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第一章 始まりの館
Chapter93 フルコース
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ディナーで混雑する前にサンマを焼いていると、みんながじーっと見てきた。
「んふふ…食べたいんだなー?」
アルシャインがそう笑いながら聞くと、みんなはコクリと頷く。
「もー…そう言うと思って、お昼はパスタ食べたのよ!みんなで分け合って食べましょう♪」
そう言い、アルシャインは焼いたサンマを半分に切って大皿に盛り付ける。
虹色貝とエビのピッツァも特別に作って、みんなで囲んで食べる。
宿泊客は日替わりパスタを頼んできたので、スープとポテトを勧めて出した。
そこにスーツを着た男性で、黒の部屋に泊まっているお客さんが来てカウンター席に座って言う。
「マスター、今日のオススメは何かな?」
食べ終えて食器を片付けている時にそう言われてアルシャインが考えて答える。
「そうですね…魚が新鮮なので、オクトパスとカランクスの唐揚げとアジフライとサラダ…と言いたいんですけど、虹色貝とムール貝も美味しくて!」
「カランクスか…カルパッチョは無いのかな?」
「お刺身は大丈夫ですか?」
「出来たら食べたいな。焼き魚のいい匂いがして食べたくなってね。出来ればムニエルも欲しいが…」
それを聞いて、アルシャインはチラッとみんなを見る。
「ねえ、カルパッチョは前菜になるし…フルコースみたいにするのはどうかしら?」
そう聞くと、みんながキッチンに集まって料理の本を開いて会議が開かれる。
「フルコースは…前菜、スープ、魚料理、ロースト以外の肉料理、ソルベ、ローストの肉料理、生野菜、甘味、果物、コーヒー…!?」
読み上げたレオリアムが驚く。
「こっちは前菜、スープ、魚料理、ソルベ、肉料理、チーズ、デザートだって…ソルベは抜かしてもいいみたいだけど…ソルベって何?」リュカシオンが言う。
「リオンの方にしよう!」
ルーベンスが言い、鉛筆でノートに書く。
「前菜はカルパッチョ、スープは日替わり、えーと…魚料理はカランクスのムニエルでムール貝添え、肉料理は…?」
「今日は赤鹿のコトレッタよ!」とフィナアリス。
「チーズは無しで…デザートは栗マンジュウね!魚料理と肉料理の間に口直しのボーロで最後にグリーンティー!…どう?」
アルシャインが言い、ルーベンスが言う。
「魚の仕入れと考えて、230Gは?」
「いえ、250Gで!いかがですか?」
フィナアリスが言ってお客さんを見る。
「すごいな…こんな短時間で決められるなんて」
お客さんが感心する。
「だって早く決めないとアイシャママは安く済ませるんだもの!」とマリアンナ。
「フルコースは…その人だけ?」
今しがた入ってきたミュージ売りのコルマンが切なそうに聞く。
「えー…んー……」
みんなは顔を見合わせて唸る。
「ディナーで限定5名まで!」
アルベルティーナがそう言い、続けてルベルジュノーが黒板に書く。
「全部お任せで!」
ディナーのお任せフルコース限定5名 250G
そう黒板に書かれた。
するとみんなが頷いて調理に取り掛かった。
カルパッチョはオリーブオイルとレモン汁と塩コショウでソースを作って、カランクスの刺し身の上に玉ねぎの千切りとベビーリーフを添えた。
これで立派な前菜だ。
それを食べている間にムニエルとムール貝の白ワイン蒸しを作る。
ムニエルにはジャガイモを添える。
そこにお客さんが入ってきて、すぐに残り3名のフルコースが注文される。
「いやぁラッキーだな!」
フルコースを注文した種屋のホレスが言うと、夫婦でフルコースを注文した野菜農家のウィルモットと妻のドルシラが笑う。
「初めてのフルコースだもの、ドキドキするわ!」
ドルシラが言うとウィルモットも頷く。
「楽しみだな」
「くそ…オクトパスとカランクスの唐揚げとアジフライとサラダと…ステーキと白エビフライのセットをくれ!」
