金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉

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第一章 始まりの館

Chapter49 アルシャインの夢

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夕方前には客室が満室となった。
「…いつか、街に移せたらいいなー」
ふいにアルシャインが言う。
「宿を?」
フィナアリスが聞くとアルシャインは頷いた。
「ここをね…ナリスに譲って、私は街に移るの!いつか…私の将来の夢ね!」
「じゃあ、あたしのレストランと隣同士でね!」
そうアルベルティーナが言うと、レオリアムも仕込みをしながら言う。
「じゃあ反対側は僕の小さな医院がいいな。街のお医者さんでさ…」
「いいわね!両隣にレストランと病院があるなら心強いわー!」
そう言ってアルシャインは募金箱を置いた。
〝レオリアム医院〟〝アルベルティーナのレストラン〟〝街の金の羊亭〟と書かれた箱が3つ。
「5年後には出せるように、はりきりましょう!」
「おー!」
みんなが片手を上げて言った。

宿泊客のディナーの後で混雑して、みんなで料理と配膳と掃除をする。
「テーブル増やせないかなー?」
リナメイシーが聞くと、周りを見てリュカシオンが考えて言う。
「テーブル配置を変えれば、もっと人が入れるけど、それには何日かお店を休まないと」
それを聞いた常連のミュージ売りのコルマンが叫ぶ。
「休むのかい?!」
「いやぁ、アイシャ次第かな」とリュカシオン。
「そうね~…もっとお客さんが入れるようになるのもいいけど、キッチンも広げたいわ…そしたら休まないと駄目かな~…」
そう言ってから、あっと気付く。
「その間は外でのランチが出来るわね!どうしよ~、考えとくわ!」
料理が立て込んだので話しも出来なくなった。

 やっとお客さんが少なくなったので、アルシャインはピアノを弾いて言葉遊びをする。
「でんでん虫のお散歩だ♪やあおはよう、君は誰?」
「カエルだよ!」とメルヒオール。
「カエルさんの鳴き声は~?」
「ゲコゲコゲコ!」とマリアンナ。
「カエルさんの次におはよう、君は誰?」
「トカゲかな?」とレオリアム。
「トカゲさんの鳴き声は?」
アルシャインがルベルジュノーを見て言う。
「え…ぐ、グーグー?」
「ふふ、いい声だね!」
ここで正解は求めていない。
ただしりとり遊びのように言葉を繋いで楽しんでいるのだ。
「トカゲさんの次におはよう!君は誰?」
「バッタ!」
楽しそうにカシアンがわざと鳴き声の分からない生き物を言う。
「ば…バッタさんの鳴き声は?」
「キルキルキル!」
ノアセルジオがすまして言った。
一瞬、2人が目を見て笑う。
「?いい声だね!バッタさんの次におはよう、君は誰?」
「ローズ!」とリナメイシー。
すると階段からピューイと声がしてみんなが笑った。
「ふふ、いい声ね!」
お客さんが帰るのでそこで終わりにして、掃除をしながらローズを出してあげた。
「そういえば、カシアンは何になりたいの?」
またアルシャインが聞くと、カシアンはカウンターを拭きながら答える。
「アイシャと、街の金の羊亭をやりたいな。狩りも下ごしらえも配膳もするよ」
そうカシアンが言うと、ノアセルジオがアルシャインの隣りに来て言う。
「俺もアイシャと一緒がいいな。料理もお土産も作るよ?」
「あら嬉しい!じゃあ2人を雇ってあげられるようにしないとね!」
アルシャインはまだ微妙な男心には気付かずに言い、地図を見る。
「本当にキッチンとダイニングの改装をしたいけど…なんとかしてくれそうなのは、どこかしら…?」
「鍛冶屋と家具屋とレンガ屋さん?」
そうユスヘルディナが言うと、みんなで笑う。
「なんだ、いつものメンバーだ!」とルベルジュノー。
「そうね、明日相談してみましょう!」
アルシャインが言い、かまどの火を消した。
アルシャインはテーブル席に座って水を飲みながら様々な家具が載っている本を見た。
「どんな風にすれば使いやすいかしら…広く出来るかなー?」
「真ん中にキッチンを置くと配膳はしやすいかも。周りも見れるし…」
リュカシオンも本を見ながら言う。
「そうねー…でも端もいいような…真ん中かぁー…」
アルシャインは悩みながらページをめくる。
「それってさ…前に魔法で屋敷を動かしたみたいに、パって出来ないかな?」
マリアンナが言うと、アルシャインが驚いてからカシアンを見た。
「リーゼロッテさんみたいな人って街にいるかしら…?」
「どうだろうな…」
「明日みんなに相談してから決めましょう!」
そう言いアルシャインはレース編みをする。
みんなもお土産作りにいそしんだ。
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