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第一章 始まりの館
Chapter53 新たな金の羊亭
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増築を始めてから1ヶ月半程で、屋敷が完成した。
ドアから入って奥にキッチンを置いて、カウンター席を設けて、右側にテーブルを3つとベンチを並べた。
真ん中には丸いテーブル席でイスは2つ。
穀物倉の前に棚とカウンターを置いてレジスターを置く。
穀物倉の出入り口にはアップライトピアノを置いた。
レジスターは鍵を開けてから暗証番号を押して、右にあるハンドルを手前に回すと引き出しが開く。
レジスターの横にキャンディとお守り匂い袋を並べた。
そのカウンターの横にもテーブル席を一つ。
ドアの上には黄金鹿の剥製を飾り、ドアの左右に本棚を置いてみんなで勉強する本を置いた。
本には〝金の羊亭〟のシールが付いている。
その上にレース編みの飾りやコースター、置物や小物などのお土産が並べられている。
メニューの書かれた黒板は右の壁に掛けた。
庭も花を端と真ん中に配置した。
晴れた日は庭にもテーブル席を置けるようにした。
裏庭にはニワトリ小屋。いつの間にか20羽まで増えていた。
ミュージの小屋と馬小屋を並べた。
畑も裏庭に大きく作った。
まだ暑さの残る9月の風の日。
アルシャインは朝早くに出来上がったばかりのキッチンの整理をする。
調味料を棚に並べて、道具も取りやすい場所に入れたり置いたりする。
「広くて使いやすーい!」
一人で楽しく整頓しているとルベルジュノーがやってきた。
「アイシャ、鉄のおたまを作ったんだけど、どうかな?」
「まあ、木の取っ手だわ!」
「エイデンさんに教わったんだ。夕べ仕上げたから…使えるといいけど」
「良し、早速ミートソースを作りましょうか!」
アルシャインは笑ってそのおたまを使ってみる。
「うん、いい感じよ!すごいわね、ジュドー!鍛冶にも興味が出たの?」
「エイデンさんが窯とか作ってるの見てて…なんか、カッコイイなって…色んな仕事があって何がいいか迷っちゃうよ」
そう言ってルベルジュノーはカウンターに座って木のカップで水を飲む。
「…アイシャはさ……どうして聖女になったの?」
「ん?…憧れたのよ……私ね、幼い頃に高熱を出して死にかけたの…その時に、聖女様が治して下さって。一瞬、光に包まれたらフワ~って体が軽くなったの!それで私もなりたいと思って猛勉強したわ…神聖力も普通だったから特訓してね。やっと13歳で聖女になれたんだけど……」
「だけど?」
ルベルジュノーが聞く。
他のみんなも集まっていた。
「だけどね、すっごく大変だったの!朝早くに泉の冷水に裸で入ってお清めをしてから神聖力全力で祈るの。神の声を聞く為だけど、もう本当に、たまにしか聞こえないの!倒れたら鞭打たれたわ。〝信仰心が足りないんだー!〟って…だからハイポーションを飲むようになったの。お昼には神殿の魔石の浄化、次に大地の浄化を2時間、そこからずっと神殿に来る人々の治療を9時まで。やっとパンとスープを頂いて眠るの」
それを聞いてみんなは驚いて戸惑う。
「え…朝ご飯は?」
ティナジゼルが聞くと、アルシャインは苦笑する。
「無いわよ。一日一食。働いてようやく頂けるの………それを5年繰り返したら、神聖力が無くなっちゃって!国王様がね、恥だから国外追放だーって…酷いわよね~あんなに尽くしたのに…」
言い掛けてアルシャインはキッチンを出る。
アルベルティーナやマリアンナなど女の子が泣いてしまっているので、慰める為だ。
「今は美味しい料理をみんなと食べられて幸せよ?だから泣かないで……みんなは?ずっとお腹を空かせて生きてきて辛くなかった?」
「アイシャママのお陰で楽しいよ!」とマリアンナ。
「アイシャママが助けてくれたよ」とユスヘルディナ。
みんなはうんうんと頷く。