ペンキ屋のダグラムが言うと、リサイクル屋のハンクと飴屋のルパートも同じ物を注文した。
すると他の男性客もセットを2つ頼み、女性は日替わりパスタを注文した。
「そんなに食べられるの~?」
慌ただしく作りながらアルシャインが聞くと、ハンクが頷く。
「食えるさ!男はたくさん食べるんだから」
その言葉に微笑みながら、アルシャイン達は忙しく料理を出していく。
途中でエビとイカが売り切れてしまい、注文出来なかったお客さんは日替わりパスタに切り替えた。
そしてマンジュウ3種類と団子とグリーンティーが次々に売れていく。
「これ持ち帰りで10個ずつ!」
大抵のお客さんがそう頼んでいく。
「このグリーンティーは、デカい器には出来ないのかい?」
そう聞かれて、アルシャインは苦笑する。
「この専用の器じゃないと、美味しく提供出来ないんです」
「コレだとすぐ飲みきって淋しいんだよ。何とかならないかな?」
そう言われて、アルシャインはキッチンのみんなを見た。
「確かに、紅茶も木のカップで出してるから…グリーンティーだけ小さくて物足りないかも」とフィナアリス。
「でも美味しくなかったら意味がないし…グリーンティーはさじ一杯でちょうどいい大きさだから…」とルーベンス。
「あ!アレはどうかな?!」
アルベルティーナがパンと手を打って、穀物庫に走っていく。
そして、小さくて綺麗な細工の木のトレイを手にして戻ってきた。
「まあ、綺麗な細工ね!」
アルシャインが聞くとアルベルティーナは笑う。
「バザーの帰りに見付けて買ったのよ!コレに、こうして…」
アルベルティーナは木のトレイにカチャカチャと専用の小さな器を4つ並べて、小皿を置いて団子を3個乗せた。
「グリーンティーセット!どうかな?!4杯とお団子一個ずつで30G!どう?」
「お団子3つは…あ!栗あんを?」
ルーベンスが笑って聞くと、アルベルティーナが頷く。
「ええ!みたらしとあんこ、栗あんの3つ!特別感が出るでしょう?」
「それいい!…トレイは一個しか無いな…」とルーベンス。
「露店にお茶セットにいいよ~って売られてたから…明日、すぐに教会の帰りに買ってくるわ!」
アルベルティーナが言うと、隣に居たマリアンナが笑って頷く。
「一緒に行くわ!リーナとユナが早く帰って料理してくれない?」
「分かったわ」とリナメイシー。
「任せて!」とユスヘルディナ。
「私も行きたいな~…」
ゴニョゴニョとアルシャインが言うと、
「ダーメ!」
とマリアンナとアルベルティーナに言われる。
「明日も絶対混むし、アイシャママが行くと何でも買うでしょ?!」とマリアンナ。
「そうよ!アレもコレもって買っちゃうんだから!お留守番してて!」とアルベルティーナ。
「…はーい」
小さくアルシャインが返事をすると、みんなが笑った。
木のトレイは見付け次第10個以上買う事に決まった。
お客さんがボーロやクッキー、パウンドケーキやコロコロドーナツ、スコーンやキャンディもお土産に買って帰り、早めの店じまいとなった。
カシアンとノアセルジオとリュカシオンが外の見回りと戸締まりをして、残ったみんなで掃除をする。
いつものようにアルシャインがピアノを弾くと、マリアンナがリクエストをする。
「アイシャママ!鳴き声遊びがいい!」
「分かったわ!…てんとう虫のお散歩だ♪メエメエ鳴くのはだぁれ?」
「羊!」とメルヒオール。
「当たり!羊さんとお散歩だ♪横からワンワン聞こえてきたよ?」
「犬!多分ね、小さくて白いの!」とリナメイシー。
「正解♪さあどこまでも歩こうか♪ゲコゲコ誰かが跳ねてきた♪」
「カエル!」とクリストフ。
「当たり~♪カエルさんは犬の背に乗って♪森に入るとホー、ホー」
「フクロウ!」とマリアンナ。
「正解♪やあやあご一緒しませんか?シー!この声は…?」
「しー?」
みんなが首をかしげた。
「シャ~、ほらほら誰かが這ってきた♪」
「あ、ヘビ!」とルベルジュノー。
「正解♪お腹を空かせたヘビさんだー逃げろ~♪キーキー、夜に誰か来たよ?」
「きー…サル?」とレオリアム。
