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第四幕 νήμα(ニーマ) 紡ぐ
νήμα21 揺れる心
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それから他の者も来てアピールし、5枚も恋文蝶を貰ってしまった。
マリミエドはバッグに恋文蝶の紙をしまって、海辺の散策に出る。
すると同じように女の子達が顔を赤らめながら歩いたり座って海を眺めたりして迷っていた。
〈…やはり、迷うものよね……〉
水上コテージを見ると、女性がアピールして恋文蝶の紙を渡したりもしている。
〈わたくし恋文蝶の紙なんて頂いてないわ……〉
ギルベルトが渡さなかったのは、ユークレースとアルビオンが告白すると分かっていたからだろう。
マリミエドは大きなヤシの葉を岩の上に敷いて、その上に座る。
〈わたくしは…〉
どちらと結婚したらいいのだろうか…。
アルビオンは…
彼は真面目で正直で、頼り甲斐がある。
剣を手に戦う姿は、とても強くて勇ましかった。
ユークレースは…
彼は何でも疑ってから掛かるが、慎重で正確に物事をこなしていく。
魔法を使いこなして戦う姿は、とても強くて頼もしかった。
どちらも頼もしい事に変わりはない。
〈やだ、どうしたらいいの…〉
決定権が自分にある事が初めてなのでどう決めていいかも分からない。
いくら何をどう考えても〝どちらも好きである〟という事しか分からない。
すると横から声がする。
「迷うわよね」
「え…」
見上げると、見知らぬ女生徒が微笑んで立っていた。
女生徒はにこりと笑って言う。
「隣り、いいかしら?」
「は、はい…どうぞ…?」
戸惑いながら答えると、女生徒は隣りに座ってこっそりと耳打ちする。
「私よ、リュミエリーナよ! 中々会えないから、こっそり入っちゃった♪」
「えっ!」
マリミエドは声を上げてから手で口を押さえてリュミエリーナを見る。
「女神様⁉」
「ええ、体を借りたの。それでねリュミ…」
「はい」
「私もね、魔王とシャルルで迷ったから分かるのだけれど…どっちも好きなんでしょ?」
「え…あ……はぃ…」
マリミエドは真っ赤になって小さく答える。
するとリュミエリーナは海を見つめながら喋る。
「…そんな時はね、どちらと未来を歩みたいかを考えるの。話をしていて楽しいのはどちらか…」
「楽しい…」
「それと…その人にとって、自分は必要かどうかを」
「必要…?」
「ええ。魔王は完璧な人で何でも出来て、守っては貰えるけれど…私がしてあげられる事は何も無い気がしたの。その点、シャルルはドジもするしうっかりする所もあって…支えてあげなきゃって思ったら…シャルルを選んでいたわ」
「支えて……あ、確かに」
これまではエデュアルト王太子を〝支えていくのだ〟と思っていた。
「エデュアルト?」
「はい…これまでは、エデュアルト王太子を支えて生きなさいと教えられて…」
「では…これから先、貴女が心から支えたていきたい方は、誰かしらね?」
「支えていきたい方…」
マリミエドが真剣に考え出したので、リュミエリーナはそっとその場から離れた。
〈わたくしが支えていきたい方は…〉
マリミエドは海を見つめて2人の姿を思い浮かべた。
マリミエドはバッグに恋文蝶の紙をしまって、海辺の散策に出る。
すると同じように女の子達が顔を赤らめながら歩いたり座って海を眺めたりして迷っていた。
〈…やはり、迷うものよね……〉
水上コテージを見ると、女性がアピールして恋文蝶の紙を渡したりもしている。
〈わたくし恋文蝶の紙なんて頂いてないわ……〉
ギルベルトが渡さなかったのは、ユークレースとアルビオンが告白すると分かっていたからだろう。
マリミエドは大きなヤシの葉を岩の上に敷いて、その上に座る。
〈わたくしは…〉
どちらと結婚したらいいのだろうか…。
アルビオンは…
彼は真面目で正直で、頼り甲斐がある。
剣を手に戦う姿は、とても強くて勇ましかった。
ユークレースは…
彼は何でも疑ってから掛かるが、慎重で正確に物事をこなしていく。
魔法を使いこなして戦う姿は、とても強くて頼もしかった。
どちらも頼もしい事に変わりはない。
〈やだ、どうしたらいいの…〉
決定権が自分にある事が初めてなのでどう決めていいかも分からない。
いくら何をどう考えても〝どちらも好きである〟という事しか分からない。
すると横から声がする。
「迷うわよね」
「え…」
見上げると、見知らぬ女生徒が微笑んで立っていた。
女生徒はにこりと笑って言う。
「隣り、いいかしら?」
「は、はい…どうぞ…?」
戸惑いながら答えると、女生徒は隣りに座ってこっそりと耳打ちする。
「私よ、リュミエリーナよ! 中々会えないから、こっそり入っちゃった♪」
「えっ!」
マリミエドは声を上げてから手で口を押さえてリュミエリーナを見る。
「女神様⁉」
「ええ、体を借りたの。それでねリュミ…」
「はい」
「私もね、魔王とシャルルで迷ったから分かるのだけれど…どっちも好きなんでしょ?」
「え…あ……はぃ…」
マリミエドは真っ赤になって小さく答える。
するとリュミエリーナは海を見つめながら喋る。
「…そんな時はね、どちらと未来を歩みたいかを考えるの。話をしていて楽しいのはどちらか…」
「楽しい…」
「それと…その人にとって、自分は必要かどうかを」
「必要…?」
「ええ。魔王は完璧な人で何でも出来て、守っては貰えるけれど…私がしてあげられる事は何も無い気がしたの。その点、シャルルはドジもするしうっかりする所もあって…支えてあげなきゃって思ったら…シャルルを選んでいたわ」
「支えて……あ、確かに」
これまではエデュアルト王太子を〝支えていくのだ〟と思っていた。
「エデュアルト?」
「はい…これまでは、エデュアルト王太子を支えて生きなさいと教えられて…」
「では…これから先、貴女が心から支えたていきたい方は、誰かしらね?」
「支えていきたい方…」
マリミエドが真剣に考え出したので、リュミエリーナはそっとその場から離れた。
〈わたくしが支えていきたい方は…〉
マリミエドは海を見つめて2人の姿を思い浮かべた。
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