上 下
147 / 191
第三幕 想定外

vs40 メイナード侯爵

しおりを挟む
 狩猟大会は5日間行われた。
優勝者はベルンハルト。
団体ではヴィルヘルム侯爵家。
優勝者にはトロフィーが贈られ、それぞれに王家の勲章が与えられる。

 式典の後は宴会だ。
しかしその中にメイナード侯爵の姿は無かった。


そして、翌日に大移動が行われる。
その中で、メイナード侯爵が必死に皇帝陛下に懇願していた。
「お願いです、ここで捜索をさせて下さい!」
「ならん。捜索隊はもう編成してある。ここは王宮騎士が捜索するから案ずるな」
そういう話しが、通る者達に聞こえる。
アルビオンやユークレース、ベルンハルトやクリフォード、レアノルドはいたたまれない気持ちで帰った。

メイナード侯爵はその翌日の朝に憔悴しきった姿で帰ってきた。
「あなた!」
「お父様…」
メイナード侯爵は家に着くとマリミエドを見て手を伸ばし、そのまま倒れた。
「あなた!」
「旦那様!」
「お父様!」
夫人やマリミエド、妹達が駆け寄り、執事が侯爵を運ぶ。
「すぐに医者を!」
侯爵はベッドの中でマリミエドに手を伸ばす。
「お父様…」
「その、犬は……まさかギルベルトと関係があるのか…」
そう聞かれてマリミエドは戸惑いながらも頷いた。
「お兄様が帰って来られる道標なのです! お父様、信じて下さい!」
「…お前がそう言うのなら…本当なのだな……ギルベルト………」
そう言いながら侯爵は気を失った。
「お嬢様、お部屋へ!」
執事が言い、エレナがマリミエドを連れて行った。
『父上…あんな姿になるまで探されるとは…ただの策略家だと思っていたが、違うのだな…』
「ええ…お兄様をとても大切にされてましたから…」
そう言い、マリミエドはしょんぼりとする。
「お兄様の体…無事かしら…」
『大丈夫さ、皆が俺の無事を世界樹に祈ったから』
それを聞いて、マリミエドはバルコニーに出て空を見上げた。

晩餐の後で父を見舞うと、薄っすらと目を開けたので、マリミエドはそっと父の側に行ってしゃがむ。
「お父様、お兄様は必ず見つかりますわ」
「ああ……」
父はそれ以上何も言わなかった。
『父上…』

 その夜、仲間達からの連絡蝶が届いた。
これからどうするか、何をすべきかなど。
『体とマリアの居場所が分からない事にはどうにも出来ないな…明日、神殿に行こう』
子犬が言う。
「神殿に?」
『女神に祈ってみるんだ…加護が効かなかったのも気になるし…』
「そうですわね…なんの加護なのでしょうか…」
2人は話し合いながらも、明日神殿で祈る事を皆に伝える事にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

王太子の子を孕まされてました

杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。 ※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜

茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。 ☆他サイトにも投稿しています

悪役令嬢は毒を食べた。

桜夢 柚枝*さくらむ ゆえ
恋愛
婚約者が本当に好きだった 悪役令嬢のその後

腹黒王子は、食べ頃を待っている

月密
恋愛
侯爵令嬢のアリシア・ヴェルネがまだ五歳の時、自国の王太子であるリーンハルトと出会った。そしてその僅か一秒後ーー彼から跪かれ結婚を申し込まれる。幼いアリシアは思わず頷いてしまい、それから十三年間彼からの溺愛ならぬ執愛が止まらない。「ハンカチを拾って頂いただけなんです!」それなのに浮気だと言われてしまいーー「悪い子にはお仕置きをしないとね」また今日も彼から淫らなお仕置きをされてーー……。

処理中です...