金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉

文字の大きさ
上 下
45 / 123
第一章 始まりの館

Chapter43 教会

しおりを挟む
 翌日は晴天、風の日。
アルシャインは朝早くからソワソワしてみんなのハンカチを作った。
四角いだけの布の四隅を縫って、名前の刺繍をした。
「あ…カシアンのまで作っちゃった」
アルシャインはハンカチを手にして下に降りて、カウンターにハンカチを置く。
リナメイシーとルベルジュノーがニワトリの世話をして、クリストフとティナジゼルとフィナアリスがミュージの世話をする。
馬もいたので、カシアンが世話の仕方をリュカシオンとノアセルジオとルベルジュノーに教えていた。
畑と花の水やりはアルベルティーナとメルヒオールとマリアンナ。
「家具はどうかな?」
アルシャインは家具がどこまで進んだか見に行く。
もう9号室まで出来ていた。
追加のベッドが2つあったので、戻ってきたカシアンとノアセルジオとルベルジュノーと共に、空いている5号室と6号室に運び込む。
麦稈ばっかんロールをベッドに詰めてから布団を敷き、作っておいた衝立を部屋の端に畳んで置いた。
衝立もちゃんとペンキで塗ってある。
鍵の木札に〝2〟と書いておいた。

アルシャインはノートと筆記用具を11人分揃えてテーブルに置いてから料理を作る。
「今日は…コトレッタのサンドイッチにしましょう!」
そう言ってパンを焼いて、コトレッタを揚げていく。
「どうやるの?」とフィナアリス。
フィナアリスとマリアンナとリナメイシーとアルベルティーナが来て手伝う。
「パンを2つに切って、その中にコトレッタとレタスを挟んでソースを入れるのよ!これは売らないからね?」
そう言いアルシャインは仕上げたコトレッタサンドをまずカシアンに渡した。
カシアンはそれを食べて目を見開く。
「美味え!これハンバーガーだ!」
「そうね、同じかしら」
アルシャインが笑う。
「さあみんな食べて~もう6時よ」
「はーい」
みんなは答えて食べてから、宿泊客を起こして朝食を済ませる。
それから掃除をして、8時半にみんなで家を出て館と門に鍵を掛けて出掛けた。
「お、お出掛けか?」
家具屋のダンヒルとペンキ屋のダグラムがちょうど金の羊亭に向かう途中で一行に会う。
「ええ、子供達を教会に送ったら戻ります」
そうアルシャインが答える。
「そっか、待ってるよ」
2人は笑って金の羊亭に行く。

 教会には10分で着いた。
「金の羊亭のアルシャインと申します。神のご加護の下、よろしくお願いします」
そう神父に祈りながら挨拶をして、寄付金30Gを渡した。
初日なので多くしたのだ。
「はい、神のご加護があらん事を」
神父は一礼してお金を奥に持っていく。
そこでアルシャインはみんなに祈り方を教える。
「こうして座って祈る時は組んだ両手を眉間に付けて目を閉じるの」
そう言い、アルシャインは祈る。
10分祈りを捧げてから、アルシャインはカシアンと共に教会を出た。

 金の羊亭に戻ると6人程の人だかりが出来ていた。
「やだ、いらっしゃいませ!」
アルシャインは慌てて門を開けて館も開ける。
「いやぁ、教会に行ってたって?」
常連さんが聞く。
「はい、子供達を勉強させに行ってました」
アルシャインが笑って答えながら手を洗ってエプロンを着ける。
「何にしますかー?」
「俺はコーヒー」
ダンヒルとダグラムが言う。
「チキンハンバーガー!」
「トマトハンバーガー!」
「ステーキとスープを!」
「スープとステーキハンバーガー!」
次々と注文を聞いてカシアンか書いて置き、アルシャインが作っていく。
カシアンはコーヒーを淹れた。
「そうしてると、まるで若夫婦だな!」
笑ってダグラムが言うと、カシアンが焦る。
「あちっ!何言い出すんだよ!」
真っ赤になりながらもコーヒーを出してから、スープを先に出してジャガイモとニンジンを煮る。
ステーキを焼いて煮たジャガイモとニンジンをバターで炒めて付け合わせにして出した。
「はい、チキンハンバーガーとステーキハンバーガー!」
「はい、ええと…」
カシアンは配膳でまごつく。
するとお客さんが手を上げて教えてくれた。
「こっちがチキンだよ!」
「こっちステーキハンバーガー!待ってたよ~」
そう言う2人に渡して戻ると、またアルシャインがお皿を出す。
「はい、トマトハンバーガー!」
「はいよ!」
残り一人にトマトハンバーガーを出してからカシアンがコロコロドーナツとクッキーのカゴを手にして回る。
「ドーナツとクッキーはいかが~?」
「それよりミートパイをくれよ」
「俺も!」
と2人の客が言うので、アルシャインがミートパイを切り分けて2つ皿を出した。
「はい、ミートパイ!他にご注文ありますか~?」
アルシャインが聞くと、
「じゃあ紅茶とレモン!」
「コーヒーとクッキー!」
と返ってきたのでクッキーを渡してからカシアンは忙しくコーヒーを注ぎ、アルシャインが紅茶を注ぐ。
2人で回すのも中々大変だ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

もう、終わった話ですし

志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。 その知らせを聞いても、私には関係の無い事。 だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥ ‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの 少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売です!】 早ければ、電子書籍版は2/18から販売開始、紙書籍は2/19に店頭に並ぶことと思います。 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

ヒロインはあなたじゃない

三木谷夜宵
ファンタジー
公爵令嬢のリア・ハインツシュタインは、王立学園の卒業式を前に行われた舞踏会で婚約者であるエリアス殿下に、真実の愛で結ばれた男爵令嬢のルイーザを虐げたという理由で婚約破棄を言い渡される。 かつてこの学園では真実の愛で結ばれた身分違いのロマンスがあり、殿下と男爵令嬢は、自分たちもそのロマンスのように真実の愛で困難を乗り越えていけると夢を見ていた。 そんな二人の様子を見たリアは、ロマンスの真実を語るであった。 カクヨムにも公開しています。

処理中です...