「夜に動くよ~♪バサバサバサ!」
「夜にキーキーバサバサ…ああ、4つ目鳥でしょ!」とカシアン。
「違ーう!」
「角ウサギだ!」とリュカシオン。
「違う~」
言われてみんなが首をかしげた。
「正解は~」
「待って!…コウモリ!吸血コウモリよ!」
慌ててフィナアリスが言うと、アルシャインは笑う。
「正解!…コウモリはこの辺では余り見ないもんね。コウモリさんさようなら~、海を目指してお散歩だ♪青い海が見えてきたら、何が聞こえるかな~…」
言い掛けてアルシャインはみんなを見る。
「海は見た事ある?」
そう聞くとみんなは首を振る。
するとカシアンが言う。
「俺は任務で行ったよ。綺麗なコバルトブルーでさ、しょっぱいんだ!港に行くと磯臭くて!」
「ちょっと!そんなに臭くないわよ!海はね、砂浜が広がって透き通る水で…深い所はエメラルドやコバルトブルーに見えるの!泳ぐと気持ちいいのよ~」
「へー!ナージィ行きたい!」とティナジゼル。
「ええ、いつかみんなで行きましょうね!」
そう言いアルシャインはピアノに布を掛けて、編み物のカゴを手にしてロッキングチェアに座る。
みんなはローズをかまいに2階に行き、少しするとノアセルジオが降りてきてカウンター席でグリーンティーを飲む。
「アイシャも飲む?」
「…ええ」
答えると、ノアセルジオは10Gをカウンター裏の袋に入れてグリーンティーを注いで、アルシャインの側に置く。
「あ、お金…」
「僕のおごり。…匂い袋作っておくよ」
そう言いノアセルジオは針と糸と端切れ布の入ったカゴを手にして縫い始める。
「アイシャは、海で泳いだの?」
「ええ…巡礼した日に、自由時間があってね。みんなではしゃいで…少しだけだけど、楽しかったわ」
そう思い出を語るアルシャインは、本当に楽しそうに微笑んでいた。
「いつか行こうよ。…お金貯めるからさ、みんなで海に」
「ええ!でも、お金ならみんなで貯めましょう…今のままで大丈夫よ。…来年の夏とか…行けるといいな~」
アルシャインは目を輝かせながらそう言い、編み物をした。
それをノアセルジオも微笑んで見て、縫い物をする。
外では虫達の鳴き声が響いていた。
「んふふ…食べたいんだなー?」
アルシャインがそう笑いながら聞くと、みんなはコクリと頷く。
「もー…そう言うと思って、お昼はパスタ食べたのよ!みんなで分け合って食べましょう♪」
そう言い、アルシャインは焼いたサンマを半分に切って大皿に盛り付ける。
虹色貝とエビのピッツァも特別に作って、みんなで囲んで食べる。
宿泊客は日替わりパスタを頼んできたので、スープとポテトを勧めて出した。
そこにスーツを着た男性で、黒の部屋に泊まっているお客さんが来てカウンター席に座って言う。
「マスター、今日のオススメは何かな?」
食べ終えて食器を片付けている時にそう言われてアルシャインが考えて答える。
「そうですね…魚が新鮮なので、オクトパスとカランクスの唐揚げとアジフライとサラダ…と言いたいんですけど、虹色貝とムール貝も美味しくて!」
「カランクスか…カルパッチョは無いのかな?」
「お刺身は大丈夫ですか?」
「出来たら食べたいな。焼き魚のいい匂いがして食べたくなってね。出来ればムニエルも欲しいが…」
それを聞いて、アルシャインはチラッとみんなを見る。
「ねえ、カルパッチョは前菜になるし…フルコースみたいにするのはどうかしら?」
そう聞くと、みんながキッチンに集まって料理の本を開いて会議が開かれる。
「フルコースは…前菜、スープ、魚料理、ロースト以外の肉料理、ソルベ、ローストの肉料理、生野菜、甘味、果物、コーヒー…!?」
読み上げたレオリアムが驚く。
「こっちは前菜、スープ、魚料理、ソルベ、肉料理、チーズ、デザートだって…ソルベは抜かしてもいいみたいだけど…ソルベって何?」リュカシオンが言う。
「リオンの方にしよう!」
ルーベンスが言い、鉛筆でノートに書く。
「前菜はカルパッチョ、スープは日替わり、えーと…魚料理はカランクスのムニエルでムール貝添え、肉料理は…?」
