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第一章 始まりの館
Chapter46 新しい仲間
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ユスヘルディナは近所に住んでいた男の子と廃屋で暮らしていたらしい。
いつか母や父が帰って来るかもしれないから、と…。
「ルースがいつも町から残飯を拾ってきてたの…」
「そうなの…」
話しをしながら花を植えて水をあげていると、門の所に見知らぬ男の子が現れて叫ぶ。
「ユナ!知らない大人に付いて行くなって言っただろ?!」
「ルース!だってお母さんのお花が…」
「駄目だ!行くぞ!」
男の子が走って来たので、アルシャインがガバっと抱きとめた。
「離せ!」
「大丈夫よルース、ここは孤児院宿なの、落ち着いて…」
「嘘だ!孤児院だなんて言って大人は子供を売っぱらうんだ!」
そう言いアルシャインを叩くので、ルベルジュノーとレオリアムがその男の子の両手を押さえた。
「アイシャに謝れ!」とルベルジュノー。
「僕達の命の恩人に何をするんだ!」
レオリアムが言うと、その男の子はユスヘルディナとルベルジュノー達とアルシャインを見比べてから離れた。
みんながアルシャインを庇いに来た。
「アイシャママを叩かないで!」とティナジゼル。
「待って、大丈夫よ…みんなお願い、仲良くして」
アルシャインは頬から血が出ていた。爪が当たってしまったのだろう。
「大丈夫、大丈夫よ…怯えないで。みんなも責めないで」
そう言ってアルシャインは蒼白して後ずさる男の子をまた抱き締めた。
「大丈夫よ、安心して。貴方にもね、ここに住む権利があるの…良かったらどうかな?ユナはお花を植えに来てくれたの。ここに住むかどうかは、これから話し合うのよ」
優しく言いながら男の子の頭を撫でてあげる。
「僕…僕は…っ、ユナが連れてかれると…守ろうと…!」
そう言い男の子はこみ上げる涙をこらえた。
「ええ、立派に守ってくれてありがとう。これからは、一緒に守らない?頼もしい仲間もいるのよ…どう?」
アルシャインは少し離れて男の子の顔を撫でた。
みんなも、その気持ちは分かるので責めてしまった事を反省しながら近寄る。
「ごめん、俺も同じだったから分かるよ。…売られなかったから大丈夫だよ」
ルベルジュノーが言い、レオリアムも手を差し伸べる。
「こっちおいでよ。僕の服を貸してあげるから、洗おう」
「…僕…ごめんなさい!」
男の子がアルシャインに謝る。
警戒を解いてくれたようだ。
「いいのよ。さ、ユナも体を洗いましょう。みんなは手を洗ってね!」
そう笑って言い、アルシャインはユスヘルディナを連れて中に入った。
男の子はルベルジュノーとレオリアムが連れていき、タライで体と髪を洗って綺麗にすると、綺麗な服に着替える。
男の子の名はルーベンス、12歳。
ユスヘルディナも同じ12歳だった。
みんながテーブル席に着いたので、アルシャインが用意していたマルゲリータとステーキピッツァを焼いた。
「さあ召し上がれ~!」
そう言ってピッツァを次々とテーブルに乗せた。
「ディアボロ風ピッツァもどうぞ!」
リナメイシーが言い、肉と野菜がたっぶり乗った上に目玉焼きまで乗った大きなピッツァも出される。
悪魔的な盛り付けピッツァという意味でそう呼んでいた。
「これどうやって切るの?!」とクリストフ。
「包丁で切っちゃって!」
アルシャインが答えて、ミルクを出した。
「美味い!」とルベルジュノー。
「美味しい!」とユナ。
「すごく美味しい…」
ルーベンスが呟くように言い、ポロポロ泣き出してしまう。
「そんなに泣いたらしょっぱくなるぞ!泣かないで食え!」
カシアンがルーベンスの頭をグシャグシャと撫でて言う。
ルーベンスは頷いて食べた。
食後にアルシャインは2人を前にして、ここで暮らす上での条件を説明をした。
「…それで、どうかしら?」
アルシャインが聞く。
2人はキッチンを見た。
「料理…した事なくて…」とルーベンス。
「頑張る!ピッツァとっても美味しかったもん!私もそんな料理作ってみたい!」とユスヘルディナ。
女の子はいつだって前向きで微笑ましい。
「大丈夫よ、みーんな最初は料理が下手だったわ!練習するの!ここで暮らしながら、何をしたいか見つけるの…どうかしら?」
そう言うアルシャインの笑顔に、2人は頷いた。
それから、ユスヘルディナはフィナアリスと共に違う部屋に暮らす事にした。
一人では淋しいだろうと思ったのだ。
ルーベンスはカシアンと一緒の部屋にした。
