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第四幕 νήμα(ニーマ) 紡ぐ
νήμα02 求婚
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その後、皆が帰った後でギルベルト猊下は魔界の城で過ごした。
どれだけの数の人間が奴隷となっているのか、どれだけの魔族が拉致されたのかを調べる為だ。
3日後。
ルド・ルギオスはさらって売った人間を買い戻して元の家に戻した。
「〝済まなかった、悪霊にそそのかされて正気を失っていたんだ、どうか許しておくれ〟」
そう教えられたセリフを言い、何年も暮らせるような魔石を渡した。
そうする事で、ギルベルトは己で罪を償っているとして罰は与えないとされた。
同じ頃、ギルベルト猊下は奴隷となっている人間を買ってはユークレースの下に送った。
奴隷の間で〝ルド・ルギオスは優しい魔族だ〟という噂が広まり、人間の間でもその話題は新聞に上がった。
「お兄様は大活躍ですわね」
マリミエドは新聞を読んで呟く。
最近、クローディアが正式に王太子妃となると発表があった。
…どうやら、お腹に王太子の子が居るらしいので式は一週間後に執り行われると通達が来た。
マリミエドは新聞を置いて、手紙を書く。
王太子妃を辞退する手紙だ。
両親が賛成してくれた。
〝天使の涙〟を同封して王宮へ届ける。
「お父様、今届けさせましたわ」
「そうか……」
父はまだ弱々しくベッドで寝ていた。
起き上がって座ると、父は水を飲む。
「…誰か、いい相手はいるのか…?」
「…ごめんなさい、まだ分からなくて……」
「ベルンハルトは、いい青年だな」
「ええ、頼もしい方ですわね」
答えてシンとなる。
「…来月は海でパーティーがあるそうだな。楽しみなさい」
「はい」
マリミエドは答えて下がる。
噂が広まるのは早い。
翌日には、マリミエドへの求婚の手紙が山のように届いた。
中には、アルビオンやベルンハルト、ユークレースやレアノルドやシリウスからの手紙もあった。
「これは求婚ではないわよね」
そう思ってレアノルドの手紙を開ける。
マリミエド・メイナード様
貴女を初めて見た時は、天使が舞い降りたのだと思い、見惚れました。
美しく、聡明で堂々とする貴女にどんどん惹かれていきました。
「待って!」
マリミエドは真っ赤になって、バッと手紙を裏返しに置く。
突然の告白に胸がドキドキしている。
「まさか…」
マリミエドは恐る恐るアルビオンの手紙を手に取って開けてみる。
マリミエド嬢へ
君を初めて見たのは、君が赤ちゃんの頃だ。
初めは可愛い妹だと思っていたが、仲間達と行動する内に、君の魅力的な微笑みに惹かれていく自分に気付いた。
君が好きだ。
「待ってぇ…」
またテーブルに裏返しに置くと、ティーセットを持って来たエレナが言う。
「お嬢様、どうかされましたか?」
「これ…これ…」
真っ赤になって言うと、エレナが用意しながら言う。
「ああ、皆様からのラブレターですね、どなたになさいます?」
「だって、仲間なのよ?」
「お嬢様…王太子妃を辞退したのですから、こうなるのは必然ですよ?」
「そんなの……だってわたくし…え、エレナが読んでみて…」
マリミエドは真っ赤になって両手で頬を押さえている。
エレナはため息を吐いてから、ベルンハルトの手紙を手にする。
「ではお読みしますよ? マリミエド嬢、君の微笑みが可愛らしく、天使のようで、いつしか目が離せなくなっていった。俺は君に惚れているのだと自覚するのが遅く…」
「きゃあぁー読み上げてとは言ってないのぉ~」
そう言いクッションに顔を埋めた。
「お覚悟なさいませ! 厳しい教育に耐えてきたお嬢様ではありませんか! 皆様の〝覚悟〟を受け止めあそばせ!」
「………わ、分かったわ…」
マリミエドはユークレースからの手紙を手にする。
マリミエド嬢
君を意識し始めたのは授業で擬似浄化をした頃からだ。
その頃から君を見るようになり、いつからか、恋をしていたのだと思う。
自分でも信じられないのだが、そうだと思う。
ギルベルトが戻ってきたら、正式に求婚させて欲しい。
ユークレース
「……わたくし…お返事が書けないわ……」
マリミエドが真っ赤になって倒れてしまう。
「お嬢様⁉ お気をしっかり!」
エレナが抱き上げると、マリミエドは熱を出していた。
「やだ、お嬢様しっかり!」
エレナは慌ててマリミエドを抱き上げてベッドに寝かせ、ケーキのワゴンを運んできたアメリアに倒れた事を伝えて医者を呼んだ。
「知恵熱ですな…これをお飲み下さい」
そう医者が言い出て行くと、マリミエドは恥ずかしそうにする。
「やだわ恥ずかしい…」
「はいお嬢様、ポーションを飲んで落ち着かれて下さいね?」
アメリアがポーションを渡す。
マリミエドはポーションを飲んでチラリと手紙を見る。
