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第三幕 想定外
vs37 お礼とお詫び
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「うっ、ううっ…」
マリミエドが泣いている側で、ベルンハルトは手の火傷の手当てをする。
「…軽い火傷で良かった」
「良くないわ! お兄様が火傷をして蹴られていたのよ!」
そうマリミエドが叫んで泣く。
ベルンハルトは眉をしかめて言う。
「済まん…ギルベルトの言葉を優先した…」
「お兄様…」
泣いているマリミエドにどうしたらいいのか分からず、ベルンハルトはそっとマリミエドの頭を寄せて自分の肩に置いた。
「えっ、えっ…」
『余り泣かせるなよ、友人』
そう声がして2人が見ると、そこには子犬を抱いたフード付きマントを被った男が居た。
男がフードを取ると、マリミエドが警戒する。
「エルガファル…!」
ベルンハルトも警戒して剣を構えた。
するとエルガファルは子犬を置いて両手を前に出して言う。
「待った! 今は敵じゃないんだって!」
『落ち着いて…こいつに助けられたんだよ』
子犬が弱々しく言う。
ベルンハルトが剣を収めると、マリミエドがすぐに子犬に駆け寄って魔法を使う。
「回復!」
すると、子犬の火傷や骨折などが治った。
「この犬、大事なんだろ? 殺されて繁みに捨てられたから拾って生き返せたんだが…」
エルガファルが言う。
「何故…貴方はマリアの味方では…」
「王女のパーティーの時に賊に襲わせた事は謝るよ」
「何⁈」『何だって?』
ベルンハルトと子犬が驚き、マリミエドが言う。
「い、言っちゃ駄目!」
「言わないの? あれさ…俺の意志だと言ったけど訂正。…皇帝の命令だよ。クローディアを王太子妃に推し進める為のね」
ハッキリと言う。
するとベルンハルトが呆然とした。
「馬鹿な…」
『ああ…ヴィルヘルム侯爵の仕業か…』
子犬の呟きにベルンハルトが余計に驚いて言葉を失う。
『リュミ、彼の目的を聞くんだ』
「…貴方の目的は?」
そう聞くと、エルガファルは顔を掻きながら言う。
「あのさ……俺、実はヴァンパイアとのハーフなんだ。それで、君達が戦ってるのを見てさ…そしたらフェンリルが助けに入ったから、後でフェンリルに聞いたんだよ。君、フェンリルを助けたんだってね」
「ええ…」
「彼は友人の一人息子だったんだ。だから、俺からも礼を言いたくて。フェンリルを助けてくれてありがとう」
「い、いえ…」
マリミエドが戸惑っていると、エルガファルは目の前に来て言う。
「ね、俺にも手助けさせてよ。お詫びも兼ねてさ…ギルドは捨てて来たんだ…人間共が嫌いだから。でも君は違うようだし…」
そう言いマリミエドの頬にキスをする。
「! 何を…」
ベルンハルトが掴み掛かろうとすると、エルガファルが片手でその手を掴んで止める。
「邪魔するなよ坊や。俺、マリミエドの事は気に入ってるけど、他の人間は嫌いだから」
「やめて! フォルネウス令息は大切な仲間なのよ!」
「じゃあ、キスしていい? こいつ殺さないでおいてやるから…」
そう言いエルガファルが顔を近付けるので、子犬がブチュッとキスをした。
「うわ、犬はすぐ舐めるから~…」
そう言いエルガファルは顔を反らしてベルンハルトから手を離して、子犬を撫でる。
人間は嫌いでも、動物は好きなようだ。
ベルンハルトは右手を押さえて顔を歪ませていた。
『リュミ、こいつを味方に付けよう』
「え…」
『事情なんか話さなくていい。こいつは魔族と繋がっている! 盟約の架け橋に出来る!』
確かにそうだが…純潔が危うい…。
マリミエドは慎重に話す。
「わたくし、結婚するまでは純潔を守りたいの。だからキスもしないわ」
「…今どき珍しいね…王太子なんてヤリまくってんのに」
そう言うと、マリミエドは一瞬止まってから話す。
「……そちらの話はいいの。わたくしはそうしたいの。けれど、味方で居てくれるなら嬉しいわ」
「キス無しか~…じゃあ、ほっぺや首ならいいよね? 俺半分ヴァンパイアだからどうしても処女の血ってうずいちゃってさ~…」
「血は吸わないわよね…?」
「うう…まあお詫びだから今は我慢するよ」
そう言ってマリミエドの首にキスをして舐める。
「きゃあ⁉」
マリミエドが驚いて仰け反ると、エルガファルはニッとする。
「じゃ、この手帳あげるよ。これにして欲しい事を書けば俺の手帳にも書き込まれるから。お礼はデートでいいよ」
そう言って紅い手帳を渡して軽々とジャンプして消えた。
『大丈夫か、ベルンハルト…』
「ああ…」
その痛がりようからは、とても大丈夫に見えなかったのでマリミエドが魔法を使う。
「回復!」
「…ありがとう。あんな奴に負けるとは情けない…」
『相手はハーフとはいえヴァンパイアだ、仕方が無いさ友人。リュミには俺が付くようにするよ』
子犬がそう言うとベルンハルトは頷いた。
それからマリミエドはテントに帰り、子犬を飼う許可を得た。
どうやら、侯爵と捜索隊だけ残って後の者は明日には帰らされるようだ。
「…皆さん大丈夫かしら…」
