金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉

文字の大きさ
上 下
29 / 123
第一章 始まりの館

Chapter27 米料理

しおりを挟む
 翌日は小雨だった。
アルシャインは花柄の生地のワンピースとブラウスとスカートを作る。
自分の物と、子供達の物だ。
外ではレオリアムとアルベルティーナとメルヒオールが雑草取りと水やりをしている。
ティナジゼルとルベルジュノーがミュージの世話をしてクリストフとマリアンナがニワトリの世話をする。
フィナアリスはレース編みをしていた。
「売り物?」
そう聞くとフィナアリスは首を振る。
「飾りに。アイシャママの役に立ちたくて」
「可愛い事言って!」
アルシャインはギューッとフィナアリスを抱き締める。
そこにリュカシオンが木の植木鉢を手にしてやってくる。
「こんな感じでいいのかな?」
「え、ええ…売り物?」
「違うよ、部屋に飾るやつ…」
「リオンはお金を貯めるんじゃ無かったの?」
「…先にアイシャに恩を返さないとって思って…売り物は、夜に作れるから」
そう言うとリュカシオンもアルシャインに抱き締められた。
「なんていい子なの!」
「や、やめろよ…子供じゃないんだからっ」
リュカシオンは真っ赤になっていた。

 朝食なので、アルシャインは料理の上級編の本を見る。
ライスコロッケや、それに野菜を混ぜた野菜ライスコロッケアランチーニ、米を牛乳と砂糖で煮てから卵を加えてタルトケーキにするリゾットトルテも良さそうだ。
「この3つね…良し!」
実践あるのみだ。
大抵の料理は聖女時代に作っていたので自信があるが、お米の料理はリゾットが初めてだ。
「お米の中にソーセージとチーズ入れたら美味しそう」
本を見ていたアルベルティーナが言うので、それを作る。
「タルトケーキなら木苺のジャムが合いそう!」とマリアンナ。
アルベルティーナとマリアンナも参加して新商品に取り組んだ。
 まずはライスコロッケの中にソーセージとチーズを入れた物と、トマトやピーマンなどの野菜を入れた物。
試食は食べ盛りの男の子達だ。
「ソーセージいい!」とカシアン。
「あ、野菜もいいよ」とノアセルジオ。
「うん、間違いなくまた食べたくなるね」とリュカシオン。
「ソーセージ入りは一個8G!」とカシアン。
「野菜は7Gだね」とレオリアム。
女の子達も一口貰ってその値段に頷く。
次のリゾットタルトは木苺のジャムを添えた。
これは女の子達が食べる。
「んー!これ美味しい!」とフィナアリス。
「甘いデザートだ!」とティナジゼル。
「これは7G!」とマリアンナ。
一口貰ったのでみんなが頷く。
そしてメニューに書き加えた。

 ライスコロッケ(ソーセージとチーズ入り)8G
 野菜ライスコロッケ7G
 リゾットタルト(木苺ソース)7G

みんなで家具作りとペンキ塗りをする。
2部屋目は水色。
可愛いパンジーも庭から持ってきて水色の植木鉢に入れた。
ここはアルベルティーナとフィナアリスに任せた。
敷物は鹿にした。

3部屋目はクリーム色にした。
アルシャインはマリアンナとリナメイシーと共に塗る。
他のみんなは家具を作っている。
その時、ドアのベルがコロンコロンと鳴ったので、慌ててアルシャインとマリアンナとアルベルティーナとフィナアリスとティナジゼルとメルヒオールがダイニングに行く。
「やあ、ドアが変わったね」
そう言うのは常連のコーヒー豆屋のマティオ。
続けて茶葉売りのジャレドも来る。
「おっ、また飾りが増えたな!」
「いいでしょ、みんなで作ってるのよ」
アルシャインが笑顔で言う。
「じゃあ……また新メニューか!それを一つずつ!」とマティオ。
「俺も新メニュー一つずつな」とジャレド。
そこにコーヒーを飲みに来た綿屋のダレルが入ってくる。
「良いドアだから驚いたよ!おっ、何この匂い…わ、新メニュー!リゾットタルトとコーヒーね!」
ダレルは言いながら座る。
「もー…美味しくなくたって知らないんだから」
アルシャインが言いながら揚げていくと、3人が笑う。
「いや、食わなきゃ損だろ」とジャレド。
「匂いで分かるさ」とマティオ。
ティナジゼルとリナメイシーが頷きながらキャンディを作る。
「アイシャママって料理が上手いのよね」とリナメイシー。
「縫い物も編み物もね!」とティナジゼル。
「ねー」と2人で言う。
「まあねー、私も13歳から料理してきたからね」
「ティーナと同じね!」とアルベルティーナ。
その後もお客さんが続々と来て、お喋りが出来なくなった。
今日も忙しくなりそうだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売です!】 早ければ、電子書籍版は2/18から販売開始、紙書籍は2/19に店頭に並ぶことと思います。 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

余命1年の侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
余命を宣告されたその日に、主人に離婚を言い渡されました

なんでも奪っていく妹とテセウスの船

七辻ゆゆ
ファンタジー
レミアお姉さまがいなくなった。 全部私が奪ったから。お姉さまのものはぜんぶ、ぜんぶ、もう私のもの。

処理中です...