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第一章 始まりの館

Chapter88 初めての魚料理

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 ちょうどお客さんが落ち着いた頃にアルシャインとノアセルジオが帰ると、みんなが荷馬車に寄ってくる。
「でか!それがサンマ?!」
ルベルジュノーが驚愕して言うと、ノアセルジオが微笑んで言う。
「これはカジマグロだよ。どんな調理も合うらしい…中に運ぼう」
そう言うと、リュカシオンとルベルジュノーが手伝って中に入れた。
「はい虹色貝とサザエでしょ~、これはアサリでこれは白エビ!」
アルシャインは次々と貝の入ったカゴと白エビの入ったカゴを出してみんなに渡していく。
「この貝、ホントに虹色で素敵!」とティナジゼル。
「どうやって食べるのかしら…」とフィナアリス。
ルーベンスは白エビを冷蔵庫に入れてから、料理の本を取り出して調べる。
リナメイシーはレシピノートを見て探した。
「アサリはボウルに水を入れて、ナイフを入れて砂抜きするらしいわ」
アルシャインがサンマを運んできて言う。
「それがサンマ!?」
メルヒオールとクリストフが喜んで寄ってきて言う。
「ええ。まずは内臓を取ってから、塩を塗ってトレイに置いて冷蔵庫に入れるの!」
アルシャインが笑って答えると、アルベルティーナとマリアンナが側に来る。
「手伝うよ!」とマリアンナ。
「ドキドキするね!」とアルベルティーナ。
2人は包丁で丁寧にサンマの処理をする。
湖の魚で慣れたらしい。
「じゃあ任せるわね。リアムとユナは?」
「果樹園だよ。あれ?カシアンは?」
リュカシオンが聞くと、ノアセルジオが答える。
「露店でカボス探しをしているよ」
「これどう切るのさ」
ルベルジュノーが聞くと、アルシャインは一番大きな包丁を手に、カジマグロの側に立つ。
「今夜はアクアパッツァを出そうと思うの!だからまずは3枚にしてから…食べやすい大きさでいいわよね!」
そう言ってカジマグロを切っていく。
だが、大きくて中々切れなかった。
「…ノコギリ使おうよ!ちゃんと綺麗にしてあるから!」
見兼ねたリュカシオンが言うと、アルシャインは座り込んでカジマグロを見つめる。
「…そうね、早くしないと!」
「2人引きのデカいノコギリがあるが…使うか?」
コーヒーを飲みながら見ていたダンヒルが聞くと、アルシャインとリュカシオンが笑顔で見た。
「マスター!俺手伝うよ!」
リュカシオンが笑顔で言うと、ダンヒルは立ち上がって苦笑する。
「当たり前だ。そいつは早く切らんとな!」
そう言いダンヒルは外に出て言う。
「馬ぁ借りるぞ!」
「はい!お願いします!」
アルシャインの返事と共にダンヒルは馬に乗っていった。
その間にアルシャインはアクアパッツァの為の野菜を選ぶ。

 ダンヒルは両引きノコギリと共に、漁師のトーマスを乗せてきた。
「こいつは友人ダチのトーマスだ、漁師をしてるから魚を捌くのは上手い」
そう説明する間に、トーマスは板の上に横たわるカジマグロを見て駆け寄る。
「あああ、こんな所に…氷は無いか?!細かく砕いたヤツ!周りに置いてくれ!」
「は、はい!」
アルシャインが慌てて用意する。
「こんな場所じゃ駄目だ!水辺は…裏に井戸はあるか?!肉を捌く所に運べ!」
トーマスが指示すると、急いでリュカシオンとルベルジュノーとノアセルジオがカジマグロを裏に運ぶ。
するとトーマスは何も言わずに大きい包丁を手にして、カジマグロの尾を切り離し、頭も切り離す。
「いいか、デカい魚を切るには頭と尾は邪魔だから先に切るんだ」
「はい!」
アルシャインとアルベルティーナとフィナアリスとルーベンスが返事をした。
するとトーマスは両引きノコギリを手にする。
「ほら、切るぞ!そっち持て!」
「はい!」
