10 / 123
第一章 始まりの館
Chapter08 新たな仲間
しおりを挟む
翌日は晴天だった。
朝にクッションを10個程作ってから庭の敷石を探しに出ると、こそこそとついてくる人影があった。
〈…ジュドー達かしら?〉
気にせずに、近くの廃材置き場から平たい石を5つ見つけた帰りにもう一つ見つけた。
「やだ意外と重い…」
重いし持ちづらい…。苦戦していると、男の子が来てしゃがんで言う。
「持とうか?」
「え…君は?」
「持ったらお金くれる?」
そう聞いてくる。
すぐに戦争孤児だと分かった。
アルシャインは石を置いて聞く。
「あのね、持ってもお金はあげられない。あげられないけど…寝る所はあげられるわ」
「え?」
「毎日掃除とか水やりとか動物の世話をして、お客様をもてなすの。そんな仕事が体験出来て、今なら食事と寝る所が付いてくるけど…どうかしら?」
そう尋ねると、木の陰から女の子が出てきた。
「本当?寝るトコくれるの?」
「正確には、〝みんなで〟暮らすのよ。だから寝る場所も狭くなるけど…」
言い掛けると女の子が石を一つ持った。
「みんなと暮らすのいい…」
そう言う女の子の服はボロボロだった。
「じゃあ、石を一つずつ持って!帰るわよ!」
笑って言い、アルシャインは石を持って歩いた。
歩きながら2人の名前と年を聞いた。
平たい石を更に見つけ出して運んでくれているのはクリストフ7歳。
女の子はリナメイシー11歳。
住んでいた場所が隣りの家同士だったらしい。
2人共、村に母親といて、魔族に襲われたのだと言う。
逃げろと言われて子供達は逃げたと…。
魔族は、隣国から現れたらしい。
この辺は国境なので警備も薄い。
魔族かもしれないし、人間だった可能性もある。
どちらにしても、家と母親を失った事に変わりはない。
館に戻ると、みんなが起きて畑や花の水やりや掃除をしていた。
「ほら増えた」とカシアン。
「アイシャママ、誰?」
アルベルティーナとマリアンナが寄ってきて聞く。
「クリストフとリナメイシーよ。愛称は…リフとリーナでどうかしら?」
2人を見て聞くと、2人は照れたように頷く。
「じゃあその石を、門から玄関まで並べるからそこに置いて。一つずつ置いてね!」
アルシャインが言うと、みんなが一つずつ平らな石を手にして玄関から順に置いていく。
その作業の中で、自己紹介をしていた。
「あたしマリアンナ、12歳よ。アンヌって呼んで」とマリアンナ。
「俺はルベルジュノー、11歳。ジュドーでいいよ」とルベルジュノー。
「僕レオリアム…13歳。レアムって呼ばれてる。ティーナと双子なんだ」とレオリアム。
「俺ノアセルジオ、18…ノアでいい」とノアセルジオ。
するとアルシャインが驚いて聞く。
「ノアって18だったの?!」
「うん」
「ヤダ、私と同じ年じゃないの!痩せてて小さいからもっと年下かと思ったわ…これからはみんなにたくさん食べさせてあげられるように、宿屋をやっていきましょうね!」
そう言うと、みんなは
「おー!」と手を上げた。
クリストフとリナメイシーもつられて上げた。
昨日の男性がスープとパンと目玉焼きとベーコンを食べて旅立ったので、ルベルジュノーとカシアンとノアセルジオに客室の掃除と整頓をしてもらって、その間にみんなで一つずつジャガイモの皮むきをした。
幸か不幸か、ナイフはたくさん台所にあったのだ。
掃除の時にナイフを見つけて磨いておいたのだ。
他にも鍋やフライパンなど必要な物が揃っている。
〈パスタレードルもあったから、今日はパスタも作ろうかな…〉
考えている時に、アルベルティーナが指を怪我する。
「いたっ!」
「大丈夫?!」
アルシャインが慌ててアルベルティーナの手を持つと、フワッと優しい光が手を包んで傷が癒えた。
「…え?」
「わあ、アイシャママすごい!」とマリアンナ。
「聖女さまみたいだ!」とレオリアム。
そこにカシアンとノアセルジオとルベルジュノーがやってくる。
「なんの騒ぎ?」
ルベルジュノーが聞くと、アルベルティーナが言う。
「今ね、ティーナが怪我したら、アイシャママがフワーって治してくれたの!」
「え、神聖力が枯渇したって…」
とカシアンが驚く。
アルシャインも首を傾げて戸惑っていた。
「枯渇したら治らない筈なんだけどねー…まあいいわ。みんな、今のはナイショよ?しーっ!」
アルシャインが口に人差し指を置いて言うと、レオリアムが首を傾げた。
「なんで?僕アイシャの自慢したいよ?」
「駄目なの…もしも〝治せる〟なんて事が国に広がってしまったら、私は神官に連れて行かれてしまうの。もう宿屋は出来ないし、みんなもここにいられなくなるの」
「ヤダ!」とマリアンナとアルベルティーナ。