「今日は赤鹿のコトレッタよ!」とフィナアリス。
「チーズは無しで…デザートは栗マンジュウね!魚料理と肉料理の間に口直しのボーロで最後にグリーンティー!…どう?」
アルシャインが言い、ルーベンスが言う。
「魚の仕入れと考えて、230Gは?」
「いえ、250Gで!いかがですか?」
フィナアリスが言ってお客さんを見る。
「すごいな…こんな短時間で決められるなんて」
お客さんが感心する。
「だって早く決めないとアイシャママは安く済ませるんだもの!」とマリアンナ。
「フルコースは…その人だけ?」
今しがた入ってきたミュージ売りのコルマンが切なそうに聞く。
「えー…んー……」
みんなは顔を見合わせて唸る。
「ディナーで限定5名まで!」
アルベルティーナがそう言い、続けてルベルジュノーが黒板に書く。
「全部お任せで!」
ディナーのお任せフルコース限定5名 250G
そう黒板に書かれた。
するとみんなが頷いて調理に取り掛かった。
カルパッチョはオリーブオイルとレモン汁と塩コショウでソースを作って、カランクスの刺し身の上に玉ねぎの千切りとベビーリーフを添えた。
これで立派な前菜だ。
それを食べている間にムニエルとムール貝の白ワイン蒸しを作る。
ムニエルにはジャガイモを添える。
そこにお客さんが入ってきて、すぐに残り3名のフルコースが注文される。
「いやぁラッキーだな!」
フルコースを注文した種屋のホレスが言うと、夫婦でフルコースを注文した野菜農家のウィルモットと妻のドルシラが笑う。
「初めてのフルコースだもの、ドキドキするわ!」
ドルシラが言うとウィルモットも頷く。
「楽しみだな」
「くそ…オクトパスとカランクスの唐揚げとアジフライとサラダと…ステーキと白エビフライのセットをくれ!」
ペンキ屋のダグラムが言うと、リサイクル屋のハンクと飴屋のルパートも同じ物を注文した。
すると他の男性客もセットを2つ頼み、女性は日替わりパスタを注文した。
「そんなに食べられるの~?」
慌ただしく作りながらアルシャインが聞くと、ハンクが頷く。
「食えるさ!男はたくさん食べるんだから」
その言葉に微笑みながら、アルシャイン達は忙しく料理を出していく。
途中でエビとイカが売り切れてしまい、注文出来なかったお客さんは日替わりパスタに切り替えた。
そしてマンジュウ3種類と団子とグリーンティーが次々に売れていく。
「これ持ち帰りで10個ずつ!」
大抵のお客さんがそう頼んでいく。
「このグリーンティーは、デカい器には出来ないのかい?」
そう聞かれて、アルシャインは苦笑する。
「この専用の器じゃないと、美味しく提供出来ないんです」
「コレだとすぐ飲みきって淋しいんだよ。何とかならないかな?」
そう言われて、アルシャインはキッチンのみんなを見た。
「確かに、紅茶も木のカップで出してるから…グリーンティーだけ小さくて物足りないかも」とフィナアリス。
「でも美味しくなかったら意味がないし…グリーンティーはさじ一杯でちょうどいい大きさだから…」とルーベンス。
「あ!アレはどうかな?!」
アルベルティーナがパンと手を打って、穀物庫に走っていく。
そして、小さくて綺麗な細工の木のトレイを手にして戻ってきた。
「まあ、綺麗な細工ね!」
アルシャインが聞くとアルベルティーナは笑う。
「バザーの帰りに見付けて買ったのよ!コレに、こうして…」
アルベルティーナは木のトレイにカチャカチャと専用の小さな器を4つ並べて、小皿を置いて団子を3個乗せた。
「グリーンティーセット!どうかな?!4杯とお団子一個ずつで30G!どう?」
「お団子3つは…あ!栗あんを?」
ルーベンスが笑って聞くと、アルベルティーナが頷く。
「ええ!みたらしとあんこ、栗あんの3つ!特別感が出るでしょう?」
「それいい!…トレイは一個しか無いな…」とルーベンス。
「露店にお茶セットにいいよ~って売られてたから…明日、すぐに教会の帰りに買ってくるわ!」
アルベルティーナが言うと、隣に居たマリアンナが笑って頷く。
「一緒に行くわ!リーナとユナが早く帰って料理してくれない?」