慌ててリュカシオンがノコギリの片側を持つ。
「いいか、骨に沿って切るんだ。せーの!」
トーマスの掛け声でリュカシオンも手を動かし、2人で魚を切っていく。
なんとか切れた魚の身を、3等分にしてからアルシャイン達が中に運んで食べやすい大きさに切って冷蔵庫に入れていく。
反対側も切ると、骨に身がかなり付いていた。
「まあ、初めてにしちゃ上出来だ」
そう言い、トーマスは包丁で綺麗に骨に着いた身を取ってボウルに入れていく。
「褒められたじゃねーか」
ダンヒルがニッと笑って言うと、リュカシオンは照れたようにはにかんだ。
「頭は鍋で焼くのか?」
突然そう聞かれてポカーンとしていると、トーマスがカジマグロの頭を切って洗いながら言う。
「ここの頬肉なんか美味いんだよな。オーブンなら焼けるだろ!」
「あの、はい…教えて下さい!」
アルシャインがあたふたしながら言うと、トーマスは笑って中に入る。
「少し焼ければ平気さ。この目玉はスープに入れるといい。骨はどうする?切っておいたが」
「はい?」
アルシャインがカジマグロの頭を焼きながら振り向くと、トーマスが骨と目玉を入れたボウルを持ってきた。
「俺の家じゃスープん中に入れてたが…やってみるか?」
「あの、材料は…?」
「そうだな…貝やエビやカニなんか入れるんだが…玉ねぎやジャガイモやディルでもいいと思うぞ」
そう言って目玉を皿に置いて塩に付ける。
「こうして30分くらい置いて洗えば臭みが取れるからな」
「分かりました」
アルシャインが答えると、トーマスがカゴの中の虹色貝を見つけて言う。
「…お、虹色貝だな!何にでも使えていいよな!ワイン蒸しやグラタンなんかも美味いし!」
「…それいいですね!」
アルシャインが早速スープの用意をしながらマカロニを作る。
「この皿でやるのはどうかな?」
ルーベンスが小さめの耐熱皿を持ってきた。
ちょうど両手で抱えられる程の大きさで、いつもはサラダなんかを入れている皿だ。
「グラタンは初めてだし…貝を一つ入れるのにいいかなって…」
「そうね…それに入れましょうか!」
アルシャインは笑ってルーベンスと共に小さめのお皿を並べる。
「横からナイフを入れりゃ開くぞ」
トーマスが簡単に虹色貝を開いて中身を取り出す。
アルシャインとアルベルティーナとルーベンスが真似をしてやってみた。
「あ、なるほど…」とアルシャイン。
「これ面白い!」とアルベルティーナ。
「やってみたい!」
そう言いユスヘルディナとクリストフが加わったので、アルシャインはグラタンのレシピを見る。
「えーと…玉ねぎと鶏肉かエビを炒めて…白エビね!」
レシピを見ながら、冷蔵庫から白エビを取り出す。
「エビはフォークで皮をむけば早いぞ」
トーマスが言うと、アルシャインが見つめるので、それも手本を見せる。
「頭を取ってフォークで殻を引っ掛けて尻尾まで動かす…な?」
トーマスがやると、魔法みたいに尾まで取れた。
「わあ、簡単!」
「ここのワタは背中を切った方が早い。これはエビの内臓だから、取らないとアレルギーが出る事もあるからな」
「そうなんですね、分かりました!」
アルシャインは言われた通りにエビのワタを取って、細かく切る。
鍋に玉ねぎとエビと虹色貝を入れてバターとオリーブオイルで炒め、小麦粉を入れて混ぜてから、ミルクとスープを入れて弱火で煮る。
「これでとろみが出たらお皿に移すっと…」
皿に貝を一つずつ入れて分けていき、チーズを乗せてオーブンに入れた。
「楽しみね~!」
「美味しいかな?」
ルーベンスが様子を見ながら言う。
「頭が焼けたよー!」
マリアンナが焼けたカジマグロの頭を大きな皿に置いて、鍋を洗いに行く。
「山みたいだね…」
メルヒオールがカジマグロの頭を見て言う。
カジマグロのスープを作っていたアルベルティーナが味見用の皿をアルシャインに渡す。
「アイシャママ、こんな味よ」
「ん、美味しいわね!骨に着いた魚がとろけるわね~」
「頭食べてみたいな」とルベルジュノー。
