すぐに帰ってくるから…そしたら、みんなで街に行かない?お土産用の紙袋を作る紙や箱を選んだり、大きな冷蔵庫と冷凍庫を買うの!」
「いいね!」とルベルジュノー。
「誰が残るの?」とリナメイシー。
「僕が残るよ」とノアセルジオ。
するとルベルジュノーが言う。
「ノアも行きなよ。宿泊客の相手なら、俺と…リオンが残るよ、な!」
「ん?ああ。俺は少し家具のメンテナンスするから、行ってきなよ」とリュカシオン。
「そう…?それなら支度をしましょうか」
アルシャインが言いみんなが中に入って支度をする。
馬と荷馬車の準備をカシアンとレオリアムがすると、ユスヘルディナが戻ってきた。
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