「言わない!」とノアセルジオ。
「どこにも行っちゃやだ!」とレオリアム。
そう言ってみんなが泣いてしまうので、アルシャインとカシアンが慰める。
「大丈夫、誰にも言わなければ、ずっとここにいられるわ!」
「ほんと?」とマリアンナ。
「ええ、本当」
アルシャインが微笑んで言い、みんなの頭を撫ででから椅子に戻る。
「さ、ジャガイモを慎重に剥きましょう!指は出さないでね」
「はーい!」
みんなが答えた。
朝はジャガイモのスープとほんの少しのミルクと、目玉焼きが一つ。
固く焼いた目玉焼きを、アルシャインが小さく8個に分けた。
「はい、一つずつね」
みんながフォークで取っていくと、一つ余る。
「アイシャママ食べないの?」とアルベルティーナが聞く。
「一つはね…そこの窓から覗いてる君よ!」
アルシャインがビシッと指を差すと、窓から女の子がじーっと見ていた。
女の子がビクッとして逃げようとするので、カシアンがすぐに掴んで中に引っ張り上げた。
「ごめんなさい!」
女の子が謝るので、アルシャインがスプーンで目玉焼きを一人分すくって、その口に入れる。
「どう?美味しい?」
アルシャインが聞く。
みんなもまだ食べていないのでじーっと見た。
「おいちぃ…ママの味だ…」
そう言って泣いた。
「そう、良かった。ほら、まずは食べましょう」
アルシャインが女の子を抱っこして膝に乗せて自分の分を食べさせてあげる。
するとクリストフとリナメイシーが自分の目玉焼きをアルシャインに差し出した。
「これ食べて!」とクリストフ。
「…それはね……」
アルシャインは器用に片手でそのフォークを手にしてクリストフに食べさせて、次いでリナメイシーのフォークも手にして食べさせた。
「どう?」
アルシャインが微笑んで聞くと、2人はにこ~っと笑顔になる。
「ほら、席について?まだ食べてる途中よ」
そう2人に言い、みんなを見る。
みんなも玉子を食べてとける感覚を噛み締めた。
食後に、その子の名前を聞いた。
「ナージィ、6つ……えと、ティナジゼルって、ママが付けてくれたの」
「そう、私はアルシャイン、アイシャでいいわ」
「アイシャ…ママ?」
そう呼ばれていたので聞いてみた。
するとアルシャインはにっこり笑う。
「ええ、そうよ。みんなのママなの」
その後で、みんなで自己紹介し合った。
朝にクッションを10個程作ってから庭の敷石を探しに出ると、こそこそとついてくる人影があった。
〈…ジュドー達かしら?〉
気にせずに、近くの廃材置き場から平たい石を5つ見つけた帰りにもう一つ見つけた。
「やだ意外と重い…」
重いし持ちづらい…。苦戦していると、男の子が来てしゃがんで言う。
「持とうか?」
「え…君は?」
「持ったらお金くれる?」
そう聞いてくる。
すぐに戦争孤児だと分かった。
アルシャインは石を置いて聞く。
「あのね、持ってもお金はあげられない。あげられないけど…寝る所はあげられるわ」
「え?」
「毎日掃除とか水やりとか動物の世話をして、お客様をもてなすの。そんな仕事が体験出来て、今なら食事と寝る所が付いてくるけど…どうかしら?」
そう尋ねると、木の陰から女の子が出てきた。
「本当?寝るトコくれるの?」
「正確には、〝みんなで〟暮らすのよ。だから寝る場所も狭くなるけど…」
言い掛けると女の子が石を一つ持った。
「みんなと暮らすのいい…」
そう言う女の子の服はボロボロだった。
「じゃあ、石を一つずつ持って!帰るわよ!」
笑って言い、アルシャインは石を持って歩いた。
歩きながら2人の名前と年を聞いた。
平たい石を更に見つけ出して運んでくれているのはクリストフ7歳。
女の子はリナメイシー11歳。
住んでいた場所が隣りの家同士だったらしい。
2人共、村に母親といて、魔族に襲われたのだと言う。
逃げろと言われて子供達は逃げたと…。
魔族は、隣国から現れたらしい。
この辺は国境なので警備も薄い。
魔族かもしれないし、人間だった可能性もある。
どちらにしても、家と母親を失った事に変わりはない。
館に戻ると、みんなが起きて畑や花の水やりや掃除をしていた。
「ほら増えた」とカシアン。
「アイシャママ、誰?」
アルベルティーナとマリアンナが寄ってきて聞く。
「クリストフとリナメイシーよ。愛称は…リフとリーナでどうかしら?」
2人を見て聞くと、2人は照れたように頷く。
「じゃあその石を、門から玄関まで並べるからそこに置いて。一つずつ置いてね!」
アルシャインが言うと、みんなが一つずつ平らな石を手にして玄関から順に置いていく。
その作業の中で、自己紹介をしていた。
「あたしマリアンナ、12歳よ。アンヌって呼んで」とマリアンナ。
