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第一章 始まりの館
Chapter40 孤児院宿
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その日はお菓子も品切れとなる程だった。
やっとお客さんも少なくなったので、アルシャインがピアノを弾いて言葉遊びをする。
「お陽さま出たら挨拶だ!」
「おはよう!」とメルヒオール。
「はい、おはよう♪みんな準備は出来たかな~?さあお家を出るよ、挨拶は?」
「行ってきます」とレオリアム。
「はい気を付けて♪お昼になったら挨拶は~?」
「こんにちわ!」とマリアンナ。
「はいこんにちわ!今日もいい日だ、おやつはなぁに?」
「クッキー!」とティナジゼル。
「美味しいね!午後は何して遊ぼうか?」
「レース編み?」とアルベルティーナ。
それを聞いて、そういえば〝遊び〟を教えていないという事に気が付き、アルシャインは慌てて歌い直す。
「遊び…かけっこしようよ!みんなでかけっこ!そしてお別れの挨拶は~?」
「さようなら!」とメルヒオール。
「またね」とクリストフ。
「うんさようなら、また会おうね!挨拶って素敵だな~♪」
そこで終わりにして、最後のお客さんを見送ってみんなで掃除をした。
「そうよね~遊んでないもんね、ごめんね」
アルシャインが言うと、みんなが不思議がる。
「何が?」とマリアンナが聞く。
「明日からは自由な時間を作らないとね」
「どうして?何するの?」
クリストフが聞くので、アルシャインはみんなを集めた。
「子供の内は、自由に遊ぶ事も大事なのよ。庭の木に登ったり、かけっこをしたり、ボール遊びをしたり」
アルシャインがそう言うと、ノアセルジオが本を読み出す。
「じゃあ俺は関係ないね、子供じゃないし、アイシャと同じ年だ」
「でもノアだって一月前は言葉だってろくに分からなかったくらいなんだから、今から遊んでいいのよ?!」
「じゃあ、アイシャママはいつ遊ぶの?」
そうマリアンナが真顔で聞いた。
「私は…ここのオーナーだし、こうしている事が何よりも楽しいからいいのよ」
「僕だって勉強して木を磨いてペンキ塗ったりするのが楽しいよ!」
そうメルヒオールが言うと、みんなが頷く。
「ミュージとニワトリの世話も、最近実が付いてきた畑も楽しいよ!何か駄目なの?」
そうリナメイシーが言う。
「あのね…ここが〝孤児院〟ってなったら余り働かせると…」
アルシャインは困りながら言う。
すると、それを聞いていたギルドマスターが言う。
「孤児院では子供は働かせてはいけませんが、〝孤児院宿〟は別ですよ」
「何が違うの?」
「他と違って接客や数字の勉強、音楽もしている。ここのような宿なら、強制している訳では無いのならば何の問題もありません。子供は様々な事を学んで独り立ち出来るでしょう」
そう微笑んで言うと、ギルドマスターは立ち上がってアルシャインの下に行って手を差し伸べる。
「合格です。孤児院宿と認めて、国への申請を行いましょう」
「ギルドマスター!…あ」
思わず言ってしまって口に手を当てると、ギルドマスターは笑う。
「大丈夫ですよ。…今後も、孤児達をよろしくお願いしますね、アイシャマスター」
「はい!」
アルシャインは笑ってその手を取った。
その後、ギルドマスターはテーブル席でみんなに質問攻めに遭った。
「ギルドマスターってどんな仕事ですか?」とルベルジュノー。
「様々な商売を管理している商業ギルドです」
「医者も含まれますか?」とレオリアム。
「ええ。医者になるのなら、誰かに弟子入りするのを勧めますよ」
「狩人は職業ですか?」とルベルジュノー。
「はい。狩人協会があるので、後日色々な職業のリストや街の地図を持ってきましょう。君達の将来が楽しみですね」
「ねえ、アイシャママは合格?」
マリアンナが聞くとギルドマスターは頷く。
「合格ですよ。料理も編み物も上手いし経営もしっかりしている…そして人脈もある」
「お嫁さんに?」
そうクリストフが聞くと、ギルドマスターはキョトンとしてからアルシャインを見て、顔を赤らめて目を逸らした。
「私のお嫁さんには、少々美人過ぎる気がします」
そう言うとアルシャインが笑った。
「お世辞なんていいのに!でも嬉しいわ!」
「お世辞ではありません。…では明日、看板とリストと地図を持って来ます。ついでにここに寄付出来る物も用意しますね」