あらかじめベッドを置いていたので、ちょうど良かったのだ。
部屋の準備をして、2人の服はみんなのおさがりをあげた。
アルシャインとフィナアリスは大急ぎで服を作る。
その間に、2人に動物の世話の仕方を教えて、お土産の事や料理の配膳、宿泊の部屋や掃除について教えた。
午後はみんなで勉強をしてから、アルシャインとカシアンも混ざってボール遊びをする。
向かいの草むらでみんなでボールを投げ合って遊んだ。
「とんとんボール、さくらんぼ!」
そう言いティナジゼルが投げる。
受け取ったルベルジュノーが焦りながら言う。
「とんとんボール、ぼ、ぼ、ぼうし!」
そう言い投げる。
受け取ったらみんなが10数える内に〝とんとんボール〟と言ってから、しりとりをして投げて遊ぶのだ。
受け取ったルーベンスが戸惑いながら言う。
「と、とんとんボール…し、しー…シーツ?」
そう言ってボールを投げた。
「とんとんボール、ツバメ!」とリナメイシー。
「とんとんボール、め…?めー…」カシアンが止まる。
「いーち、にーい、さーん、しーい、ごーぉ」みんなが数える。
「目玉焼き!」9で投げた。
「とんとんボール、キツツキ!」とメルヒオール。
「とんとんボール、黄緑!」とフィナアリス。
「とんとんボール、料理!」とレオリアム。
「とんとんボール…り、りー…」
またカシアンで止まった。
「ごーぉ、ろーく、しーち、はーち、きゅーう!じゅ」
「リス!」
「ダメー!カシアン、アウト!」
みんなで言う。
アウトとなったカシアンはガゼボの掃除をする。
アウトになった人から、どこかの掃除をする決まりだ。
続いてアルシャインもアウトとなり、物置小屋の掃除をする。
そんなアルシャインにカシアンが寄ってくる。
「ほっぺ、大丈夫?」
「なんともないわ。さっきお守りも持ったから治ってるわよ」
そう言って笑う。
「…アイシャ…あのさ…」
カシアンが何か言い掛けた所に、ノアセルジオがアウトとなり走ってくる。
「アイシャ!もう治った?」
「ええ、ほら!」
そう言い笑って頬を見せた。
頬の傷は綺麗に無くなっていた。
「ノアは玄関前の掃除をして!」
「分かった」
答えてノアセルジオはほうきを手に玄関をはいた。
ディナーの後はアルシャインとフィナアリスが一緒にピアノを弾いて、聖歌をみんなで歌った。
「オウリア~、オウリア~、白き花~、みどりの泉~♪」
ユスヘルディナとルーベンスも安心して歌っていた。
いつか母や父が帰って来るかもしれないから、と…。
「ルースがいつも町から残飯を拾ってきてたの…」
「そうなの…」
話しをしながら花を植えて水をあげていると、門の所に見知らぬ男の子が現れて叫ぶ。
「ユナ!知らない大人に付いて行くなって言っただろ?!」
「ルース!だってお母さんのお花が…」
「駄目だ!行くぞ!」
男の子が走って来たので、アルシャインがガバっと抱きとめた。
「離せ!」
「大丈夫よルース、ここは孤児院宿なの、落ち着いて…」
「嘘だ!孤児院だなんて言って大人は子供を売っぱらうんだ!」
そう言いアルシャインを叩くので、ルベルジュノーとレオリアムがその男の子の両手を押さえた。
「アイシャに謝れ!」とルベルジュノー。
「僕達の命の恩人に何をするんだ!」
レオリアムが言うと、その男の子はユスヘルディナとルベルジュノー達とアルシャインを見比べてから離れた。
みんながアルシャインを庇いに来た。
「アイシャママを叩かないで!」とティナジゼル。
「待って、大丈夫よ…みんなお願い、仲良くして」
アルシャインは頬から血が出ていた。爪が当たってしまったのだろう。
「大丈夫、大丈夫よ…怯えないで。みんなも責めないで」
そう言ってアルシャインは蒼白して後ずさる男の子をまた抱き締めた。
「大丈夫よ、安心して。貴方にもね、ここに住む権利があるの…良かったらどうかな?ユナはお花を植えに来てくれたの。ここに住むかどうかは、これから話し合うのよ」
優しく言いながら男の子の頭を撫でてあげる。
「僕…僕は…っ、ユナが連れてかれると…守ろうと…!」
そう言い男の子はこみ上げる涙をこらえた。
「ええ、立派に守ってくれてありがとう。これからは、一緒に守らない?頼もしい仲間もいるのよ…どう?」
アルシャインは少し離れて男の子の顔を撫でた。
みんなも、その気持ちは分かるので責めてしまった事を反省しながら近寄る。
「ごめん、俺も同じだったから分かるよ。…売られなかったから大丈夫だよ」
ルベルジュノーが言い、レオリアムも手を差し伸べる。
「こっちおいでよ。僕の服を貸してあげるから、洗おう」
「…僕…ごめんなさい!」
男の子がアルシャインに謝る。
