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第一章 始まりの館
Chapter65 バザーに向けて
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よく晴れた火の日。
朝早くにアルシャインはティナジゼルと庭の手入れをしてから、昨日予約を受けたパイやケーキの準備をする。
ついでに何か作れないかと料理の本をめくった。
「ん~…魚を油で揚げる……魚ね~…小魚なら取れるけど…次!」
良さげな物が無いかを探していく。
「フライドポテト…じゃがいもに小麦粉をまぶして揚げるのね~……」
ふと手を止める。
「ボーロ…ポテトスターチと卵黄と砂糖…あ、これいいかも!」
「うん、作ろうよ!」
一緒に見ていたリナメイシーが言う。
「良し、作ろう~♪」
アルシャインは穀物倉に入って、眠っていたポテトスターチを取り出してくる。
それをリナメイシーと一緒にボウルで混ぜて生地を寝かせる。
10分程で丸めてオーブンで焼く。
「うん、ホロホロしてていいわね」
アルシャインが言うと、リナメイシーも笑顔で言う。
「美味しい!」
「一個1Gね」
そう言ってアルシャインはフライドポテトを作る。
「ボーロ一個1G?」
アルベルティーナが聞くと、アルシャインが頷いた。
アルベルティーナが黒板に
ボーロ一個1G
と書き足す。
フライドポテトはみんなの朝食のハンバーガーの付け合せにした。
「いいね、これ!」とレオリアム。
「ジャガイモ一個分を一回分にして3Gかな」
ルベルジュノーが言うと、ルーベンスが反論する。
「一度に揚げたら分からないよ。…秤があればな…」
「じゃあ…この油きりザルですくった分は?」
アルシャインが言うと、みんなが頷いた。
「それだね」とノアセルジオが言って黒板に書く。
フライドポテト 3G
朝食の後はみんなで仕込みをして、予約の品を焼く頃に宿泊客達が起きてくる。
冒険者達はコロコロドーナツやクッキー、ボーロまで買い占めて冒険に出掛けていった。
「冒険ってあんなに食べ物を買い込んで行かないと駄目なのかな…」
メルヒオールが言うと、ルベルジュノーが言う。
「最近、ハヴェル山のダンジョンから魔物が出てくるって神父様も言ってたから、退治するにはやっぱり体力使うんだろうな」
「え、待ってハヴェル山ってあそこに見えてる山よね?!近いじゃない!」
アルシャインが驚いて聞くと、出掛ける準備をしながらリュカシオンが答える。
「ダンジョンからは出られないようにしてるらしいよ。行ってきます」
「行ってきまーす」
みんなも口々に言って教会に向かう。
「行ってらっしゃい、気を付けてね!」
アルシャインは心配そうに言った。
過去、隣国ではそんなダンジョンから魔物が溢れ出たという事が何度もあって、町が襲われる被害もあったからだ。
「大丈夫かしら…本当に出て来ないといいんだけど…」
アルシャインが心配しながら仕込みをしている所に常連さんが入ってくる。
「おはようございます!」
フィナアリスが笑顔で言って注文を取る。
「お、フライドポテトとボーロをくれ」
エイデンが言い、ロレッソもそれとコーヒーとスープを頼む。
最近朝に来るようになったメガネを掛けた文官のような男性もフライドポテトとボーロを頼んだ。
「こりゃまたドーナツとも違った味で美味いな!」
「ふふ、いいでしょ!今度コーンスターチでもやってみたいわね…」
アルシャインが言いながらフライドポテトを揚げる。
ちょうどお客さんが空いた頃に子供達が帰ってきた。
「ただいまー!」
「お帰りなさい、手を洗ってね~」
アルシャインがボーロを焼きながら言う。
「アイシャ、次の星の日に教会でバザーをやるんだって」
