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第一章 始まりの館
Chapter67 ワルツと淡い想い
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アルシャインがラベンダーのドレスを着て降りると、青い制服姿で髪をオールバックにしたカシアンが立っていた。
「カシアン髪っ…」
「アイシャ綺麗だね」
アルシャインの言葉を遮ってノアセルジオが言うと、アルシャインはボッと顔を真っ赤にした。
「あ、ありがとう…それじゃあワルツね」
言いながらアルシャインはカシアンと向かい合って右手を差し伸べた。
そうしている姿は、本当にお嬢様だ。
カシアンはその右手を取って礼をしながら軽くキスをする。
「それではレディ、踊りましょう」
「ええ…ゆっくりね…久し振りなんだから…」
そう言いながら、2人はテンポを取って踊り始めた。
「1・2・3よ、こうして回っていくの」
アルシャインが踊りながら説明する。
すると、みんなが3拍子の拍手をする。
「これで踊れる?」
マリアンナが聞くと、アルシャインは頷いた。
「ええ、ありがとう!久し振りだから緊張するわ」
言いながらも踊り、カシアンを見てドキッとして横を向く。
カシアンは微笑んでアルシャインを見ていた。
「足踏んでも知らないからっ」
アルシャインが真っ赤な顔で言うと、カシアンは柔らかく笑う。
「アイシャの体重で踏まれても痛くないから大丈夫だよ」
そんな事を言うので、ピーピーとリュカシオンが口笛を吹く。
「教えて~!」
ティナジゼルがウズウズして言い出したので、アルシャインは足の運び方を女の子に教える。
「こうしてからこう」
カシアンも男の子に足の運び方を教える。
少し経つと、ノアセルジオがアルシャインと踊ってみていた。
「そうそう、上手いわねノア!」
「アイシャと早く踊りたくて」
そうノアセルジオが言うと、アルシャインは目を反らしながら言う。
「もー、そういう事を言ったら恥ずかしいでしょ!はい次は?」
そう言ってアルシャインは手を話してティナジゼルとレオリアムが踊るのを見る。
「そうそう、手は添えるだけでギュッと握らないのよ~」
その日は遅くまでダンスの練習をした。
アルシャインは部屋に戻ってネグリジェを着てから真っ赤になる。
「なんであんな事を言い出すのかしら…」
いつからか、ノアセルジオは自分を気遣い、優しく微笑むようになっていた。
元々、整った顔立ちのイケメンだから目のやり場に困るのだ。
「やっと見慣れてきたけど…」
呟いてアルシャインは日記を書いた。
新しい料理の事とダンスの事。
それに各部屋の壁紙のアイディアなど。
灯りを消してベッドに入り、窓の外を眺める。
〈…毎日楽しいな………普通に生きてたら、孤児の子供達と宿屋をやる事も無く結婚してたわね…。そこだけ枯渇した事に感謝だわ!〉
アルシャインはふふっと笑う。
不思議な縁で導かれたのだろう…。
これからも大切にしたい。
そう思いながらカーテンを閉めて、布団に潜った。
同じ頃、カシアンとノアセルジオもそれぞれに窓の外を眺めていた。
夜空に浮かぶのは、ドレス姿のアルシャイン。
〈綺麗だな、本当に…〉
カシアンはそう思いながら、窓に額を付ける。
〝好きだ〟と言えたら良かったのだが……護衛騎士の身分では叶わない。
叶わないのに、ノアセルジオは積極的にアルシャインを褒めたり気遣ったりする。
自分が心配しても、あんな風に照れたりしないクセに、と少し嫉妬する。
〈…いつか…いつか、気付くかな…〉
カシアンは手で口を隠しながらも夜空を見上げた。
〈いつか想いを伝えたい〉
そうノアセルジオも思う。
やっとグレアムから経営について学び出して、資格を取る為に勉強しているのだ。
出来ればアルシャインと結婚したい。
そう思っても、まだ自立も出来ていないので言えない。
〈せめて、恋人になりたい…〉
アルシャインを甘やかして休ませてあげたい…。
小さい頃に死んだ両親のように、イチャイチャと仲良くしてみたい。
街でよく見るカップルのように、キスをして抱き締めたい…。