「分かったわ」とリナメイシー。
「任せて!」とユスヘルディナ。
「私も行きたいな~…」
ゴニョゴニョとアルシャインが言うと、
「ダーメ!」
とマリアンナとアルベルティーナに言われる。
「明日も絶対混むし、アイシャママが行くと何でも買うでしょ?!」とマリアンナ。
「そうよ!アレもコレもって買っちゃうんだから!お留守番してて!」とアルベルティーナ。
「…はーい」
小さくアルシャインが返事をすると、みんなが笑った。
木のトレイは見付け次第10個以上買う事に決まった。
お客さんがボーロやクッキー、パウンドケーキやコロコロドーナツ、スコーンやキャンディもお土産に買って帰り、早めの店じまいとなった。
カシアンとノアセルジオとリュカシオンが外の見回りと戸締まりをして、残ったみんなで掃除をする。
いつものようにアルシャインがピアノを弾くと、マリアンナがリクエストをする。
「アイシャママ!鳴き声遊びがいい!」
「分かったわ!…てんとう虫のお散歩だ♪メエメエ鳴くのはだぁれ?」
「羊!」とメルヒオール。
「当たり!羊さんとお散歩だ♪横からワンワン聞こえてきたよ?」
「犬!多分ね、小さくて白いの!」とリナメイシー。
「正解♪さあどこまでも歩こうか♪ゲコゲコ誰かが跳ねてきた♪」
「カエル!」とクリストフ。
「当たり~♪カエルさんは犬の背に乗って♪森に入るとホー、ホー」
「フクロウ!」とマリアンナ。
「正解♪やあやあご一緒しませんか?シー!この声は…?」
「しー?」
みんなが首をかしげた。
「シャ~、ほらほら誰かが這ってきた♪」
「あ、ヘビ!」とルベルジュノー。
「正解♪お腹を空かせたヘビさんだー逃げろ~♪キーキー、夜に誰か来たよ?」
「きー…サル?」とレオリアム。
「夜に動くよ~♪バサバサバサ!」
「夜にキーキーバサバサ…ああ、4つ目鳥でしょ!」とカシアン。
「違ーう!」
「角ウサギだ!」とリュカシオン。
「違う~」
言われてみんなが首をかしげた。
「正解は~」
「待って!…コウモリ!吸血コウモリよ!」
慌ててフィナアリスが言うと、アルシャインは笑う。
「正解!…コウモリはこの辺では余り見ないもんね。コウモリさんさようなら~、海を目指してお散歩だ♪青い海が見えてきたら、何が聞こえるかな~…」
言い掛けてアルシャインはみんなを見る。
「海は見た事ある?」
そう聞くとみんなは首を振る。
するとカシアンが言う。
「俺は任務で行ったよ。綺麗なコバルトブルーでさ、しょっぱいんだ!港に行くと磯臭くて!」
「ちょっと!そんなに臭くないわよ!海はね、砂浜が広がって透き通る水で…深い所はエメラルドやコバルトブルーに見えるの!泳ぐと気持ちいいのよ~」
「へー!ナージィ行きたい!」とティナジゼル。
「ええ、いつかみんなで行きましょうね!」
そう言いアルシャインはピアノに布を掛けて、編み物のカゴを手にしてロッキングチェアに座る。
みんなはローズをかまいに2階に行き、少しするとノアセルジオが降りてきてカウンター席でグリーンティーを飲む。
「アイシャも飲む?」
「…ええ」
答えると、ノアセルジオは10Gをカウンター裏の袋に入れてグリーンティーを注いで、アルシャインの側に置く。
「あ、お金…」
「僕のおごり。…匂い袋作っておくよ」
そう言いノアセルジオは針と糸と端切れ布の入ったカゴを手にして縫い始める。
「アイシャは、海で泳いだの?」
「ええ…巡礼した日に、自由時間があってね。みんなではしゃいで…少しだけだけど、楽しかったわ」
そう思い出を語るアルシャインは、本当に楽しそうに微笑んでいた。
「いつか行こうよ。…お金貯めるからさ、みんなで海に」
「ええ!でも、お金ならみんなで貯めましょう…今のままで大丈夫よ。…来年の夏とか…行けるといいな~」
アルシャインは目を輝かせながらそう言い、編み物をした。
それをノアセルジオも微笑んで見て、縫い物をする。
外では虫達の鳴き声が響いていた。
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