「そうね…少し味見してみましょう」
アルシャインは頬肉をフォークで取って小皿に少しずつ入れて、みんなに分けた。
「美味しい!」とティナジゼル。
「甘い感じがするね」とノアセルジオ。
「ディナーになったら冷めない?」
ユスヘルディナが心配して聞く。
「そうね…おやつに食べておきましょう。…カシアンの分はお皿に分けておけばいいわね」
そう言ってアルシャインはみんなの分を分けていく。
すると、それをカウンター席に座って見ていたトーマスが言う。
「目玉も美味いぞ」
「えー?!」
一斉に子供達から声が上がった。
「目玉の周りの肉は美肌にいいって母ちゃん達が言ってるからな」
笑ってトーマスが言うと、ダンヒルが言う。
「確かにお前の母ちゃんや奥さんは肌がツルツルだよな!」
それを聞いてフィナアリスとアルベルティーナとユスヘルディナがスープ鍋の前に寄ってきた。
「これかな?アイシャママ、食べていい?」
フィナアリスが聞くと、アルシャインは笑ってスープの中から目玉を出して皿に置いた。
「はい、食べてみて~!私は遠慮するわ~」
苦笑して言い、グラタンを出していく。
フィナアリス達が勇気を出して目玉の周りの肉を食べてみると、口の中でとろけて意外とイケた。
「ん…なんか溶けた!これ好き」とユスヘルディナ。
「これでお肌がツルツルになるのね!」とフィナアリス。
「あたしも!」
マリアンナとティナジゼルとリナメイシーも来て食べた。
アルシャインはそれを微笑ましく見ながら、グラタンの味見をする。
「どれどれ…」
貝とマカロニをすくって食べると、ホワッと身がほぐれて甘みが口に広がった。
「美味しー!これ今日だけ限定で出しましょう♪」
そう言って、お皿をみんなに回す。
「ん、これいいな!グラタン毎日出そうよ!」とリュカシオン。
「…じゃあ、明日からはヤモ鳥で作ろうよ」
そうルーベンスが言う。
ヤモ鳥は、野鳥の中でも捕まえやすく、肉がニワトリに似ていて美味しいのだ。
「今日は虹色貝で、幾らで売るの?貝も30個くらいしか無いけど…」
アルベルティーナが聞くと、ルベルジュノーが聞く。
「虹色貝は幾ら?」
「10個で100Gよ!安いわよね!」
アルシャインの言葉で、みんなが考える。
「じゃあ20G?」とリナメイシー。
「ヤモ鳥なら15Gは?」とレオリアム。
「それだな」
リュカシオンが言い、黒板に
グラタン(本日のみ30個限定) 20G
と書いた。
「アクアパッツァは?」
リナメイシーが聞くと、アルシャインはレシピノートを見てカジマグロの切り身に塩をまぶす。
「うん、まずはオイル煮を作って保存しないとね!10日は持つらしいの」
そう言い、ニンニクや胡椒やローリエを用意すると、カウンター席でコーヒーを飲んでいたトーマスが言う。
「アクアパッツァなら白身魚がいいぞ。カジマグロは半分オイル煮にした方がサンドイッチやサラダやパスタにも使えるしな!」
「いいですね!他にありますか?」
アルシャインが聞くと、トーマスは考えながら答える。
「俺達、漁師は刺し身かオイル煮かハーブのステーキだが…パテとかソテーにもするらしいぞ」
「ステーキにパテとソテーも…どうしよう…パテの型はあるけど、まだ作った事は無いし…」
アルシャインは大量にオイル煮の下ごしらえをする。
それをフィナアリスとアルベルティーナが手伝った。
「ハーブステーキ美味しそう!キノコとジャガイモを添えるのどう?」とユスヘルディナ。
「そうね、ディナーはカジマグロのステーキね!」
簡単だし、それがいいだろう。
「幾ら?」とルベルジュノー。
「…20Gは?」とリナメイシー。
「うん、いいと思うわ!あ、日替わりパスタはアサリとツナよ」
アルシャインが笑って言うので、ルベルジュノーが
カジマグロのステーキ(今夜のみ) 20G
と黒板に書いた。
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