116 / 191
第三幕 想定外
vs09 聖魔塔のお茶会
しおりを挟む
気が付くともう5月だ。
狩猟大会まであと一ヶ月…。
集まったアイテムはまだ2つ。
シリウスの恋人の薔薇と、ベルンハルトの雪の百合だ。
2つはガラスケースに入れて風化止めの魔法を施して聖魔塔で保管した。
聖魔塔に馬車と馬が並んでいた。
「本当にお茶会をするとはな…」
ユークレースがぼやきながらティーセットを並べると、紅茶を用意したクリフォードがセットする。
「いいじゃないか、たまには」
「ケーキも用意したぞ」
ギルベルトが言い、皆がソファーなどを並べた。
ユークレース、ギルベルト、マリミエド、アルビオン、ベルンハルト、レアノルド、クリフォード、シリウス、ライアンが座って紅茶のカップを手にする。
「…マリミエドを庇ってくれてありがとう」
そう言いギルベルトはカップを持ち上げる。
乾杯のように持って、皆は紅茶を口にした。
「本当に礼を言うのは俺なんだ、ギルベルト…リリアネットを助けて貰ったんだ。俺がやるべき事を、マリミエド嬢は身を挺してやってくれた…本当に、ありがとう!」
そうクリフォードが頭を下げて言うと、マリミエドは苦笑して言う。
「わたくしは、無力でしたわ…お辛いでしょうに…」
「いつか、リリアネットが立ち直ったら話し相手になって頂けるだろうか?」
「勿論ですわ」
マリミエドが答えると、レアノルドが心配そうに聞く。
「君は、本当に大丈夫かい?」
「ええ、なんともありませんわ」
そう答えるマリミエドが余計に心配に見えた。
暴力を受けたであろうに毅然としているからこそ、女神が加護をくれたのではないかと思える。
「…そういえばアルビオン、なんだかソワソワしてないか?」
ふいにベルンハルトが聞く。
アルビオンはドキッとしながらも平静を装って答える。
「いや…そうだ、ベルンハルトはプレゼントのお返しを渡したのか?」
「いや、今日渡そうと思って…」
「俺もだ!」
そう言いアルビオンはプレゼントの箱をポケットから出す。
「渡しそびれてしまったのだが、カフスの礼だ」
「ありがとうございます、ヴィルヘルム令息」
マリミエドは受け取ってリボンをほどいて開ける。
中には、鈴蘭が幾つか連なったイヤリングが入っていた。
「まあ可愛い!」
「雪の鈴を模ったのだそうだ。似合うと思って…」
そうアルビオンが言う間に、マリミエドはイヤリングを着けた。
「とても似合うよ」
言いたいセリフをギルベルトに取られてしまい、アルビオンは苦笑して紅茶を飲む。
するとベルンハルトもプレゼントを渡す。
「カフスの礼に…その、気の利いた物では無いんだが…」
「何かしら…」
笑いながらリボンをほどいて箱を開けると、皮で出来た小物入れが入っていた。
「これは…小物入れ?」
「小銭なんかを入れるのにいいかと思って………」
言い掛けてハッとする。女性は銭を持ち歩かないのだ!