そう言いギルドマスターは微笑んで部屋に行った。
やっとお客さんも少なくなったので、アルシャインがピアノを弾いて言葉遊びをする。
「お陽さま出たら挨拶だ!」
「おはよう!」とメルヒオール。
「はい、おはよう♪みんな準備は出来たかな~?さあお家を出るよ、挨拶は?」
「行ってきます」とレオリアム。
「はい気を付けて♪お昼になったら挨拶は~?」
「こんにちわ!」とマリアンナ。
「はいこんにちわ!今日もいい日だ、おやつはなぁに?」
「クッキー!」とティナジゼル。
「美味しいね!午後は何して遊ぼうか?」
「レース編み?」とアルベルティーナ。
それを聞いて、そういえば〝遊び〟を教えていないという事に気が付き、アルシャインは慌てて歌い直す。
「遊び…かけっこしようよ!みんなでかけっこ!そしてお別れの挨拶は~?」
「さようなら!」とメルヒオール。
「またね」とクリストフ。
「うんさようなら、また会おうね!挨拶って素敵だな~♪」
そこで終わりにして、最後のお客さんを見送ってみんなで掃除をした。
「そうよね~遊んでないもんね、ごめんね」
アルシャインが言うと、みんなが不思議がる。
「何が?」とマリアンナが聞く。
「明日からは自由な時間を作らないとね」
「どうして?何するの?」
クリストフが聞くので、アルシャインはみんなを集めた。
「子供の内は、自由に遊ぶ事も大事なのよ。庭の木に登ったり、かけっこをしたり、ボール遊びをしたり」
アルシャインがそう言うと、ノアセルジオが本を読み出す。
「じゃあ俺は関係ないね、子供じゃないし、アイシャと同じ年だ」
「でもノアだって一月前は言葉だってろくに分からなかったくらいなんだから、今から遊んでいいのよ?!」
「じゃあ、アイシャママはいつ遊ぶの?」
そうマリアンナが真顔で聞いた。
「私は…ここのオーナーだし、こうしている事が何よりも楽しいからいいのよ」
「僕だって勉強して木を磨いてペンキ塗ったりするのが楽しいよ!」
そうメルヒオールが言うと、みんなが頷く。
「ミュージとニワトリの世話も、最近実が付いてきた畑も楽しいよ!何か駄目なの?」
そうリナメイシーが言う。
「あのね…ここが〝孤児院〟ってなったら余り働かせると…」
アルシャインは困りながら言う。
すると、それを聞いていたギルドマスターが言う。
「孤児院では子供は働かせてはいけませんが、〝孤児院宿〟は別ですよ」
「何が違うの?」
「他と違って接客や数字の勉強、音楽もしている。ここのような宿なら、強制している訳では無いのならば何の問題もありません。子供は様々な事を学んで独り立ち出来るでしょう」
そう微笑んで言うと、ギルドマスターは立ち上がってアルシャインの下に行って手を差し伸べる。
「合格です。孤児院宿と認めて、国への申請を行いましょう」
「ギルドマスター!…あ」
思わず言ってしまって口に手を当てると、ギルドマスターは笑う。
「大丈夫ですよ。…今後も、孤児達をよろしくお願いしますね、アイシャマスター」
「はい!」
アルシャインは笑ってその手を取った。
その後、ギルドマスターはテーブル席でみんなに質問攻めに遭った。
「ギルドマスターってどんな仕事ですか?」とルベルジュノー。
「様々な商売を管理している商業ギルドです」
「医者も含まれますか?」とレオリアム。
「ええ。医者になるのなら、誰かに弟子入りするのを勧めますよ」
「狩人は職業ですか?」とルベルジュノー。
「はい。狩人協会があるので、後日色々な職業のリストや街の地図を持ってきましょう。君達の将来が楽しみですね」
「ねえ、アイシャママは合格?」
マリアンナが聞くとギルドマスターは頷く。
「合格ですよ。料理も編み物も上手いし経営もしっかりしている…そして人脈もある」
「お嫁さんに?」
そうクリストフが聞くと、ギルドマスターはキョトンとしてからアルシャインを見て、顔を赤らめて目を逸らした。
「私のお嫁さんには、少々美人過ぎる気がします」
そう言うとアルシャインが笑った。
「お世辞なんていいのに!でも嬉しいわ!」
「お世辞ではありません。…では明日、看板とリストと地図を持って来ます。ついでにここに寄付出来る物も用意しますね」
そう言いギルドマスターは微笑んで部屋に行った。
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