警戒を解いてくれたようだ。
「いいのよ。さ、ユナも体を洗いましょう。みんなは手を洗ってね!」
そう笑って言い、アルシャインはユスヘルディナを連れて中に入った。
男の子はルベルジュノーとレオリアムが連れていき、タライで体と髪を洗って綺麗にすると、綺麗な服に着替える。
男の子の名はルーベンス、12歳。
ユスヘルディナも同じ12歳だった。
みんながテーブル席に着いたので、アルシャインが用意していたマルゲリータとステーキピッツァを焼いた。
「さあ召し上がれ~!」
そう言ってピッツァを次々とテーブルに乗せた。
「ディアボロ風ピッツァもどうぞ!」
リナメイシーが言い、肉と野菜がたっぶり乗った上に目玉焼きまで乗った大きなピッツァも出される。
悪魔的な盛り付けピッツァという意味でそう呼んでいた。
「これどうやって切るの?!」とクリストフ。
「包丁で切っちゃって!」
アルシャインが答えて、ミルクを出した。
「美味い!」とルベルジュノー。
「美味しい!」とユナ。
「すごく美味しい…」
ルーベンスが呟くように言い、ポロポロ泣き出してしまう。
「そんなに泣いたらしょっぱくなるぞ!泣かないで食え!」
カシアンがルーベンスの頭をグシャグシャと撫でて言う。
ルーベンスは頷いて食べた。
食後にアルシャインは2人を前にして、ここで暮らす上での条件を説明をした。
「…それで、どうかしら?」
アルシャインが聞く。
2人はキッチンを見た。
「料理…した事なくて…」とルーベンス。
「頑張る!ピッツァとっても美味しかったもん!私もそんな料理作ってみたい!」とユスヘルディナ。
女の子はいつだって前向きで微笑ましい。
「大丈夫よ、みーんな最初は料理が下手だったわ!練習するの!ここで暮らしながら、何をしたいか見つけるの…どうかしら?」
そう言うアルシャインの笑顔に、2人は頷いた。
それから、ユスヘルディナはフィナアリスと共に違う部屋に暮らす事にした。
一人では淋しいだろうと思ったのだ。
ルーベンスはカシアンと一緒の部屋にした。
あらかじめベッドを置いていたので、ちょうど良かったのだ。
部屋の準備をして、2人の服はみんなのおさがりをあげた。
アルシャインとフィナアリスは大急ぎで服を作る。
その間に、2人に動物の世話の仕方を教えて、お土産の事や料理の配膳、宿泊の部屋や掃除について教えた。
午後はみんなで勉強をしてから、アルシャインとカシアンも混ざってボール遊びをする。
向かいの草むらでみんなでボールを投げ合って遊んだ。
「とんとんボール、さくらんぼ!」
そう言いティナジゼルが投げる。
受け取ったルベルジュノーが焦りながら言う。
「とんとんボール、ぼ、ぼ、ぼうし!」
そう言い投げる。
受け取ったらみんなが10数える内に〝とんとんボール〟と言ってから、しりとりをして投げて遊ぶのだ。
受け取ったルーベンスが戸惑いながら言う。
「と、とんとんボール…し、しー…シーツ?」
そう言ってボールを投げた。
「とんとんボール、ツバメ!」とリナメイシー。
「とんとんボール、め…?めー…」カシアンが止まる。
「いーち、にーい、さーん、しーい、ごーぉ」みんなが数える。
「目玉焼き!」9で投げた。
「とんとんボール、キツツキ!」とメルヒオール。
「とんとんボール、黄緑!」とフィナアリス。
「とんとんボール、料理!」とレオリアム。
「とんとんボール…り、りー…」
またカシアンで止まった。
「ごーぉ、ろーく、しーち、はーち、きゅーう!じゅ」
「リス!」
「ダメー!カシアン、アウト!」
みんなで言う。
アウトとなったカシアンはガゼボの掃除をする。
アウトになった人から、どこかの掃除をする決まりだ。
続いてアルシャインもアウトとなり、物置小屋の掃除をする。
そんなアルシャインにカシアンが寄ってくる。
「ほっぺ、大丈夫?」
「なんともないわ。さっきお守りも持ったから治ってるわよ」
そう言って笑う。
「…アイシャ…あのさ…」
カシアンが何か言い掛けた所に、ノアセルジオがアウトとなり走ってくる。
「アイシャ!もう治った?」
「ええ、ほら!」
そう言い笑って頬を見せた。
頬の傷は綺麗に無くなっていた。
「ノアは玄関前の掃除をして!」
「分かった」
答えてノアセルジオはほうきを手に玄関をはいた。
ディナーの後はアルシャインとフィナアリスが一緒にピアノを弾いて、聖歌をみんなで歌った。
「オウリア~、オウリア~、白き花~、みどりの泉~♪」
ユスヘルディナとルーベンスも安心して歌っていた。
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