「俺はルベルジュノー、11歳。ジュドーでいいよ」とルベルジュノー。
「僕レオリアム…13歳。レアムって呼ばれてる。ティーナと双子なんだ」とレオリアム。
「俺ノアセルジオ、18…ノアでいい」とノアセルジオ。
するとアルシャインが驚いて聞く。
「ノアって18だったの?!」
「うん」
「ヤダ、私と同じ年じゃないの!痩せてて小さいからもっと年下かと思ったわ…これからはみんなにたくさん食べさせてあげられるように、宿屋をやっていきましょうね!」
そう言うと、みんなは
「おー!」と手を上げた。
クリストフとリナメイシーもつられて上げた。
昨日の男性がスープとパンと目玉焼きとベーコンを食べて旅立ったので、ルベルジュノーとカシアンとノアセルジオに客室の掃除と整頓をしてもらって、その間にみんなで一つずつジャガイモの皮むきをした。
幸か不幸か、ナイフはたくさん台所にあったのだ。
掃除の時にナイフを見つけて磨いておいたのだ。
他にも鍋やフライパンなど必要な物が揃っている。
〈パスタレードルもあったから、今日はパスタも作ろうかな…〉
考えている時に、アルベルティーナが指を怪我する。
「いたっ!」
「大丈夫?!」
アルシャインが慌ててアルベルティーナの手を持つと、フワッと優しい光が手を包んで傷が癒えた。
「…え?」
「わあ、アイシャママすごい!」とマリアンナ。
「聖女さまみたいだ!」とレオリアム。
そこにカシアンとノアセルジオとルベルジュノーがやってくる。
「なんの騒ぎ?」
ルベルジュノーが聞くと、アルベルティーナが言う。
「今ね、ティーナが怪我したら、アイシャママがフワーって治してくれたの!」
「え、神聖力が枯渇したって…」
とカシアンが驚く。
アルシャインも首を傾げて戸惑っていた。
「枯渇したら治らない筈なんだけどねー…まあいいわ。みんな、今のはナイショよ?しーっ!」
アルシャインが口に人差し指を置いて言うと、レオリアムが首を傾げた。
「なんで?僕アイシャの自慢したいよ?」
「駄目なの…もしも〝治せる〟なんて事が国に広がってしまったら、私は神官に連れて行かれてしまうの。もう宿屋は出来ないし、みんなもここにいられなくなるの」
「ヤダ!」とマリアンナとアルベルティーナ。
「言わない!」とノアセルジオ。
「どこにも行っちゃやだ!」とレオリアム。
そう言ってみんなが泣いてしまうので、アルシャインとカシアンが慰める。
「大丈夫、誰にも言わなければ、ずっとここにいられるわ!」
「ほんと?」とマリアンナ。
「ええ、本当」
アルシャインが微笑んで言い、みんなの頭を撫ででから椅子に戻る。
「さ、ジャガイモを慎重に剥きましょう!指は出さないでね」
「はーい!」
みんなが答えた。
朝はジャガイモのスープとほんの少しのミルクと、目玉焼きが一つ。
固く焼いた目玉焼きを、アルシャインが小さく8個に分けた。
「はい、一つずつね」
みんながフォークで取っていくと、一つ余る。
「アイシャママ食べないの?」とアルベルティーナが聞く。
「一つはね…そこの窓から覗いてる君よ!」
アルシャインがビシッと指を差すと、窓から女の子がじーっと見ていた。
女の子がビクッとして逃げようとするので、カシアンがすぐに掴んで中に引っ張り上げた。
「ごめんなさい!」
女の子が謝るので、アルシャインがスプーンで目玉焼きを一人分すくって、その口に入れる。
「どう?美味しい?」
アルシャインが聞く。
みんなもまだ食べていないのでじーっと見た。
「おいちぃ…ママの味だ…」
そう言って泣いた。
「そう、良かった。ほら、まずは食べましょう」
アルシャインが女の子を抱っこして膝に乗せて自分の分を食べさせてあげる。
するとクリストフとリナメイシーが自分の目玉焼きをアルシャインに差し出した。
「これ食べて!」とクリストフ。
「…それはね……」
アルシャインは器用に片手でそのフォークを手にしてクリストフに食べさせて、次いでリナメイシーのフォークも手にして食べさせた。
「どう?」
アルシャインが微笑んで聞くと、2人はにこ~っと笑顔になる。
「ほら、席について?まだ食べてる途中よ」
そう2人に言い、みんなを見る。
みんなも玉子を食べてとける感覚を噛み締めた。
食後に、その子の名前を聞いた。
「ナージィ、6つ……えと、ティナジゼルって、ママが付けてくれたの」
「そう、私はアルシャイン、アイシャでいいわ」
「アイシャ…ママ?」
そう呼ばれていたので聞いてみた。
するとアルシャインはにっこり笑う。
「ええ、そうよ。みんなのママなの」
その後で、みんなで自己紹介し合った。
42
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる