天然公女は諦めない!〜悪役令嬢(天然)VS転生ヒロイン〜

紗々置 遼嘉

文字の大きさ
上 下
162 / 164
第四幕 νήμα(ニーマ) 紡ぐ

νήμα26 結婚式

しおりを挟む
 一週間後。
式は侯爵家で執り行われた。

マリミエドはドレスに着替えてティアラを着けて、部屋で待つ。
そこにノックがされてユークレースが入ってきた。
「リュミ、支度は…」
「出来てますわ」
答えて振り向いたマリミエドが眩しくて目を細めると、マリミエドが歩いてきてユークレースのスカーフを整える。
「とても素敵よ、ユーク」
「…君の方が素敵だよ」
そう言い頬に手を当てるので、外に待機していたレアノルドが咳払いをする。
「んん!では、参りましょうか」
レアノルドに言われ、ユークレースはマリミエドをエスコートして歩く。

玄関前で、誓いの言葉を立てる。
「汝、ユークレース・アーダルベルト。貴方は新婦を愛し、生涯を伴侶に捧げると誓いますか?」
「誓います」
神官が聞いてユークレースが答える。
「汝、マリミエド・メイナード。貴女は新郎を愛し、生涯を伴侶に捧げると誓いますか?」
「誓います」
神官が聞いてマリミエドが答える。
 互いに指輪をはめると、その手を神官が握ってくっつける。
「ここに2人が愛を誓い、夫婦となった事を証明します」
そう神官が言い、ユークレースはマリミエドのヴェールを上げて、優しくキスをする。
「おめでとう!」
と参列者達が拍手を送った。

庭にある女神像と神像におごそかな祈りをする。
〈女神様…色々とありがとうございます。わたくしは、これからもたくさんの事を学び、ユークを支えていきますわ〉
マリミエドはそう心で誓った。

それから、玄関からサロンまでの道の両側に友人や親族が立って、2人が歩く頭上に花を掛ける。
「女神様の祝福を」
「生涯の幸せを」
そう言って2人の幸せを願って花を掛けるのだ。

サロンに着くと2人は椅子に座り、皆からの祝辞と祝いの品を受け取る。
「結婚おめでとう」
アルビオンが来て祝う。
「ありがとう、アルビオン」
ユークレースが答えて、しばらくじっと見合い、アルビオンが握手を求めた。
握手をすると、アルビオンがグッとユークレースに近寄って言う。
「お前に負けた訳では無いからな…幸せにしなかったら、奪いに来る!」
「アルビオン…分かっている」
ユークレースが微笑んで言うので、アルビオンは頷いて離れた。
次にベルンハルトが来て、とても大きな箱を置いた。
「結婚おめでとう」
「ありがとう……やけに大きいが…」
「ユークレースが気に入りそうな一人掛けのソファーがあったから買ってきたんだ。後でもう一脚届けさせるよ」
ベルンハルトは笑って言う。
「あ…ありがとう」
その言葉に頷いてベルンハルトが離れる。
次にクリフォードが来て2人に一つずつ箱を渡す。
「結婚おめでとう」
「ありがとうクリフォード」
「何がいいか迷ったが、2人に揃いの物がいいかと思って。ガラスの時計だ」
「まあ可愛い」
マリミエドがリボンをほどいて中を見て言う。
「ありがとう、クリフォード公子」
「お幸せに!」
そう言いクリフォードが離れる。
するとレアノルドが来て小さめの箱を2人に渡す。
「結婚おめでとう」
「ありがとうレアノルド」
「まあ、綺麗なガラスのケース!」
マリミエドがリボンをほどいて見ると、中にはガラスで作られた収納箱が入っていた。
「まさかクリフォードと被った?」
「いいえ大丈夫ですわ」
「なら良かった…幸せを祈ります」
そう言いレアノルドはボウ&スクレープをして離れた。
するとシリウスが妹のメアリアーナと共に来て、シリウスがユークレースに、メアリアーナがマリミエドに箱を渡す。
「結婚おめでとうございます」
兄妹揃って祝辞を述べる。
「ありがとうシリウス、メアリアーナ公女」
ユークレースが言う間にマリミエドが箱の中を見る。
「まあ、可愛いお人形」
そう言うのでユークレースが思わずマリミエドを見ると、シリウスが苦笑する。
「ユークレース公子にはペガサスの置物ですよ」
「そうか…ありがとう」
「末永くお幸せに」
そう言いシリウスとメアリアーナは一礼して離れた。
するとライアンがやってくる。
「ご結婚おめでとうございます!」
そう言い2人に箱を渡した。
マリミエドは中身を確認して驚く。
「まあ…これは、クジラ?」
「はい。バイソンの角で作られたクジラです。公子には角で作られた船です。水族館、とても楽しかったです。またいつか、皆さんと出掛ける時は声を掛けて下さい!」
そう言いライアンは一礼して離れた。

その後も続々と祝辞が続いた。
 その間は、皆は宴を楽しんでいる。

やっと終わりかと思ったら、魔王陛下とルド・ルギオス猊下がやってきて、2人に箱を渡した。
「〝結婚おめでとう〟」
棒読みな感じで魔王が言う。
「ありがとう…魔王陛下、ルド・ルギオス猊下…」
ユークレースが戸惑いがちに答え、マリミエドが箱を開ける。
中には真っ青な丸い物体が入っていた。
「これは…?」
「ランプも知らんのか?」
魔王が言い、マリミエドに近付いてその青い物体を取り、魔力を少し注ぐ。
すると青白い光が付いて宙に浮いた。
光は、ピンクや紫、緑に変わっていき、とても幻想的だ。
「素敵!」
「寝室に使うといい…は出るぞ」
ニヤリとしてユークレースに言う。
ユークレースは頬を赤らめながら口元を手で隠して言う。
「ありがとう…」
そうユークレースが言うと、魔王は離れ、ルド・ルギオスがユークレースに近寄ってこっそり言う。
「お前に渡した品物は〝初夜〟に必要であろう品々だ。アロマとオイルと…使い方は分かるだろう?」
「もしや、ギルベルトにも…?」
そう聞くとルド・ルギオスは頷いて笑う。
「しっかりな」
そう言って離れた。
ユークレースは顔を真っ赤にして俯く。
「ユーク?」
「…何でもないよ…我々も食べようか」
そう言い箱を置くと、ユークレースはマリミエドをエスコートしてダイニングに移った。
 2人は食事をしながら友人達と歓談を楽しんだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

処理中です...