『大丈夫だよ、後は狩りに集中させよう』
「ええ…」
答えてマリミエドは眠りに付いた。
マリミエドが泣いている側で、ベルンハルトは手の火傷の手当てをする。
「…軽い火傷で良かった」
「良くないわ! お兄様が火傷をして蹴られていたのよ!」
そうマリミエドが叫んで泣く。
ベルンハルトは眉をしかめて言う。
「済まん…ギルベルトの言葉を優先した…」
「お兄様…」
泣いているマリミエドにどうしたらいいのか分からず、ベルンハルトはそっとマリミエドの頭を寄せて自分の肩に置いた。
「えっ、えっ…」
『余り泣かせるなよ、友人』
そう声がして2人が見ると、そこには子犬を抱いたフード付きマントを被った男が居た。
男がフードを取ると、マリミエドが警戒する。
「エルガファル…!」
ベルンハルトも警戒して剣を構えた。
するとエルガファルは子犬を置いて両手を前に出して言う。
「待った! 今は敵じゃないんだって!」
『落ち着いて…こいつに助けられたんだよ』
子犬が弱々しく言う。
ベルンハルトが剣を収めると、マリミエドがすぐに子犬に駆け寄って魔法を使う。
「回復!」
すると、子犬の火傷や骨折などが治った。
「この犬、大事なんだろ? 殺されて繁みに捨てられたから拾って生き返せたんだが…」
エルガファルが言う。
「何故…貴方はマリアの味方では…」
「王女のパーティーの時に賊に襲わせた事は謝るよ」
「何⁈」『何だって?』
ベルンハルトと子犬が驚き、マリミエドが言う。
「い、言っちゃ駄目!」
「言わないの? あれさ…俺の意志だと言ったけど訂正。…皇帝の命令だよ。クローディアを王太子妃に推し進める為のね」
ハッキリと言う。
するとベルンハルトが呆然とした。
「馬鹿な…」
『ああ…ヴィルヘルム侯爵の仕業か…』
子犬の呟きにベルンハルトが余計に驚いて言葉を失う。
『リュミ、彼の目的を聞くんだ』
「…貴方の目的は?」
そう聞くと、エルガファルは顔を掻きながら言う。
「あのさ……俺、実はヴァンパイアとのハーフなんだ。それで、君達が戦ってるのを見てさ…そしたらフェンリルが助けに入ったから、後でフェンリルに聞いたんだよ。君、フェンリルを助けたんだってね」
「ええ…」
「彼は友人の一人息子だったんだ。だから、俺からも礼を言いたくて。フェンリルを助けてくれてありがとう」
「い、いえ…」
マリミエドが戸惑っていると、エルガファルは目の前に来て言う。
「ね、俺にも手助けさせてよ。お詫びも兼ねてさ…ギルドは捨てて来たんだ…人間共が嫌いだから。でも君は違うようだし…」
そう言いマリミエドの頬にキスをする。
「! 何を…」
ベルンハルトが掴み掛かろうとすると、エルガファルが片手でその手を掴んで止める。
「邪魔するなよ坊や。俺、マリミエドの事は気に入ってるけど、他の人間は嫌いだから」
「やめて! フォルネウス令息は大切な仲間なのよ!」
「じゃあ、キスしていい? こいつ殺さないでおいてやるから…」
そう言いエルガファルが顔を近付けるので、子犬がブチュッとキスをした。
「うわ、犬はすぐ舐めるから~…」
そう言いエルガファルは顔を反らしてベルンハルトから手を離して、子犬を撫でる。
人間は嫌いでも、動物は好きなようだ。
ベルンハルトは右手を押さえて顔を歪ませていた。
『リュミ、こいつを味方に付けよう』
「え…」
『事情なんか話さなくていい。こいつは魔族と繋がっている! 盟約の架け橋に出来る!』
確かにそうだが…純潔が危うい…。
マリミエドは慎重に話す。
「わたくし、結婚するまでは純潔を守りたいの。だからキスもしないわ」
「…今どき珍しいね…王太子なんてヤリまくってんのに」
そう言うと、マリミエドは一瞬止まってから話す。
「……そちらの話はいいの。わたくしはそうしたいの。けれど、味方で居てくれるなら嬉しいわ」
「キス無しか~…じゃあ、ほっぺや首ならいいよね? 俺半分ヴァンパイアだからどうしても処女の血ってうずいちゃってさ~…」
「血は吸わないわよね…?」
「うう…まあお詫びだから今は我慢するよ」
そう言ってマリミエドの首にキスをして舐める。
「きゃあ⁉」
マリミエドが驚いて仰け反ると、エルガファルはニッとする。
「じゃ、この手帳あげるよ。これにして欲しい事を書けば俺の手帳にも書き込まれるから。お礼はデートでいいよ」
そう言って紅い手帳を渡して軽々とジャンプして消えた。
『大丈夫か、ベルンハルト…』
「ああ…」
その痛がりようからは、とても大丈夫に見えなかったのでマリミエドが魔法を使う。
「回復!」
「…ありがとう。あんな奴に負けるとは情けない…」
『相手はハーフとはいえヴァンパイアだ、仕方が無いさ友人。リュミには俺が付くようにするよ』
子犬がそう言うとベルンハルトは頷いた。
それからマリミエドはテントに帰り、子犬を飼う許可を得た。
どうやら、侯爵と捜索隊だけ残って後の者は明日には帰らされるようだ。
「…皆さん大丈夫かしら…」
『大丈夫だよ、後は狩りに集中させよう』
「ええ…」
答えてマリミエドは眠りに付いた。
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