ノアセルジオは苦悩そうな顔で夜空を見上げていた…。
2人の男が淡く切ない恋心を抱いているのを、星だけが見守っていた。
「カシアン髪っ…」
「アイシャ綺麗だね」
アルシャインの言葉を遮ってノアセルジオが言うと、アルシャインはボッと顔を真っ赤にした。
「あ、ありがとう…それじゃあワルツね」
言いながらアルシャインはカシアンと向かい合って右手を差し伸べた。
そうしている姿は、本当にお嬢様だ。
カシアンはその右手を取って礼をしながら軽くキスをする。
「それではレディ、踊りましょう」
「ええ…ゆっくりね…久し振りなんだから…」
そう言いながら、2人はテンポを取って踊り始めた。
「1・2・3よ、こうして回っていくの」
アルシャインが踊りながら説明する。
すると、みんなが3拍子の拍手をする。
「これで踊れる?」
マリアンナが聞くと、アルシャインは頷いた。
「ええ、ありがとう!久し振りだから緊張するわ」
言いながらも踊り、カシアンを見てドキッとして横を向く。
カシアンは微笑んでアルシャインを見ていた。
「足踏んでも知らないからっ」
アルシャインが真っ赤な顔で言うと、カシアンは柔らかく笑う。
「アイシャの体重で踏まれても痛くないから大丈夫だよ」
そんな事を言うので、ピーピーとリュカシオンが口笛を吹く。
「教えて~!」
ティナジゼルがウズウズして言い出したので、アルシャインは足の運び方を女の子に教える。
「こうしてからこう」
カシアンも男の子に足の運び方を教える。
少し経つと、ノアセルジオがアルシャインと踊ってみていた。
「そうそう、上手いわねノア!」
「アイシャと早く踊りたくて」
そうノアセルジオが言うと、アルシャインは目を反らしながら言う。
「もー、そういう事を言ったら恥ずかしいでしょ!はい次は?」
そう言ってアルシャインは手を話してティナジゼルとレオリアムが踊るのを見る。
「そうそう、手は添えるだけでギュッと握らないのよ~」
その日は遅くまでダンスの練習をした。
アルシャインは部屋に戻ってネグリジェを着てから真っ赤になる。
「なんであんな事を言い出すのかしら…」
いつからか、ノアセルジオは自分を気遣い、優しく微笑むようになっていた。
元々、整った顔立ちのイケメンだから目のやり場に困るのだ。
「やっと見慣れてきたけど…」
呟いてアルシャインは日記を書いた。
新しい料理の事とダンスの事。
それに各部屋の壁紙のアイディアなど。
灯りを消してベッドに入り、窓の外を眺める。
〈…毎日楽しいな………普通に生きてたら、孤児の子供達と宿屋をやる事も無く結婚してたわね…。そこだけ枯渇した事に感謝だわ!〉
アルシャインはふふっと笑う。
不思議な縁で導かれたのだろう…。
これからも大切にしたい。
そう思いながらカーテンを閉めて、布団に潜った。
同じ頃、カシアンとノアセルジオもそれぞれに窓の外を眺めていた。
夜空に浮かぶのは、ドレス姿のアルシャイン。
〈綺麗だな、本当に…〉
カシアンはそう思いながら、窓に額を付ける。
〝好きだ〟と言えたら良かったのだが……護衛騎士の身分では叶わない。
叶わないのに、ノアセルジオは積極的にアルシャインを褒めたり気遣ったりする。
自分が心配しても、あんな風に照れたりしないクセに、と少し嫉妬する。
〈…いつか…いつか、気付くかな…〉
カシアンは手で口を隠しながらも夜空を見上げた。
〈いつか想いを伝えたい〉
そうノアセルジオも思う。
やっとグレアムから経営について学び出して、資格を取る為に勉強しているのだ。
出来ればアルシャインと結婚したい。
そう思っても、まだ自立も出来ていないので言えない。
〈せめて、恋人になりたい…〉
アルシャインを甘やかして休ませてあげたい…。
小さい頃に死んだ両親のように、イチャイチャと仲良くしてみたい。
街でよく見るカップルのように、キスをして抱き締めたい…。
ノアセルジオは苦悩そうな顔で夜空を見上げていた…。
2人の男が淡く切ない恋心を抱いているのを、星だけが見守っていた。
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