そう言いレオリアムが紙をカウンターに置く。
バザー開催のお知らせだ。
バザーの売り上げは、孤児院への寄付に回されると書いてある。
「あら寄付するのね」
アルシャインが感心する。
隣国のバザーでは、教会の運営費に充てられるからだ。
しかし、少額では意味がないだろう。
「あ、もしかしてこのバザーって貴族向けの物かしら?」
そう聞くと、ちょうど入ってきた商業ギルドのマスターグレアムが言う。
「ええ、そうですよ。売り上げの半分を孤児院へ寄付という形にしています」
「マスターグレアム、おはようございます」
「おはようございますマスターアイシャ。コーヒーと……サンドイッチとボーロとフライドポテトを下さい」
「はい!」
リナメイシーが答えて注文を書いてカウンターに持って行く。
するとアルシャインがコーヒーを持ってグレアムの前に置いた。
「どうぞ。…このバザーは半額が手元に残るお金ですか?」
「はい。出店料は2百Gです…どうですか?そこのコースターや人形でも、ドーナツなどでもいいですしね」
「テーブル一つ分ですか?」
「はい。出店料一つでテーブル一つ…稼働スペースはまあ2メートル四方といった所ですかね」
グレアムは次々と運ばれてきた品の中からサンドイッチを食べる。
「これもいいですね…バザーを出す者の軽食にピッタリで。出店するならクッキーとコロコロドーナツとボーロとパウンドケーキと…パイですかね。お土産に買って帰れます」
「そこでかまどを配置出来ますか?…その、携帯用の魔石を使ったやつとか…」
「勿論、貸出もありますよ」
そうグレアムが言うと、アルシャインは手を叩いて笑う。
「それなら是非出します!みんな、いいかしら?!」
そう振り向いて聞くと、みんなが頷く。
「当日に何を持って行くか考えないと!」
そう言ってアルシャインがカウンター席に座って紙に書き出していく。
「小麦粉と砂糖とポテトスターチと果物とかの材料と~、ボウルや鍋やフライパンに~…」
「オーブン型のかまども設置出来ますよ」
グレアムがボーロを食べながら言う。
「それもいいですね!お菓子とサンドイッチと…何がいいかな~?」
「…アイシャママ、このマンジュウっていいと思う」
そう言ってマリアンナが料理の本を手にしてやってくる。
「小麦粉の皮で野菜やお肉や甘く煮た豆を包んで蒸す…試してみたいわね。セイロってどこで売ってるかしら…」
「ん?これ街で見た事あるな…俺、この後ノアと街に行くから買ってこようか?」
リュカシオンが言うと、アルシャインは笑顔で頷く。
「お願いね!四角でも丸でもいいから!」
「分かった。ノア、行こう!」
「ああ。…すぐに戻るよ」
ノアセルジオがキッチンから離れてエプロンを取る。
アルシャインはお金の入った袋を渡した。
「これで足りるといいけど…」
「多分足りるよ」
ノアセルジオは笑って受け取り、リュカシオンと共に街に行く。
「甘く煮た豆…気になりますね」
グレアムの言葉にアルシャインも頷く。
「どんなのがいいか調べてみよう!」
ルーベンスが言い、穀物倉にある豆を取ってくる。
穀物倉にあるのはレンズ豆といんげん豆とグリーンピースだ。
「こしあんと粒あんと潰しあんがあるって書いてあるね」
ルーベンスが試作の用意をしながら言うと、隣で手伝うアルベルティーナが頷きながら鍋に豆と水を入れる。
「3つやってみればいいよ…ランチの合間に!」
「やってみよう!」
マリアンナもそう言ってあんこ作りに加わった。
ランチの忙しい中、グリーンピースのあんこが出来たので、みんなでつまんでみた。
「ん、いいね!」とルーベンス。
「セイロまだかな…食べてみたいな…」
クリストフが呟きながら外を見る。
「また何か作るのかい?」
ご近所に住む男性がアップルパイを食べながら聞いてくる。