「あ…済まない!」
「いえ、小物が入れられて素敵ですわ」
マリミエドはバッグの中にそれをしまう。
「これをどうぞ」
続けてライアンがマリミエドにプレゼントを渡す。
「ありがとうございます」
受け取ってリボンを取り蓋を開けると、ガラスで出来た小さな動物の置き物が沢山入っていた。
「まあ可愛い!」
ウサギや馬やニワトリ、羊や鴨の親子や猫や犬など、動きのある仕草で作られていて見ているだけで癒やされる置き物だった。
「…喜んで貰えて良かったです」
ライアンは心からホッとした様子で言う。
「では、俺が最後ですね。これは、妹からの感謝の気持ちで、こっちは、カフスのお礼です」
そう言いシリウスは30cm四方の箱と誰が見ても帽子だと分かる円柱の箱をマリミエドに渡した。
マリミエドは四角い箱の蓋を開ける。
「まあ、ぬいぐるみ!」
中からは宝石の瞳のクマのぬいぐるみが出てきた。
しかも洒落たワンピースを着ていた。
「このワンピース、脱がせられるのね! 初めて見たわ」
「妹が作った物です。ずっと寝てばかりだったので裁縫が得意になったそうで…」
「このクマと洋服も?」
「はい。生地選びを手伝わされて、分からないまま選びましたが…」
「とても素敵よ! ベッドに置いて一緒に眠れるわ」
マリミエドはとても喜んでぬいぐるみを膝に乗せ、円柱の箱も開ける。
中からはレースと生花を沢山着けたボンネットが出てきた。
「まあ素敵…」
マリミエドはリボンを外してボンネットを着けてみる。
「どう、お兄様、似合うかしら?」
そう隣りのギルベルトに聞くと抱き締められた。
「可愛過ぎるよリュミ」
「お兄様…」
ぬいぐるみが潰れてしまうので、マリミエドはグイグイとギルベルトを押して離した。
そして一同を見て、頭を下げた。
「プレゼントをありがとう。大切にします」
皆はうんうんと頷くが、ユークレースだけが気まずそうにしていた。
〈しまった…プレゼントを選んでいない……〉
ずっと聖魔塔に籠もってアイテムを探していたので、街にも出ていないのだ。
〈! そうだ、あれがある…〉
ユークレースは急に立ち上がって棚に行き、小さな箱を手にして戻って来てマリミエドに渡す。
「遅くなったが、受け取ってくれ」
「ありがとうございます」
笑って言い箱を開けると、見覚えのあるコサージュが入っていた。
「これは…世界樹のコサージュ…」
マリミエドが思わず呟くと、皆がコサージュを見た。
「それが世界樹か、初めて見るな」
アルビオンが言う。
「へえ、凄いな」
レアノルドもそう言う…。
〈俺があげたペン先は世界樹の認定を受けないようだな…〉
皆の反応を見て一人ギルベルトは苦笑した。
マリミエドはコサージュを胸元に着けた。
〈なんだか不思議な感じ…〉
コサージュが喜んでいるように光って見えた。
狩猟大会まであと一ヶ月…。
集まったアイテムはまだ2つ。
シリウスの恋人の薔薇と、ベルンハルトの雪の百合だ。
2つはガラスケースに入れて風化止めの魔法を施して聖魔塔で保管した。
聖魔塔に馬車と馬が並んでいた。
「本当にお茶会をするとはな…」
ユークレースがぼやきながらティーセットを並べると、紅茶を用意したクリフォードがセットする。
「いいじゃないか、たまには」
「ケーキも用意したぞ」
ギルベルトが言い、皆がソファーなどを並べた。
ユークレース、ギルベルト、マリミエド、アルビオン、ベルンハルト、レアノルド、クリフォード、シリウス、ライアンが座って紅茶のカップを手にする。
「…マリミエドを庇ってくれてありがとう」
そう言いギルベルトはカップを持ち上げる。
乾杯のように持って、皆は紅茶を口にした。
「本当に礼を言うのは俺なんだ、ギルベルト…リリアネットを助けて貰ったんだ。俺がやるべき事を、マリミエド嬢は身を挺してやってくれた…本当に、ありがとう!」
そうクリフォードが頭を下げて言うと、マリミエドは苦笑して言う。
「わたくしは、無力でしたわ…お辛いでしょうに…」
「いつか、リリアネットが立ち直ったら話し相手になって頂けるだろうか?」
「勿論ですわ」
マリミエドが答えると、レアノルドが心配そうに聞く。
「君は、本当に大丈夫かい?」
「ええ、なんともありませんわ」
そう答えるマリミエドが余計に心配に見えた。
暴力を受けたであろうに毅然としているからこそ、女神が加護をくれたのではないかと思える。
「…そういえばアルビオン、なんだかソワソワしてないか?」
ふいにベルンハルトが聞く。
アルビオンはドキッとしながらも平静を装って答える。
「いや…そうだ、ベルンハルトはプレゼントのお返しを渡したのか?」
「いや、今日渡そうと思って…」
「俺もだ!」
そう言いアルビオンはプレゼントの箱をポケットから出す。
「渡しそびれてしまったのだが、カフスの礼だ」
「ありがとうございます、ヴィルヘルム令息」
マリミエドは受け取ってリボンをほどいて開ける。
中には、鈴蘭が幾つか連なったイヤリングが入っていた。
「まあ可愛い!」
「雪の鈴を模ったのだそうだ。似合うと思って…」
そうアルビオンが言う間に、マリミエドはイヤリングを着けた。
「とても似合うよ」
言いたいセリフをギルベルトに取られてしまい、アルビオンは苦笑して紅茶を飲む。
するとベルンハルトもプレゼントを渡す。
「カフスの礼に…その、気の利いた物では無いんだが…」
「何かしら…」
笑いながらリボンをほどいて箱を開けると、皮で出来た小物入れが入っていた。
「これは…小物入れ?」
「小銭なんかを入れるのにいいかと思って………」
言い掛けてハッとする。女性は銭を持ち歩かないのだ!
