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第四幕 νήμα(ニーマ) 紡ぐ
νήμα25 結婚式の段取り
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母は懐妊していた。
父と母がやってきたので、皆でお茶会をした。
「おめでとうございます」
ユークレースが言うと、母は微笑んで言う。
「ありがとう。…お屋敷は進んでいて?」
そう聞かれユークレースはギクッとしながら答える。
「はい…遅くなりましたが…」
「大きなお屋敷を管理する事は、貴族の夫人の社会的地位でもあります。リュミは侯爵家の人間です…それを忘れないで?」
「はい」
ユークレースが答えるとマリミエドが唇を尖らせながら言う。
「わたくしはあの小さなお屋敷が気に入ってますのに…」
「マリミエド」
父が何か言う前にマリミエドはそっぽを向く。
「分かりましたわ。…親戚の方々にも示しが付かないと仰りたいのでしょう?」
「そうだ。……エレノワールはどうした?」
父が聞くとギルベルトが答える。
「領地の決済書を書いてましたよ。もう終わる筈です」
そう言い紅茶を飲んでいる時にエレノワールがやってきてカーテシーをする。
「遅れて申し訳ございません、旦那様、奥様…あ」
癖でそう言ってから赤くなってまた言い直す。
「その、お義父さま、お義母さま…」
「大丈夫よエレノワール。さあ座って」
そう言い母が隣りの席を見る。
エレノワールも座ると、ギルベルトが紙を出す。
「これが招待客のリストで…こちらは魔界から来るというルド・ルギオス猊下とその部下、こちらは隣国からの来賓」
続けて紙を出して万年筆を出す。
「費用としてはこのくらいで…ああ、料理は何をメインにする?」
そう言い書いていくのは、マリミエドとユークレースの結婚式の事だ。
マリミエドは考えながらユークレースを見る。
ユークレースは真剣に考えて答える。
「野菜のテリーヌと魚のムニエルと牛のコンフィを中心として考えているが…どうだろうか?」
「では鶏肉のポワレとパスタも入れておこう。前菜にはナッツとカナッペがいいかな?」
ギルベルトが聞きながら書いていく。
「ピッツァとフォカッチャも入れて下さい。デザートはパンナコッタとティラミスとマリトッツォ…ベリータルトとアップルパイも…あとはフロマージュとクリームブリュレと…」
マリミエドが言う。
「リュミ、デザートだらけだね」
「あ…だって、デザートも大事でしょう?」
マリミエドは真っ赤になって紅茶を飲む。
「そんなに細かく決めなくとも、シェフに任せればいい。それよりも客室は用意出来ているのだろうな?」
父が聞くと、エレノワールが答える。
「はい、完璧にしてあります」
「よろしい」
そう言い父は紅茶を飲む。
ユークレースはその紙を見つめている。
メインにリュミの好きな鶏肉の香草焼き
と書かれていた。
結婚式は先月のギルベルトのものを体験したが、飲んで食べていただけだ。
〈…神官に誓いを立てて、祈りを捧げて、皆からの祝いの品を受け取って…〉
緊張しながら考えていると、マリミエドがユークレースの右手に手を添えて言う。
「式は一週間後よ…そんなに緊張しないで」
「あ、ああ…」
答えてユークレースは紅茶を飲む。
そして、その後は晩餐まで歓談した。
晩餐は、魔石の事や発明に付いて歓談し、男性陣がビリヤード室で盛り上がっている隣りのサロンで母とマリミエドとエレノワールがゆっくりと紅茶を飲む。
「リュミ…大丈夫?」
急に母が聞く。
「何がですか?」
「あの方で、本当にいいの?」
「はい。…様々な物が見れて、初めての体験ばかりで、とても楽しいんです」
そう笑顔で言うので、母は頷いて立ち上がる。
「わたくしはそろそろ寝ます。エレノワールも懐妊するかもしれないから、早めに休んでね」
「はい奥さ……お義母さま」
その返事に頷いて母は寝室に行く。
「…お父様とお兄様ばかりユークといてつまらないわ…」
「お嬢様、そんなものですよ。だから女性はお茶会をたくさん開くんだと習いました」
エレノワールが言うと、マリミエドは俯く。
「…わたくしはお茶会よりも、お仕事がしたいわ。何かを、共に作り上げてサポートしたいの」
「ふふ…お嬢様らしいですね」
そんな会話をちょうどノックしようとしていたユークレースが聞いて立ち止まっていた。
〈リュミ……〉
ユークレースは微笑して戻っていった。
待っている間にマリミエドが眠ってしまったので、ギルベルトが寝室に運んでエレノワールがアメリアと共に着替えさせた。
ユークレースはもう帰っている。
「リュミが拗ねるだろうが…宜しく頼むよ」