「バザーで新しいの出すの!」
ティナジゼルが言うと、他の客が会計をして言う。
「それは楽しみだな!必ず行くよ」
そう言って出ていく。
朝早くにアルシャインはティナジゼルと庭の手入れをしてから、昨日予約を受けたパイやケーキの準備をする。
ついでに何か作れないかと料理の本をめくった。
「ん~…魚を油で揚げる……魚ね~…小魚なら取れるけど…次!」
良さげな物が無いかを探していく。
「フライドポテト…じゃがいもに小麦粉をまぶして揚げるのね~……」
ふと手を止める。
「ボーロ…ポテトスターチと卵黄と砂糖…あ、これいいかも!」
「うん、作ろうよ!」
一緒に見ていたリナメイシーが言う。
「良し、作ろう~♪」
アルシャインは穀物倉に入って、眠っていたポテトスターチを取り出してくる。
それをリナメイシーと一緒にボウルで混ぜて生地を寝かせる。
10分程で丸めてオーブンで焼く。
「うん、ホロホロしてていいわね」
アルシャインが言うと、リナメイシーも笑顔で言う。
「美味しい!」
「一個1Gね」
そう言ってアルシャインはフライドポテトを作る。
「ボーロ一個1G?」
アルベルティーナが聞くと、アルシャインが頷いた。
アルベルティーナが黒板に
ボーロ一個1G
と書き足す。
フライドポテトはみんなの朝食のハンバーガーの付け合せにした。
「いいね、これ!」とレオリアム。
「ジャガイモ一個分を一回分にして3Gかな」
ルベルジュノーが言うと、ルーベンスが反論する。
「一度に揚げたら分からないよ。…秤があればな…」
「じゃあ…この油きりザルですくった分は?」
アルシャインが言うと、みんなが頷いた。
「それだね」とノアセルジオが言って黒板に書く。
フライドポテト 3G
朝食の後はみんなで仕込みをして、予約の品を焼く頃に宿泊客達が起きてくる。
冒険者達はコロコロドーナツやクッキー、ボーロまで買い占めて冒険に出掛けていった。
「冒険ってあんなに食べ物を買い込んで行かないと駄目なのかな…」
メルヒオールが言うと、ルベルジュノーが言う。
「最近、ハヴェル山のダンジョンから魔物が出てくるって神父様も言ってたから、退治するにはやっぱり体力使うんだろうな」
「え、待ってハヴェル山ってあそこに見えてる山よね?!近いじゃない!」
アルシャインが驚いて聞くと、出掛ける準備をしながらリュカシオンが答える。
「ダンジョンからは出られないようにしてるらしいよ。行ってきます」
「行ってきまーす」
みんなも口々に言って教会に向かう。
「行ってらっしゃい、気を付けてね!」
アルシャインは心配そうに言った。
過去、隣国ではそんなダンジョンから魔物が溢れ出たという事が何度もあって、町が襲われる被害もあったからだ。
「大丈夫かしら…本当に出て来ないといいんだけど…」
アルシャインが心配しながら仕込みをしている所に常連さんが入ってくる。
「おはようございます!」
フィナアリスが笑顔で言って注文を取る。
「お、フライドポテトとボーロをくれ」
エイデンが言い、ロレッソもそれとコーヒーとスープを頼む。
最近朝に来るようになったメガネを掛けた文官のような男性もフライドポテトとボーロを頼んだ。
「こりゃまたドーナツとも違った味で美味いな!」
「ふふ、いいでしょ!今度コーンスターチでもやってみたいわね…」
アルシャインが言いながらフライドポテトを揚げる。
ちょうどお客さんが空いた頃に子供達が帰ってきた。
「ただいまー!」
「お帰りなさい、手を洗ってね~」
アルシャインがボーロを焼きながら言う。
「アイシャ、次の星の日に教会でバザーをやるんだって」
そう言いレオリアムが紙をカウンターに置く。
バザー開催のお知らせだ。
バザーの売り上げは、孤児院への寄付に回されると書いてある。
「あら寄付するのね」
アルシャインが感心する。
隣国のバザーでは、教会の運営費に充てられるからだ。
しかし、少額では意味がないだろう。
「あ、もしかしてこのバザーって貴族向けの物かしら?」
そう聞くと、ちょうど入ってきた商業ギルドのマスターグレアムが言う。
「ええ、そうですよ。売り上げの半分を孤児院へ寄付という形にしています」
「マスターグレアム、おはようございます」
「おはようございますマスターアイシャ。コーヒーと……サンドイッチとボーロとフライドポテトを下さい」
「はい!」
リナメイシーが答えて注文を書いてカウンターに持って行く。
するとアルシャインがコーヒーを持ってグレアムの前に置いた。
「どうぞ。…このバザーは半額が手元に残るお金ですか?」
「はい。出店料は2百Gです…どうですか?そこのコースターや人形でも、ドーナツなどでもいいですしね」
「テーブル一つ分ですか?」
「はい。出店料一つでテーブル一つ…稼働スペースはまあ2メートル四方といった所ですかね」
グレアムは次々と運ばれてきた品の中からサンドイッチを食べる。
「これもいいですね…バザーを出す者の軽食にピッタリで。出店するならクッキーとコロコロドーナツとボーロとパウンドケーキと…パイですかね。お土産に買って帰れます」
「そこでかまどを配置出来ますか?…その、携帯用の魔石を使ったやつとか…」
「勿論、貸出もありますよ」
そうグレアムが言うと、アルシャインは手を叩いて笑う。
「それなら是非出します!みんな、いいかしら?!」
そう振り向いて聞くと、みんなが頷く。
「当日に何を持って行くか考えないと!」
そう言ってアルシャインがカウンター席に座って紙に書き出していく。
「小麦粉と砂糖とポテトスターチと果物とかの材料と~、ボウルや鍋やフライパンに~…」
「オーブン型のかまども設置出来ますよ」
グレアムがボーロを食べながら言う。
「それもいいですね!お菓子とサンドイッチと…何がいいかな~?」
「…アイシャママ、このマンジュウっていいと思う」
そう言ってマリアンナが料理の本を手にしてやってくる。
「小麦粉の皮で野菜やお肉や甘く煮た豆を包んで蒸す…試してみたいわね。セイロってどこで売ってるかしら…」
「ん?これ街で見た事あるな…俺、この後ノアと街に行くから買ってこようか?」
リュカシオンが言うと、アルシャインは笑顔で頷く。
「お願いね!四角でも丸でもいいから!」
「分かった。ノア、行こう!」
「ああ。…すぐに戻るよ」
ノアセルジオがキッチンから離れてエプロンを取る。
アルシャインはお金の入った袋を渡した。
「これで足りるといいけど…」
「多分足りるよ」
ノアセルジオは笑って受け取り、リュカシオンと共に街に行く。
「甘く煮た豆…気になりますね」
グレアムの言葉にアルシャインも頷く。
「どんなのがいいか調べてみよう!」
ルーベンスが言い、穀物倉にある豆を取ってくる。
穀物倉にあるのはレンズ豆といんげん豆とグリーンピースだ。
「こしあんと粒あんと潰しあんがあるって書いてあるね」
ルーベンスが試作の用意をしながら言うと、隣で手伝うアルベルティーナが頷きながら鍋に豆と水を入れる。
「3つやってみればいいよ…ランチの合間に!」
「やってみよう!」
マリアンナもそう言ってあんこ作りに加わった。
ランチの忙しい中、グリーンピースのあんこが出来たので、みんなでつまんでみた。
「ん、いいね!」とルーベンス。
「セイロまだかな…食べてみたいな…」
クリストフが呟きながら外を見る。
「また何か作るのかい?」
ご近所に住む男性がアップルパイを食べながら聞いてくる。
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