「みんなが幸せなら、私と同じね。ほら泣かないで…」
涙を拭ってあげてから、アルシャインは笑ってキッチンに入る。
「じゃあ、朝ご飯何がいい~?」
「ハンバーガー!」とマリアンナ。
「ライスコロッケ!」とクリストフ。
「ん~、どっちかジャンケンよ!」
マリアンナが言い、クリストフとジャンケン勝負をする。
「ジャンケンポン!」
掛け声と共にジャンケンをする。
マリアンナはパー、クリストフはチョキ。
「やった僕の勝ち!アイシャママ!ライスコロッケにステーキ詰めない?!」
クリストフが笑いながら言う。
「それはいいわね!きっと男の子は好きになっちゃうわね!」
アルシャインは笑って捌かれたばかりの角キツネの肉を切り分けた。
フィナアリスとルーベンスも手伝い、みんなでテーブルに並べた。
「んん、肉がジュワッてたまらない!」
ルベルジュノーが頬張って言う。
「デミグラスとよく合うね!これは売らないの?」とルーベンス。
「ライスコロッケのステーキとチーズ入り?これはみんなだけの食事よ」
アルシャインが笑って言う。
アルシャインとフィナアリスが仕込みをする中で、アルベルティーナとマリアンナがキャンディを作り、リナメイシーとユスヘルディナとルーベンスがコロコロドーナツとクッキーを焼いておく。
ティナジゼルとクリストフとメルヒオールはジャガイモやニンジンの皮むきをしておいた。
ルベルジュノーは燻製を作り、ノアセルジオは角キツネのスジやスネ肉や肝臓などでスープを作る。
カシアンは外の掃除をする。
「…いい天気だ」
カシアンはオールバックにしていた髪を下ろして中に入る。
「もう8時半だぞー!」
「え、もうそんな時間!」
みんなは用意していたノートと筆記用具を手にして教会に行く。
「行ってきまーす!」
「いってらっしゃーい!気を付けてね!」
アルシャインとフィナアリスが言う。
ノアセルジオも、先月かに教会から卒業していた。
「今日から新たな金の羊亭、スタートよ!」
「おー!」
アルシャインが言うと、カシアンとノアセルジオとフィナアリスが手を上げて張り切った。
ドアから入って奥にキッチンを置いて、カウンター席を設けて、右側にテーブルを3つとベンチを並べた。
真ん中には丸いテーブル席でイスは2つ。
穀物倉の前に棚とカウンターを置いてレジスターを置く。
穀物倉の出入り口にはアップライトピアノを置いた。
レジスターは鍵を開けてから暗証番号を押して、右にあるハンドルを手前に回すと引き出しが開く。
レジスターの横にキャンディとお守り匂い袋を並べた。
そのカウンターの横にもテーブル席を一つ。
ドアの上には黄金鹿の剥製を飾り、ドアの左右に本棚を置いてみんなで勉強する本を置いた。
本には〝金の羊亭〟のシールが付いている。
その上にレース編みの飾りやコースター、置物や小物などのお土産が並べられている。
メニューの書かれた黒板は右の壁に掛けた。
庭も花を端と真ん中に配置した。
晴れた日は庭にもテーブル席を置けるようにした。
裏庭にはニワトリ小屋。いつの間にか20羽まで増えていた。
ミュージの小屋と馬小屋を並べた。
畑も裏庭に大きく作った。
まだ暑さの残る9月の風の日。
アルシャインは朝早くに出来上がったばかりのキッチンの整理をする。
調味料を棚に並べて、道具も取りやすい場所に入れたり置いたりする。
「広くて使いやすーい!」
一人で楽しく整頓しているとルベルジュノーがやってきた。
「アイシャ、鉄のおたまを作ったんだけど、どうかな?」
「まあ、木の取っ手だわ!」
「エイデンさんに教わったんだ。夕べ仕上げたから…使えるといいけど」
「良し、早速ミートソースを作りましょうか!」
アルシャインは笑ってそのおたまを使ってみる。
「うん、いい感じよ!すごいわね、ジュドー!鍛冶にも興味が出たの?」
「エイデンさんが窯とか作ってるの見てて…なんか、カッコイイなって…色んな仕事があって何がいいか迷っちゃうよ」
そう言ってルベルジュノーはカウンターに座って木のカップで水を飲む。
「…アイシャはさ……どうして聖女になったの?」
「ん?…憧れたのよ……私ね、幼い頃に高熱を出して死にかけたの…その時に、聖女様が治して下さって。一瞬、光に包まれたらフワ~って体が軽くなったの!それで私もなりたいと思って猛勉強したわ…神聖力も普通だったから特訓してね。やっと13歳で聖女になれたんだけど……」
「だけど?」
ルベルジュノーが聞く。
他のみんなも集まっていた。
「だけどね、すっごく大変だったの!朝早くに泉の冷水に裸で入ってお清めをしてから神聖力全力で祈るの。神の声を聞く為だけど、もう本当に、たまにしか聞こえないの!倒れたら鞭打たれたわ。〝信仰心が足りないんだー!〟って…だからハイポーションを飲むようになったの。お昼には神殿の魔石の浄化、次に大地の浄化を2時間、そこからずっと神殿に来る人々の治療を9時まで。やっとパンとスープを頂いて眠るの」
それを聞いてみんなは驚いて戸惑う。
「え…朝ご飯は?」
ティナジゼルが聞くと、アルシャインは苦笑する。
「無いわよ。一日一食。働いてようやく頂けるの………それを5年繰り返したら、神聖力が無くなっちゃって!国王様がね、恥だから国外追放だーって…酷いわよね~あんなに尽くしたのに…」
言い掛けてアルシャインはキッチンを出る。
アルベルティーナやマリアンナなど女の子が泣いてしまっているので、慰める為だ。
「今は美味しい料理をみんなと食べられて幸せよ?だから泣かないで……みんなは?ずっとお腹を空かせて生きてきて辛くなかった?」
「アイシャママのお陰で楽しいよ!」とマリアンナ。
「アイシャママが助けてくれたよ」とユスヘルディナ。
みんなはうんうんと頷く。
「みんなが幸せなら、私と同じね。ほら泣かないで…」
涙を拭ってあげてから、アルシャインは笑ってキッチンに入る。
「じゃあ、朝ご飯何がいい~?」
「ハンバーガー!」とマリアンナ。
「ライスコロッケ!」とクリストフ。
「ん~、どっちかジャンケンよ!」
マリアンナが言い、クリストフとジャンケン勝負をする。
「ジャンケンポン!」
掛け声と共にジャンケンをする。
マリアンナはパー、クリストフはチョキ。
「やった僕の勝ち!アイシャママ!ライスコロッケにステーキ詰めない?!」
クリストフが笑いながら言う。
「それはいいわね!きっと男の子は好きになっちゃうわね!」
アルシャインは笑って捌かれたばかりの角キツネの肉を切り分けた。
フィナアリスとルーベンスも手伝い、みんなでテーブルに並べた。
「んん、肉がジュワッてたまらない!」
ルベルジュノーが頬張って言う。
「デミグラスとよく合うね!これは売らないの?」とルーベンス。
「ライスコロッケのステーキとチーズ入り?これはみんなだけの食事よ」
アルシャインが笑って言う。
アルシャインとフィナアリスが仕込みをする中で、アルベルティーナとマリアンナがキャンディを作り、リナメイシーとユスヘルディナとルーベンスがコロコロドーナツとクッキーを焼いておく。
ティナジゼルとクリストフとメルヒオールはジャガイモやニンジンの皮むきをしておいた。
ルベルジュノーは燻製を作り、ノアセルジオは角キツネのスジやスネ肉や肝臓などでスープを作る。
カシアンは外の掃除をする。
「…いい天気だ」
カシアンはオールバックにしていた髪を下ろして中に入る。
「もう8時半だぞー!」
「え、もうそんな時間!」
みんなは用意していたノートと筆記用具を手にして教会に行く。
「行ってきまーす!」
「いってらっしゃーい!気を付けてね!」
アルシャインとフィナアリスが言う。
ノアセルジオも、先月かに教会から卒業していた。
「今日から新たな金の羊亭、スタートよ!」
「おー!」
アルシャインが言うと、カシアンとノアセルジオとフィナアリスが手を上げて張り切った。
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