金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉

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第一章 始まりの館

Chapter52 忙しい水の日

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 蒸し暑いみずの日。
昨夜は小雨だったらしく、地面が少し濡れていた。
アルシャインは空き地の花を見てから、シャベルと麻袋を手に廃屋の花を取りに行った。
すると、ノアセルジオもついてくる。
「これ以上増やして平気?庭が減らされるのに…」
ノアセルジオが言うと、アルシャインは唇を尖らせながら言う。
「だって枯れちゃうなら育ててあげたいじゃない」
「人間と同じじゃないか…」
ノアセルジオは苦笑しながら花をすくって麻袋に入れる。
「人間と花は別よ。そうだ、朝ご飯何がいい?」
「ベーコンハンバーガーがいいな」
「分かった!」
アルシャインは笑って答えて、ハーブ類やラベンダーやバラもすくった。

そして帰ってから朝食の支度に取り掛かる。
するとルーベンスとフィナアリスが手伝いに来る。
「今日はハンバーガーにするから、出来る具材でね!あ、ハムもあるわよ~」
燻製器は屋根の下に出してあるので使用出来る。
ジャーキーは毎日作っているので、夜食や軽食に重宝する。
「朝はお客さんに何を出すの?」
「朝はやらないわ。大工さん達の邪魔になっちゃうから」
そう言ってジャーキーとキャベツのハンバーガーを作る。
「じゃあ、クッキーかコロコロドーナツ作ってもいい?練習したいんだ」
ルーベンスが言う。
「ええ、後でね」
焼けた平たいパンでハンバーグを挟みながら言う。
「朝ご飯よ~!」
アルシャインがみんなを呼んでテーブル席に並べる。

 みんなが教会に行くのと、大工さん達がやってくるのが同じくらいだった。
手際よく木材が運ばれて切られていく。
アルシャインは紅茶にレモンを入れて、みんなに配った。
「これも舐めて下さいね~!」
作っておいたレモンキャンディとハーブキャンディも配る。
土台に細かな木材が足されていき、板も張り付けられていく…。

フィナアリスとレース編みをしていると、みんなが帰ってきた。
「あらお帰りなさい!もうそんな時間なのね…」
昼食は何が出来るだろうか?
中に置いてある冷蔵庫を見に行く。
中には朝獲った角キツネと角ウサギの肉があった。
「お昼は…コトレッタとラビオリとコロコロドーナツで20Gはどうかしらー?」
そう大工の人に聞くと
「おう!」「やった!」
などと聞こえた。
アルシャインはミートソースとトマトソースを作る。

角ウサギの肉も柔らかくズッシリくるので男性に人気だ。
子供達と大工さんの分のランチを作って、自分は料理の合間につまんでいた。

食べながらフィナアリスが聞く。
「アイシャママ、夜はベーコンとチーズのリゾットに目玉焼きを乗せるのはどうかしら?結構卵が余ってるから、目玉焼きは早い者勝ちで!」
「いいわね!それにステーキとパンとスコーンとクッキーで30Gね!」
そう決定したので、ノアセルジオが黒板に〝ステーキとリゾットとスコーンとクッキー30G〟と書いた。

 午後はみんなで勉強をしていた。
アルシャインとフィナアリスとリュカシオンとノアセルジオとカシアンがダンヒルと共にテーブルとイスを作る。
イスには硬めの綿を詰めて、上から皮を張って裏に釘で打ち付けていく。
テーブルの角は丸く滑らかに紙ヤスリで削る。
表面もテーブルとイスの脚も紙ヤスリで丁寧に磨いていく。
「丁寧にな!綺麗に磨けば高級感が出るんだ。手を抜いたらそれなりのモンしか出来ねーぞ!」
「はい!」
みんなが返事をして、紙ヤスリで磨き上げていく。

そうする内に夕方になってしまったので、アルシャインとフィナアリスはディナーの支度に取り掛かる。
子供達が先にディナーを取り、次に大工達のディナー、その次に道で待っていた常連さんのディナーだ。
今日もテーブル席が足りなくて、向かいの空き地で古いテーブルとイスを用意して迎えた。
「お皿取ってー!」
アルシャインが言い、カシアンが中から皿を取ってくる。
裏の方で皿洗いをしたタライを、レオリアムとルベルジュノーが持って来た。
「はいこれ!」
「次の方はー?」とティナジゼルが見に行く。
今日もてんてこ舞いのディナーが過ぎて、みんなで後片付けをした。
「巣の中で卵が孵ったよ~この子は何になるのかな~?」
アルシャインが歌いながら言葉遊びをする。
「アヒルの子!」とティナジゼル。
「グワッグワッ、アヒルの子供が大きくなったら何になる?」
「ふくろう!」とクリストフ。
ここでは思い付く動物を言っている。
「ホーホー夜に飛び回る♪ネズミを捕えたら横から誰かが飛び出て来たよ!」
「ヘビ!」とメルヒオール。
「シャーー!ヘビが獲物を持ってった!きっと恋するヘビなんだ、誰にプレゼントするのかな?」
「ヤギ?」とレオリアム。
「メェ~…ヤギさんネズミを帰してあげた。お礼に何をくれるかな?」
「イヤリング!」とリナメイシー。
「イヤリングをもらったよ!ヤギさん喜んで付けて帰った♪帰り道で泣いてる子供はだーれかな?」
「カシアン!」とアルベルティーナ。
「なんで俺なんだよ!」
「だってカシアンってすぐ泣きそうだもん!」
アルベルティーナが言い、みんなで笑う。
「カシアン、泣かないで~美味しいディナーが待ってるわ♪メェメェカシアン大丈夫、ヤギさんは温かく迎えてくれるよ♪」
洗い物が終わったので、そこでやめて家の中に入った。

アルシャインはみんなに服の作り方を教えた。
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