〈皆さん真剣に書かれたのよね……考えなくては…〉
マリミエドはベッドの中で一人一人を思い浮かべては赤くなっていた。
どれだけの数の人間が奴隷となっているのか、どれだけの魔族が拉致されたのかを調べる為だ。
3日後。
ルド・ルギオスはさらって売った人間を買い戻して元の家に戻した。
「〝済まなかった、悪霊にそそのかされて正気を失っていたんだ、どうか許しておくれ〟」
そう教えられたセリフを言い、何年も暮らせるような魔石を渡した。
そうする事で、ギルベルトは己で罪を償っているとして罰は与えないとされた。
同じ頃、ギルベルト猊下は奴隷となっている人間を買ってはユークレースの下に送った。
奴隷の間で〝ルド・ルギオスは優しい魔族だ〟という噂が広まり、人間の間でもその話題は新聞に上がった。
「お兄様は大活躍ですわね」
マリミエドは新聞を読んで呟く。
最近、クローディアが正式に王太子妃となると発表があった。
…どうやら、お腹に王太子の子が居るらしいので式は一週間後に執り行われると通達が来た。
マリミエドは新聞を置いて、手紙を書く。
王太子妃を辞退する手紙だ。
両親が賛成してくれた。
〝天使の涙〟を同封して王宮へ届ける。
「お父様、今届けさせましたわ」
「そうか……」
父はまだ弱々しくベッドで寝ていた。
起き上がって座ると、父は水を飲む。
「…誰か、いい相手はいるのか…?」
「…ごめんなさい、まだ分からなくて……」
「ベルンハルトは、いい青年だな」
「ええ、頼もしい方ですわね」
答えてシンとなる。
「…来月は海でパーティーがあるそうだな。楽しみなさい」
「はい」
マリミエドは答えて下がる。
噂が広まるのは早い。
翌日には、マリミエドへの求婚の手紙が山のように届いた。
中には、アルビオンやベルンハルト、ユークレースやレアノルドやシリウスからの手紙もあった。
「これは求婚ではないわよね」
そう思ってレアノルドの手紙を開ける。
マリミエド・メイナード様
貴女を初めて見た時は、天使が舞い降りたのだと思い、見惚れました。
美しく、聡明で堂々とする貴女にどんどん惹かれていきました。
「待って!」
マリミエドは真っ赤になって、バッと手紙を裏返しに置く。
突然の告白に胸がドキドキしている。
「まさか…」
マリミエドは恐る恐るアルビオンの手紙を手に取って開けてみる。
マリミエド嬢へ
君を初めて見たのは、君が赤ちゃんの頃だ。
初めは可愛い妹だと思っていたが、仲間達と行動する内に、君の魅力的な微笑みに惹かれていく自分に気付いた。
君が好きだ。
「待ってぇ…」
またテーブルに裏返しに置くと、ティーセットを持って来たエレナが言う。
「お嬢様、どうかされましたか?」
「これ…これ…」
真っ赤になって言うと、エレナが用意しながら言う。
「ああ、皆様からのラブレターですね、どなたになさいます?」
「だって、仲間なのよ?」
「お嬢様…王太子妃を辞退したのですから、こうなるのは必然ですよ?」
「そんなの……だってわたくし…え、エレナが読んでみて…」
マリミエドは真っ赤になって両手で頬を押さえている。
エレナはため息を吐いてから、ベルンハルトの手紙を手にする。
「ではお読みしますよ? マリミエド嬢、君の微笑みが可愛らしく、天使のようで、いつしか目が離せなくなっていった。俺は君に惚れているのだと自覚するのが遅く…」
「きゃあぁー読み上げてとは言ってないのぉ~」
そう言いクッションに顔を埋めた。
「お覚悟なさいませ! 厳しい教育に耐えてきたお嬢様ではありませんか! 皆様の〝覚悟〟を受け止めあそばせ!」
「………わ、分かったわ…」
マリミエドはユークレースからの手紙を手にする。
マリミエド嬢
君を意識し始めたのは授業で擬似浄化をした頃からだ。
その頃から君を見るようになり、いつからか、恋をしていたのだと思う。
自分でも信じられないのだが、そうだと思う。
ギルベルトが戻ってきたら、正式に求婚させて欲しい。
ユークレース
「……わたくし…お返事が書けないわ……」
マリミエドが真っ赤になって倒れてしまう。
「お嬢様⁉ お気をしっかり!」
エレナが抱き上げると、マリミエドは熱を出していた。
「やだ、お嬢様しっかり!」
エレナは慌ててマリミエドを抱き上げてベッドに寝かせ、ケーキのワゴンを運んできたアメリアに倒れた事を伝えて医者を呼んだ。
「知恵熱ですな…これをお飲み下さい」
そう医者が言い出て行くと、マリミエドは恥ずかしそうにする。
「やだわ恥ずかしい…」
「はいお嬢様、ポーションを飲んで落ち着かれて下さいね?」
アメリアがポーションを渡す。
マリミエドはポーションを飲んでチラリと手紙を見る。
〈皆さん真剣に書かれたのよね……考えなくては…〉
マリミエドはベッドの中で一人一人を思い浮かべては赤くなっていた。
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