「あ…済まない!」
「いえ、小物が入れられて素敵ですわ」
マリミエドはバッグの中にそれをしまう。
「これをどうぞ」
続けてライアンがマリミエドにプレゼントを渡す。
「ありがとうございます」
受け取ってリボンを取り蓋を開けると、ガラスで出来た小さな動物の置き物が沢山入っていた。
「まあ可愛い!」
ウサギや馬やニワトリ、羊や鴨の親子や猫や犬など、動きのある仕草で作られていて見ているだけで癒やされる置き物だった。
「…喜んで貰えて良かったです」
ライアンは心からホッとした様子で言う。
「では、俺が最後ですね。これは、妹からの感謝の気持ちで、こっちは、カフスのお礼です」
そう言いシリウスは30cm四方の箱と誰が見ても帽子だと分かる円柱の箱をマリミエドに渡した。
マリミエドは四角い箱の蓋を開ける。
「まあ、ぬいぐるみ!」
中からは宝石の瞳のクマのぬいぐるみが出てきた。
しかも洒落たワンピースを着ていた。
「このワンピース、脱がせられるのね! 初めて見たわ」
「妹が作った物です。ずっと寝てばかりだったので裁縫が得意になったそうで…」
「このクマと洋服も?」
「はい。生地選びを手伝わされて、分からないまま選びましたが…」
「とても素敵よ! ベッドに置いて一緒に眠れるわ」
マリミエドはとても喜んでぬいぐるみを膝に乗せ、円柱の箱も開ける。
中からはレースと生花を沢山着けたボンネットが出てきた。
「まあ素敵…」
マリミエドはリボンを外してボンネットを着けてみる。
「どう、お兄様、似合うかしら?」
そう隣りのギルベルトに聞くと抱き締められた。
「可愛過ぎるよリュミ」
「お兄様…」
ぬいぐるみが潰れてしまうので、マリミエドはグイグイとギルベルトを押して離した。
そして一同を見て、頭を下げた。
「プレゼントをありがとう。大切にします」
皆はうんうんと頷くが、ユークレースだけが気まずそうにしていた。
〈しまった…プレゼントを選んでいない……〉
ずっと聖魔塔に籠もってアイテムを探していたので、街にも出ていないのだ。
〈! そうだ、あれがある…〉
ユークレースは急に立ち上がって棚に行き、小さな箱を手にして戻って来てマリミエドに渡す。
「遅くなったが、受け取ってくれ」
「ありがとうございます」
笑って言い箱を開けると、見覚えのあるコサージュが入っていた。
「これは…世界樹のコサージュ…」
マリミエドが思わず呟くと、皆がコサージュを見た。
「それが世界樹か、初めて見るな」
アルビオンが言う。
「へえ、凄いな」
レアノルドもそう言う…。
〈俺があげたペン先は世界樹の認定を受けないようだな…〉
皆の反応を見て一人ギルベルトは苦笑した。
マリミエドはコサージュを胸元に着けた。
〈なんだか不思議な感じ…〉
コサージュが喜んでいるように光って見えた。
1
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜
茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。
☆他サイトにも投稿しています
腹黒王子は、食べ頃を待っている
月密
恋愛
侯爵令嬢のアリシア・ヴェルネがまだ五歳の時、自国の王太子であるリーンハルトと出会った。そしてその僅か一秒後ーー彼から跪かれ結婚を申し込まれる。幼いアリシアは思わず頷いてしまい、それから十三年間彼からの溺愛ならぬ執愛が止まらない。「ハンカチを拾って頂いただけなんです!」それなのに浮気だと言われてしまいーー「悪い子にはお仕置きをしないとね」また今日も彼から淫らなお仕置きをされてーー……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる