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第一章 始まりの館
Chapter91 リュカシオンの初仕事
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みんなが教会に行ってから、常連さんが入ってくる。
「おはよう!お、魚のメニューだな!」
カウンター席に座ってすぐにロレッソとダンヒルが黒板を見て言う。
「…迷うな…」
呟いてダンヒルは下を見て言う。
「サンマの塩焼きとグラタンをくれ!」
「え?何処にそんなの…」
ロレッソが大きな黒板を見て戸惑うと、アルシャインが笑いながら言う。
「小さな黒板の方に書いてありますよ!」
「え?ホントだ…10食限定!なら食わないとな!俺もサンマの塩焼きとグラタンで!サンマだけ高いんだな」
「魚が高くて…ごめんなさい」
「え、あ、いや!文句を言ったんじゃないんだ!ちょっと安心したんだよ!」
慌ててロレッソが言うと、アルシャインはホッとしたように微笑む。
「良かった~」
「街のレストランでサンマの揚げ物があったが200Gだったな」
ロレッソが言うとフィナアリスが驚く。
「高ーい!大丈夫かしら…」
「海の魚料理は元々高いんだよ」
そうダンヒルが言う。
「はーいサンマの塩焼きよ~、骨に気を付けてね。ライムを掛けて召し上がれ~♪」
アルシャインが2人にサンマを出す。
「どれどれ…」
ロレッソとダンヒルはライムを掛けてフォークで魚を食べる。
「うん、塩が効いてて美味いな」とダンヒル。
「揚げ物よりいいな、これ」とロレッソ。
そこにお客さんが入ってくる。
「お、魚の匂いだ。いい匂いだな」
「どの魚だい?」
男性2人が言う。
「サンマの塩焼きですよ。グラタンとか…オクトパスとカランクスの唐揚げとアジフライとサラダに、ステーキと白エビフライのセットもありますよ」
ノアセルジオが言うと、2人は真顔で悩む。
この2人は近所に住む兄弟だ。
兄は木こりをしていて、弟は大工をしている。
「オクトパスとカランクスの唐揚げとアジフライとサラダをくれ!」と兄の方が頼む。
「え、あ限定ならサンマの塩焼きと…グラタンとライスコロッケを!」と弟の方が頼んだ。
「そうだ、グラタンの具材、虹色貝にする事も出来ますよ~」
アルシャインが急にそう言う。するとノアセルジオが慌てて言う。
「あー…虹色貝なら20Gで!」
「貝にしてくれ!好きなんだよ」
そう言うので、フィナアリスは虹色貝を取り出した。
「もー、急に変えないでよアイシャママ」
「だって、虹色貝のグラタン美味しかったんだもの!今日も手に入ったし、やっぱり食べてもらいたいじゃない」
そう言いながらアルシャインはマンジュウを蒸す。
「ムール貝はどうするの?」
フィナアリスが聞くと、アルシャインはレシピノートを見て悩む。
「白ワイン蒸しにして楽しむのがいいらしいんだけど……パスタにも合うって聞いた事が…これこれ!ムール貝のトマトパスタ!」
アルシャインは自分の見聞レシピノートを確認してから言う。
「いいね、今日のパスタはムール貝?それともツナとイカ?」
ノアセルジオが聞くとアルシャインはまた悩み出す。
「今日はムール貝…でもイカも新鮮で…」
「それなら今日は2種類から選んでもらうのはどうかしら?」
そうフィナアリスが言うと、アルシャインは笑って手を叩く。
「いいわね!それでいきましょう♪」
「…パスタの値段、少し上げていいかな?」
ノアセルジオが言いにくそうに言うと、アルシャインは苦笑する。
「…仕入れ値と合わせてくれていいわよ」
「良かった」
ノアセルジオは黒板の日替わりパスタの部分を訂正する。
日替わりパスタ(イカとツナまたはムール貝) 15G
と書かれた。
朝の混雑が終わる頃にみんなが帰ってくる。
するとダンヒルが声を掛ける。
「リュカシオン!」
「はい!?」
リュカシオンは驚きながらも駆け寄ると、ダンヒルは紙を渡した。
「コイツを作ってみろ」
「え…」
リュカシオンは紙を受け取って広げて見る。
そこには、揺りかごの設計図があった。
「親方、これは…?」
「孤児院に寄付する揺りかごだ。1週間で作れ。廃材で構わんが、ヤスリを忘れるなよ」
そう言ってダンヒルはお土産を手に出ていった。
「頑張ります!」
その背に大声で言い、リュカシオンは2階に駆けて行き、荷物を置いてから慌ただしく降りてくる。
「ごめんマスター!俺、認められるかもしれないから…っ」
「ええ、頑張って作ってきてね!」
アルシャインは笑顔でリュカシオンを見送った。
リュカシオンにとっては、初めて任された仕事だ。
「リオン嬉しそうね」
リナメイシーが言い、みんなと笑い合う。
「…僕も野菜を取ってくるよ!」
そう言いクリストフがカゴを手にして野菜畑に走っていった。
「…夢があるのはいい事だわ」
アルシャインは微笑んでクリストフを見送る。
「そういえば…ナージィとメルの夢は?大きくなったら何するか決まった?」
ユスヘルディナがキャンディを作りながら聞くと、ティナジゼルはハーブを千切りながら首をかしげる。
「あのね…やる事がたくさんあって、分かんないの」
「僕もまだ分かんない。でもニワトリの世話とか好きだよ。みんなにクッキーとかすすめるのも!」
「そう…いつか見つかるわ」
アルシャインは笑ってメルヒオールの頭を撫でる。
ティナジゼルもメルヒオールもまだ6歳だ。
これからたくさん学んで、やりたい事を見付ければいいーーー。
「見付からなくても…いつか何かやりたくなるわよ」
そう言ってアルシャインは仕込みに加わった。
「おはよう!お、魚のメニューだな!」
カウンター席に座ってすぐにロレッソとダンヒルが黒板を見て言う。
「…迷うな…」
呟いてダンヒルは下を見て言う。
「サンマの塩焼きとグラタンをくれ!」
「え?何処にそんなの…」
ロレッソが大きな黒板を見て戸惑うと、アルシャインが笑いながら言う。
「小さな黒板の方に書いてありますよ!」
「え?ホントだ…10食限定!なら食わないとな!俺もサンマの塩焼きとグラタンで!サンマだけ高いんだな」
「魚が高くて…ごめんなさい」
「え、あ、いや!文句を言ったんじゃないんだ!ちょっと安心したんだよ!」
慌ててロレッソが言うと、アルシャインはホッとしたように微笑む。
「良かった~」
「街のレストランでサンマの揚げ物があったが200Gだったな」
ロレッソが言うとフィナアリスが驚く。
「高ーい!大丈夫かしら…」
「海の魚料理は元々高いんだよ」
そうダンヒルが言う。
「はーいサンマの塩焼きよ~、骨に気を付けてね。ライムを掛けて召し上がれ~♪」
アルシャインが2人にサンマを出す。
「どれどれ…」
ロレッソとダンヒルはライムを掛けてフォークで魚を食べる。
「うん、塩が効いてて美味いな」とダンヒル。
「揚げ物よりいいな、これ」とロレッソ。
そこにお客さんが入ってくる。
「お、魚の匂いだ。いい匂いだな」
「どの魚だい?」
男性2人が言う。
「サンマの塩焼きですよ。グラタンとか…オクトパスとカランクスの唐揚げとアジフライとサラダに、ステーキと白エビフライのセットもありますよ」
ノアセルジオが言うと、2人は真顔で悩む。
この2人は近所に住む兄弟だ。
兄は木こりをしていて、弟は大工をしている。
「オクトパスとカランクスの唐揚げとアジフライとサラダをくれ!」と兄の方が頼む。
「え、あ限定ならサンマの塩焼きと…グラタンとライスコロッケを!」と弟の方が頼んだ。
「そうだ、グラタンの具材、虹色貝にする事も出来ますよ~」
アルシャインが急にそう言う。するとノアセルジオが慌てて言う。
「あー…虹色貝なら20Gで!」
「貝にしてくれ!好きなんだよ」
そう言うので、フィナアリスは虹色貝を取り出した。
「もー、急に変えないでよアイシャママ」
「だって、虹色貝のグラタン美味しかったんだもの!今日も手に入ったし、やっぱり食べてもらいたいじゃない」
そう言いながらアルシャインはマンジュウを蒸す。
「ムール貝はどうするの?」
フィナアリスが聞くと、アルシャインはレシピノートを見て悩む。
「白ワイン蒸しにして楽しむのがいいらしいんだけど……パスタにも合うって聞いた事が…これこれ!ムール貝のトマトパスタ!」
アルシャインは自分の見聞レシピノートを確認してから言う。
「いいね、今日のパスタはムール貝?それともツナとイカ?」
ノアセルジオが聞くとアルシャインはまた悩み出す。
「今日はムール貝…でもイカも新鮮で…」
「それなら今日は2種類から選んでもらうのはどうかしら?」
そうフィナアリスが言うと、アルシャインは笑って手を叩く。
「いいわね!それでいきましょう♪」
「…パスタの値段、少し上げていいかな?」
ノアセルジオが言いにくそうに言うと、アルシャインは苦笑する。
「…仕入れ値と合わせてくれていいわよ」
「良かった」
ノアセルジオは黒板の日替わりパスタの部分を訂正する。
日替わりパスタ(イカとツナまたはムール貝) 15G
と書かれた。
朝の混雑が終わる頃にみんなが帰ってくる。
するとダンヒルが声を掛ける。
「リュカシオン!」
「はい!?」
リュカシオンは驚きながらも駆け寄ると、ダンヒルは紙を渡した。
「コイツを作ってみろ」
「え…」
リュカシオンは紙を受け取って広げて見る。
そこには、揺りかごの設計図があった。
「親方、これは…?」
「孤児院に寄付する揺りかごだ。1週間で作れ。廃材で構わんが、ヤスリを忘れるなよ」
そう言ってダンヒルはお土産を手に出ていった。
「頑張ります!」
その背に大声で言い、リュカシオンは2階に駆けて行き、荷物を置いてから慌ただしく降りてくる。
「ごめんマスター!俺、認められるかもしれないから…っ」
「ええ、頑張って作ってきてね!」
アルシャインは笑顔でリュカシオンを見送った。
リュカシオンにとっては、初めて任された仕事だ。
「リオン嬉しそうね」
リナメイシーが言い、みんなと笑い合う。
「…僕も野菜を取ってくるよ!」
そう言いクリストフがカゴを手にして野菜畑に走っていった。
「…夢があるのはいい事だわ」
アルシャインは微笑んでクリストフを見送る。
「そういえば…ナージィとメルの夢は?大きくなったら何するか決まった?」
ユスヘルディナがキャンディを作りながら聞くと、ティナジゼルはハーブを千切りながら首をかしげる。
「あのね…やる事がたくさんあって、分かんないの」
「僕もまだ分かんない。でもニワトリの世話とか好きだよ。みんなにクッキーとかすすめるのも!」
「そう…いつか見つかるわ」
アルシャインは笑ってメルヒオールの頭を撫でる。
ティナジゼルもメルヒオールもまだ6歳だ。
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