ギルベルトがアメリアに言い、エレノワールと共に寝室に向かった。
アメリアはマリミエドの安らかな寝顔を見てからドアを閉めた。
父と母がやってきたので、皆でお茶会をした。
「おめでとうございます」
ユークレースが言うと、母は微笑んで言う。
「ありがとう。…お屋敷は進んでいて?」
そう聞かれユークレースはギクッとしながら答える。
「はい…遅くなりましたが…」
「大きなお屋敷を管理する事は、貴族の夫人の社会的地位でもあります。リュミは侯爵家の人間です…それを忘れないで?」
「はい」
ユークレースが答えるとマリミエドが唇を尖らせながら言う。
「わたくしはあの小さなお屋敷が気に入ってますのに…」
「マリミエド」
父が何か言う前にマリミエドはそっぽを向く。
「分かりましたわ。…親戚の方々にも示しが付かないと仰りたいのでしょう?」
「そうだ。……エレノワールはどうした?」
父が聞くとギルベルトが答える。
「領地の決済書を書いてましたよ。もう終わる筈です」
そう言い紅茶を飲んでいる時にエレノワールがやってきてカーテシーをする。
「遅れて申し訳ございません、旦那様、奥様…あ」
癖でそう言ってから赤くなってまた言い直す。
「その、お義父さま、お義母さま…」
「大丈夫よエレノワール。さあ座って」
そう言い母が隣りの席を見る。
エレノワールも座ると、ギルベルトが紙を出す。
「これが招待客のリストで…こちらは魔界から来るというルド・ルギオス猊下とその部下、こちらは隣国からの来賓」
続けて紙を出して万年筆を出す。
「費用としてはこのくらいで…ああ、料理は何をメインにする?」
そう言い書いていくのは、マリミエドとユークレースの結婚式の事だ。
マリミエドは考えながらユークレースを見る。
ユークレースは真剣に考えて答える。
「野菜のテリーヌと魚のムニエルと牛のコンフィを中心として考えているが…どうだろうか?」
「では鶏肉のポワレとパスタも入れておこう。前菜にはナッツとカナッペがいいかな?」
ギルベルトが聞きながら書いていく。
「ピッツァとフォカッチャも入れて下さい。デザートはパンナコッタとティラミスとマリトッツォ…ベリータルトとアップルパイも…あとはフロマージュとクリームブリュレと…」
マリミエドが言う。
「リュミ、デザートだらけだね」
「あ…だって、デザートも大事でしょう?」
マリミエドは真っ赤になって紅茶を飲む。
「そんなに細かく決めなくとも、シェフに任せればいい。それよりも客室は用意出来ているのだろうな?」
父が聞くと、エレノワールが答える。
「はい、完璧にしてあります」
「よろしい」
そう言い父は紅茶を飲む。
ユークレースはその紙を見つめている。
メインにリュミの好きな鶏肉の香草焼き
と書かれていた。
結婚式は先月のギルベルトのものを体験したが、飲んで食べていただけだ。
〈…神官に誓いを立てて、祈りを捧げて、皆からの祝いの品を受け取って…〉
緊張しながら考えていると、マリミエドがユークレースの右手に手を添えて言う。
「式は一週間後よ…そんなに緊張しないで」
「あ、ああ…」
答えてユークレースは紅茶を飲む。
そして、その後は晩餐まで歓談した。
晩餐は、魔石の事や発明に付いて歓談し、男性陣がビリヤード室で盛り上がっている隣りのサロンで母とマリミエドとエレノワールがゆっくりと紅茶を飲む。
「リュミ…大丈夫?」
急に母が聞く。
「何がですか?」
「あの方で、本当にいいの?」
「はい。…様々な物が見れて、初めての体験ばかりで、とても楽しいんです」
そう笑顔で言うので、母は頷いて立ち上がる。
「わたくしはそろそろ寝ます。エレノワールも懐妊するかもしれないから、早めに休んでね」
「はい奥さ……お義母さま」
その返事に頷いて母は寝室に行く。
「…お父様とお兄様ばかりユークといてつまらないわ…」
「お嬢様、そんなものですよ。だから女性はお茶会をたくさん開くんだと習いました」
エレノワールが言うと、マリミエドは俯く。
「…わたくしはお茶会よりも、お仕事がしたいわ。何かを、共に作り上げてサポートしたいの」
「ふふ…お嬢様らしいですね」
そんな会話をちょうどノックしようとしていたユークレースが聞いて立ち止まっていた。
〈リュミ……〉
ユークレースは微笑して戻っていった。
待っている間にマリミエドが眠ってしまったので、ギルベルトが寝室に運んでエレノワールがアメリアと共に着替えさせた。
ユークレースはもう帰っている。
「リュミが拗ねるだろうが…宜しく頼むよ」
ギルベルトがアメリアに言い、エレノワールと共に寝室に向かった。
アメリアはマリミエドの安らかな寝顔を見てからドアを閉めた。
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